▼もくじ
・中高年のキャリアコンサルティング
├中高年にはどのようなキャリアコンサルティングをしていくべきか
└新たな文化に向き合う、意識の変革が求められる
・企業におけるキャリアコンサルティング
└中小企業におけるキャリアコンサルティングの事例
・キャリアコンサルタント養成講座オンライン化によって生まれた恩恵と課題
・キャリアコンサルタントとして活躍するには
├活躍しているキャリアコンサルタントの共通点
├人に関心を持てる人がキャリアコンサルタントに向いている
└活かせる経験、資格
・キャリアコンサルタントの資格は役に立たない?
・キャリアコンサルタントとして高収入を目指すなら
・キャリアコンサルタント資格取得を目指す方へのメッセージ
中高年のキャリアコンサルティング
中高年にはどのようなキャリアコンサルティングをしていくべきか
鈴木
若い世代の方に対してキャリア教育を推進していくべきであるというお話を伺いました。
逆に、中高年の方に対してもキャリアコンサルティングをおこなっていく重要性は高いのではないかと思います。 こういった世代の方に対して、キャリアコンサルタントはどのようなコンサルティングをおこなうのでしょうか。
深谷理事
まずはキャリアコンサルタントと相談者との間で、コンサルティングに必要な関係性を築く必要があります。
ラポールとも呼ばれる信頼関係を構築することで、初めてキャリアコンサルタントの言うことを聞いてみようと思ってもらえるようになるのです。
その上で自分が何をやっていきたいのか、そのためにはどのような取り組みをすると有利になり得るのかというアドバイスをしていくことになると思います。
鈴木
中高年の相談者になると、キャリアコンサルタントの方が年下であるということも多くなりますから、話を聞いてもらえる関係を築くことは確かに重要ですね。
1つの会社に長く勤めて役職者などになっていると、自分のポジションや考え方が固定化されてしまうこともあるように思います。
そういった方は、「50を過ぎてからどんなことをやっていきたいか」「これからどんな人生を歩みたいか」「何をするのが好きで何をするのが嫌いなのか」ということが分からなくなってくるような気がします。
その場合でも信頼関係を築き、相手の考えに歩み寄っていくべきということでしょうか。
深谷理事
キャリアコンサルタントの役割として、「如何に動機づけをおこなっていくか」が大切であると私は思っています。
例えば定年まで同じ企業に勤めて、その企業に再雇用されることができたとします。
しかしその場合、給料は現役時代と比較して減ってしまう場合が多いと思います。6〜7割程度になるという企業が多いのではないでしょうか。
そうなってから収入をどうしようか、と考え始めたのでは準備することもできませんよね。
キャリアの話をする時は、そういった少し先を展望してお話をします。
目標とする将来像を据え、それを実現するための道筋を作る「バックキャスティング」のような考え方です。
相談者が「定年後も収入に困らない生活をしていきたい」と考えているのであれば、そのためにどんなことをして備えておけばいいのかを一緒に考える、そして相談者自身が自分で考える習慣をつけていくことができるでしょう。
そういった動機を見つけていくことがキャリア形成では重要になってきます。
日々の生活に流されて自分の将来についてあまり考える機会がない、やりたいことが明確でないという状態を脱却し、将来どうなっていたいかというビジョンを持てるように導くのがキャリアコンサルタントの役割だと思います。
新たな文化に向き合う、意識の変革が求められる
鈴木
先ほど、中高年になると新しい働き方を受け入れるのが難しい方も少なくないというお話がありました。
そんな40代以上の世代でも、キャリアに対する意識を変えていくことは可能なのでしょうか。
深谷理事
変わりゆく社会の中で、その変化についていけない個人に対して背中を押して差し上げることは、キャリアコンサルタントの機能の一つであると考えています。
どうしても変えられない意識もあると思いますが、他者からの影響で変容する可能性はどんな方も持っているのではないでしょうか。
当法人で働いている中には、77歳の方もいらっしゃいます。現在の最高齢ですね。
その年齢でも活躍している人は、新しいテーマに対しても自分なりに取り組んでいっているという印象があります。
