塚本智美さん
大学卒業後、国内大手航空会社客室乗務員(CA)として勤務。その間、国際線チーフパーサーやOJT育成担当班の責任者を経験。配偶者の海外赴任同行のため退職。海外滞在中に一時帰国をして、2012年、国家資格キャリアコンサルタント(当時はキャリアカウンセラー)試験合格。
帰国後、大学生支援を開始。求職中ステイタスでの保育園探しからキャリアコンサルタントとしての修行などを経て、現在は企業研修、自治体公開講座、大学生キャリアデザイン授業、就活講座、小中高PTA講演会、小中高生向けキャリア教育などの講師として活動。
【保有資格】
国家資格キャリアコンサルタント、2級FP技能士、マナー・プロトコール検定準1級、ワークショップデザイナー
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現在の活動
【学生と企業の橋渡しができる存在に】
あらゆる世代の人たちが、それぞれのライフステージで生き生きと活躍できることを目標に、「花さく共育」という事業を行っています。研修や、大学での就活支援、自治体でのセミナーといった活動を通して、人生を自分らしく豊かに彩るためのキャリアサポートをしています。
大学などで若い人のキャリア支援を行っていて感じるのは、学生と社会とのつながりが弱いということ。就職活動でも、学生の方はどんな企業が社会には存在しているのかをよく知らないまま、「とりあえず内定」を目的に進めてしまっている。企業の方も、人が足りないからとにかく採用はするけれども、学生たちのニーズや考えを深く把握できていないことが多くて、結局すぐに辞められてしまう。「とてももったいないなあ」と感じています。
こうしたミスマッチを防ぐために、今後学生と企業を繋げられるような取り組みをしていきたいと考えています。
現状、大学3年生になってから焦って就職活動を始める学生が多いですが、もっと低学年の時点でどのような職業があるのかを知ったり、社会の構造・仕組みの理解を深めたりしておくことで、就職活動時に本当にやりたいことや、自分に合った企業を見つけられるのではないでしょうか。具体的には、学生側のニーズを企業側に伝えたり、逆に企業の取り組みや理念などを学生側に伝えたりといった、相互理解の場が作れるといいなと思っています。
キャリアコンサルタントとして独立するまで
【CAとして入社したANAで、組織開発に興味を持つ】
大学卒業後、ANAに入社し、CA(客室乗務員)として成田空港に配属されました。
CAを目指したのは、小学生の時に見たドラマで憧れたから、というわかりやすい理由です。若い人の就職活動がどうのこうのと言いましたが、私自身の学生時代を振り返ってみても、やっぱり自己分析や企業理解をきちんと深めてから就職したとは言い難いんですよね。大学受験に失敗した経験から「就職は失敗したくない」と思いこんでいて、とにかく内定するために必死だった記憶があります。これから取り組もうとしている活動は、自分への反省も含んでいるかもしれません。
ANAでは入社後数年間、国際線のCAとして働いていました。転機になったのは、社内人材公募に応募し、地元佐賀県の中高生と一緒に「佐賀県へのツアーを作る」というプロジェクトを立ち上げたことです。ここで初めて、会社がどのように動いているかを目の当たりにしました。もちろん研修や会議では社内にどんな部署があるのか聞いていましたし、頭では理解していたつもりでしたが、こんなにたくさんの人がいて、緻密なネットワークが組まれており、最後に自分たちCAにバトンが渡されているのだと身をもって実感したんです。「みんなが渡してくれたこのバトンがどんなに大切なものか、後輩たちにも伝えなければ」と強く感じました。
その後、「組織の一員としての自覚を持って働く」ということを体現するために、担当路線の海外支店長や営業の方々と情報交換したりミーティングしたりと、社内で初の取り組みにも挑戦。こうした経験がきっかけで、徐々にチームマネジメントや組織開発に興味を持つようにもなりました。
【自分を見つめ直すために休職し、大学で学び直し】
プライベートでは26歳ごろに結婚しており、いつか子供を持ちたいと考えていました。でも、実家が遠方でサポートを受けづらく、仕事との両立は難しそうだと思っていたんです。また、組織開発に興味が湧いたことで、このままCAという仕事を極めていくべきなのか悩み始めたため、いったん休職することに。自分自身を見つめ直そうと、亜細亜大学経営学部ホスピタリティマネジメント学科に科目履修生として通い始めました。
ホスピタリティに関する学科を選んだのは、正直に言って、CAとの親和性が高いので会社に申告しやすかったからなのですが(笑)、ここで出会った教授がキャリアデザインの講義をされていたことがきっかけで、キャリア教育について知りました。
