永田陽子さん
1997年株式会社ウィザスに入社。大検(大学入学検定試験 現:高卒認定試験)専門予備校の教務として社員となり、キャンパスでの管理職の経験を経て、第一学院高等学校理事(エリア長)として複数キャンパスを統括。2020年4月子会社の株式会社グローバルウィザスへ出向、現在、取締役兼本部長として業務を担当。
【保有資格】
国家資格キャリアコンサルタント、国家資格キャリアコンサルティング技能士 2級 合格、日本語教師養成講座420時間修了、日本語教員試験 合格、登録日本語教員(2025年3月)
現在の活動
外国人人材の課題解決などに取り組む
現在は、キャリアコンサルタントと登録日本語教員の資格を活かし、企業で働く外国人が仕事で必要な日本語を習得するための日本語研修や、外国人を受け入れる企業側への異文化理解研修などの営業を担当しています。自ら外国人のキャリア支援をしたり、異文化理解研修の講師をしたりすることもあります。また、社内のメンバーの成長を促すための面談・ミーティング・研修なども重要な業務です。
一般的なキャリアコンサルタントのように、働く人のキャリアを直接支援するというよりは、少し俯瞰して課題解決のための仕組みづくりに取り組むことが多いです。企業や個人の課題をヒアリングして研修を提案するうえで、キャリアコンサルタントのスキルは非常に役立っています。
仲間と学び合った経験を学校運営に活かす
キャリアコンサルタントとしての知見が特に役立ったのは、株式会社ウィザスで運営している通信制高校での「ピアサポート活動」の企画拡大です。
ピアサポート活動では、生徒が主導となり、全ての生徒が楽しく学校生活を送れるよう、レクリエーションやイベントの企画実行など様々な活動をします。
通信高校に通う生徒のなかには、不登校などの経験から、孤独を感じている人もいます。そこで、キャリアコンサルタント養成講座で学んだ、同じ志を持つ仲間たちとの学び合いや自己理解の大切さを伝えられればと、ピアサポート活動を企画拡大しました。
活動を通して他の人に貢献する喜びを知ることで、生徒たちは自信をつけ、大きく成長しました。卒業式の答辞で、「ピアサポーターに挑戦したことで成長しました」と話す生徒の姿を見た時は、本当に嬉しかったです。
キャリアコンサルタントによる研修に衝撃を受けた
キャリアコンサルタントに興味を持ったきっかけは、通信制高校のキャンパスで管理職をしていた時に、キャリアコンサルタントの講師による幹部研修を受けたことです。
人とのつながりのつくり方がテーマで、これまで受けてきた組織論など理論・知識を学ぶ研修との違いに衝撃を受けました。講師の方がずっと笑顔でお話されていて、雰囲気づくりが上手だったんです。アイスブレイクをきっかけに参加者同士の壁がどんどん取り払われていくのを感じ、人とつながることの大切さをあらためて知りました。それと同時に、「キャリアコンサルタントってこんなことができるんだ」と、すごく印象に残りました。
40歳を過ぎた時にあまり仕事で貢献できている実感が持てず、これからの自分自身のキャリアについて立ち止まって考えるようになりました。そうしたなかで、自己研鑽としてキャリアコンサルタント養成講座に通い始めました。自分の成長につながるのはもちろん、研修での経験から、組織のなかでもスキルを活かせると考えたんです。
キャリアコンサルタント試験
仲間たちとの実技対策で話を受け止める力が身についた
キャリアコンサルタント試験には、筆記試験と実技があります。実技ではクライアントに寄り添い、話をきちんと聴く力が問われます。特に難しかったのは、クライアントの話をずっと集中して聞き続けることと、話の途中で自分の価値観を挟まないことです。
話を聞いているとついアドバイスをしたくなりますが、そうするとクライアントは自分の話がしにくくなってしまいます。まずは、クライアントの話を受け止めることが大切です。
実技試験対策は、養成講座修了後は一人ではできないので、養成講座で知り合った仲間と一緒に練習したり、先輩キャリアコンサルタントが開く勉強会に参加したりして、技術を身につけました。その過程で、自分の聞く姿勢や話し方の特徴についての理解が進み、試験にとても役立ちました。
技能士2級の取得を通してさらに実践力を磨く
