アンケート回答者の基本情報
今回実施したアンケートでは、100名を超えるキャリアコンサルタントの方にご回答いただきました。
1.調査主体:BrushUP学び
2.調査方法:アンケートフォームによる回答
3.調査地域:全国
4.調査対象:民間企業、公的機関等に勤務もしくはフリーランスとして活動しているキャリアコンサルタント
5.調査人数:129名(2024年5月15日現在)
6.調査期間:2024年3月15日~2024年5月15日
性別
女性がやや多い結果でしたが、そこまで大きな性別間の差は見られないと言えそうです。
年代
60代以上が最も多く、その次が50代という結果に。40代以上が9割を占めました。
キャリアコンサルタントになる前の職業
非常に多様な職業があがりました。「人事」「コンサルタント関連」と答えた方は意外にも少なく、皆さん様々な職業をご経験されてからキャリアコンサルタントを目指されているのだとわかります。
勤務形態
非正規雇用と、フリーランス・自営・経営の方が同数でした。キャリアコンサルタントとしては、正規雇用ではない形態で働いている方が多いようです。
在籍されている組織の業態
民間企業の方が多いですが、こちらでも無所属またはフリーランスの方が多く見られました。
キャリアコンサルタント以外の仕事
1つ前の質問で「非正規雇用」もしくは「フリーランス」とお答えの方を対象とした質問です。「している」がやや多いですが、「していない」方も半数近くおり、専任として働かれている方も一定数以上いることがわかります。
キャリアコンサルタント国家試験について
国家試験の受験資格はどのように得ましたか?
圧倒的にキャリアコンサルタントの養成講習を修了して受験資格を得られた方が多い結果でした。キャリアコンサルタントの養成講習は、最短で3ヶ月ほどで修了でき、受講資格や年齢制限もないため、まずはこの方法を選ぶ方が多そうです。
合格するまでに国家試験を何回受験しましたか?
1回の人が一番多いものの、2回以上の方も3割以上いらっしゃいました。キャリアコンサルタントの国家試験の合格率や約5~6割とされていますので、実態に伴った結果といえます。
養成講習のスクールを決めたポイント
授業・テキスト・講師の内容がよかったという回答と、サポート体制という回答で約4割でした。やはり、養成講習の内容やスクールの体制が自分と合っているか、満足のいく環境で学習できるか、という点が決め手となる人が多いようです。
国家試験の対策で大変だったこと
勉強時間の確保
・勉強時間が想定より長時間必要だった
・試験が二週間に分かれて実施のため、業務多忙や出張などで受験ができないなど仕事との両立が難しかった。
・時間の捻出。実技試験の論述は人に見ていただいたり、ロープレはグループで集まって練習するなど、予定の調整が必要だったため。
学科試験
・学科試験では、広範囲に当たる知識をどのようにして頭にインプットしていくか苦労しました。
・時事問題対策
・振り返ると過去問をもっと真面目にやればよかったと反省しています。
・学科試験がなかなか合格できず、統計資料を読み解くのが大変だった
・学科の主に官公庁資料関連、労働市場関連を頭に入れること
・実技対策に集中しすぎて、学科対策がおろそかになってしまったこと
・国の施策系の知識がなかったのと範囲が広すぎて
ロールプレイ
・1人ではできないので仲間通しでロープレの機会を作るのが大変でした。
・ロールプレイの仲間がおらず、一度も練習ができなかったこと
・ロールプレイングの主訴へ向けた傾聴と共感
・ロールプレイ対策傾向の確認
・ロールプレイ練習を対面でできる場所がなかった。
実技(面接・論述)
・有資格者の方に面接練習をお願いしましたが、その依頼等
・実技のロールプレイと論述の試験勉強について、「できた」とか「よく書けた」と実感する事が難しかった
・実技においては特に何が加点、減点されるかわからなかった為、いろんな人の意見を参考にしつつ、自分なりの解釈で試験に臨んだため苦しかった覚えがあります。
・論述・実技は”正解”がなく一人では対策しきれなかったこと
全体的に
・「仮定」の状態で練習することに違和感があった。また、テクニックよりもキャリアに関する考え方や捉え方などの議論が必要だと感じていた。
・養成講座を修了しても、試験対策は1人で頑張らなければいけないこと。
・講座終了日から試験日までの時間が長く、継続して自主学習を行うことや、試験へのモチベーションを保つことが大変でした。
・学科、論述、ロープレ、口頭試問とそれまでやったことがない事を、一気にやらなければいけなかった。
・心理学の理解
「勉強時間の捻出」「仕事や育児と勉強の両立」と答えた方が非常に多かったです。普段の生活を送りながら、知識の記憶、実技のトレーニングと様々な対策するのに苦慮されている方が多いことが分かりました。また、「ロールプレイ対策」と答えた方も同じくらい多くいらっしゃいました。ロールプレイ対策は一人ではできないので、その相手や場所を探すところから皆さん苦労された様子です。
論述試験はどんな対策をしましたか?
