今住誉文さん
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シニアとの面談で心がけるのは「鎧をはぐ」こと!
現在「セカンドキャリアにフォーカスするキャリアコンサルタント」として、様々な活動を行っています。中でもメインは、スキルを持つシニアを顧問として企業に紹介する、「顧問百科」という事業です。
シニアにフォーカスしているのは、やっぱり、高齢化社会が進む中で、シニアが楽しく生きていると、日本全体がもっと元気になると思うから。悲しいことですが、家庭でも会社でも邪魔者にされて、生ごみ状態になっているシニアってたくさんいるでしょう。自分もその年齢に差し掛かる中で、先輩である彼らが生き生きと輝いている姿を見たい、と思っています。
「顧問百科」での面談でまずやることはシニアの方が長い年月の中で培ってきた「鎧」をはぎ取ることです。皆さん、素晴らしいキャリアを持っているだけに、今なお過去にとらわれてしまっている状態なんですね。過去の名刺を持ってくる方も多いですから。でもそのままだと、若い人をはじめ現代社会と融合して働いていくことは難しいでしょう。
だからまず、「そのこだわりを取っ払うと楽しいよ」ということを伝えます。例えばよく知っていることでも知らないフリをして、若い人の言うことを素直に聞いてみる。それを続けていくうちに世界が広がるよ、と。皆さんやっぱり変わりたいし、どこかで過去にこだわっている自分を恥ずかしい、と思っているんですね。彼らの言うことに共感しつつ、丁寧に働きかけることで、皆さん変化していきます。
シニアと経営者のマッチングを実現するために独立
「顧問百科」のそもそもの始まりは、40代半ば、シニアと企業とのマッチング事業を行っている会社に就職したことでした。残念ながらこの会社は業績不振で事業縮小してしまい、1年ほどで退職したのですが、「この事業は個人ならもっとうまくできる」と感じたんです。個人単位で、企業とシニアそれぞれに丁寧に働きかければ、素晴らしいマッチングができる、と。それで、独立して「顧問百科」を立ち上げました。
「顧問百科」をやっていてすごく感じるのは、企業の経営者は、とても孤独だということです。一人で経営課題を抱えて、色んなことに悩んでいます。そういう経営者に寄り添って、一緒に悩んであげられる有能な存在として、これまでに様々なシニアを紹介してきました。
あるシニアの言葉がきっかけで資格を取得
独立当初の面談は、ずっと我流でした。でもある時、シニアの方に「ちゃんと資格を持ってやられているんですか?」と聞かれてハッとしたんです。自分自身、専門的な勉強もしてないし、人材会社にいたわけでもないし、なんとなく自己流でやっていることにモヤモヤしていたんですね。
皆さん、経営課題とか他では明かせないような重要な悩みを共有してくれるわけでしょう。信頼して相談していただくためにも、自分に自信をつけるためにも、きちんと資格を取ろうと決心しました。
すさまじい点数で落ちた1度目の受験
それまでの実務経験があったのでキャリアコンサルタント受験資格は持っていたのですが、体系的に学びたかったので、養成講座も受講しました。ただ1度目は、ロールプレイでとんでもなく低い点をとって落ちたんです。敗因は、しゃべりすぎです。経験もあったので、自信満々でこれ見よがしにしゃべりまくったんですね。キャリコンに大切な、相手の立場を考える謙虚さや誠実さに欠けていたということでしょう。
それからは大反省して、大好きだったお酒もやめて練習に励みました。ダメ出しを受け入れて、敗因をきちんと分析して、素直に実践しました。今思えば、あそこで自信を砕かれてダメだったところを見つめ直せたからこそ、シニアの方に「過去のこだわりを捨てて素直になりましょう」とアドバイスできるのかもしれません。
2度目の受験で感じた「加点ポイントを作ること」の大切さ
