「整体師はやめとけ」と言われる理由
収入が低い
「整体師はやめとけ」と言われる理由の1つに収入面が挙げられます。「求人ボックス 給料ナビ」によると、整体師の平均年収は約390万円です。月給換算で33万円、初任給は26万円程度が相場と言われています。
国税庁の「令和4年分 民間給与実態統計調査」では、日本の平均給与は458万円となっており、日本の平均年収と比べると整体師の収入は低い傾向です。
ただし、整体師の全体の給与幅は277万円から670万円と幅広く、職場やスキルなどによる収入の差が大きいと考えられます。また、勤務先によっては歩合制の給与形態を採用しているところもあるため、自身のスキルや経験が収入アップにつながることがあります。
競合が多い
近年、整体師のニーズは増していますが、一方で競合が増えているという面があります。厚生労働省の「令和2年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」によると、2020年の整体院数は次の通りです。
整体院のタイプ | 整体院の数 (単位:ヵ所) |
---|---|
あん摩、マッサージ及び指圧を行う整体院 | 18,34 |
はり及びきゅうを行う整体院 | 32,103 |
あん摩、マッサージ及び指圧、 はり並びにきゅうを行う整体院 | 38,309 |
その他の整体院 | 50,364 |
柔道整復の整体院だけでも5万ヶ所を超えており、さまざまな整体院が存在することがわかります。整体院数が多いということは、ニーズや就職先の選択肢が多いということですが、その分、競合となる整体院も多いということです。
整体院が地域に集中している場合、競合の店舗の影響を受ける可能性があります。競合の中でも活躍していくためには、スキルを身につけたり得意分野を伸ばしたりと、自身の強みを磨くことが大切になります。
体力的につらい
整体師の仕事には体力が必要です。施術をする際は手や指を使い、立ったまま行ったり中腰になったりするため、体力的につらいと考えられています。そのため、整体師は自身の身体のメンテナンスをすることも大切になります。
とはいえ、テクニックをしっかりと身につければ、余計な体力を消耗しない施術を行うことも可能です。確かに体力を必要とする仕事ではありますが、スキルやテクニックで身体の負担を軽減させられます。
クレーム対応や接客が大変
整体師の仕事は、お客さまと直接関わる仕事のため接客をする機会が多いです。施術のためにお客さまの身体に触ったり、健康面のサポートをしたりすることから、時にはクレームを受けることもあるでしょう。
お客さまの症状は人によって異なるため、「施術を○回受けたのに、症状がよくならない」「一度は症状が改善したが、また痛くなった」といった不満を感じさせてしまうこともあるかもしれません。症状の状態や改善までの期間も人それぞれであるため、施術前のヒアリングや丁寧な説明が必要になります。
整体に関するスキルだけでなく、接客方法やビジネスマナーを身につけることは、誠実な対応につながります。
整体師の実情は?
仕事内容
整体師は、手や指を用いてお客さまの身体を刺激して、身体のバランスを整えたり健康維持をサポートしたりする仕事です。例えば、筋肉や骨格を調整したり、リフレクソロジーやストレッチを行ったりと、さまざまな方法でお客さまの身体の不調にアプローチします。これらの施術は、肩こりや腰痛といった症状の緩和・改善だけでなくリラクセーションやデトックスの効果も期待できます。
整体師のスキルはさまざまな場所で活かせます。
整体院
整体院では、骨のズレを整えたり筋肉の疲労をほぐしたりして、身体のバランスを整えます。似ている施設として整骨院(接骨院)があります。整骨院(接骨院)では柔道整復師が施術を行い、捻挫や打撲、脱臼などに対して治療を行います。
介護施設
入居者や利用者に整体サービスを行う介護施設もあります。体操やストレッチを実施したり、施術を行ったりするため、整体師のスキルを活かすことができます。
スポーツクラブ
スポーツをする方に向けて、トレーニングによる疲労やダメージの回復をサポートします。フィットネスクラブ・ジムのスタッフやスポーツチームのトレーナーとして、スポーツをする方の身体のメンテナンスやパフォーマンス向上を支えます。
給与形態
固定給のほかに、リラクゼーションサロンなどでは歩合制を採用しているところもあります。施術1件ごとの報酬やお客さまからの指名による報酬で給与が変わるため、自身の努力やスキルの向上で収入アップを目指せます。
整体師の就業形態は、正社員やパートタイマーのほかに、フリーランスや業務委託、自営などさまざまです。経験を積んで独立・開業したり、企業などと業務委託契約を結んだりと、幅広い働き方が可能です。
柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師の違いは?
