宅建士の法定講習とは?
「法定講習」とは、宅建士が免許を更新する際に受講が必要になる講習を指します。
宅建業法第22条の2第2項で下記のように定められています。
(宅地建物取引士証の交付等)
第二十二条の二
2.宅地建物取引士証の交付を受けようとする者は、登録をしている都道府県知事が国土交通省令の定めるところにより指定する講習で交付の申請前六月以内に行われるものを受講しなければならない。ただし、試験に合格した日から一年以内に宅地建物取引士証の交付を受けようとする者又は第五項に規定する宅地建物取引士証の交付を受けようとする者については、この限りでない。
3.宅地建物取引士証(第五項の規定により交付された宅地建物取引士証を除く。)の有効期間は、五年とする。
(引用:e-Gov法令検索『宅地建物取引業法(昭和二十七年法律第百七十六号)』より)
宅建士証とは?
宅建士証とは、宅建士として働くために必要な免許のことで、正式名称を「宅地建物取引士証」といいます。
宅地建物取引士資格試験に合格すれば宅建士の資格を取得できますが、業務を行うにはさらに宅建士証が必要になります。都道府県知事の登録を受けた人は、登録している都道府県知事に申請することで、宅地建物取引士証の交付を受けられます。
たとえ試験に合格しても宅建士証がなければ、不動産業界などで仕事を行えません。たとえば不動産の重要事項の説明は宅建士の独占業務にあたりますが、説明の際には宅建士証の提示を行わなければならず、これに違反した場合は10万円以下の過料が課せられます。
宅建士証の更新は五年に一度
宅建士として働くために必要な免許「宅地建物取引士証」の有効期限は発行から5年です。そのため5年に1度法定講習を受講し、更新する必要があります。
更新は、有効期限の満了する6ヶ月前の翌日以降に開催される講習から受講できます。
法定講習の対象者
法定講習は、宅建士として働く方が受講しなければならない講習です。具体的には、次のいずれかの方が対象者です。
- 宅地建物取引士資格試験合格後1年を経過している
- 宅建士証の有効期間を更新したい
- 宅建士証の有効期間が切れている方
いずれの場合も、宅地建物取引業に従事しないのであれば、交付する必要はありません。宅建士証の交付を受けなくても、宅建士としての資格登録は有効です。宅建士としての仕事をする予定がないという方は、更新料もかかることから、いざ業務をするとなった時に申請されることをお勧めします。
宅建士証を更新しなかったら?
宅建士証を更新しない場合、業務として宅地建物取引業を行うことはできません。
宅地建物取引士は、不動産取引の当事者に重要事項説明を行なう際、説明相手に対し、宅地建物取引士証を必ず提示しなければならないと『宅地建物取引業法第35条』で定められています。また、不動産取引の当事者から請求があったときに関しても、宅地建物取引士証を提示しなければなりません(宅地建物取引業法第22条の4)。
ただ、前項にも記載した通り宅建士証の交付を受けなくても、宅建士としての資格登録は有効です。もしあなたが転職などをして、宅建士証の必要ない仕事についた場合は更新しなくても問題はありません。
法定講習の概要
次に具体的な法定講習の概要について説明します。
受講場所
法定講習は日本全国で行われています。
各都道府県の宅地建物取引業協会のホームページから詳しい場所が確認できますので、開催日と合わせて自身が受講したい都道府県の宅地建物取引業協会のホームページをチェックしてください。
また、自身が登録している宅地建物取引業協会とは異なる都道府県で法定講習を受けたい場合は、登録している都道府県に必ず確認しましょう。登録している都道府県によってルールが異なり、登録地外での受講ができない場合もあります。
現在はWebでの受講も可能です。こちらは後述します。
費用
法定講習に必要な費用は16,500円で、内訳は以下の通りです。
法定講習の受講料:12,000円
宅地建物取引士証の交付手数料:4,500円
法定講習の受講費用と、宅建士証の交付費用が別途かかりますので、合計16,500円を現金で支払えるよう、用意していきましょう。また交付された宅建士証の郵送を希望する場合は、切手代がかかりますので、少し余分に持っていきましょう。
必要な持ち物
申し込み時に必要な持ち物は以下の通りです。
- 宅地建物取引士証交付申請書
- 証明写真×3枚(交付申請書用、取引士証用、受講会場用)
- 現金16.500円 (法定講習の受講料、宅建士証の交付手数料)
- 宅地建物取引士証(更新の方のみ)
また郵送で提出する場合や、Webで申し込む場合によっても提出書類が若干変わります。実際には自分の受講する都道府県の案内を確認して、持ち物を準備するようにしましょう。
講習科目
法定講習で受講する科目は下記の4科目となります。
- 改正法令の主要な改正点と実務上の留意事項
- 紛争事例と関係法令及び実務上の留意事項