その後取得したキャリアコンサルティング技能士2級の実技試験では、聴く力だけではなく課題解決に寄り添う力が求められました。実務の場ではクライアントが話す課題と、本質的な課題が異なるケースも多く、その気づきを促すコンサルティングが必要です。
例えば「うまくいかない原因は他の人にある」と思っているクライアントに、自分自身がどう受け止め自分自身がどのように変化できるかと考えられるようになるといったイメージです。試験対策を通して、より実務に役立つスキルを身につけられました。
キャリアコンサルタントとして
日本語教師資格取得への挑戦などさらに学び続ける
キャリアコンサルタント資格取得をきっかけに、学ぶことの楽しさや仕事に活用して成果を出す面白さを知ることができ、積極的に資格取得にチャレンジするようになりました。
外国籍の高校生が増えていくなか、言葉の壁で困っている生徒や保護者の姿を見て、自分も貢献できることがあるのではと思い、日本語教師の資格を取得。さらに、キャリアコンサルティング技能士2級やアンガーマネジメント関連の資格も取得し、専門性を高めてきました。
クライアントに寄り添い、外国人人材に関する課題を解決
私は法人や個人の方と関わる営業の仕事をしています。キャリアコンサルタントとしての傾聴力を活かし、クライアントに寄り添い、相手の真の課題を引き出すことで信頼関係を構築できることは大きな強みです。
そうした強みは、特に外国人人材を雇用する企業の課題解決に役立っています。日本で働くうえで課題となるのは、言葉だけではありません。日本のビジネスマナーや察する文化への理解が求められます。
しかし外国人がそれらを理解するのは、簡単ではありません。企業側に働きかけ、管理職はもちろん現場で一緒に働くメンバーにも、その人の背景や事情を理解してもらうことが大切です。指示の出し方など適切なコミュニケーションの仕方を身につけることで、外国人人材が力を発揮できるようになります。
また日本語コミュニケーション能力が向上したら待遇をアップするといったように、キャリアパスが描ける仕組みづくりも企業に提案しています。
そうした取り組みによって、外国人人材が成果を出せるようになったり、定着率が上がったりといった成功事例もたくさんあります。
クライアントの成長を待つことが真の課題解決につながる
キャリアコンサルタントの資格を取ってから特に意識しているのは、「ネガティブ・ケイパビリティ」です。ネガティブ・ケイパビリティとは、答えがすぐに出ない状況や不確実な状態に耐え、じっくり考える力のことです。
クライアントの課題に対して急いで答えを出すのではなく、クライアントが自分なりの答えを見つけ、成長するのを信じて待つことが大切です。
ネガティブ・ケイパビリティを意識したアプローチを通して、クライアントが自分で課題を解決できるようになることが、本質的なサポートにつながると感じています。
これからキャリアコンサルタントを目指す方へ
「自分には特別なキャリアがない」と思っている方もいますが、キャリアは生きているだけで積んでいるものです。例えば専業主婦の経験も立派なキャリアであり、これからに活かせるものです。特別な経験がある人だけがキャリアコンサルタントになるのではないと思います。今の自分を立ち止まって見つめ直し、周りの人を支援したいという想いがあれば、自分を十分に活かせる資格です。
キャリアコンサルタントは他者を支援する資格ですが、学ぶプロセスの中で自分自身と向き合う機会が多く、今後のキャリアを考えることにもつながります。
直接仕事で資格を使わなくても、今の仕事・子育て・自分の成長など人生のあらゆる場面で、学んだことを活かせるので、ぜひチャレンジしてください。
今後について
専門性を磨き貢献度をさらに高めたい
仕事を通じて、クライアント・社員・社会への貢献度を高めていきたいと思っています。経営の専門性を磨くためにMBAの取得を目指し、2025年の4月から社会人大学院生になります。新しい仲間と出会い、学ぶのがとても楽しみです。
特に伸ばしたいのは、間接的なマネジメントの力です。自分自身がキャリアコンサルタントとして培った視点を活かして、多くの人たちがやりがいを持ってやるべきことをできるような環境設定をしていくことが目標です。自分の取り組みで、より多様な人材が活躍できる社会づくりに貢献できたら嬉しいです。