整体師に似ている仕事として、柔道整復師やあん摩マッサージ指圧師がいます。それぞれの違いを表にまとめました。
柔道整復師 | あん摩マッサージ指圧師 | 整体師 | |
---|---|---|---|
必要な資格 | 国家資格「柔道整復師」 | 国家資格「あん摩マッサージ指圧師」 | 特になし |
主な資格の取り方 | 柔道整復師養成施設(大学や短大、専門学校)でカリキュラム修了後、国家資格に合格すること | 文部科学大臣や厚生労働大臣が認定する学校や養成施設でカリキュラム修了後、国家資格に合格すること | ― |
施術内容 | 手技を使って応急的・医療補助的方法によりケガを治療する | 力を入れた刺激を身体に与える指圧・マッサージを行う | 体重をかけて痛みを感じない程度の施術を行う |
柔道整復師やあん摩マッサージ指圧師は、専門的な施術を行うため国家資格が必要です。一方で、整体師には必須となる資格はありませんが、柔道整復師やあん摩マッサージ指圧師が行うような専門的な施術を行うことはできません。
整体師に必要なスキル・能力は?
整体師になるために必須となる資格や学歴などはありません。しかし、実際に働く際は、さまざまな専門的な知識・スキルが求められます。
施術スキル
適切な施術を行うためには、骨格、筋肉、神経、身体の部位といった基本的な知識や仕組みを理解することが必要です。身体の構造を理解することで、不調が起こる原因や改善までの施術の流れがわかります。その上で、具体的な症状への対処法や手技のスキルを学ぶことで、安全で効果的な施術が可能になります。
コミュニケーションスキル
整体師には接客業の一面もあるため、コミュニケーションスキルが求められます。お客さまから症状をヒアリングしたり施術の説明をしたりと、丁寧なコミュニケーションが大切になります。
また、お客さまの中には、体調不良の改善だけでなくリラックスや癒しを求めて施術を受けにくる方もいます。施術中に相談を受けたり雑談をしたりする機会もあり、お客さまが安心して整体を受けられるよう信頼関係を築く必要があります。
スキルをアップデートする力
お客さまに合った施術を行うためには、さまざまな経験を積んだり、新しい知識・技術を積極的に身につける姿勢が求められます。
施術スキルは1つ覚えれば、全ての人に通じるというわけではありません。人によって症状や改善までの期間・方法が異なります。
整体師に向いている人は?
向上心がある人
お客さまが抱える症状やリクエストは人によってさまざまです。臨機応変に対応するためには、知識やスキル、経験が必要になります。そのため、日々の自己研鑽が大切になり、向上心を持って取り組むことが求められます。
体力に自信がある人
整体師の仕事は体力が必要になるため、自身が健康であることが大切です。しかし、どんな人も体力が無限にあるわけではないため、身体をいたわることは大切です。
整体師は手や指を使う仕事であり、仕事中も立ちっぱなしや中腰になる機会が多いため、疲労が溜まりやすい面があります。自身の健康にも気を遣うことは、整体師として長く働く際に大切な心構えとなります。
コミュニケーションが得意な人
お客さまと話をする機会が多いため、コミュニケーションが得意な人は整体師に向いていると言えます。適切な施術を行うためには、どのような症状に悩んでいるか、持病はあるかなど質問するヒアリングの力や、施術内容を説明する力が必要になります。
また、来店したお客さまに明るく挨拶をしたり、辛い症状に悩むお客さまに寄り添った言葉がけをしたりと、お客さまの立場に立ったコミュニケーションも大切になります。
自己プロデュースが得意な人
整体院や整体師の数が増えていることから、競合相手と差別化することは重要です。お客さまから「施術を受けるなら、この人にお願いしたい」と思ってもらうためには、自身の強みや得意分野をアピールすることも大切です。
「○○の症状改善が得意」「自分でできるストレッチの提案が得意」「丁寧な接客が得意」など、自身の得意分野を開拓できる人は、整体師としての強みにつながります。
整体師として成功するには?
