心理学とは?
心理学とは「人の心がどのような原理で動いているか研究する学問」つまり、「心の科学」です。
「人の気持ちが読めるようになる」「心を操る」などの心理学の本のタイトルを見て、マインドコントロールや催眠術を想像していた人もいるかもしれません。
しかし、心理学は科学に基づくため、理論や概念を語るだけではなく調査や統計、実験という科学的な方法を取る必要があります。
「心と脳がどのように作用しているのか」「社会的要素は人にどのような影響を与えるか」などの疑問に対し、さまざまな研究で考察を重ねます。
行動パターンの観察や数学的側面からのアプローチによって心の動きを解明し、よりよい社会へ導くための学問と言えるでしょう。
心理の意味や定義
「心理」は、心の動きや精神の状態を意味します。どんな時に、どんな感情になるか、それぞれ人によって違いがあります。
たとえば、同じ絵画を見た時に「美しい」と感じるか、「ユニーク」と感じるかと個人差があり、生まれ出る感情はコントロールできません。
また、何かが起きた時、とっさに身体が反応してしまうことがあります。犬や猫を見たらかわいいと思い笑みが浮かぶ、突然大きな音がしたらびくっとしてしまうなどの動きも心理です。
なぜ、そう感じるのか、どうしてそんな行動になるのか、解明するのが心理学です。
心理学の成り立ち
1879年に、ドイツのヴィルヘルム・マクシミリアン・ヴント教授がライブチヒ大学に実験心理学の研究室を立ち上げたのが、心理学の始まりと言われています。
学問としては比較的新しい分野と言えるでしょう。
心理学が生まれる前は、哲学として「心」が語られてきました。
古代ギリシャには、心に関する考察が残されています。また、古代エジプト、中国、インドなどのさまざまな国でも「精神と行動」に関心が高かったことが分かっています。
心理学と呼ばれるようになったのは近代であるものの、その起源は非常に古いと言えるでしょう。
19世紀中頃まで心理学は哲学として扱われ、その後心理学として成り立ってからは、目覚ましい進化を遂げました。多くの精神科医や心理学者によって心理学の分野が作られ、現代の心理学へと至ったのです。
心理学の種類
心理学はそのアプローチ方法によってさまざまな分野に分かれていますが、大きく分けると「基礎心理学」と「応用心理学」の2つで成り立っています。
基礎心理学
基礎心理学は、すべての人が持つ心理(心の動き)を科学的に研究・解明する学問です。9種類の分野があります。
【基礎心理学】
- 1.認知心理学
- 2.発達心理学
- 3.社会心理学
- 4.行動心理学
- 5.生理心理学
- 6.学習心理学
- 7.性格心理学
- 8.知覚心理学
- 9.神経心理学
代表的な分野として発達心理学や生理心理学などをご紹介します。
- 生理心理学
- 脳波や心電図を用いて、体の状態と心の相関関係を探る学問です。緊張すると手に汗をかく、心拍数が早くなるなども生物(生理)心理学の範疇になります。
ウソ発見器はこのような体と心の相関関係をもとに開発されました。 - 発達心理学
- 人が成長するにしたがって、どのように心が変化するかを研究する心理学です。
「この歳の子どもはどのような心理の発達段階にあるか?」など発達段階に応じた心の働きを明らかにする役割を担っています。 - 社会心理学
- 社会生活における人の心理を研究する心理学です。
個人と社会の関係だけでなく、例えば群衆心理など、人が集団になった際にどのような心理が生じるかといったことも社会心理学が扱う分野になります。
応用心理学
応用心理学は、基礎心理学のデータや統計をもとに、生活で具体的に心理学を活用する学問です。犯罪や教育、スポーツなど9種類の分野があります。
【応用心理学】
- 1.臨床心理学
- 2.犯罪心理学
- 3.スポーツ心理学
- 4.災害心理学
- 5.教育心理学
- 6.産業心理学
- 7.家族心理学
- 8.交通心理学
- 9.芸術心理学
応用心理学として有名なのは、臨床心理学やスポーツ心理学です。それぞれ生活に密着した分野で、実用的な研究内容と言えるでしょう。
- 臨床心理学
- うつや統合失調症などの精神疾患に対するカウンセリングや心理療法を学ぶ心理学です。
臨床心理学の専門家としては臨床心理士がいます。
臨床心理士の仕事領域は精神科医と重なる部分がありますが、精神科医とは異なり、臨床心理士は薬を処方できません。
カウンセリングによって患者さんのこころをケアするのが臨床心理士です。 - スポーツ心理学
- 心理的な側面から、スポーツに関わる課題に取り組み、決しようとする心理学です。
科学的な知識をスポーツをおこなう人に提供することでパフォーマンスの向上を目指します。
