櫻木友紀さん
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組織を客観的にみられるように、内側と外側の視点を持ち続けたい
今は、会社で人事業務と、個人でキャリアコンサルタント業の両輪で働いています。会社には「副業OK」を条件に入社しました。
このような形で働いている最も大きな理由は、組織を内側と外側の両方から見たいと思ったからです。内側からだけだと、その会社特有の文化や考え方に偏りがちになりますが、外の視点を持っていることで、客観的に組織を良くしていくためのアプローチができる。逆に、内側を知ることで、クライアントの状況もより理解できて、win-winとなる。――そう考えています。組織そのものと、所属している社員と、両方に働きかけて、関わる会社をもっともっと良くしていきたいと思っています。おそらく今後、会社組織と個人事業を行ったり来たりするキャリアも増えるのではないかと思っています。その1例になれたらと思っています。
世の中はすべて、誰かの仕事で成り立っている
キャリアコンサルタントの存在を知ったのは、高校生の息子が学校から持ち帰った「将来の仕事リスト」をパラパラと見ていたときでした。なぜかは定かではないのですが、小さいころから「世の中はすべて、誰かの仕事で成り立っている」という意識がありました。また、小4から住んでいたアメリカでキャリア教育を受けた経験や、吹奏楽の演奏旅行も学校活動の一環でありながら、自分達で資金を調達してきた経験もあって、仕事、キャリアというものに強い興味を持っていたんです。
また、あこがれの製薬会社で医薬品開発に従事した後、別企業で派遣社員をしたり、外資系企業で管理職を務めたり、医薬品の規制当局に勤めたりと様々なキャリアを重ねていました。プライベートでは、海外経験、出産、子育て、脳腫瘍により高次脳機能障害となった夫の看護、看取りなども経験していて、これだけバラエティーに富んだ経験は、キャリアで悩んでいる誰かの役に立てるだろうという思いもありました。
トラウマを乗り越えたキャリアコンサルタント試験
キャリアコンサルタントの養成講座での学びはとても楽しかったですが…試験対策は大変でした。そもそも、アメリカの学校には一発試験というものがないんですね。大学入試用の試験でさえ何度か受験をして一番良い点数を提出するシステムでした。よって、日本の一発勝負ですべてが決まるというシステムに慣れていなかったんです。また、以前薬剤師の国家試験に落ちたというトラウマもあり(ひっかけ問題にはすべて引っかかる)、それを乗り越えるのにも苦労しました。泣きながら勉強した記憶があります。
それでもなんとか合格できたのは、養成講座の仲間と支え合い、励まし合えたことが大きかったです。論述試験や面接の対策はみんなで練習して、本当に仲良くなりました。あとは、試験対策用のアプリを使ったり、人に勧められた勉強法を試したり。とにかくトラウマを払拭できるくらいひたすら勉強しました。
その人の“話したいこと”を聞けるように
そうして無事取得したキャリアコンサルタントですが、実は最初の頃の面談で、失敗してしまったんです。
「海外で働きたい。英語さえできればやっていける自信がある」と言う相談者に対して、自分の海外経験から「そんなに甘いもんじゃない」と思ってしまい、どうしても共感できなくて……「そこまで行きたいのなら、渡米して働きながら英語を学べば」と、突き放すようなことを言ってしまったんです。
今思えば、相手の立場に立って「聞く」ということができていませんでした。表面的にしか相手の言葉を聞いていなかったと、未だに反省しています。それ以来、、相手の「世界」を見せてもらって、相手が話していることではなく「話したいこと」を聞く。そんな面談ができるように心掛けています。その時の空気や表情、手の動き……ノンバーバルの部分も含めて、その人の世界、本当に話したいことを汲み取れるように努めています。
選択肢に考えを広げてもらうことも、キャリアコンサルタントの仕事
対話を通じてその相談者の人生が変わった、転機に立ち会える瞬間が、キャリアコンサルタントをやっていて何より嬉しいことですね。多くの人は、「これとこれ、どちらの選択が正しいだろう?」と、二択で悩んでいます。
