2020年の東京オリンピック開催に向け、政府が「通訳案内士(通訳ガイド)」国家資格の制度変更を検討しているというニュースがありました。現在、観光庁の召集のもと、自治体関係者や旅行業界関係者等による「通訳案内士制度のあり方に関する検討会」が行われており、2015年7月をめどに通訳案内士(通訳ガイド)の制度変更案をまとめる予定です。
そもそも通訳案内士(通訳ガイド)とはどのような資格なのか?なぜ資格制度の変更が検討されているのか?詳しく見ていきたいと思います。
「通訳案内士(通訳ガイド)」の試験概要
通訳案内士(通訳ガイド)は、外国人に付き添い外国語で観光案内を行なう仕事に就ける国家資格です。試験は下記の内容で実施されます。
▽筆記試験
・外国語についての試験:英語,フランス語,スペイン語,ドイツ語,中国語,イタリア語,ポルトガル語,ロシア語,韓国語,タイ語の10ヶ国語の内1つを選択。
・日本の地理・歴史および産業,経済,政治および文化に関する一般常識
▽口述試験
通訳案内の実務
外国語についての試験は記述式(※英語選択の場合のみ記述式+マークシート方式の併用)、日本の地理・歴史、一般常識に関する試験は日本語で出題されるマークシート方式の試験となっています。口述試験では、通訳案内の業務を擬似的に行うことで、通訳案内の現場で必要とされるコミュニケーション能力が身についているかが判定されます。
通訳案内士として仕事を行うには、通訳案内士の国家試験に合格したのち、都道府県知事の登録を受ける必要があります。
「通訳案内士(通訳ガイド)」の現状とこれから
通訳案内士試験は、英語、フランス語、スペイン語、ドイツ語、中国語、イタリア語、ポルトガル語、ロシア語、韓国語、タイ語の10ヶ国語の内1つを選択できますが、現在登録されている通訳ガイドの約7割は英語の通訳ガイドと言われています。また、平成26年度の言語別合格者数は下記のようになっています。(※参考→平成 26 年度通訳案内士試験の合格発表(日本政府観光局))
- 英語 1,422 人(26.6%)
- ドイツ語 19 人(24.4%)
- フランス語 49 人(19.4%)
- スペイン語 27 人(15.8%)
- ポルトガル語 9 人(14.5%)
- イタリア語 9 人(13.8%)
- ロシア語 11 人(13.1%)
- 中国語 81 人(8.9%)
- 韓国語 30 人(10.3%)
- タイ語 1 人(3.3%)
英語を始め、ヨーロッパ言語の合格者が目立つのに対して、アジア圏の言語に対応したガイドが少ないのが現状です。
地域別では、通訳案内士の登録者は関東圏・関西圏の都市部に集中。
平成26年度の地域別合格者数について、上位5位は下記の都道府県になっています。
- 東京都 601 人
- 神奈川県 227 人
- 千葉県 115 人
- 大阪府 87 人
- 埼玉県 83 人
「通訳案内士制度のあり方に関する検討会」でも、近年大幅に増加しているアジア圏からの訪日客に対して、アジア言語の通訳ガイドが圧倒的に不足していることや、大都市圏に比べて地方の通訳ガイドが少ないことが指摘されています。
タイ語を始め、アジア圏の訪日客に対応できる通訳ガイドや、地方の観光地に対応できる通訳ガイドの増加が望まれており、人材の確保に向けて話し合いが進められています。
■追記 2017年6月2日「通訳案内士法及び旅行業法の一部を改正する法律」が公布されました。 施行日は2018年1月4日です。通訳案内士資格について業務独占から名称独占へと規制を見直すこと、全国対応のガイド「全国通訳案内士」に加えて地域に特化したガイド「地域通訳案内士」の資格制度を創設することなどが内容に盛り込まれています。