宅建試験の権利関係とは?
宅建試験の「権利関係」では、契約に関する権利や義務など、複数の法律に関する問題が中心となります。宅建試験の問題は全50問ですが、この内14問が権利関係から出題されます。全問のおよそ3割です。
では、具体的に内容を解説します。
民法
まず宅建試験で一番大きな範囲を占めるのが「民法」です。
民法は私たちの身近にある契約について基本的なルールを定めた法律です。他者との売買・賃貸借などに関する契約が主で、権利関係の問題14問中10問が民法、というとても重要な法律です。
宅建士は不動産の賃貸の契約を業務としますから、賃貸借に関する契約のルールを定めた民法についてはしっかりと把握しておく必要があります。
借地借家法
名前の通り「土地を借りる」「家を借りる」際のルールを定めた法律を「借地借家法」といいます。
民法の次に出題数が多く、2問が例年出題されています。借地から1問、借家から1問出題されるようです。
区分所有法
「区分所有法」は、分譲マンションなどの権利関係に関するルールを定めた法律です。正式名称は「建物の区分所有等に関する法律」といい、通称「マンション法」と呼ばれています。
分譲マンションは一棟の建物の中を部屋に区分して、複数の方が所有しています。後々トラブルが起こらないように、区分所有法では、マンションの専有部分や共有部分に対するルールや細かい規則を定めています。
区分所有法からは例年1問出題されます。
不動産登記法
「不動産登記法」は不動産の登記制度に関するルールを定めた法律です。
不動産登記には、土地や建物について誰が権利を持っているか、以前の持ち主は誰かなどが明確に記載されています。登記情報は、誰でも手数料を納付すれば交付を請求できます。不動産登記を公開することによって、不動産の権利を透明化し、安全に取引ができるようになるのですね。
不動産登記法では、当期に掲載される情報や登記の申請義務、申請者などの規則が定められています。例年不動産登記法からは1問が出題されます。
権利関係の出題概要
権利関係の具体的な出題概要をまとめます。
問題数
宅建試験の問題数は全部で50問であり、内訳は下記の通りです。権利関係の出題は14問になります。
試験科目 | 問題数 |
---|---|
・宅建業法 | 20問 |
・法令上の制限 | 8問 |
・権利関係 | 14問 |
・税金その他 | 8問 |
最近の宅建試験は7割でもギリギリ合格ラインに届かない場合があるので、全問の約3割を占める権利関係の問題は、捨ててはいけない分野なのは間違いありません。
出題範囲
出題範囲は下記の通り、権利関係14問の内訳は下記となります。
権利関係の出題内容 | 問題数 | |
---|---|---|
・民法 | 身近にある契約について基本的なルールを定めた法律 | 10問 |
・借地借家法 | 「土地を借りる」「家を借りる」際のルールを定めた法律 | 2問 |
・区分所有法 | 分譲マンションなどの権利関係に関するルールを定めた法律 | 1問 |
・不動産登記法 | 不動産の登記制度に関するルールを定めた法律 | 1問 |
権利関係は宅建の受験者にも苦手な方が多い科目ですので、他の科目でカバーしたとして、問題数14問のうち8〜9問正解を目指せれば合格範囲内ではないでしょうか。
出題の特徴
「権利関係」では事例問題が出題されることが多いため、ただ法律を丸暗記するだけでは正解できません。覚えた法律に基づいて、起こった出来事に対してどのように適用するのか、法的な考え方を身につける必要があります。
一番出題される問題数が多いのは民法ですが、例年出題される範囲は偏っているので、出題される可能性が高い項目を重点的に勉強するのも大切です。
権利関係の勉強時間
宅建試験に合格するために必要な勉強時間は一般的に、300〜400時間だといわれています。ただし受験者が不動産や法律系の知識を持っていたり、同種の業界経験がある場合は必要な勉強時間はより短縮されますし、逆に初心者が受験する場合は400〜600時間必要とも言われています。