- 宅地建物取引士の使命と役割
- 改正税制の主要な改正点と紛争事例及び実務上の留意事項
スケジュール
法定講習は終日の講習です。詳しいスケジュールは下記の通りですが、都道府県によって異なる場合もあるので、スケジュールが知りたい方は事前に受講する都道府県の宅地建物取引業協会に確認しましょう。
内容 | 時間 | スケジュール |
---|---|---|
受付開始 | 9:30~ | 受講票の確認・現在の宅建士証の回収 |
事務説明 | 9:55~ | 注意事項等の事前説明 |
講習(午前) | 10:00~ 12:40 |
宅地建物取引士の使命と役割 |
法令改正の主要な改正点と実務上の留意事項 | ||
昼休み | 12:40~ 13:30 |
|
講習(午後) | 13:30~ 17:10 |
紛争事例と関係法令および実務上の留意事項 |
改正税制の主要な改正点と紛争事例および実務上の留意事項 | ||
宅地建物取引士証交付 | 17:10~ | 新しい宅建士証の交付 |
また、こちらは会場で受講する際のスケジュールです。Web受講の場合は大きく変わりますので、事前に確認しましょう。
法定講習受講の流れ
では宅建士証の更新はどのような手順で行うのでしょうか。法定講習受講までの流れをご説明します。
宅建士証の更新案内が届く
まず宅建士証の更新時期が近づくと、各都道府県の宅地建物取引業協会から案内ハガキが届きます。5年に1度であれば忘れてしまうのではないか、と不安な方もご安心ください。
時期は大体、宅建士証の有効期限の7ヵ月ほど前です。登録先の住所に届くため、住所が変わったら登録してある都道府県の協会に新住所を届け出るようにしましょう。
事前予約を行う
法定講習は予約制のため、ハガキが届いたら事前に予約を行いましょう。予約方法は郵送や窓口、また現在ではWebでの予約を行っている団体も多く見られます。いずれでも各都道府県の宅地建物取引業協会のホームページで確認の上、都合のいい方法で申し込みましょう。
また法定講習の予約は先着順です。半年もあるので余裕だとギリギリまで放置していたら、講習が満席で受けれない、ということになりかねませんので、余裕を持って申し込むようにしましょう。
法定講習を受講する
予約に合わせて講習を受けます。法定講習は終日となりますので、予定を調整しておきましょう。
宅建士証の更新
法定講習が終わったら、即日で宅建士証を受け取ることができます。忘れずに受け取って、持ち帰りましょう。またやむを得ない理由で当日受け取れない場合は、郵送ができるか相談しましょう。
法定講習はWEBでも受講可能
近年、法定講習はWebでの受講が可能になりました。
今までであれば会場まで行って終日講義を受けなければいけませんでしたが、Web講習の場合自身の都合のいい時間に決められた動画を視聴し、効果測定に合格することで宅建士証を更新できます。
効果測定は30問の〇×形式で、7割の得点率(21問以上)で合格となります。特典が7割未満の場合、講習受講期間内であればやり直すことができます。
宅建士証の交付については窓口で受け取るか、郵送で受け取るかの二択になります。
いずれも登録している都道府県の宅地建物取引業協会のホームページで確認できますので、Web受講を申し込む方は事前に申し込みから宅建士証交付までの流れをきちんとチェックしましょう。
その他の講習について
宅建士には、法定講習以外にも「登録講習」と「登録実務車講習」の二つの講習があります。名前が似ていて紛らわしいのですが、それぞれ用途が全く異なる講習です。順番に解説します。
登録講習
登録講習とは、まだ宅建試験に合格していない且つ現在宅地建物取引業に従事している場合に受講できる講習です。登録講習を受けることで、宅建試験全50問の試験の内5問(46~50問目)が免除されます。
正確にいうと講習を受講することで、その後「登録講習修了試験」が受けられます。登録講習終了試験に合格することで、修了試験合格後3年以内に行われる試験で5問免除が受けられるようになります。受講中の方は免除が受けられないため、免除を受けたい場合は必ず講習受講終了後、試験に合格の上、宅建士試験に申し込む必要があります。
また講習の受講には、勤務先の宅建業者が発行した宅建業従業者証明書が必要です。
登録実務講習
通常、宅建士として登録するには2年以上の実務経験が必要です。登録実務講習とは、2年以上の実務経験がない合格者が宅建士として働く場合に受講する講習です。
宅建試験に合格しても、宅地建物取引に関する実務業務が2年未満の場合、宅建士として働くには登録実務講習を必ず受講しなければなりません。
宅建士の登録実務講習に必要な時間は50時間です。登録実務講習を受講することが実務経験2年の代わりとなるのです。講習を受講し、修了試験に合格することで宅建士の登録ができ、宅地建物取引士証の交付を受けることができます。