社労士と行政書士の違いとは
社会保険労務士と行政書士は、どちらも国家資格として一定の知識を有している証となる資格です。比較されやすい2つの資格の特徴や仕事の違いについて解説します。
社会保険労務士の仕事内容
社会保険労務士は、企業の人事や労務管理など、労働や社会保険に関する問題のエキスパートです。事業が健全に発展していくため、また企業の中で働く労働者の福祉を向上させるための相談に応じ、適切なアドバイスをおこないます。社会保険の手続きや労務管理の相談・指導、年金相談など、社労士が担う業務は幅広くあります。
社労士の独占業務
- 労働保険、社会保険の書類作成や提出代行
- 健康保険、雇用保険の給付手続き、雇用関係助成の申請
- 労働社会保険諸法令に従う帳簿書類の作成や賃金台帳の作成請負
- 就業規則や各種労使協定の作成 など
引用 全国社会保険労務士連合会
行政書士の仕事内容
行政書士は、私たちにとって身近な街の法律家として、生活や仕事に関するさまざまな悩み相談に対応します。各省庁や都道府県庁、市役所などに提出する書類を作成したり、代理で手続きをおこなったりするのも大切な業務内容の1つです。1万を超える種類の書類に対応しなければならず、高度な専門知識が必要な職業です。
行政書士の独占業務
- 官公署に提出する書類や権利義務、事実証明に関する書類の作成
- 官公署に提出する書類の提出手続きや許認可などに関する聴聞や弁明の機会を与える手続き、その他の意見陳述のための手続きの代理
- 行政書士が作成した、官公署に提出する書類に係る許認可などに関する行政庁に対する不服申し立ての手続きの代理や書類の作成
- 契約やその他に関する書類の代理作成
- 行政書士が作成できる書類の作成について相談に応ずること など
引用 総務省「行政書士制度」
社労士と行政書士の年収の違い
社労士と行政書士どちらが稼げる?
一般的には、社労士の方が行政書士より年収が高い傾向です。それぞれの収入の特徴を解説します。
社会保険労務士の年収は約780万円
「令和4年賃金構造基本統計調査」の結果によると、社労士の年収は約780万円となっています。労働者全体の平均年収は311万円となっているため、社労士の年収は平均よりも大きく上回ることになります。
引用 厚生労働省「jobtag 社会保険労務士」
行政書士の平均年収は約580万円
対する行政書士の平均年収は約580万円となっています。社労士の年収と比較すると行政書士が低く感じるかもしれませんが、労働者全体の平均年収よりも200万円高くなっています。
社労士の方が年収が高い理由
行政書士よりも社会保険労務士の方が年収が高い理由の1つに、業務を依頼される相手の違いがあります。社労士と行政書士は、法律を扱う仕事という意味では同じ土俵ですが、専門とする分野にそれぞれの違いがあります。
社会保険労務士の仕事は企業内でおこなったり法人から依頼されたものをおこないます。行政書士も企業からの依頼はもちろんありますが、個人からの相談、依頼の方が多い傾向です。依頼料が収入になるため、企業からの依頼が多い社労士の方が収入が高くなると考えられます。
社労士が行政書士よりも安定した収入を得やすいのは、資格面での有利性や業務量の違いが背景にあるのです。
社労士と行政書士の将来性は?