競技の実践心理、スポーツ臨床、スポーツメンタルトレーニングがスポーツ心理学の主な分野です。
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【日常やビジネスで役立つ】心理学の身近な活用例
心理学は日常生活やビジネスなどで活用が可能です。ここでは、代表的な4つの心理学テクニックをご紹介します。
- 心理学テクニック(1):観察法
- 心理学テクニック(2):ミラーリング
- 心理学テクニック(3):投影法(一般論法、代弁)
- 心理学テクニック(4):フット・イン・ザ・ドアとドア・イン・ザ・フェイス
心理学テクニック(1):観察法
相手の感情を理解したいときに使われるテクニックです。文字どおり相手を観察することで、その人の本音や感情の変化などを読み取ります。
観察するポイントは次の6つです。
- 表情(顔)
- 目の動きや視線
- 声のトーンやリズム、テンポ、大きさ
- 姿勢と体の動き、しぐさやクセ
- 呼吸
- よく使う言葉の言い回し・感情を表現する言葉
この6つにはその人のクセが出やすいと言われています。
その人が特定の感情を出したときのクセを観察し記憶することで、本音や感情の変化などを読み取れるようになるでしょう。
観察法には、できるだけ主観を交えず記述・分析する「自然観察法」や仮説に基づく、特定の条件を作り出してから行う「実験観察法」などがあります。生活の中で実践するなら、「自然観察法」が有効です。
心理学テクニック(2):ミラーリング
相手に好印象を持ってもらうテクニックです。
人は自分と似た人や好みのものが似ている人を仲間と認識し、好感を抱く習性を持っています。
この心理を利用したものがミラーリングです。
「相手の行動、しぐさ」「言葉づかい」などを真似ると、真似られた方は相手に対し無意識に安心感や親近感を抱きます。
たとえば、相手が飲み物を飲むのと同じタイミングで自分も飲む、相手が笑ったら自分も笑う、などが挙げられます。
理化学研究所の研究で、発話リズムが同調するほど脳波リズムも同調するという結果が出ています。ミラーリングは脳波にも影響を及ぼしているのです。
優れたビジネスマンは顧客に対しミラーリングを使って効果を上げています。実生活においても非常に有効なテクニックと言えるでしょう。
心理学テクニック(3):投影法(一般論法、代弁)
相手の本音を引き出すテクニックです。
自分の本音を他人に語るのはハードルの高い行動です。中には、自分自身の気持ちを理解しきれていない人もいます。
そこで、話をする立場を語り手自身ではなく、「一般的な人」に置き換えて語ってもらう方法がおすすめです。
これは投影法の1つで、「一般論法」と呼ばれることもあります。
一般的な意見として語ってもらう場合でも、無意識に潜む欲求や感情が投影され、相手の本音が見えてくる手法です。
また、身近な人を例に出し、「もし〇〇さんならどう考えると思う?」などと仮定して語ってもらう方法もあります。
これは「代弁」と呼ばれるもので、一般論法と同様の効果が見込めます。
心理学テクニック(4):フット・イン・ザ・ドアとドア・イン・ザ・フェイス
人には「小さな願い事を受け入れると、次に大きな要求をされた時に断りにくい」という心理的なメカニズムが働きます。
たとえば、「無料のサンプルをどうぞ」と言われて受け取り、サンプルを使った後は「本契約しないといけない」という心理が働きます。
顧客としてはサンプルを使って品質を判断した後なので、「良い商品だ」と思えば本契約に抵抗はないでしょう。
これが「フット・イン・ザ・ドア」と呼ばれるテクニックです。
大きな要求をしたいときには、まず小さなお願い事から始めると成功する確率が上がるでしょう。
反対に、最初に大きな要求をしてみる「ドア・イン・ザ・フェイス」というテクニックもあります。
初めに大きな要求をし、相手に断られた後、本命となる小さな要求をする手法です。
この大きな要求は断られることを前提としていますが、相手はそれを知りません。
一度頼みを断ってしまったために罪悪感を持ち、次のお願い事は比較的承諾しやすくなる傾向にあります。
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独学で取得できる心理学の資格
人気の高い心理学の資格として、次のようなものがあります。
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 認定心理士
- 産業カウンセラー
このような資格は、大学の卒業や講座の受講が取得条件です。独学では取得できません。
公認心理士を取得するには次のような3つのルートがメインです。
- 1.大学で「必要な科目」を修めて卒業 かつ 大学院で「必要な科目」を修了する
