医療事務の資格は本当に意味がない?
導入でも少し触れたように、医療事務の資格取得する意味は十分にあります。
医療事務の業務では、保険制度や診療報酬制度などの専門知識が必要です。未経験の人が医療事務の仕事を始めた場合、知識のあるなしで仕事の負担が変わってきます。
資格があれば業務を円滑に進められるでしょう。
また資格があれば、就職・転職活動の際にやる気やスキルを証明できます。無資格のライバルよりも、書類選考や面接を有利に進められ、自分が希望とする病院やクリニックで働ける確率が上がるでしょう。
勤務先にもよりますが資格手当がつくケースもあります。たとえば毎月1万円ほどの資格手当がつけば、年間で12万円も所得が上がる計算です。
医療事務の資格は数万円程度で取得できるため、資格取得の費用対効果は非常に大きいと言えます。
医療事務の資格は意味がない・いらないと言われる理由
前述のように医療事務の資格を取得する魅力はたくさんありますが、なぜ「意味がない」「いらない」と言われるのでしょうか。
【医療事務の資格は意味がない・いらないと言われる理由3つ】
- 就職・転職活動で苦労した
- 資格の知識が実務で役に立たなかった
- 資格保持者よりも実務経験者を重視するケースもある
就職・転職活動で苦労した
せっかく医療事務の資格を取ったのに就職・転職活動で苦労すると、「資格を取得した意味がなかった」と考える人もいます。
医療事務の業務は資格不問なので、無資格で就業できます。実際に未経験・資格なしで医療事務の職種に就いている方はたくさんいるでしょう。
また医療事務の求人は非常に多く、中には「半端に知識がある人より、何も知らない人に新人教育をした方が効率的」と考える医療機関もあります。
上記の背景により、「医療事務の資格は取得しても意味がないよ」と言われているケースがあります。
資格の知識が実務で役に立たなかった
医療事務の資格を取ったのに、「業務内容が全然わからなかった」などの事例により、医療事務の資格取得は意味ないと言われるケースもあります。
医療機関ごとに、医療事務の業務の進め方や方針は異なります。現場で覚える業務内容は膨大で、資格を取得したからと言って即戦力にはなりません。
たとえば、レセプト作成で必要なレセコンの使い方を学べる資格がありますが、職場ごとにパソコンやソフトが異なります。あらためてソフトの使い方を学び直す必要がある場合もあります。
資格保持者よりも実務経験者を重視するケースもある
資格を取得したものの、医療事務の求人で実務経験者を優遇するケースが多く、「資格に意味がない」と感じる人もいるようです。
【就職活動で優遇される順番】
- 1.経験と資格がある人
- 2.経験があり資格がない人
- 3.未経験で資格がある人
- 4.未経験で資格がない人
医療事務の仕事は現場で覚えることが多く、臨機応変な対応も求められます。資格の知識やスキルより、実務経験者が即戦力として判断されるのは当然と言えるでしょう。
医療事務の資格取得のメリット
医療事務の資格を取ると、次のようなメリットがあります。
- 努力をアピールでき就職・転職が有利に進む
- 業務を円滑に進められる
- 資格手当がもらえる場合がある
学びたいスキルや働きたい職場など、自分の目的に合わせて選べば、さらに資格のメリットを活かせるでしょう。
努力をアピールでき就職・転職が有利に進む
医療事務の仕事は景気に左右されず、長く働ける仕事です。男女問わず人気が高く、給与や福利厚生などで条件の良い求人に対しては、応募が殺到する場合もあります。
そのような状況で、医療事務の資格は非常に有力な武器となるでしょう。経験者はもちろん、未経験者も資格があれば医療事務の知識やスキルを証明し、ライバルよりも優位に立てます。
求人の中には応募者多数になることを見越して、資格取得者の求人条件をつけて応募者を厳選しているケースもあります。
仕事上で絶対の必要性はない医療事務の資格ですが、自分のなりたいものを叶えるためであれば十分に資格を取る価値はあります。資格を取得して、就職・転職活動を有利に進めてはいかがでしょうか。
業務を円滑に進められる
医療事務の資格がある人は、未経験・無資格の人より業務を円滑に進められるメリットがあります。
医療事務の業務では、専門性の高い知識が求められます。特に、医療施設の経営を左右する診療報酬業務(レセプト業務)では、診療報酬制度や保険制度などの知識が必要です。
医療事務の資格では、レセプト業務についても学びます。職場ごとに業務のやり方や、レセプト作成に使われるソフトが違うなどの例はありますが、基本の用語や事前知識がある分、慌てず働くことができるでしょう。
医療機関によっては資格取得の支援を行っており、知識の習得を推奨していることからも、業務において資格の有効性が分かります。
資格手当がもらえる場合がある
医療事務の給料では基本的に経験やスキルを評価する傾向ですが、資格も当然評価対象となります。職場によっては5,000~10,000円程度の資格手当が出るところもあります。
「収入を少しでも上げたい」「時給を上げたい」などの希望がある人は、医療事務の資格を取得した方が良いでしょう。
「診療報酬請求事務能力認定」や「医療事務管理士®技能認定試験」などは難易度の高い資格ですが、取得すると資格手当の対象になることも多く、収入アップには最適です。