社会保険労務士、行政書士ともに将来性のある職業といえるでしょう。
企業と労働者の間に起こるトラブルは、年々増加傾向にあります。
たとえば、パワーハラスメントやブラック企業問題です。
社労士の主な仕事内容は、企業と労働者の間に起こる問題に介入して、解決をはかることにあります。
そのため、労働環境の改善などが求められている現代社会では、その問題を解決してくれる存在の社労士が、今後ますます必要とされるため、収入の糧になる仕事を確保しやすいといえるでしょう。
行政書士も企業からの依頼もありますが、個人からの依頼が非常に多い傾向です。それだけ困ったり悩んだりしている人が多いということでしょう。相談に乗り、専門知識を有して解決に導くことができる行政書士は、個人にとっての心強い味方です。
社会保険労務士も行政書士も、相談件数を積み重ねて長く活躍できる職業といえるでしょう。
なお、なお、行政書士の将来性については、以下の記事も参考になると思います。
参考 行政書士は「やめとけ」とされる理由×8と、解決策
社労士と行政書士の試験の違い
社会保険労務士と行政書士の国家試験では、行政書士の方が合格率が高い結果となっています。
以下では、社労士と行政書士の過去5年分の合格率データを見比べていきます。
社会保険労務士の過去5年間の試験合格率
受験年度 | 受験者数(人) | 合格者数(人) | 合格率 |
---|---|---|---|
2022年 | 40,633 | 2,134 | 5.3% |
2021年 | 37,306 | 2,937 | 7.9% |
2020年 | 34,845 | 2,237 | 6.4% |
2019年 | 38,428 | 2,525 | 6.6% |
2018年 | 38,427 | 2,413 | 6.3% |
行政書士の過去5年間の試験合格率
受験年度 | 受験者数(人) | 合格者数(人) | 合格率 |
---|---|---|---|
2022年 | 47,850 | 5,802 | 12.13% |
2021年 | 47,870 | 5,353 | 11.18% |
2020年 | 41,681 | 4,470 | 10.72% |
2019年 | 39,812 | 4,571 | 11.48% |
2018年 | 39,105 | 4,968 | 12.70% |
上記を比較してみると、社労士よりも行政書士のほうが、合格率が高い傾向です。
また、試験内容にも社労士と行政書士では、違いがあり、行政書士の試験内容は、大まかに「法令科目」「一般知識を問う課目」になります。
一方、社労士の試験内容は「労働に関する法律や保険知識」「社会保険に関する一般的な常識問題」など、保険の手続きやそれに関係した細かい数字を問う問題が多く、暗記が必要です。
社労士のほうが試験内容はやや難しいですが、毎年試験問題が変化して受験者も違うため、合格率だけを見て諦めてしまうのはもったいないことであるといえます。
ダブルライセンスのメリット3つ
社会保険労務士や行政書士はその肩書き一本でなく、両方のライセンスを持って仕事に活かされている方も多くいます。
ダブルライセンスのメリットとして以下の3つが挙げられます。
- 双方の資格のデメリットを補える
- 転職などの際にアピールできる
- 複数の資格で信用されやすくなる
双方の資格のデメリットを補える
社労士と行政書士がそれぞれ範囲外の部分を、ダブルライセンスなら補うことが可能です。両方を補えることで、業務内容のクオリティを高め、相乗効果を得られる可能性があります。また社労士は行政書士の業務内容とも相性が良く、仕事内容の幅を広げられる点も大きなメリットでしょう。
転職などの際にアピールできる
社労士は独立開業する方も多い職業ですが、企業に勤め社労士として活躍する方ももちろんいます。
国家試験に合格し資格を取得することでキャリアアップを目指し、社労士事務所や法人などに転職を考える方もいるでしょう。その際に、行政書士とのダブルライセンスを保有していることで、資格を単体で有する方との差別化になりアピールすることができます。
複数の資格で信用されやすくなる
仕事を依頼する側も、なるべく多くの業務に対応できる社労士を選ぶことを検討されている場合があります。新しいクライアントに営業をかける際も、単体で資格を取得している人よりも、法律面に関わる業務内容を広くカバーできるため、信用度合いが高くなり、仕事を獲得するときも有利に働くことがあるでしょう。
ダブルライセンスで資格を取得する際は、行政書士を先に勉強することで、法律全般の広い知識を学ぶ土台ができます。
社労士の資格は、行政書士のあとに取れば、知識のベースができているため、通常よりも理解が早まり資格を取得しやすいでしょう。
社労士単体で仕事をする場合よりも、行政書士とダブルライセンスを得ることにより、さらに収入の安定が期待できるでしょう。
まとめ
今回は、社会保険労務士と行政書士の違いについて解説しました。
年収面でいえば、社労士の方が行政書士に比べてより企業からの案件が多く、現代の労働環境問題の改善にかかわる重要な仕事ができるためおすすめです。
また、社労士と行政書士のダブルライセンスにもメリットがあります。
新規のクライアントに営業をおこなう際にも、ダブルライセンスであることで信用される確率が上がり、結果、収入面も安定していく可能性もあります。
今後、社会に必要とされる社労士と、さらに行政書士の資格を取得することで、広く法律関係の分野を担えるプロとして、企業や労働者からの期待に応えることができるでしょう。
▼「行政書士」の資格の詳細などについては、下記リンクよりご確認いただけます。
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