・過去問を丁寧に行った
・独自ノートをつくり、ひたすら覚える
・ポイントを把握する
・多くの解答を見て、自分の解答の形・フレーズをつくる
・50分のところ30分で必ず解答できるよう時間を意識した勉強
・養成講座実施団体の論述対策講座を受講し、回答のポイントを学んで身に付けました。
・自分のフォームを作って、いかに早く仕上げるかに傾注
・ネットで募集していた対策講座に参加したり、有資格者に添削をお願いした。
・テキストすべてを把握した
・特に対策はしませんでしたが、ロープレの振り返りに重点を置いたところ、自然と出来たと思います。
・自作の想定問題への回答作成の繰り返し
・いくつかの相談事例を読み、設問回答の演習を実施しました。時間を計測し、まとめ方のポイントを意識した回答(字数、誤字脱字、アンダーライン等)に心がけました。
・JCDAのキャリアカウンセリングの考え方を理解してそこを意識して書けるようになる
・ICレコーダーに吹き込んで、乗車時やjogging時に聞いていた
・逐語録を沢山作成した
・回答を書き、受講生同士で見せて意見を言い合った。
「過去問に取り組んだ」という回答が非常に多く寄せられました。また、仲間同士や有資格者からの添削という回答も多かったです。論述試験は完全な正解がないので、過去問や他者の意見を参考にブラッシュアップするというのが最もベーシックなやり方のようです。
国家試験の対策で特にやってよかったことや、勝因となった対策法は?
・受検者同士でのロープレ練習
・ロープレと論述を複数名で仲間でやったことが、モチベーションと解答の質の向上に繋がったと思います。
・合格できたのは共に学んできた仲間と対策勉強会ができたことでした。インプットだけでなく、アウトプットの機会がとても重要だと思います。
・RPの数(1日4〜5回位)をこなした。
・直前まで受講生やサポーターとロープレを繰り返すことで、苦手意識があったケース事例が克服できた
・過去問の反復
・資格取得した後の資格を活かした後の仕事のイメージを強く持つ
・自分ノートを作り、過去問を解く中で出来たところ出来なかったところを書き出してインプットしていきました。理論家は、一覧表を作成しその特色等を体系的に覚えました。
・すべてやり切る覚悟でやったこと
・ドラマ対話法
・実技対策としてのロープレは30回以上の回数と、実施する際にはその都度「心がけ(テーマ)」を持って臨んだのが良かったと思います。
・キャリアカウンセリングに対する理解
・過去問題を解きながら、その内容を改めてテキストや参考書で確認することを繰り返しました。当日の試験は、過去問題がほとんど出なかったのですが、理論が入っていたので、ほぼ満点近くの点数で合格できました。
・ロープレを必ず録音して聞き返した。時間があれば逐語を作成して自身で振り返った。学科対策は、過去問を軸ベースに進めて、マイ参考書を作りながら知識を浸透・広げていった。
・ロールプレイの練習の際、毎回ビデオを撮って振り返りができたこと。養成講習の時もビデオでチェックしていた。
・暗記は、暗記用のスマホアプリを使い、隙間時間を使って記憶定着を図りました。
・実技面接試験では、目の前の相談者様の大切な経験を共に絵を描くように再現していくことを胸に入れ、15分間のなかでの自分の関わりについてを5分間の口頭試問で応答出来るようトレーニングしました。
ここでも、「仲間との勉強会」「仲間とのロープレ練習」と書かれた方が非常に多かったです。改めて、キャリアコンサルタントの勉強は、他者とのかかわりあいの中で深まるものなのだなと実感する内容でした。
キャリアコンサルタントとして働くことについて
キャリアコンサルタントの就職活動
すぐに就職先が見つかった、と答えた方が約7割でした。キャリアコンサルタントとしては、就職活動の難易度はそこまで高くなさそうです。
キャリアコンサルタントに必要なスキルは何だと思いますか?