- 2.大学で「必要な科目」を修めて卒業 かつ 「特定の施設」で2年以上「心理職の業務」に従事する
- 3.1や2と同等かそれ以上の知識・技能があると認定される
しかし、民間の心理学に関する資格のなかには、試験に合格すれば資格取得できるものもあります。たとえば、次のような資格は独学での取得が可能です。
- 心理学検定
- メンタルヘルス・マネジメント検定
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心理学検定
心理学検定
心理学検定は、日本心理学諸学会連合が実施している試験です。受験資格はありません。心理学に興味のある人なら誰でも受験可能です。
心理学検定は、大学レベルの心理学の知識を認定する試験で、心理学の基礎資格として活用することを目的に作られました。大学によっては、心理学検定が入試の優遇措置の対象になります。
試験問題は、A領域5科目・B領域5科目に分かれており、心理学の10科目が問われます。合格基準は約6割の正答率が目安です。
合格科目数に応じて、「特1級」「1級」「2級」の3種類の級に認定されます。
独学で取得できますが、合格率は30%前後で難易度が高めの資格です。
メンタルヘルス・マネジメント検定
メンタルヘルス・マネジメント検定は、大阪商工会議所、施行商工会議所が主催している検定です。受験資格はなく、誰でも受験可能です。
職場内に必要なメンタルヘルスケアや、対処方法に関する知識を認定する試験です。働く人たちの心の不調を未然に防ぎ、仕事や職場で活躍できることを目的に作られました。
資格を取得すると、自分だけでなく部下のメンタルケアにも活かせます。メンタルの不調による休職や離職が予防できるなど、企業のリスク管理としても最適の資格です。
メンタルヘルス・マネジメント検定は次の3つの種類に分かれています。
- Ⅰ種(人事労務管理スタッフ・経営幹部対象)
- Ⅱ種(管理監督者対象)
- Ⅲ種(一般社員対象)
2022年のデータでは、Ⅲ種が69.4%、Ⅱ種が58.2%、Ⅰ種が17.6%の合格率となっており、Ⅰ種は非常に難易度が高くなっています。
心理学を学ぶなら大学の通学が一般的
心理学を学びたいと思ったら、多くの人は本を読んだり、インターネットで心理学の情報を調べたりするでしょう。しかし、学問として学ぶなら大学に通うのが一般的です。
自分で心理学の本を選んで読むと、学ぶ分野が偏ったり、解釈を間違えて覚えたりする可能性があります。
大学であれば、授業で心理学の歴史や心理学者の思想をより深く、専門的に学べます。脳の働きや数理的なアプローチによる、難解な心理学の研究も理解できるでしょう。
心理学を学べる大学は国公立・私立合わせて、約270校ほどあります。ここでは、心理学の分野で有名な大学やユニークな取り組みをしている大学をいくつか紹介します
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上智大学 総合人間科学部 心理学科(私立)
日本の中でも先駆けて臨床心理相談室を開設し、専門家を数多く輩出してきた実績のある大学です。国家資格「公認心理師」にも、民間資格の「臨床心理士」資格にも対応しており、資格取得を目指す人にも最適です。
実験・調査を用いて科学的考察にもとづく「実験心理学」と、心に関わる多様な困難や悩みを理解し、援助方法を探る「臨床心理学」の2領域が学べます。
3年間で次のようなカリキュラムを組んでいます。
- 1年次:心理学の歴史・思想的な内容、統計学やデータ処理法
- 2年次:データの収集・分析・解読、研究や演習に取り組むための基礎
- 3年次:ゼミに所属し、テーマを決めて研究を開始。卒業研究に取り組む
世界的に高名な教授が数多く在籍しているのも、上智大学が心理学で有名な理由です。
関西大学 社会学部 社会学科 心理学専攻(私立)
一般的な大学では心理学と言えば、「基礎心理学・応用心理学」のことを指しますが、関西大学ではこれらの心理学を学べることはもちろんのこと、大別される2つの心理学以外に、4つの実践的なプログラムが用意されています。
- 心理学データ解析実践学習プログラム:心理学の調査設計や情報解析について学ぶ
- 心理テスト実践学習プログラム:臨床、キャリアカウンセリング、教育などで使用される心理テストについて体験的に学ぶ
- キャリア教育実践学習プログラム:キャリアの支援に関する基礎的・実践的な知識と技術について学ぶ
- 産業カウンセリングプログラム:産業人としてカウンセリングの知識を活用できる力を育成する
1年次生の時から各教員の専門分野に関する話を聞くオムニバス形式の授業があるなど、心理学への興味を維持するためのユニークな試みもあります。
心理学を学べる通信制大学は?