さらに、自分の大学生時代にはなかったキャリアセンターというものができていて、キャリアカウンセラーという仕事が存在していることも知りました。彼らが学生と話している姿を見て「素敵だなあ」と憧れを持ち、「私もこの仕事をやってみたい」と思ったんです。ANAでの後輩育成もそうだし、佐賀のプロジェクトでの中高生との関わりを思い返してみても、私は若い人の成長に関わるのが好きなんだと思います。
そんな流れでキャリアコンサルタントの取得を目指し、養成講座に通い始めました。その後、夫の海外赴任についていくことが決まり、会社は退職することになりました。
【「落ちるわけにはいかない!」自分を追い詰めて一発合格したキャリコン試験】
キャリコンの筆記試験の対策をしていた当時、海外にいて、他にすることもなかったので、とにかくひたすら過去問演習に集中できました。ある意味隔離された状況だったのが良かったのかもしれません。日本にいたら誘惑が多いので、そうはいかなかったかも…(笑)。
面接は、Skypeで養成講座の仲間が練習してくれました。すでに受験して合格していた子もいたので、「試験ではこうだったよ」など教えてくれたのがとてもありがたかったですね。
合格の勝因は……追い詰められていたことかな(笑)。試験の日は一時帰国していたので、航空券代もかかっているし安易に「落ちたからもう一度」というわけにはいきません。その状況でかなり集中力が高まっていたと思います。
【娘のためにも、キャリコンとして花を咲かせたい!】
帰国後出産していたのですが、娘が1歳半の頃軽い気持ちで保育園に応募したところ、なんと求職中ステイタスで受かってしまったんです。せっかく通過したし、キャリコンとして成長するチャンスでもあると捉えて入園させたのですが、そのころまだ仕事はなく……。いそいそと仕事に出かけて行く他のママと、行き場のない自分を引き比べて、焦る気持ちになりました。
とにかく登園資格を維持するために職業訓練校でFP(ファイナンシャルプランナー)を取ったり、古巣ANAで経理のバイトをしたりしながら、キャリコンとして就活塾で修業しました。「仕事もないのに娘を保育園に入れたからには、なんとしても成功しないと」という思いがすごく強かったんです。娘にも負担をかけていると自覚していましたし、この数年間を無駄にしないためにも、何が何でも花を咲かせたいと思っていました。
この時必死に頑張れた経験は、今でも私の糧になっています。落ち込んだり試行錯誤したりしたからこそ、自分の決意がより強いものになったと感じています。
その後、就活塾で知り合ったかに「塚本さん大学で働きたいって言ってたよね」とお誘いいただいたことがきっかけで、大学でのキャリア支援の道が開けていきました。
キャリアコンサルタントについて
【キャリアコンサルタントに必要なスキル】
厳しいことを言うようですが、キャリコンの資格を取るためのスキルと、現場で必要とされるスキルは違います。現場に出たら、試験で問われた力にプラスアルファが必要です。例えば、セッションにはカウンセリング、コーチング、ティーチングなどフェーズがあるので、それぞれに合わせた能力も重要ですし、業界や労働市場などの幅広い知識も欠かせません。
キャリコンは、勉強し続ける姿勢が求められる資格です。だからこそ、資格取得をゴールにせず、努力し続けてください。あなたのこれまでの経験と資格を掛け算して、「私は〇〇に強いキャリコンです!」と言えるよう、武器を磨いていってください。
今後の目標
【ワークショップデザインを学んで本質的なマッチングを実現したい】
実は、今また大学に通っていて、ワークショップの手法について学んんだばかりです。きっかけは、アクティブラーニングの手法を用いたキャリアデザインの授業で、どうしても一人では乗り越えられなかった壁があったからです。しかし、今は、このワークショップの考え方を用いて、企業と大学側をつなぐお手伝いができたらと考えています。ただ意見を交わし合うだけでなく、ワークショップ形式で双方のニーズや考え方を伝えあったり、新しい発想を生み出したりといった取り組みを進めることで、よりよいマッチングが実現できるのではないか?と色々と構想中です。
大学受験の総合型選抜の指導にかかわることもあるのですが、こちらも就活と同じで、合格のみを目的としたノウハウの伝授がメインになっていることがあります。また、全ての大学とは言いませんが、「ペーパーテストでは見えない力を評価する」という総合型選抜の趣旨に反し、青田買いが目的になってしまっている大学もあると思います。
若い人の本質的な成長を促し、お互いにとってベストなマッチングを進めていくためにも、受験も就活も、大人側が安易な「合格」や「内定」を目的にすべきではないと思いますね。
私はキャリアコンサルタントとしての自分の強みを「マッチング力」だと自覚しています。最適な場面で、色々な人と人、組織と組織をつないでいくことが得意です。これからも自分の強みを生かして、色々な方のそれぞれのステージで、花を咲かせるお手伝いをしていきたいです。個人が輝くことが、組織の成長に繋がると思うからです。