皆さま「左官」ってご存知ですか?聞いたことないという方も多いと思いますが、これは店舗や住宅などの「壁」や「床」、「天井」などを塗る技術で、私たちにとってとても身近なものなんです。
壁紙等とくらべると割高になってしまうため一時は需要が減っていたのですが、最近は日本の伝統的な技術への関心の高まりや、エコブームなどを受け人気が戻ってきており、左官を行う職人さんも増えてきているのだそう。
そこで今回は、以前より若年層の人材育成に力を入れている「原田左官工業所」で、お子さんを2人育てながら職人として働かれている福吉さんに、左官の仕事に就かれたきっかけや、やりがいなどについて伺いました!
≪福吉 奈津子さん≫
高校卒業後、原田左官工業に入社。職人歴は今年で11年目。
小学生2人のお子さんをお持ちのママでもあります。
左官職人となったきっかけを教えてください
最初から左官という仕事に興味があったわけではなくて、建築関係の仕事につきたかったんですよね。ただ女性が少ない業界なのは分かっていたので、最初から女性がいる会社がいいなと思い、「建築 女性」といったキーワードでネット検索したら今の会社が出てきて。それが左官を知ったきっかけです。
建築の仕事がしたかったのは、デスクワークより体を動かす仕事の方が自分に向いてるんじゃないかと思ったのと、あとお金が稼げるんじゃないかという理由でした(笑)。
建築業界は高齢化が進んでいるといわれていますが、福吉さんのように若い職人さんは珍しくないですか?
全体的に若い人が不足しているというのはあると思います。私が入社した10年前はおじいちゃんばかりでした。でも60代も後半になってくると体がきつくなってきたりして辞める方も増えてしまうので、ある程度リスクをとって若い人を育てていこうということになり、現在会社の平均年齢は30代まで下がっています。
定期的に開催している1日左官体験会でも、最近は20代〜30代くらいの女性の参加が多いですよ。その体験会がきっかけで入社した方もいました。
どういった仕事をされているんですか?
主に店舗の「塗り壁」を行っています。塗り壁というのは文字通り壁を塗ることです。塗る材料は珪藻土(けいそうど)や漆喰(しっくい)など様々なものがあります。他には床や天井を塗ることもあります。
1人がはじめに塗り、もう1人が追いかけてパターン(模様)をつけていく、といったようにチームで連携して作業していくことが多いです。材料にもよりますが、時間がたつと乾いてパターンがつけられなくなるので。
特に店舗だと壁が高く、上と下で分割してそれぞれに塗る人とパターンをつける人を配置したりするので、それだけ関わる人が多くなります。
仕事でつらいことはなんですか?
夏は暑く、冬は寒いことですね。最近の店舗は全面ガラス張りというところも多く、炎天下だと窓からの日差しが辛いです。オープンするまでは冷房なんて一切ないですから。
仕事と家庭の両立は大変ではないですか?
スケジュールについては夜遅くなったりしないよう会社が調整してくれますし、周りの方も、子どもがいるから「早く帰ってやれよ」と声をかけてくれるので、ありがたいです。もちろんどうしようもない場合は遅くなることもありますけどね。
私の他にも、毎日お子さんを迎えに行かなければならないので、迎えの時間に必ず間に合うようなシフトを組んで残業は発生しない、という方もいます。
左官職人の仕事のやりがいや面白さについて教えてください
店舗だと設計士さんやデザイナーさんが間に入るので依頼主と直接会うことはあまりないんですが、直工事と言って、一般の方から直接依頼されて壁の塗り替えですとか新築の壁塗りとかをやる場合ですと、依頼主に要望などを聞きながら一緒に創りあげていくことができます。完成後に「頼んでよかったわ〜」という声を聞くとやってよかったと思いますね。
あとは、塗りづらい材料だと特になんですが、平らに塗るのが大変なんですよね。下地の塗り方や抑え方など技術がいるんですよ。そういうのがピシッと決まると嬉しいです。
左官だと、どうしても同じものはできないんですよ。世界にひとつだけの壁というか。模様も色々ありますし、色々な人の要望に応えて材料や塗り方など変えていきますから。塗り方が同じでも、職人ひとりひとりのコテの動かし方やリーチの長さでも違いが出てきます。そういったところが面白いですね。
今後の目標を教えてください
子どもがいるので、どうしても仕事ばかり重視するわけにはいかないじゃないですか。仕事と家庭のバランスを上手くとっていかないといけないですよね。だから仕事は今できることを精いっぱいやりつつ、家のこともしっかりやる、というのが現在の目標です。
≪取材協力≫
有限会社 原田左官工業所
次世代を担う若手職人の育成に力を入れており、様々なトレーニングや研修などを通して成長を後押ししてくれる会社です。
一人前への道は決して楽ではありませんが、やってみたい!と思う方はぜひ問い合わせてみてください。