マンション管理士と管理業務主任者の試験難易度
マンション管理士の試験難易度
マンション管理士試験の指定試験指定機関である公益財団法人マンション管理センターによると、
・令和元年度のマンション管理士試験の合格率:8.2%
・合格基準点:37点
・出題形式:50問4択マークシート形式
・平均合格率:約8%
・合格基準:正解率75%以上
上記の合格率の数値からも難易度の高い試験であることがお分かりいただけるのではないでしょうか。
試験内容は、以下の4区分になります。
(1)「マンション管理に関する法令及び実務に関すること」
(2)「管理組合の運営の円滑化に関すること」
(3)「マンションの建物及び附属施設の構造及び設備に関すること」
(4)「マンションの管理の適正化推進に関する法律に関すること」
法令に関しては、建築基準法や都市計画法、消防法など建築に関するもののほか、建物の区分所有等に関する法律、不動産登記、民法とかなり範囲が広くなっています。
管理組合の運営に関しては、管理組合がどのような組織であるのか、また、運営にかかわる会計知識だけでなく、苦情処理や管理組合の訴訟と判例といった内容が出題されます。
建築関係の法令や「マンションの建物及び附属施設の構造及び設備に関すること」が出題されることから、建築に関する知識がかなり必要となってくることや法令に関しても過去の判例まで理解が必要であるため、建築士的な部分と法律家的部分の両方を問われているとお考えの方もいらっしゃるかもしれません。
広範囲にわたる試験範囲の中から出題されるのはたった50問ですが、広く・くまなく勉強して備えておく必要があるといえます。
平均合格率8%という数字は、『マンション管理士』の試験に合格する難しさを表しているのかもしれません。
管理業務主任者の試験難易度
管理業務主任者の指定試験機関である一般社団法人マンション管理業協会が公表しているデータによると、
・令和元年度の試験合格率:23.2%
・過去5年間の平均:約22%
・出題形式:4択50問マークシート形式
・合格基準:正解率70%程度
合格基準はその年によって違いがあるようですが、50問中35問正解で合格となるため、70%くらいが目安となるではないでしょうか。
合格率や合格基準をみてみると、マンション管理士よりは難易度が低めといえますが、国家資格としての難易度は特別高くも低くもないようです。
試験範囲は、以下の通りです。
(1)「管理事務の委託契約に関すること」
(2)「管理組合の会計と収入の調定並びに出納に関すること」
(3)「建物及び附属施設の維持又は修繕に関する企画又は実施の調整に関すること」
(4)「マンションの管理適正化の推進に関する法律のこと」
(5)「前述以外の管理規約や集会など管理事務の実施に関すること」
上記のようになっています。
試験範囲が広いといえば広いのですが、マンション管理士と異なり、契約や会計知識といったところが細かめになっています。
この部分で的を絞りやすく、得点につなげやすいのかもしれません。
試験範囲のところを見ていただくと、マンション管理士試験と重なる分野があります。
実は、この両者の試験には科目免除の制度があり、マンション管理士試験では管理業務主任者合格者が、管理業務主任者試験ではマンション管理合格者がそれぞれ「マンション管理適正化の推進に関する法律のこと」で科目免除となります。
難易度の低い管理業務主任者試験を取得してから、マンション管理士試験に挑戦される方もいらっしゃるようです。
マンション管理士と管理業務主任者の業務内容の違いは?
マンション管理士の業務内容
マンション管理士の国家試験案内には、マンション管理士について「専門的知識をもって、管理組合の運営、建物構造上の技術的問題等マンションの管理に関して、管理組合の管理者等又はマンションの区分所有者等の相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うことを業務とします」と説明されています。
主にマンション管理組合や分譲マンション所有者のコンサルティング業務がマンション管理士の業務です。
そもそも戸建てと違い、マンションの場合は共有部分も多く修繕も個人の判断で行うことはできません。
修繕に関する問題や共有の生活の場として住民間のペットやゴミの問題といったトラブルが生じる可能性があるため、その相談・意志決定の場として管理組合が設けられていますが、住民同士の輪番制で組合の監事を行うケースが多く専門家がいるわけではありません。
そのために必要なのがマンション管理士です。
個人でマンション管理組合を顧客に持ち、業務を行う方もいらっしゃいますが、不動産管理会社に所属し業務を行う方の方が多いようです。
マンション管理士の資格を有していない場合、「マンション管理士」を名乗ることはできません。
ですが、相談業務に関しては相応の知識を有していれば、マンション管理士の資格がなくても業務を行うことは可能です。
管理業務主任者の業務内容
マンション管理業協会のホームぺージによると、
「『管理業務主任者』とは、マンション管理業者が管理組合等に対して管理委託契約に関する重要事項の説明や管理事務報告を行う際に必要な国家資格者」とされています。
具体的には、マンションのオーナーと分譲マンションの区分所有者との橋渡し的な役割を行うのが管理業務主任者の主な業務になります。
管理業務主任者は、マンションの「フロントマン」などとも形容されることがあるようです。
具体的には、契約時の説明以外に、規約作成や管理組合費の管理や修繕の際の会計報告、管理組合の理事会や総会の運営サポートなどがあります。
場合によってはマンションオーナーと住民だけでなく、修繕に関わる業者との連絡役になることもあります。マンション住民が安心して生活するための裏方的存在と表現される方もいらっしゃいます。
この管理業務主任者ですが、「マンション管理の適正化の推進に関する法律」第56条において、
「マンション管理事業者は委託を受けた管理組合30組合に対し1人以上の割合で管理業務主任者を置かなければならない」と規定されています。
法的に業務が保障されているため、管理業務主任者は業務独占資格であるといえるでしょう。
管理業務主任者は、マンション管理業者、不動産業者に所属し、仕事を行っているケースがほとんどであるといえます。
まとめ
同じ法律から生まれた資格であるといっても、マンション管理士と管理業務主任者の両資格には大きな違いがあることをおわかりいただけたのではないでしょうか。
マンション管理士は名称独占であって業務独占ではありませんが、独立開業が可能です。
これに対し、管理業務主任者は業務独占ですが、独立開業にはつながらない資格であるともいえます。
両資格の違いを理解された上で、マンション管理士の資格取得を目指されると良いでしょう。