登録販売者資格がなくなる懸念の原因「2分の1ルール廃止」
2分の1ルールについて
一般用医薬品(OTC医薬品)販売について、以前は「2分の1ルール」という規定が設けられていました。
これは、一般用医薬品を販売する店舗では、薬剤師または登録販売者を営業時間の半分以上常駐させなければならないというものでした。
しかし、2021年8月1日に医薬品販売に関する法律が改正され、「2分の1ルール」が撤廃されます。
参考 厚生労働省/薬局並びに店舗販売業及び配置販売業の業務を行う体制を定める省令
2分の1ルール廃止の背景
例えば、24時間営業しているコンビニエンスストアでは、12時間以上薬剤師や登録販売者を常駐させる必要があり、人材確保が困難なことから、医薬品販売許可を取得しづらいという課題がありました。
コンビニエンスストアなどの身近な店舗で医薬品を購入できるようになることは、消費者にとっても大きなメリットとなるはずです。
そこで、コンビニエンスストアや医薬品販売店舗が多く加盟する日本フランチャイズチェーン協会が、医薬品の柔軟な販売を目指し、規制緩和を求めたのです。
登録販売者の資格がなくなる懸念が起きた理由
2分の1ルールを廃止するということは、一般用医薬品を販売する時間の長さを自由に調整できるようになったことを意味します。
短時間の販売でも許可されるため、「登録販売者が勤務する時間が削減されるのではないか?」という不安や、「登録販売者の需要が減り、資格が不要になるのでは?」という登録販売者不要論が起きたと考えられます。
ルール廃止は登録販売者にどう影響したか?
特に影響はなく、資格もなくならない
一般用医薬品を販売する店舗は、営業時間の長さを気にすることなく、薬剤師や登録販売者のいる時間であれば医薬品の取り扱いができるようになりました。
しかし、医薬品を販売する時間を短くし、薬剤師や登録販売者の勤務時間を削減すると、医薬品の売上につながらず、消費者も医薬品を購入できる機会が減ってしまいます。
また、医薬品は有資格者しか販売できないというルールに変更はありません。
つまり、登録販売者の勤務時間が減ることはなく、資格がなくなることもないのです。
2分の1ルール廃止による変化
登録販売者の人手不足がより顕著に
「2分の1ルール」廃止により、コンビニエンスストアなど24時間営業する店舗や消費者にメリットがもたらされるはずでしたが、登録販売者の人手不足がより顕著になる結果となりました。
ルール撤廃後も医薬品を取り扱うコンビニエンスストアはほとんど増えなかった
2分の1ルール撤廃後も、医薬品を取り扱うコンビニエンスストアはほとんど増えませんでした。
法改正から半年後の2022年2月末の時点で、コンビニエンスストア全店舗に対する医薬品販売コンビニエンスストアの割合は、0.7%しかないというのが現状です。
増えなかった要因はいくつか考えられますが、薬剤師や登録販売者の人材不足が改善されなかったことが大きな一因といえるでしょう。
また、医薬品を販売しているコンビニエンスストアでも人材不足は続いており、薬剤師や登録販売者は、早朝や深夜の時間帯に不在であることがほとんどです。
消費者が早朝や深夜に急な体調不良を起こしても、すぐには医薬品を入手できず、いざという時に困る状況は残念ながら解消されていません。
出典 厚生労働省/規制改革推進会議 医療・介護・感染症対策ワーキング・グループ説明資料(日本フランチャイズチェーン協会報告)
ルール廃止により登録販売者の需要がかえって高まった
2分の1ルール廃止により、登録販売者の需要はかえって高まるという結果になりました。理由を以下に解説していきます。
一般用医薬品を販売する店舗の増加
2分の1ルール廃止以前より、ドラッグストア等の一般用医薬品を販売する店舗は増え続けています。
店舗が増えるということは、その分、医薬品販売ができる登録販売者も必要になります。
一般用医薬品販売を長時間おこないたければ、登録販売者の人数が必要
2分の1ルールの廃止で、薬剤師や登録販売者が出勤している時間帯であれば、一般用医薬品を販売する時間の長さに縛りはなくなりました。
しかし、長時間医薬品販売をおこないたい場合は、法改正前同様、登録販売者の人数確保が必要です。
消費者が市販薬を求めやすい環境をつくるためにも、一般用医薬品の販売時間拡大と登録販売者の人材確保は大きな課題といえるでしょう。
医薬品デリバリーの登場
営業時間内にできるだけ長く登録販売者を配置しておきたい医薬品販売店舗の思惑として、医薬品デリバリーサービスの開始があります。
