そもそも社労士とは?
社労士は人事・労務、社会保険のスペシャリストです。実際の仕事内容や年収、働き方について見ていきましょう。
社労士の仕事内容
社労士の仕事は、主に労務に関する書類の作成や手続き、相談に特化しています。
中でも「労働保険の申請業務と手続き代行」、労働者名簿や賃金台帳、就業規則・各種労使協定など「労務に関する帳簿作成」の2つは、独占業務として社労士の資格を持っている人のみに許された仕事です。
また、労務に関するコンサルティング業も上記と合わせて社労士の三大業務のひとつです。
企業の人事・労務をサポートするのが使命であり、具体的には法改正時の相談や手続き代行、社会保険業務の申請手続き、年金についての相談、就業規則や雇用規則等人に関する部分の相談にのります。
特定社会保険労務士の資格を持っている場合、労働における紛争の相談に乗ることも大切な業務です。
社労士の年収
厚生労働省の調査によると、社労士の年収は約947.6万です(参考:職業情報提供サイトjobtagより)
平均年収に差し掛かるのは40歳になる頃であり、20代の給与は400〜600万辺りを推移しています。
また社労士事務所や一般企業に雇用されて働く場合、給与は一般企業の給与水準となるため、もう少し低くなると考えられます。都道府県によっても大きく平均年収は異なり、都市部は高額の傾向にあります。独立開業した社労士は年収数百万の事務所から、数億の事務所までピンキリであり、高収入の事務所や都市部の社労士事務所が全体的に平均年収の底上げを担っていると推測されるので、実際にはもう少し下回るでしょう。
社労士の働き方
社労士は「独立開業型」「勤務型」の2つのスタイルから働き方を選べます。
どこかに雇われて働く場合、社労士の就職先は主に社労士事務所や社労士法人です。また一般企業で働く場合は人事・総務などの部署に務めることが多いようです。
もちろん自分で事務所を立ち上げ、独立開業も可能であり、自分の適性ややりたいことに合わせて自由に働き方を選ぶことができます。
社労士に向いている人の特徴
では、具体的に社労士に向いている人というのはどういった人なのでしょうか?幾つか例を挙げながら、必要なスキルと合わせて解説します。
数字に苦手意識がない人
社労士の仕事には、細かい計算業務が数多くあります。
人に関わる業務を行うことから、給与計算や勤怠管理、月々の健康保険料の計算や年金支給額の計算など、とにかく計算する場面が数多くあります。その上これらの業務は働く従業員や企業に大きく関係するお金の話なので、正確に行う必要があります。
そのため、細かな計算をこなせるスキルは必要不可欠になり、数字に苦手意識がない人が向いていると言えるでしょう。
縁の下の力持ちになれる人
人事や労務管理という仕事は、陰日向に働く従業員の仕事環境を支える仕事です。
企業によって花形の部署は様々に異なりますが、社労士が関わる人事労務部門というのは企業の主要戦力を支える縁の下の力持ちのようなポジションと言えます。企業で働いている場合でも、独立して顧客として関わっている場合にも同様に、担当する領域はあくまで働く従業員を支えるポジションであり、同時に従業員が安心して働くために必要不可欠な役割をになっています。
そういった役回りを不満に思わず責任感を持って取り組める人、従業員を支え、役に立つことを好意的に受け取れる人が社労士に向いていると言えます。
労務に興味がある人
社労士は労務の専門家として、勤務している企業や顧問契約している企業の労働・雇用問題、労務管理等に深く関わることになります。そのため労務に興味関心がないと、仕事を苦痛に感じてしまうかもしれません。
また労務や人に関する法律は日々移り変わり、新しい法令もどんどん施行されます。試験に受かったら終わり、ではなく常に知識のアップデートを行っていかねばなりませんので、勉強し続ける姿勢が必要になります。
労働や雇用に関する法律、人に関わる業務に関して興味がないと、興味のない分野を勉強し続けることになるため苦痛に感じてしまう可能性があります。
人とコミュニケーションを取るのが好きな人
社労士のところにはハラスメントの相談や就業規定の相談など、様々な相談が舞い込みます。細かい作業はありますが、実のところ社労士三大業務の一つである相談業務は、人と関わる仕事です。
前述したデリケートな話題を取り扱うこともあるため、人の話をよく聞き、理解できないところは質問して内容を促すなど、ある程度のコミュニケーション力が必要です。
そのため人とコミュニケーションを取るのが好きな人が向いていると言えるでしょう。
現在人事労務部門に勤務中の人
もちろん現在人事労務部門に勤務中の方も社労士はお勧めの資格です。元から親和性のある業務を行っているため、試験勉強もゼロから勉強するよりもぐんと理解度があがるに違いありません。