最初は失敗することもありますが、それを経て自分でできるようになる。新しいものに対して自分を調節していこうという姿勢があると感じます。
そういった気持ちを持てるかどうかというのは、個人の意識の持ちようではないでしょうか。
だからこそ、いま時代についていけないとお考えの中高年の方も、今後変わっていける可能性は十分にあるのではないかと考えています。
企業におけるキャリアコンサルティング
鈴木
私も会社を経営する立場として非常に気になるところですが、企業においてキャリアコンサルティングはどのように活用されるのでしょうか。
働き方改革という言葉は聞いても、社員に対してキャリアに関する意識づけをおこなっていく必要があると考えていない企業もあるのではないかと思います。
具体的には企業からどのような依頼があるのでしょうか。
深谷理事 一部の上場企業などでは、企業におけるキャリアコンサルティングはポピュラーになってきていると思います。
そういった企業は定年を迎えた社員に対する制度・待遇も整っていますから、定年の数年前にはキャリアコンサルタントによる研修をおこなっています。 定年後を見据えたキャリアプランやマネープランに関する教育を実施することが主ですね。
ただ、こういった企業は一部です。 中小企業になっているとそういったことを実施している余裕がないというところも多いでしょう。
しかし、企業においてキャリアコンサルティングの恩恵は無視できないものだと考えています。 社員一人ひとりが主体性を持って働けるようになれば、企業の生産性は自ずと上がっていくでしょう。
経営者側が自分の組織をどのように成長させ、生き延びさせていくかを考えるなかで、社員の主体性を伸ばしていくということは経営戦略の一部にすべきだと思います。
ただ単にそれぞれが個人のキャリアを考えていけば良いという考えでは、成果が上がらないこともあるのではないでしょうか。
中小企業におけるキャリアコンサルティングの事例
鈴木
確かに企業側の生産性を上げるという意味で、中小企業でもキャリアコンサルティングを導入する必要がありそうです。
実際に実施している企業はあるのでしょうか。
深谷理事
厚生労働省が表彰している「グッドキャリア企業アワード」という賞があるのですが、こちらで紹介されているなかにも中小企業はあります。
こういった企業が、キャリアコンサルティングの導入に成功している事例といえるのではないでしょうか。
鈴木
素晴らしい取り組みですね。
こういった事例を参考にすれば、キャリアコンサルタントが支援をおこなう領域も広がりそうです。
キャリアコンサルタント養成講座オンライン化によって生まれた恩恵と課題
鈴木
少し別の角度からのご質問です。
新型コロナウイルス感染拡大の影響でオンライン教育が一気に普及しました。
キャリアコンサルタント養成講座もオンラインでの受講が可能になりましたが、これによって変わったことや良くなったことはありますか。
深谷理事
対面講義を開講するためには一定面積の教室が必要になります。そのため、以前は人口規模の小さな地方都市などでの開講が難しいという課題がありました。
オンライン化によってこの課題が解消され、受講可能な環境があれば住んでいる土地に左右されずに受講することができるようになりました。
この利便性は他には代えがたいメリットだと思います。
例えば東京で開講している講座にオンラインで秋田から参加する方がいらっしゃったり、こういったことができるようになったことは大きな恩恵といえるでしょう。
鈴木
確かにそうですね。
逆にオンライン化によって生まれた問題や課題はありますか。
深谷理事
講義は朝から夕方まで1日中おこなう場合もありますから、そういった時にオンラインでは集中力を持たせるのが難しくなりやすいという点があります。
また、キャリアコンサルタント養成講座を通した学習は、単に資格取得のみを目的としたものではありません。
資格を取った後にキャリアコンサルタントとして活動していく中で、一緒に学んだ仲間とのネットワークは大変貴重なものとなります。
オンラインの場合、対面で関わる場合と比較すると深いコミュニケーションを取りづらいこともあるようで、仲間との関係性構築という面では改善すべき課題を感じています。
鈴木 なるほど。オンライン受講の普及によって地方にお住いの方などが受講しやすくなったという大きな利点がある一方で、共に同じ教室で学ぶほうが人とのネットワークを作りやすいという面もあるということですね。