1度目で失敗してから、いろいろな人の話を聞いたり、考えたりして、キャリコンの実技試験では「加点ポイント」を作ることが大切だと気付きました。フィギュアスケートと同じで、そつのない演技は失点がないかもしれませんが、加点もされません。そのためロールプレイ本番では、ただの「いい面談」で終わるのではなく、相手に嫌がられてもきちんと提案してみるとか、具体的な次の展開まで持っていけるかとか、試験官が加点するポイントを作ることを心がけました。
同時に、論述とロープレの関連性をしっかり分析したことで、論述で展開したストーリーを、ロープレにつなげて再現することも実践できました。
弱みをあぶりだすことで自分の本質が見えてくる
顧問百科以外キャリアコンサルタントの仕事として、厚生労働省の訓練対応キャリアコンサルティング※をハローワークで担当しています。ここでは幅広い年代の方とキャリア面談しますが、殻を破って「自分を知り尽くす」ことが重要だという点は、アプローチ法は違えどシニアと同じです。そのために、得意なこと、強みだけではなく、コンプレックスや失敗した経験など、その人が隠している部分、弱点もあぶり出していく、という作業を行います。もちろん簡単なことではありませんが、弱いところも含めて、「自分」というものを知り尽くしていないと、世の中にあふれている仕事から合っているものを選べなかったり、思い切った挑戦ができなかったりするんですね。弱点を敢えて見つめ直すことで、自分も気付いていなかった「自分」というものが見えてくるものだと考えています。
※厚生労働省の訓練対応キャリアコンサルティング…ハローワークが実施する、就業促進のための教育訓練を受講した人に向けたコンサルティングのこと
モットーは「不都合なこともすべてよい変化へのチャンス」ととらえること
私が好きな、計画的偶発性理論という有名なキャリア理論があります。キャリアは偶然の積み重ねによって形成されていくもので、その偶然をきっかけとして捉えることで人生を良くしていくというものですが、私はこの理論を「不都合なこともすべて良くなるための変化である」という風にとらえています。人生におけるできごとをすべて前向きにとらえると、様々な「不都合なこと」の影響を受けにくくなるものです。例えば、ケガをしたからあの出会いがあった、リストラにあったから新しい仕事をはじめられた、とかね。
そもそも、労働条件が悪いとか、親の期待が高いとか、自分の内側から発生する欲求ではなく、外的要因に振り回されて本質的な欲求を見失っている人は多いです。そうではなく「この仕事をやりたいから資格を取得しよう」、「2年で現場のプロになろう」など、自分の中で具体的な目的設定ができていると、色々なことの受け止め方が変わりますよ。“今”が全て未来につながっていると信じて、遊び心を持っていろんなことに挑戦してみることで、どんな失敗もいい変化ととらえられるようになると思います。
今後も様々な「実験」を続けていきたい
私自身欲張りにいろんなことに挑戦して、自分の人生を実験している最中です。その中でやりたいことは次々に出てくるのですが、その1つがキャリアコンサルタント養成講座の講師です。これからキャリコンを目指す人たちに、この仕事の面白さだったり、働き方だったりを自分の言葉で伝えていきたい。
もう1つ挑戦したいのは、組織開発に関わることです。実は最近、組織キャリア開発士という資格を取得しました。はじめ厚生労働省が企業領域のキャリア支援を推進しているのを知って「キャリコンにセルフキャリアドッグとか、組織開発なんてできるの?」と思っていたんです。でも調べてみると、組織開発の柱は結局人間関係なんだとわかりました。そこに手を差し伸べてファシリテートしていくということなら、普段「顧問百科」で様々な企業と付き合っている自分にもできるし、ぜひ挑戦してみたいと感じました。
キャリアコンサルタントを目指す方へ
飽きることなく学び続けてください。キャリコンは、本人が人生を楽しんで、いろいろなことを実験していることが大切だと思います。そういうキャリコンだと相談者も「自分も前向きに新しいことに挑戦しよう」と感じることができるでしょう。私も、これからもいろんなことに挑戦し、多様な働き方を試してみて、生き生きと輝くシニアを目指します!