仕事や育児などで時間の余裕がなく、大学に通うのが難しいという人には、通信制大学がおすすめです。
通信制大学ならスクーリングが週1回、もしくはスクーリングしなくてもよい大学もあるため、忙しくても学びやすいでしょう。通常の大学より学費が安く、入学しやすいのもメリットです。
ただし、公認心理師を目指す人はスクーリングのある通信制大学を選びましょう。公認心理師は演習科目の履修が必要なので、スクーリング不要の大学では資格が取得できません。
心理学を学べる通信制大学は全国に約20校あります。
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効率的に心理学の資格を取るなら通信講座がおすすめ!
民間スクールの通信講座の中には、受講すると心理学に関する資格が取得できるものもあります。資格取得を目指している人は、講座の受講が効率的でおすすめです。
目的に合わせて講座を選びましょう。
通信講座の受講修了が条件だったり、通信講座を受講した後、試験に合格するのが条件だったりと、資格の取得条件は講座ごとに異なります。
民間資格にはたくさんの種類がありますが、中でもおすすめなのが、次の2つです。
- メンタルケア心理士
- メンタル心理カウンセラー
いずれもカウンセリングの技法や精神疾患などの知識が学べる資格です。
関連記事 心理学の資格が取れる通信講座(オンライン講座)を一覧で比較!
メンタルケア心理士
メンタルケア心理士®は、医療・福祉・教育・産業・公共サービスなどで求められるカウンセリングや心理療法の基礎能力を持つことを証明する資格です。
受験資格は、メンタルケア学術学会指定の教育機関において、メンタルケア心理士®の教育課程を修了した人です。受講修了後、文部科学省後援「こころ検定®」2級に合格すればメンタルケア心理士®の資格が取得できます。
講座に受講資格はありません。
指定教育機関 | 講座名 |
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ヒューマンアカデミー/通信講座 | メンタルケア心理士®講座 |
LEC東京リーガルマインド | 文部科学省後援こころ検定®2級対応 メンタルケア心理士講座 |
メンタルケア心理士講座では、カウンセリングの技法や主な精神疾患について学ぶことができます。
メンタル心理カウンセラー
メンタル心理カウンセラーは、日本能力開発推進協会 (JADP)が主催する資格です。協会指定教育機関であるキャリカレで全カリキュラムを修了した人が受験対象です。
技能審査の対象は次の通りです。
- 心理学に関する基礎知識
- カウンセリングに関する基礎知識
- カウンセリング能力に関する職業能力
試験に合格すれば「JADP認定メンタル心理カウンセラー®」の称号が与えられます。
初学者の方に向けた資格です。心理学を初めて学ぶという方に最適な講座といえるでしょう。
心理学を学ぶ際のポイントは?
心理学はとても範囲の広い学問です。
心理学を学ぶのであれば、まずは自分が心理学のどのようなことに興味を持ち、何を学びたいと思うのかを明確にする必要があります。
ここでは、代表的な心理学の分野を6つご紹介します。
- (1)発達心理学について
- (2)教育心理学について
- (3)社会心理学について
- (4)認知心理学について
- (5)犯罪心理学について
- (6)臨床心理学について
(1)~(6)の分野以外にも、さまざまな分野の心理学があります。 興味があるもの、気になる分野があれば学んでおいて損はありません。
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(1)発達心理学について
発達心理学は、乳幼児期から始まり、幼児期、児童期、青年期、成熟期、老年期と成長過程で変化する精神の特徴や法則性などを研究する分野です。
思春期の反抗期が分かりやすい例でしょう。成長の過程で認知や理解が変化し、やがて反抗期は終わりを迎えます
発達心理学は一生を通じて、どのように人間の心理は発達するのか、幼児期や青年期など成長段階ごとの心理はどのように異なるかを学ぶ学問なのです。
発達心理学を学べば、人が「なぜそのような行動をとるのか」を、発達段階に照らし合わせて理解できるメリットがあります。
(2)教育心理学について
心理学を用いて、学校や家庭における教育効果を高める方法を研究する学問です。
教育心理学は、発達心理学と密接に結びついています。
乳児期から青年期にかけて、次のようなことを調べます。
- 成長発達による心や行動の変化
- 教育や文化、社会などを通した学習による変化
- 成長・発達の過程で生じた不適応を解決する支援について