一般用医薬品の宅配(インターネット販売)は2014年6月の法改正で認められました。
近年、フードデリバリーサービスで有名なUber Eats(ウーバーイーツ)やWolt(ウォルト)などが、医薬品デリバリーに参入。
ドラッグストアやコンビニエンスストアの店頭で取り扱う、副作用等リスクの低い第2類・第3類一般用医薬品の配達が可能になったという経緯があります。
なお、医薬品の配達はデリバリースタッフがおこないますが、注文された医薬品のピックアップや配達前の確認、医薬品についての相談対応などは、登録販売者が担当します。
医薬品デリバリーサービスに対応するためにも、登録販売者の人材確保が重要性を帯びているといえるでしょう。
参考 厚生労働省/一般用医薬品のインターネット販売について(平成26年2月)
薬剤師の確保が困難
登録販売者の需要が増している理由として、薬剤師の人材確保の困難さも挙げられます。
2022年度の登録販売者試験合格者数は24,707名であるのに対し、薬剤師国家試験合格者数は9,607名でした。
薬剤師の割合はかなり少ないことがおわかりいただけるでしょう。
さらに、薬剤師が希望する就業先は調剤薬局や医療機関が中心という傾向にあります。
登録販売者は一般用医薬品の90%以上を扱うことができます。
そのため、医薬品販売について登録販売者への期待がますます高まっているのです。
関連記事 登録販売者と薬剤師の違いについて
登録販売者の需要拡大の影響で、さらに法改正がなされた
2023(令和5)年4月より登録販売者の店舗管理者要件を緩和
登録販売者は資格があればどのような環境下でも医薬品を販売できるというわけではありません。
特に、単独で一般用医薬品を販売する場合は、店舗管理者要件を満たす必要があります。
これまで店舗管理者要件を満たすには、2年以上かつ1,920時間以上の実務経験が必要でしたが、2023(令和5)年4月の法改正により、規定の研修を受講していることを条件に、1年以上かつ1,920時間以上の実務経験で要件を満たせるようになりました。
また、過去に1年以上店舗管理者として従事した経験のある離職中の登録販売者についても、即戦力として復職できることが承認されました。
登録販売者の資格保有者は年々増加していますが、店舗管理者要件を満たした登録販売者は人材不足の状態にあります。
この法改正は、登録販売者の需要拡大に対応するため、単独で医薬品を販売できる登録販売者をより短期間で育成・輩出する狙いがあるといえるでしょう。
関連記事 店舗管理者要件の詳細について
登録販売者の資格がなくなると思われている2つめの原因
ブランクがあると資格が失効する?
登録販売者の資格がなくなると思われているもう1つの原因は、「ブランクがあると資格が失効する」というものです。
これは、登録販売者の実務経験についての誤解が広がったと考えられます。
登録販売者の資格自体は有効期限がなく失効することはない
実務経験はブランクの長さにより失効する
登録販売者の資格は有効期限がなく、一度取得してしまえば失効することはありません。
現在のところ資格更新制度もないため、一生使える資格であるといえるでしょう。
しかし、店舗管理者要件を満たすための実務経験は、ブランクの長さにより失効する、つまり、過去の実務経験年数が反映されなくなります。
登録販売者の店舗管理者要件を満たす実務経験年数は「直近5年以内」のものが認められます。
過去に要件を満たしていたとしても、現行の規定では、4年以上のブランクがあると、過去の実務経験は失効となります。
なお、実務経験失効後に登録販売者として復職した場合は、研修中の登録販売者として改めて実務経験を積まなくてはなりません。
店舗管理者の経験が1年以上あれば実務経験が失効することはない
例外として、過去に店舗管理者として勤務した経験が1年以上ある場合、4年以上ブランクがあっても実務経験は失効になりません。
これは、2023年4月の法改正(店舗管理者要件の緩和)で新たに認められた内容となります。
店舗管理者は、店長やマネージャーなどの管理職が担うケースが多く、一般の登録販売者よりも経験値が高いことから、店舗管理者要件を満たした状態で復職できるようになりました。
出典 厚生労働省/医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則の一部を改正する省令の施行等について(令和5年3月31日)
登録販売者の将来性は?