独立を考えていなかったとしても、社労士の資格を取得することで現在の部署で任される仕事の範囲が広がり、役職や給与のアップにつながる可能性があります。
社労士に向いていない人の特徴
では反対に社労士に向いていない人はどのような人でしょうか。幾つか例を挙げてご説明します。
細かい作業が苦手な人
一つ目は、細かい作業が苦手な人です。
社労士の仕事である人事・労務・社会保険の仕事というのは、非常に細かい確認が必要になる作業です。給与計算一つとっても、雇用保険や社会保険、所得税・住民税など様々な計算が必要になります。特に顧客としていろんな会社に関わる場合、会社によって人事・給与規定は大きく異なるため、会社に合わせた運用をしなければなりません。
そのため細かい計算や、法律の確認などが苦になる人には向いていないと言えます。
常に勉強し続けることができない人
ヒトに関わる法律は改訂がかかることも頻繁で、常に新しい法律のアップデートが必要です。例えば昨今であれば軽減税率の適用や運用は、急ピッチでキャッチアップし導入しなければならないものでした。インボイスの運用も財務だけの問題だけではなく、人事労務でも運用面で検討しなければならない問題があり無関係ではありません。
このように常に変化する法律に合わせて、顧客の運用の相談にのることが社労士の業務であり、勉強せずに試験合格時の知識だけで乗り切ることは難しいでしょう。
企業の最前線に立って仕事がしたい人
前述した通り、人事労務部というのは会社における縁の下の力持ちです。従業員が安心して働くために非常に重要なポジションを担いますが、花形ポジションというわけではありません。
企業の最前線に立って企業のビジョンを実現したい、企業の主幹となる分野において華々しい成果を上げたい、そういった思考の人にはあまり向いていないでしょう。最前線に立つ人はもちろん社会にとっても企業にとっても大切な人材です。自分に向いているポジションを適切に見極める冷静さと勇気が必要です。
社労士試験の合格率や難易度
社労士試験は、「学歴」「実務経験」「厚生労働大臣の認めた国家試験合格」いずれかの受験資格が必要となります。
ここでは試験内容や合格率、勉強時間について解説します。
参照元:社会保険労務士試験の公式サイト
試験内容
社労士試験は科目選択制。必須科目2科目と、選択科目3科目の計5科目からなります。「選択式試験」「択一式試験」の2種類の形式で行われ、この2つに合格する必要があります。試験の概要は以下の通りです。
試験の種類 | 時間 | 満点 | 問題数 | 合格基準 |
---|---|---|---|---|
選択式試験 | 80分 | 40点 | 40問 | 合計28点以上かつ各科目3点以上 |
択一式試験 | 210分 | 70点 | 70問 | 合計49点以上かつ各科目4点以上 |
試験科目や配点は以下の通りです。
試験科目 | 選択式 計8科目(配点) | 択一式 計7科目(配点) |
---|---|---|
労働基準法及び労働安全衛生法 | 1問(5点) | 10問(10点) |
労働者災害補償保険法 | 1問(5点) | 10問(10点) |
(労働保険の保険料の徴収等に関する法律を含む。) | ||
雇用保険法 | 1問(5点) | 10問(10点) |
(労働保険の保険料の徴収等に関する法律を含む。) | ||
労務管理その他の労働に関する一般常識 | 1問(5点) | 10問(10点) |
社会保険に関する一般常識 | 1問(5点) | |
1問(5点) | 10問(10点) | |
厚生年金保険法 | 1問(5点) | 10問(10点) |
国民年金法 | 1問(5点) | 10問(10点) |
合計 | 8問(40点) | 70問(70点) |
合格率
社労士の合格率は5%〜7%台と、難易度は高めです。
受験資格が設けられていて尚この数値なので、しっかりと勉強する必要があります。また社労士試験では科目ごとに合格基準点が設けられており、1科目でも基準を下回ると不合格になってしまうのも、合格率の低さの特徴でしょう。
税理士試験と異なり科目合格の制度がないので、1科目でも落とせば翌年はまた全科目を受けなければいけません。
勉強時間
社労士試験に受かるために必要な勉強時間の目安は、一般的に1,000時間といわれています。
毎日3時間程度勉強したとして1年かかる計算です。
ただしこれは独学で勉強を進めた場合です。通信講座や通学講座を受講する場合、勉強に必要な時間は約700時間と言われています。
独学と違い、わからないことがあれば講師に質問できる環境も整っているので、どのように勉強するのが自分にとって1番適切かを考え、自分に合った方法を選ぶと良いでしょう。
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