中小企業診断士の1次試験の試験内容・試験科目の概要
1次試験[筆記試験](A)「経済学・経済政策」
中小企業診断士試験の1次試験では7科目が出題されます。
科目ごとに見ていきましょう。
まずは、1次試験の「経済学・経済政策」です。
さまざまな経済活動を理論的に説明する能力が求められます。
マクロ経済とミクロ経済を中心に、会社の内外における経済活動をテーマにした設問が問われます。
科目設置目的としては「企業経営を行うにあたり、基本的なマクロ経済指標の動向、為替相場、国際収支、雇用・物価動向などを的確に把握しておく。
また、経営戦略やマーケティング活動の成果を高めると同時に、積極的な財務戦略を展開するにはミクロ経済学の知識も必須のため」とされています。
デフレ、インフレなどの経済動向や商品の価格がどのように決定されるかなど生活に関連する分野です。
実務ではほとんど扱われないものの、経済学的思考が必要になるのがポイントといえます。
1次試験[筆記試験](B)「財務・会計」
財務・会計では、アカウンティング(会計)とファイナンス(財務)の2つの分野から、経営資源の肝となる資金に関する内容が出題されます。財務会計や管理会計、資金調達など二次試験にも関連する分野です。
科目設置目的としては「企業経営の基本である財務・会計。企業の現状把握や問題点の洗い出しに関して、財務諸表を用いた経営分析が重要な手法と言える。今後、中小企業による資金調達や他社買収が活発になることが予想されるため、投資評価や企業価値の算定等に関する知識が必要になるため」とされています。
1次試験[筆記試験](C)「企業経営理論」
経営の根幹となる経営戦略論、組織論、マーケティング論から構成される科目です。中小企業診断士の業務における基礎を担う科目という事もあり、他科目全てと関係しているのが特徴。
科目設置目的としては「企業経営において、資金面以外の基本的な経営理論を取得する事は、現状分析、問題解決、事業展開の助言実施のために欠かせない知識である。
近年では、技術と経営の両方を理解した上で、技術力を経済的価値に転換する技術経営の需要が高まっていることからも、企業経営理論は必要不可欠のため」とされています。
会社の経営はもちろん、人材や施設の管理、マーケティング手法など幅広い分野が対象です。
1次試験[筆記試験](D)「運営管理(オペレーション・マネージメント)」
運営管理では、生産と販売の双方に関する知識が問われ、現場のオペレーション管理などが出題されます。
分野は大きく分けて生産管理と店舗・販売管理の2つです。
生産管理では製造業を中心としたメーカーの知識が問われ、店舗・販売管理では小売りやサービス業のオペレーションにまつわる知識が必要になるでしょう。
科目設置目的としては「工場・店舗についての生産・販売関連の運営管理は、中小企業の大きな要素。
また、情報通信技術の発展により、多様な事業運営形態をサポートするコンサルタントのニーズが高まっており、運営管理知識が必要不可欠のため」とされています。
店舗・販売管理ではお店の外観や、陳列方法などイメージしやすいテーマとなっているのが特徴です。
1次試験[筆記試験](E)「経営法務」
知的財産権と会社法を中心に、企業を経営する上で必須となる法律知識が問われます。
また、親から子への事業承継に関係する相続問題も近年頻出論点となっているようです。
科目設置目的としては「中小企業診断士が経営者に助言を行うにあたり、企業経営に関する法律、諸制度、手続きに関する知識は必要不可欠となっている。
また、必要に応じて独占業務資格を有する士業への橋渡しの役割も担う事から、最低限度の実務知識は求められるため」とされています。
基本的には上記で紹介した知的財産権と会社法が問題の過半数を占めますが、民法などその他法律も出題されますので注意してください。
1次試験[筆記試験](F)「経営情報システム」
情報通信技術の進展にともない、企業経営においても情報システムの知識が必要となりました。この科目では、情報システムの基礎的な知識、経営への活用方法が問われます。
科目設置目的としては「情報通信技術の進展・普及に伴い中小企業経営においても多様な場面でIT活用が重要となった。
経営戦略・企業革新と関連付けて、今後情報システムを経営資源として効果的な活用を実現するための適切な助言が中小企業診断士に求められるため」とされています。