教育心理学の知見を得れば子どもの心理を理解し、上手に教えたり、コミュニケーションをとれたりするようになるでしょう。
(3)社会心理学について
社会において個人はどのような影響を受けるのかを研究する心理学です。
心理学は基本的に「個人の心の変化の過程」を研究対象としていますが、人間は周囲の人々から多くの影響を受けています。
たとえば、一人の時と大勢の人といる時では違う判断や行動をすることがあります。なぜ、そのような違いが起こるのかを調べるのが社会心理学です。
研究対象には、国や企業といった大きな枠組みだけでなく、家庭や友人関係、学校など身近な社会も含みます。
(4)認知心理学について
認知心理学の定義は、「人間の認知に関連する活動、構造、表現などを研究する学問」とされています。認知とは、何かを見たり聞いたりした後に、考えたり覚えたりすることです。
人間を高性能なコンピュータと仮定し、外部の情報をどのように処理するかを研究します。
たとえば、空を見て雨が降りそうだから傘を持って出かける、手書きの文字を文字と認識できる、などの外部の環境を認知する働きを調べます。
(5)犯罪心理学について
犯罪者の心理、そして動機などについて研究する心理学です。
研究の対象は幅広く、次のような犯罪行為とそれを取り巻く事情も含まれます。
- 犯罪に関連する人間の行動
- 犯罪の発生機序や意味
- 捜査手法
- 犯罪に至った者
- 被害者等の諸特徴や行動予測
- 司法の場での証言や鑑定
- 犯罪者や非行少年等に対する治療的・教育的処遇の効果
- 一般市民の犯罪及び犯罪者に対する態度や感情
- 防犯策
- 犯罪被害者の支援
犯罪心理学の研究で得る知見は、犯罪の予防や、罪を犯した方の更生などに役立つでしょう。
(6)臨床心理学について
心の悩みを持つ人に対し、原因を探し、カウンセリングや心理療法などで解決する心理学です。
臨床心理学以外の心理学では「人間の心に関する特徴や傾向」を扱うのに対し、「個人の心の問題」を扱っているのが大きな違いです。悩んでいる人や心の病を抱えた人に「治療」をおこなうことを目的としているため、実践的な面が強い分野であるといえるでしょう。
人に寄り添う技術を学べるので、臨床心理学はコミニケーションや観察力などを身に着けたい人にも最適な学問です。
心理学に関するよくある質問
心理学に関してよくある質問に対し、Q&A方式で解答しています。
- 心理学を活用できる仕事は何があるの?
- 心理学の給料・年収はどのくらい?
- 心理学の今後の将来性・需要はあるの?
心理学を活用できる仕事は何があるの?
心理学は、自分の人生にプラスに働くだけでなく、仕事に活かすこともできます。
営業や、教師などはもちろん、人と関わる以上どんな仕事でも心理学の知識が役立つでしょう。特に「カウンセラー」の仕事は、心理学の知識と直結している仕事です。
たとえば、スクールカウンセラーは、さまざまな原因から心の負担を抱える児童への対応が求められます。
年齢を重ねていく上での変化を専門とした発達心理学の知識が必要です。
また、企業内カウンセラーの場合はうつ病など精神的な問題を抱えた人に対し、カウンセリングや心理療法を試みるための臨床心理学の知識が求められます。
心理学の知識は、分野によって仕事への活かし方が変わってきます。
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心理学の給料・年収はどのくらい?
心理学に関係する仕事を検討している人にとって、気になるのは給料や年収でしょう。
仕事内容や職場によって給料は異なりますが、公認心理士や臨床心理士の年収の目安は約300万円~400万円です。
しかし、経験年数や、雇用形態によって大きな差があり、あくまでも目安でしかありません。
たとえば、スクールカウンセラーは職場や待遇によって年収にバラツキがあり、約220万円~560万円の範囲で変動します。
企業でカウンセリングを行う産業カウンセラーは、年収約300万円~400万円が目安です。
しかし、産業カウンセラーは非常勤契約になる事が多く、複数の企業をかけ持ちするといったケースも見られます。
年収は資格の種類にも左右されます。心理学に関する仕事をするなら、目指す職場に合わせた資格選びが重要です。
心理学の今後の将来性・需要はあるの?
心理学の給料は高いとは言えない状態です。
しかし、2015年には心理学の資格として初の国家資格『公認心理師』も誕生し、注目が集まっています。
また、欧米では企業経営者などから需要の多いカウンセラーの仕事は社会的な地位も高く、収入の面でも大手企業並みの給料を得ている場合があります。
このような事情から、日本においても今後、カウンセラーの地位や給料面が改善され、需要や将来性が期待できる可能性は高いと言えるでしょう。