自分に合った職場を探す
整体師というと整体院が代表的な職場ですが、介護施設やスポーツジム、リラクゼーションサロンなど、整体師の活躍の場はたくさんあります。
整体院は社会人からご高齢の方までさまざまな方が利用しますが、介護施設ではご高齢の方、スポーツジムではスポーツに打ち込む比較的若い年齢の方、といったように業種や職場によって顧客層も変わってきます。自身の興味のある分野や仕事内容を考えて就職先の選択肢を広げると、より希望に合う条件が見つけやすくなります。
収入アップの方法を探す
整体師の仕事は収入面で不安という方は、収入アップの方法として歩合制を採用している職場を探す、業務委託として複数の企業と契約を結ぶ、独立して開業を目指すなど、さまざまな働き方が可能です。
いきなり独立するとなると難しいため、専門的なスキルや接客スキルを身につけたり、経営について学んだりと事前準備を行うことは大切です。
スキルを磨いて得意分野を作る
整体師として自身の得意分野を作ることは集客につながるため、働き始めてからもスキルを磨き続けることは重要です。整体師として長く活躍したい、将来は開業したいと考える方は、競合相手との差別化について考えてみましょう。
新規のお客さまを獲得したり、リピートにつなげたりするためには、「この人(この整体院)にお願いしたいな」と思ってもらうことが大切です。特に競合相手が多い地域で働く際は、ほかの整体師・整体院との差別化が必要になります。
国家資格の取得を目指す
整体師は資格がなくてもなることができますが、できる施術の範囲は狭まってしまいます。しかし、柔道整復師やあん摩マッサージ指圧師といった国家資格があると、より専門的な施術が行えます。
就職先の選択肢を増やしたい、整骨院(接骨院)を開業したい、施術の幅を広げたいと考えている方は、国家資格の取得を視野に入れてみてはいかがでしょうか。働く際の選択肢を広げることで、収入や待遇などの希望をかなえやすくなります。
整体師のスキルを学ぶには?
国際ホリスティックセラピー協会(IHTA)認定 リラクゼーションセラピスト
国際ホリスティックセラピー協会による認定資格で、業界に携わるセラピストの検定です。認定試験(実技試験と学科試験)に合格すると認定証が発行されます。
IHTA認定校のYMCメディカルトレーナーズスクールでは、資格取得を目指せる講座が開講されており、整体師として就職・開業に必要な知識・スキルを学べます。
学習内容
整体師として長く安定して働くのに必要な技術を学習します。
・揉みほぐし
・全身の筋肉調整
・問診
・接客方法 など
JREC 日本リフレクソロジスト認定機構資格
JREC 日本リフレクソロジスト認定機構による認定資格で、4種類の資格(レギュラークラス、マスタークラス、トップインストラクター、サポートケア・デイリーケア・リフレクソロジスト)があります。
受験資格・取得方法
JREC加盟スクールで必要なカリキュラムを修了した後、認定試験に合格・会員登録することでライセンスを取得できます。
学習内容
例:マスタークラスの場合
JRECリフレクソロジーに必要な基本的な施術技術などを学習します。
・解剖生理学
・栄養学
・リフレクソロジートリートメント など
柔道整復師
柔道整復師として働くためには国家資格の取得が必須です。資格取得により、専門的な施術が行えます。
受験資格・取得方法
学校や養成施設で必要なカリキュラムを履修した後、国家試験に合格することで取得可能です。学校・養成施設の入学条件は、大学入学資格(高校卒業など)がある方です。
学習内容
国家試験で出題される内容は次の通りです。
・解剖学
・生理学
・運動学
・病理学概論
・衛生学、公衆衛生学
・一般臨床医学
・外科学概論
・整形外科学
・リハビリテーション医学
・柔道整復理論及び関係法規
あん摩マッサージ指圧師
あん摩マッサージ指圧師として働くためには国家資格の取得が必須です。資格を取得すると、より専門的な施術を行えるようになります。
受験資格・取得方法
文部科学大臣または厚生労働大臣が認定する学校・養成施設で必要なカリキュラムを履修した後、国家試験に合格することで取得可能です。学校・養成施設への入学条件は、大学入学資格(高校卒業など)がある方です。
学習内容
国家試験では、次の内容が試験科目として出題されます。
・医学史を除いた医療概論
・衛生学、公衆衛生学
・関係法規
・解剖学
・生理学
・病理学概論
・臨床医学総論
・臨床医学各論
・リハビリテーション医学
・東洋医学概論、経絡経穴概論
・あん摩マッサージ指圧理論及び東洋医学臨床論
整体師の魅力は?
お客さまから直接感謝の言葉を伝えられるのは、整体師の魅力の1つです。近年では、デスクワークの仕事も増えているため整体院には若い人からご高齢の方までさまざまな方が訪れます。中には長年身体の不調に悩んでいる方もいることでしょう。整体師は自分のスキルでお客さまの健康のサポートができるため、さまざまな方から感謝される存在です。「お客さまの喜ぶ姿を見たい」「人の役に立つ仕事がしたい」と考える方は整体師の仕事に向いていると言えます。
また、専門的なスキルが必要な仕事のため、経験を積んで身につけたスキルや知識はキャリア形成にも役立ちます。長く使える技術が身につくという点も整体師の魅力です。
まとめ
整体師は、確かに大変な部分がある仕事ですが、経験を積んだりスキルを磨いたりすることで、負担を減らすことは可能です。「整体師として活躍したい!」と考えている方は、基本を学ぶことから始めてみてはいかがでしょうか。
資格取得を目指す、スクールに通うなど学習方法はたくさんあるため、ご自身に合った方法で整体師の夢を目指してみてください。