そこに、キャリアコンサルタントとして三択目の視点を考えてもらう。三択目をひねり出すと、人って視野が変わるんですよね。その三択目を選んで、キャリアを変えた人もいます。いろいろな人の人生の節目に立ち会えることが、この仕事の醍醐味です。
技術と知識を駆使して「人」と「組織」に働きかける
今、所属している人事部の仕事としては、「People & Culture」すべてを担っています。Peopleが人事労務、採用など一般的な人事の部分だとしたら、Cultureは、いわゆる人と組織の両方に働きかける、カルチャー調整、組織開発を指します。
例えば、チームビルディングのためにアセスメントツールを用いたワークショップをやったり、一人ひとりと面談したり、マネージメント層だけのオフサイトミーティングを企画したり。そうした中で、企業としてどうあるべきか、何を目指していきたいかなどを整理整頓して、より良い組織を作っていく、ということを試みています。社内にいるからこそ分かること、逆に社内だからこそ大変なこと、色々体感している最中です。
副業の方では、幅広く色々な依頼を受けていますが、バイリンガルのキャリアコンサルタントや、国際コーチング連盟のPCC認定コーチ(ICF-PCC)は珍しいため、海外企業の日本支店マネジャー育成をしてほしいとか、外国人の方のコーチングが多いですね。私はBCMA認定のキャリアメンター®の資格も持っていて、実務にも活用しています。
というのも、相談者はセッションがカウンセリングであろうとコーチングであろうと、メンタリングであろうと関係ないのです。だからこそ、カウンセリングもコーチングもメンタリングも、人を支援する技術でしかないと思っています。さらに日本の社会は「人に教えてもらう」「正解と思われることを行う」という若干受け身な教育システムになっているので、押しつけにならず、自由度を残して教える技術も重要です。とにかくその人をいい方向に持っていきたいという思いで、色々と学んで資格も取得してきました。
組織を強くして、社会に還元していきたい
これからも自分のスキルや経験を活かして、「人」と「組織」の両方を支援していきたい。様々な人生経験や契約形態、会社経験、働き方を経てきた私だからこそ、「組織」と、その中にいる「人」の課題や悩み見抜き、会社の戦略として活かすことができるんじゃないかと思っています。
組織が色々な人の強みを活かしていけたら、会社がさらにプロフィットを出せます。それを繰り返していけば、その会社の社会貢献度がどんどん上がっていきますよね。私は、会社とは社会に求められている、今はない何かを提供する存在と思っています。自分の取り組みで、そんな風に社会に貢献できたら嬉しいです。
キャリアコンサルタントを目指している方へ
厳しい言い方かもしれませんが、資格を取ったからすぐに仕事を得たり、独り立ちできるとは限りません。私も資格を取った後、知人に練習台になってもらったり、イベントでワンコインセッションをやらせてもらったりなどして経験を積みました。たくさん悩み、自信を失い、先輩方にも相談しました。キャリアコンサルタントが手掛ける分野は多岐にわたるので、とにかく目標を決めて進み、試し、学び、研鑽し続けるサイクルを止めないことが何より重要だと思います。
資格取得には時間も要しますし、深い話もしますし、学習範囲もかなり広いです。その中で自分の興味関心の強さ、得意分野などを見つけていってください。また、何のために資格を取るのか、資格を通じてどうしたいのかを持っていると、資格取得後に迷子にならないと思います。試してみて、体感して、初めて自分に合っているのか否かが分かることもたくさんあります。
人の価値観、考え方、ライフイベント、会社の形態、キャリアが多様になっている世の中で、キャリアコンサルタントのように第三者の安心安全な立場で話を聞ける人の存在は重要だと思います。多様な世の中のニーズに応えるにはキャリアコンサルタントもまた多様であって良いと思います。
試験勉強は大変ですが、実務を始めてみて、どれだけ貴重な時間だったかが分かります。仲間を見つけ、支えあって、多くの人が一緒に合格できるよう、どうぞ頑張ってください!