たとえば、資格手当を3年間もらい続けた場合、次のような収入になります。
- 5,000円の場合:5,000円×12ヶ月×3年で18万円
- 10,000円の場合:10,000円×12ヶ月×3年で36万円
細かいシミュレーションは、後述の「医療事務の資格の有無でキャリア・給料はどう変わる?」で解説します。合わせて参考にしてください。
医療事務の資格取得のデメリット
医療事務を取得する際のデメリットには、次のようなものがあります。
- 資格の受験料や教材の購入費がかかる
- 勉強時間を確保しなければならない
- 日々知識のアップデートが必要になる
デメリットを理解したうえで取得を目指すと良いでしょう。
資格の受験料や教材の購入費がかかる
医療事務の資格取得を目指す場合、次のようなお金がかかります。
- 受験料
- テキスト代
- 通信講座や通学講座の受講費用
独学ではテキストと受験料がかかります。
受験勉強に必要な資料やテキストをそろえると1万円~1万5千円はかかり、資格ごとの受験料も必要です。一度で合格できなかった場合、再度受験料を支払う必要があります。
通信講座にかかる費用は2~5万円、通学講座は5~10万円が目安です。
独学は安く済みますが、一人でコツコツ勉強するのが苦手な人には向かない勉強方法です。
通信講座や通学講座は費用がかかるものの、合格までのカリキュラムやスケジュールがしっかりしており、短期合格も難しくないでしょう。
独学で何度も試験に挑み、受験料を繰り返し支払い続けるリスクを考えると、講座の利用はベストな選択肢と言えるでしょう。
勉強時間を確保しなければならない
医療事務の資格を独学で勉強する場合、メディカルクラーク®(医療事務技能審査試験)などの難易度の低いもので、約200時間かかると言われています。
難易度の高い診療報酬請求事務能力認定試験などは600時間が目安です。
独学で1日1時間、1週間休まず勉強したとして、難易度が低くても7ヶ月は必要です。社会人や学生だと、日中は仕事や勉強で忙しく、時間の確保が難しいでしょう。
また無理に長時間勉強をして、プライベートや本業に支障が出るケースも考えられます。
通信講座や通学講座は効率的なカリキュラムを組んでおり、独学より短い勉強期間です。たとえば、代表的な医療事務資格のメディカル クラーク®(医療事務技能審査試験)は、3~6ヶ月が目安です。
資格取得のためにある程度勉強時間を確保しなければいけないのは、忙しい人にとって大きなデメリットと言えるでしょう。
日々知識のアップデートが必要になる
医療事務では専門知識が求められます。その中でも診療報酬点数には改定があり、「一度覚えたから大丈夫」とはなりません。
診療報酬点数は医療行為に対して定められている点数で、1点10円として計算されています。レセプト作成では、この診療報酬点数の知識が不可欠です。
診療報酬点数は、日本の経済状況や医療の進歩に合わせて2年おきに改定されます。資格取得後も知識をアップデートしていく必要があり、勉強が苦手な人にとってはデメリットとなるでしょう。
医療事務の資格の有無でキャリア・給料はどう変わる?
医療事務の資格を取得しても、基本給は変わらない、もしくは資格手当がつかない場合があります。また、資格は医療機関ごとに評価が異なるため、必ず昇給につながるわけではありません。
資格手当がついたとしても毎月の支給額は少額です。しかし下記の図の通り、8,000円の資格手当を毎月積み立てていくと、3年後、5年後には非常に大きな金額になります。
医療事務の資格を取得したら、資格手当のある求人を狙って応募するのがおすすめです。
資格があれば、昇給だけでなく、キャリアアップもしやすくなります。より給料の条件の良い職場に転職しやすくなるでしょう。
「取る意味ははい」と言われがちの医療事務の資格ですが、自己投資、そして将来のお金のため、キャリアアップのためを考えると取得する意味は非常にあると言えます。
関連記事 医療事務の給料相場は?安いと言われる理由や給与アップの方法をご紹介
医療事務の資格取得をオススメしたい人
医療事務の資格取得をオススメしたい人をまとめました。
- 自分に自信をつけたい人
- キャリアアップを視野に入れている人
- 医療業界が未経験の人
自分に自信をつけたい人
「医療事務の仕事に就きたいけれど自信がない」という人は、医療事務資格の取得をおすすめします。
医療事務は一般事務と違い、レセプト作成やカルテのデータ入力などで専門知識を必要とします。
レセプトコンピュータ(レセコン)やパソコンを使うことも多いため、「パソコンスキルに自信がない」という人もいるでしょう。
医療事務の資格では、レセプト作成に必要な知識を学ぶことが可能です。資格の中には「医療事務OA実務能力認定試験」や「医事コンピュータ技能検定試験」のように、医療事務で必要なパソコンスキルの習得に特化した資格もあります。
資格を取得すれば、「勉強を頑張って目標だった資格を取れた」「業務で必要なスキルが身についた」という自信が身につくでしょう。
キャリアアップを視野に入れている人
医療事務でキャリアアップを目指している人も、資格の取得をオススメします。