その中で「権利関係」に必要な勉強時間はおよそ90時間と言われています。先に記載した通り、権利関係の問題は事例問題が多く、法律の基本を覚えるために40時間、その後過去問題などで実戦に落とし込むための勉強時間が50時間ほどを目安にすると良いでしょう。
単純計算ですが、初心者の場合は少なくとも120時間、勉強時間として見込んでおく必要があります。
権利関係の勉強法
では権利関係は具体的にどのように勉強していくのが良いでしょうか。各設問ごとに解説します。
民法
民法は権利関係の14問中10問と大部分を占める問題なので、必修の分野です。範囲が広く苦手意識を持ってしまいがちかもしれませんが、宅建試験の民法の出題範囲には実は偏りがあります。
出題範囲が高い部分は以下の通りです。
- 意思表示
- 制限行為能力者
- 代理
- 時効
- 不法行為
- 不動産物権変動
- 相続
- 賃貸借
- 抵当権、根抵当権
初心者の方はこれらに絞って学習を行うのも良いかもしれません。法律が頭に入ってきたら、事例問題などの実践的な問題に数多く取り組むことで、法律の考え方が身についてきます。
民法の問題を安定的に得点できるようになってくれば、権利関係全体の得点率も安定してくるでしょう。
また、民法は他の項目・分野における基礎的な考え方となる法律なので、実際に宅建士になってからも重要な内容です。試験勉強のためだけではなく、宅建士になってからのためにもしっかり勉強しておくことが大切です。
借地借家法
借地借家法は、例年「借地」の分野から1問、「借地」の分野から1問出題されます。
「借地」と「借家」についてどちらが分かりやすいかは人それぞれですが、「借地」の方が理解しやすい方が多いようです。
借地法に関しては『借地法が適用されるのか』『民法が適用されるのか』が出題のポイントになりやすいので、しっかりチェックして問題をこなしておきましょう。
区分所有法
区分所有法は分譲マンションにかかるルールに関する問題です。
例年1問しか出題されないので、十分な時間が取れない場合は割り切って過去問を重点に解く!という方法でも問題ありません。また「規約」や「集会」に関するルールは、宅建試験でもよく出題されています。
不動産登記法
不動産登記法は不動産の登記にかかるルールに関する問題です。
区分所有法と同様、例年1問しか出題されませんので、こちらも割り切って過去問を重点に解く方法で問題ありません。
不動産登記簿には、「土地登記簿」と「建物登記簿」があり、土地、建物ともに「表題部」と「権利部」から成り立っています。この二つの違いをしっかり確認しながら勉強しましょう。
権利関係の勉強のコツ
ここでは具体的な権利関係の勉強のコツをご紹介します。
民法を重点的に学習する
権利関係14問の内、10問を占めるのが民法です。民法の不出来によって権利関係の得点率が決まると言っても過言ではないので、権利関係の勉強の際は民法を中心に勉強しましょう。
また他の法律でも民法を基準にしていることは多く『民法ではこうだが、この場合はこちらの法を優先する』などの記載もあるので、権利関係を勉強する時には基本として重点的に勉強しましょう。
丸暗記しようとしない
権利関係の問題は、事例問題が多く出題されます。法律そのものを問われるのではなく、ある状況についてその法律がどのように適用されるかが問われるのです。
そのため法律を丸暗記したとしても、使えなければ正答率が上がりません。同じように過去問を丸暗記したとしても、全く同じ事例が出てくる可能性は非常に低いので、できる限り問題数をこなして、法律を使うことに慣れていくのが大切です。
図を書いて視覚的に理解する
権利関係の問題は、問題文が長いのが特徴です。読んでいる途中で関係性がよく分からなくなってきたり、読み間違えたまま解いてしまったりすることも往々に起こります。
そんな時は、自分の分かりやすいように図を書いてみることをおすすめします。
- 一文一文をしっかりと分解し、図に落とし込む
- 文の主語(誰が)と目的語(何を)に注意する
図を書く時には、ぜひこの2点に注意してみてください。
面倒くさくなって文を飛ばしてしまいがちだったり、主語や目的語を履き違えがちだな、という方はさらに一文を文節で区切っていく方法も、問題文を理解する上では良い方法です。
例:誰が/何を/どうした