・積極的傾聴をベースにしたカウンセリングスキル、仕事紹介のための情報蓄積
・人間力 好奇心 誠実
・情報収集とアップデート
・理解力、探求心、主体性
・目の前のCLに対して『複眼』で関われる能力。1つ目の視点は、目の前の人の話をしっかり聞くことが出来る傾聴力、2つ目の視点は、常にCL全体を俯瞰して見ることが出来る俯瞰力だと考えます。
・知識と経験、洞察力、決めつけない力
・常に向上心を持ち、学び続けること
・我慢、キャリアコンサルタントを認知させる発信力
・傾聴力は必須、そして永遠に自己研鑽が出来ることですね。
・経験
・親身な(真の)共感性
・冷静な判断力とどのような事も受容出来る寛容さ
・自分が安定している事
・仕事、会社、経済に関する幅広い知識
・寄り添うこと、相談者に気づきを与えられるように関わること、相談者に自己決定できるようにかかわること。
相談者がこの人にだったら話しても良いと言う雰囲気づくり
・コンセプチュアルスキル、言語化するスキル、他人を伴走しながら支援できる能力だと思います。
・メタ認知能力
・深い人間力(主体性)とソリューション知識
・基本であり究極ともいえるのは、integrity
・キャリアコンサルタントに対する潜在ニーズと健在ニーズに働きかけ、キャリアコンサルティングのすそ野を広げられる能力
・相談者は精神障害(鬱や発達障害)であることも多いのでメンタルや発達障害系の知識を深める必要性があると感じます。
・傾聴、固定観念にとらわれない柔軟な視点、自問自答を促すミラースキル
「傾聴力」や「人間力」などの回答が多く見られました。「自己研鑽する力」という回答も多く、資格取得後や就業後も継続的に学び続けることが重要な資格だとわかります。
2023年度のおおよその年収
「300万未満」が最も多い結果でしたが、「300万~500万」と答えられた方も約4割いました。
キャリアコンサルタントになりたいと思ったきっかけ
・定年退職後のセカンドキャリアを考える際に、人の成長に関われる仕事、年をとっても長く関われる仕事だと直感しました。
・働きづらさを抱えている人の支援をしたかったため。
・私の周りで再就職できない50代、60代の方が多く、また若い人で今の企業でキャリアアップが出来るのかと悩んでいる方を見て、支援できないかと考えたため
・論理思考の呪縛から解放してあげたいと思ったから
・私たちの時代には、キャリアという考えが全くなく、ただ企業の組織で言われたことを素直にやることを強いられました。相談に乗ってくれる人がいたら、もっと可能性が開けたと思っています。これからの未来を自分らしく生きていける人を増やしたいと思ったことがきっかけです。
・業務効率や生産性はジステム化できますが、人に対しては人でしかアプローチできない事に気が付いたため
・管理職として、辞めていく社員に「自分は何もできなかった」「どう声をかけていいかわからない」という無力感を感じていた時にキャリアコンサルティングに出会い、興味を持ちました。
・これからの(今の)人たちに必要な概念を提唱している領域だったから
・過酷な労働環境、理不尽な人事異動を経験したこと。
・セカンドキャリアには国家資格は有用だと思った
・同じ会社にいた発達障害グレーゾーンの方との出会い
・大学のキャリアセンター勤務(大学事務)で、専門的に学生の役に立ちたいと思ったから。
・人事採用の経験を活かしたい。
・人生設計を考えた時、手に職をつけておきたいと考えたから。
・コロナで世の中が変わり息子が就職活動で困っていたが何もできなかったことがきっかけで考え始め、自分の年齢や主人の定年が見えてきたので、今後を考えて資格を決意しました。
「定年後のセカンドキャリア」や「管理職として部下にアドバイスしたくて」という、ある程度キャリアを積まれてから目指した方の回答が目立ちました。キャリアを積む中でキャリアコンサルタントの資格取得の重要性や有用性に気付く方が多いようです。年代の質問で40代以上と答えた方が多かったのも納得のいく結果です。
どんな時にやりがいを感じますか?