IT技術の発展が年々進むにつれ、経営情報システム科目の難易度も上昇傾向にあるようです。
1次試験[筆記試験](G)「中小企業経営・中小企業政策」
中小企業をテーマに、中小企業経営と中小企業政策の2分野から出題されます。
中小企業経営の分野では中小企業の経営動向や課題が問われ、中小企業政策では政府が行っている中小企業向けの施策が設問に並ぶでしょう。
毎年刊行されている中小企業白書から問題が出題されるため、過去問が活用しづらい点が挙げられます。
科目設置目的としては「中小企業に対するコンサルタントとして、中小企業ならではの特徴を理解した上での助言が求められる。
企業経営の実態・各種統計から、様々な分野における中小企業の立ち位置を把握し、大企業との違いを明確にしておかなければいけない。
政府や地方自治体が行う各種政策についても理解を深め、担当する企業の事業レベルに合わせた活用方法を見出す力も求められるため」とされています。
中小企業診断士の2次試験の試験内容・試験科目の概要
2次試験[筆記試験](A)「中小企業の診断及び助言に関する実務の事例I(組織・人事)」
ここからは、2次試験についてお話しします。2次試験は4科目の筆記試験と口述試験に分かれています。
組織・人事についてです。
人事を含む組織を中心とした経営戦略や経営管理に関する事例が出題されます。
例えば「組織管理上の課題とは」や「人材の活用にあたってどのような助言が必要か」など。
一次試験科目での「企業経営理論」の組織・人材に関する内容が深く関連しています。
近年では組織・人事といった企業における内部資源だけに留まらず、ビジネスモデルや事業戦略面なども出題されることも増えてきたのが特徴。
事例で提案が予想される施策のバリエーションはある程度決まっており、組織構造、人事制度、組織文化、能力向上、モチベーション向上などが挙げられます。
経営戦略や経営管理のために活用できる有効な施策が問われますが、組織・人事の観点に基づいた解答が必要です。
2次試験[筆記試験](B)「中小企業の診断及び助言に関する実務の事例II(マーケティング・流通)」
マーケティングや流通をテーマに、経営の戦略や管理に関する事例が出題されます。
例として、「事例企業が狙うべき顧客層」、「商品販売シェア拡大のための具体的施策」といった内容です。
一次試験では、「企業経営理論」のマーケティング、運営管理の流通や製品計画と内容が共通しています。
最近では、設問に記載される販売実績・客数データを参考にして解答するケースが増えているようです。
2次試験[筆記試験](C)「中小企業の診断及び助言に関する実務の事例III(生産・技術)」
製造業などにおける生産や技術を中心とした、経営戦略・経営管理に関する事例が出題されます。
例として、「生産管理上の課題」「課題解決のための具体策」を事例企業に沿ったアドバイスで回答しなければいけません。
一次試験科目では、「運営管理」の生産管理と関係しています。
2次試験[筆記試験](D)「中小企業の診断及び助言に関する実務の事例IV(財務・会計)」
財務や会計をテーマに、経営戦略、経営管理に関係した設問が出題されます。
事例企業の貸借対照表、損益計算書から読み取る問題が中心になるでしょう。
与件文の文章自体は短いものの、経営指標やキャッシュフローについての計算問題が多いのが特徴です。
2次試験[口述試験]:面接試験
筆記試験で出題された4事例の中から、異なる点からの質問が出されます。
試験官3人から10分程度質問があり、質問数は決まっていません。
筆記試験同様に資料の持ち込みは認められておらず、あらかじめ事例の知識を記憶しておく必要があるでしょう。
なお、合格率は99%となっており、質問自体も特別難易度が高いわけではありません。
筆記試験合格者であれば、再度与件文を見直し、スムーズに回答できるように準備しておけば問題ないでしょう。
まとめ
当ページでは、中小企業診断士の一次試験と二次試験の科目の概要についてご紹介をしてきました。
一次試験、二次試験については別ページでさらに詳しくご紹介をしております。
『中小企業診断士の一次試験はどのような内容?勉強時間の目安や合格率についても解説!』
『中小企業診断士の二次試験の対策は?口述試験についても紹介!』
上記も参考にしていただけましたら幸いです。