「最初は地方の個人病院で勤務する予定だけど、将来的には総合病院などに転職したい」などのキャリアプランを立てている場合、医療事務の資格を保有しているとスムーズに転職しやすくなるでしょう。
書類や面接時に知識や経験があることをアピールできるからです。総合病院などの場合は、資格の保有が求人条件として設けられている場合もあるため、資格の取得者は選考で弾かれる可能性が低いでしょう。
特に難易度の高い資格は信頼性も高く、「診療報酬請求事務能力認定試験」などの資格は、医療機関でも高い評価の対象になるでしょう。
医療業界が未経験の人
医療事務の経験がない人は、スキルがなく即戦力にならないと判断され、採用されない可能性があります。
もちろん、未経験でも歓迎している職場はありますが、新人教育の制度が整備されている、前職のスキルが役立つと判断してくれる所が対象で、もっとも重視されるのは経験です。
医療事務の資格を保有できれば、ある程度の知識があることの証明となります。未経験の壁を突破できるため、未経験者よりも有利に進むのは間違いないでしょう。
ただし、医療業界で知名度が低すぎる資格だと評価されない可能性もあります。資格を選ぶときは、どのような資格が優遇されているか確認しておくと良いでしょう。
医療事務が未経験の人は、自分の強みとして、また就職・転職活動でアドバンテージを得るためにも、資格の取得がおすすめです。
医療事務に関するよくある質問
医療事務に関して、よくある疑問や質問にQ&A方式で解答します。
- 医療事務は資格よりも実務経験が求められるの?
- 医療事務の資格の中に国家資格はある?
- 医療事務の知識は独学と講座どっちで学ぶべき?
- 医療事務の資格を取るならどれがオススメ?
医療事務は資格よりも実務経験が求められるの?
医療事務の求人では、実務経験者がもっとも有利です。
医療事務の仕事は受付やレセプト業務だけでなく、医療スタッフと患者をサポートするクラーク業務なども含まれます。正確な処理や臨機応変な対応など、経験者ならではのスキルが求められます。
しかし、医療事務の求人の募集対象はさまざまです。未経験者も採用の対象にしている求人では、資格取得者を優遇している場合もあります。
必ずしも実務経験だけが重視されるわけではありません。
医療事務の資格の中に国家資格はある?
医療事務には民間資格しかなく、国家資格はありません。
ただし、「診療報酬請求事務能力認定試験」は、医療事務資格の中で唯一厚生労働省が認可しています。医療業界でも信頼度の高い資格です。
ほかにも、「医療事務技能審査試験(メディカルクラーク®)」や、「医療事務管理士®技能認定試験」など、民間資格でも医療業界からの認知度が高く評価されている資格があります。
自分が希望する勤務先がどのような資格を優遇しているか調べてから受験を検討してみましょう。
関連記事 医療事務の国家資格はない!?それでも医療事務資格を取得するメリットとは
医療事務の知識は独学と講座どっちで学ぶべき?
医療事務資格の取得を目指す場合、次の3つの勉強方法があります。
- 独学
- 通学講座
- 通信講座
どの勉強が向いているかは個人の性格や目標によって異なります。たとえば、資格取得まで時間の余裕があり、自分でスケジュールを立てて勉強するのが得意な人は独学が良いでしょう。
しかし、短期間で合格したい人は通学講座や通信講座を利用した方が効率的です。お金はかかりますが、試験対策用のテキストやカリキュラムを活用できる分、合格できる可能性は高くなる傾向にあります。
特に医療事務資格の中でも難易度の高い「診療報酬請求事務能力認定試験」は、講座を受講した方が合格の可能性が高くなるでしょう。
関連記事 【2023】医療事務の資格の合格率・難易度まとめ|受かるのは難しいって本当?
医療事務の資格を取るならどれがオススメ?
医療事務の資格は数多くありますが、おすすめなのは知名度や難易度の高いものです。
医療事務の資格は専門知識やスキルの証明になりますが、知名度や難易度が低すぎると採用担当者に評価されない可能性があります。
たとえば、次のような資格は医療業界からの知名度や信頼性が高く、就職や転職活動でも役立つでしょう。
- 医療事務技能審査試験(メディカルクラーク®)
- 診療報酬請求事務能力認定試験
- 医療事務検定試験
- 医科 医療事務管理士®技能認定試験
- 医科2級医療事務実務能力認定試験
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まとめ
本記事では「医療事務の資格は意味がない」と言われる理由や取得するメリット、資格があることで給料がどう変わるのかを解説しました。
医療事務の資格があまり評価されないのは、国家資格がなく、取得難易度の低い資格も含まれているからです。
しかし、医療事務の資格は未経験・無資格の人よりも、業務に必要な知識とスキルを医療機関の関係者にアピールしやすく、就職・転職活動が有利に進みやすくなります。
また、働き始めてからも医療用語や医療制度を理解している分、仕事がスムーズに進むなど、多くのメリットがあり、資格取得は「意味がある」と言えるでしょう。
医療事務の資格を取得する際に重要なのは、「自分の目的や将来設計に合ったものを選ぶ」点です。
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