・「相談に来てよかった」「少し進む道が見えてきました」などの言葉をいただくとき。
・それぞれの相談者が自分で自分の問題解決の糸口をつかんだ時
・目の前の人の悩みや不安に寄り添い、カウンセリングを通してその方が前に進めること、表情が明るくなる様を見られること
・クライエントが再就職できたとき
・今は大学生の就活支援をさせていただいているが、ES作成や面接対策で苦労されていた方を支援させていただき、内定を得たと連絡をいただいた時。
・学びに終わりがなく、学んだことで新たな気づきを相談者の方にご提供できたとき
・企業、従業員の発展、成長を実感したとき
・セルフキャリアドックなどの企業とまとまった契約ができたとき
・セルフキャリアドックの導入を薦めた経営者から「キャリアコンサルティングへの興味が深まった」と評価された時
・人の変化・成長に関われたとき。人の持つ可能性や力にこちらが励まされることも多い。
・学生支援の前、生活保護受給者等の就労困難者支援も経験した。短期で転職を繰返していた支援者が、6ヶ月以上定着することになった時。
・自己肯定感の低かった方が新たな仕事に繋がった時に生き生きと働いていた姿を見て「働く」という力はやっぱり凄い!と実感しました。キャリアコンサルタントとして働くことができて、本当にこんなにやりがいのある仕事はないと日々思います。
・面談中に相談者の顔色が明るくなった瞬間
・感謝の言葉を頂いた時、これに尽きます。就業に悩む求職者様お仕事探しのお手伝いを通して、信頼関係が出来て、ご自身が納得して決めた道に歩みだされる姿を拝見した時には、日頃の苦労が吹き飛びます。
「相談者の顔が明るくなったとき」「人生の転機に立ちあえたとき」という回答が多く、改めてキャリアコンサルタントとは、人の人生に深く関わり、その可能性を大きく広げていく職業なのだと感じました。そして、そのことを回答者の皆さんが誇りに思っていることが伝わってきました。
また、この質問に関して、下記のような回答も寄せられました。
・いつも「これで良いのだろうか」と悩んでいる。後悔と反省ばかりです。
クライアントの人生の決断に影響を及ぼし、時にはその方向性を変える可能性もある職業だからこそ、その内容を省みて深く悩まれることもあるのかもしれません。
まとめ
今回、100名以上の現役キャリアコンサルタントの方にご協力いただきました。
リアルな声からは、皆さん非常に多くの時間と労力をかけ、強い意志を持ち、キャリアコンサルタントという資格を得たことが伝わってきました。また、きっかけややりがいの質問では、人の重要な決断に関わる仕事として、誇りと責任感を持ち務められていることがわかりました。
これからキャリアコンサルタントを目指す方には、試験対策の大変さ、厳しさはもとより、キャリアコンサルタントという職業の奥深さや価値の高さを、貴重な「生の声」から感じ取っていただけたら嬉しいです。