マンション管理士と宅建士(宅地建物取引士)の違いについて
(1)仕事内容の違い
【管理組合の運営と会計管理】
マンションの維持管理を行うために、総会や理事会などを運営する必要があります。また、マンションの維持管理のためには管理費や修繕積立金などが必要となり、それらを管理しなくてはいけません。
【トラブルの解決】
例えば、「足音やドアの開閉音などの騒音に悩んでいる」「駐車禁止のところに車をとめる」「共有部分に自転車やエアコンの室外機などの私物を放置する」などの住民間同時のトラブルを解決します。また、清掃会社や管理会社などとの問題が起きた場合の解決も行います。
【マンションの修繕工事】
一般的に、約12年~15年の周期でマンションは大規模修繕を行うことになります。また、自然災害などの影響により、イレギュラー的な修繕も必要になる場合もあるでしょう。
【管理会社の監督】
「マンションにおける良好な居住環境の確保」などを目的とした、マンション管理適正化法があります。万が一、管理会社が守る必要がある法を遵守していない場合は、是正を要求する必要があります。
マンションの組合員は、分譲マンションの購入者で、マンションの管理知識のない方が多い場合があります。そのため、マンション管理士は必要な仕事であるといえます。
以上が「マンション管理士」の主な仕事内容です。
宅建士の主な仕事内容は、「自ら不動産の売買や交換をする」「不動産の売買や交換の代理および媒介」「不動産の賃貸借の代理・媒介」です。
大手の企業の場合は、上記のすべて業務を行っていることが多いです。
街の不動産屋だと、業務内容を絞っていることが少なくありません。
お客さまは、マイホームを購入しようとする一般人はもちろんのこと、アパートのオーナーとも会うこともあります。
業務独占資格である宅建は、「重要事項の説明」「重要事項説明書の記名・押印」「37条書面(契約書)への記名・押印」という業務を独占的に行えます。
上記の独占業務は、不動産取引時に重要であり、宅建士がいないと、不動産の取引を行うことができません。
ちなみに、マンション管理士は名称独占資格で、資格保有者だけが名称を名乗れるというものになります。
不動産取引は、数千万円以上のお金が動くことも珍しくありません。
一般人は、不動産取引に関する知識や情報が少ないので、場合によっては取引により損害が出てしまうこともあるでしょう。宅建士が、不動産取引時において重要事項をお客さまに説明することにより、トラブル発生を抑止・防止しているのです。
まとめになりますが、マンション管理士はマンションの管理についてのスペシャリストであり、名称独占資格です。
他方、宅建はマンションのみならず土地や住宅も扱う不動産取引の専門家で、業務独占資格であり、この点が両資格の明らかな相違点といえるでしょう。
(2)試験難易度の違い
試験科目が異なるため、マンション管理士と宅建士(宅地建物取引士)の難易度の違いを断言することは難しいのですが、合格率の違いにより、マンション管理士の方が宅建士より一般的には難しいとされています。どちらも、受験資格の制限はありません。
以下、両資格の合格率を紹介します。
【マンション管理士】
令和元年度:8.2%
平成30年度:7.9%
平成29年度:9.0%
平成28年度:8.0%
平成27年度:8.2%
[平均8.26%]
【宅建士(宅地建物取引士)】
令和元年度:17.0%
平成30年度:15.6%
平成29年度:15.6%
平成28年度:15.4%
平成27年度:15.4%
[平均15.8%]
試験難易度を考察する際には、学習時間の目安も参考になるでしょう。
マンション管理士の場合は約600時間、宅建士の場合は約300時間といわれています。
他の資格試験も考慮すると、マンション管理士は行政書士や社労士と同じレベルのやや難しい試験であり、宅建は管理業務主任者や二級建築士と同レベルの標準的な試験に分類されることが多いです。
両資格とも合格率が低く取得が難しいと感じるかもしれません。
ですが、両資格とも誰でも受験することができ、力試しで試験を受ける人も少なくないので「合格率8.2%」「合格率17%」であっても合格できない試験ではないでしょう。
(3)試験内容の違い
不動産に関する資格のマンション管理士と宅建士(宅地建物取引士)は、違う試験であるものの試験内容は似ています。
マンション管理士は、「区分所有法等」「民法等・管理組合の運営」「建築基準法等・建築設備」「マンション管理適正化法」から出題されます。他方、宅建士は、「民法等」「宅建業法」「法令上の制限」「その他関連知識」が出題範囲です。
「民法」と「区分所有法」がマンション管理士の主要科目で、「民法」と「宅建業法」が宅建の主要科目です。
マンション管理士と宅建士ともに50問です。
「民法」は、マンション管理士6~8問、宅建10問と出題数が多いです。
また、「区分所有法」はマンション管理士では10~14問出題されます。
したがって、他方の資格で得た「民法」や「区分所有法」の知識はもう一方の資格取得の際に特に役に立つといえるでしょう。
もちろん、「建築基準法」や宅建の主要科目で20問出題される「宅建業法」などの両資格で問われる科目の知識も役に立つでしょう。
「出題形式が四肢択一であること」「試験時間が両資格ともに2時間であること」「合格基準が近いこと(マンション管理士37点・宅建35点)」も、他方の資格を得たあとにもう一方の資格の取得にチャレンジする際に好都合な点といえるのではないでしょうか。
まとめ
「マンション管理士」、「宅建士」どちらの試験であれ、取得する価値がある資格であるということは間違いないでしょう。
資格を得ることができれば、資格手当が付く可能性もあります。
宅建士の場合だと手当の相場は月約1~3万円で、1年間だと約12~36万円、10年間だと約120~360万円にもなるようです。
マンション管理士、宅建士の両資格を有していることで、不動産関連会社に転職しやすくなる可能性があります。
当ページで「マンション管理士」や「宅建士」の資格にご興味を持たれ、資格取得を目指すきっかけとなりましたら幸いです。