一般用医薬品の市場は緩やかな増加傾向
矢野経済研究所が2022年に実施した調査によると、国内における一般用(OTC)医薬品の市場は、2015年以降、6,600~7,000億円程度(OTC医薬品出荷額)で推移しており、今後も緩やかに増加していく見込みです。
直近でいえば、新型コロナウイルス感染症の影響で、解熱鎮痛剤やうがい薬といった医薬品の売上が増加しました。
海外渡航の規制が緩和されて以降は、インバウンド(訪日外国人による一般用医薬品の買い占め)による売上も復調しつつあります。
また、国としては、保険負担の少ないスイッチOTC薬(副作用リスクの少ない医療用医薬品が一般用医薬品に転用されたもの)を増やしたい意向もあり、一般用医薬品の市場が縮小することは考えにくい状況にあるといえるでしょう。
参考文献:株式会社矢野経済研究所/OTC市場に関する調査を実施(2022年)
セルフメディケーションにより登録販売者はますます重要視される
日本では国民自身による健康管理の促進や医療費の適正化を目的に、セルフメディケーションが推進されています。
セルフメディケーションは、WHOの定義によると、「自分自身の健康に責任を持ち、経度な身体の不調は自分で手当すること」をいいます。
国は、セルフメディケーションのさらなる推進のため、対象の一般用医薬品を購入すると所得控除を受けられる制度を創設。
厚生労働省は登録販売者の役割について次のように述べています。
“一般用医薬品が薬剤師その他の医薬関係者から提供された情報に基づく消費者の選択により使用されることが目的とされていることから、登録販売者が地域包括ケアシステムの一員として、医薬品の品質、有効性及び安全性にも配慮し、健康に関する助言等適切にサポートすることが、セルフメディケーションを進めていく上で重要である。”
『厚生労働省/登録販売者の資質向上のあり方について(提言)』より引用
つまり、セルフメディケーションの推進において登録販売者の存在は欠かせず、今後も医薬品販売の専門家としての需要が高まる見込みです。
参考 厚生労働省/セルフメディケーション税制(特定の医薬品購入額の所得控除制度)について
「遠隔管理販売」という一般用医薬品の販売制度が提案されている
現在、内閣では、医療や介護などに関する規制改革推進会議が適宜開催されており、一般用医薬品の新しい販売方法を検討しています。
コンビニエンスストアチェーン大手のローソンは、推進会議において一般用医薬品販売の規制緩和を提言。そのなかで「遠隔管理販売」という販売システムを提案しています。
遠隔管理販売とは、消費者がインターネット販売で購入した一般用医薬品を、最寄りの取扱店(医薬品の販売許可のない店舗)ですぐに受け取れる仕組みのことです。
現状のインターネット販売では、注文した医薬品が配送されて手元に届くまでに数日かかり、身体の具合が悪い今、薬を使うということができません。
遠隔管理販売は、消費者の「今すぐに欲しい」というニーズに応える方法として注目を集めています。
この販売制度が認められると、登録販売者の活躍の場が広がり、需要はさらに増すことでしょう。
出典 厚生労働省/規制改革推進会議 医療・介護・感染症対策ワーキング・グループ説明資料(日本フランチャイズチェーン協会報告)
将来性があり需要度が増している登録販売者
日本では、セルフメディケーションを国民に浸透させるために、一般用医薬品販売にかかわる制度が年々変化しています。
制度が変わるごとに登録販売者の需要度は増しており、これからもその傾向は続いていくことでしょう。
あらゆる消費者の健康サポートをおこなう登録販売者の仕事はやりがいも大きいものです。
また、登録販売者の資格を取得すると生涯有効ですし、全国どこでも活用することができます。
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登録販売者資格の取得を考えている方におすすめの通信講座!
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