フリーランスカウンセラーの現状は?
平均給与は?
「求人ボックス 給料ナビ」のデータによると、正社員の場合、心理士の平均年収は368万円と言われています。フリーランスで働く場合、自身でカウンセリングの料金設定や仕事量を決められるため、裁量次第で収入が変動します。
例えば、スキルマーケットの「ココナラ」では、1分100円からカウンセリングが販売されています。実績がない間は、収入が不安定になりやすいですが、依頼者を確保できるようになると、正社員で働く場合より多くの収入を目指すことが可能です。
働き方は?
フリーランスでカウンセリングの仕事をする代表的な方法をご紹介します。まずはさまざまな働き方について知り、自身に合った方法を考えてみましょう。
業務委託
企業などが一部の業務を外部の個人や事業者に委託することを、業務委託と言います。企業やクリニックなどの中には、業務委託でカウンセラーを募集しているところがあります。
業務委託契約では、カウンセリング1件あたりの報酬額を規定しているところや、あらかじめ固定報酬額を定めているところなどさまざまです。実際に働く際は、どのような形態なのか、求人内容や契約書の内容をしっかりと確認するようにしましょう。
業務委託では、企業などと提携するため、自身で集客をする働き方より仕事量が安定しやすいメリットがあります。
クラウドソーシング・スキル販売
クラウドソーシングとは、インターネット上で不特定多数の人に案件を公開・募集して、依頼するビジネススタイルのことです。また、スキル販売は、自身のスキルや経験をサービスとして販売する方法です。
近年では、「クラウドワークス」や「ココナラ」といったサイトが登場し、仕事を依頼したい人と自分のスキルを販売したい人のマッチングが行われています。このようなサービスを活用すると、効率よく案件を探すことができます。
オンライン上でやりとりできるため、働く場所や時間の自由度が高いというメリットがあります。
開業
経験を積んだカウンセラーの中には、独立開業する方もいます。テナントを借りたり自宅の一室を活用したりして実店舗のカウンセリングルームを準備する方法や、電話や「Zoom」などのWeb会議ツールを用いてオンラインでカウンセリングする方法があります。独立する場合は、事業計画の策定や開業準備、運用、集客など全て自身で行う必要があります。
料金設定やコンセプト、業務時間など全て自身の裁量で働けるというメリットがあります。
仕事の探し方は?
求人サイト
一般の求人サイトや企業の自社サイトを確認すると、業務委託の求人を見つけることができます。勤務地や給与形態、勤務時間、必要な資格などの情報が公開されているため、自身に合った求人情報を探してみましょう。
クラウドソーシング・スキル販売サイト
「クラウドワークス」や「ココナラ」など、クラウドソーシングやスキル販売を扱うサイトは数多くあります。このようなサイトでは、企業の案件だけでなく、個人のお客さまを探すことが可能です。
クライアントの話を聴くカウンセリング以外にも、さまざまなサービスの販売が可能です。例えば、「傾聴や質問力を高める対話術」「ストレスマネジメントの方法」といったカウンセラーの知識を活かしたオンラインレッスンや記事を執筆するライティング業務などがあります。自身の経験や得意なこと、スキルを仕事につなげることができます。
オンラインカウンセリングのマッチングサイト
近年では、対面だけでなくオンラインでのカウンセリングも広まっています。「cotree」「うららか相談室」といったオンラインカウンセリングでは、カウンセラーとクライアントのマッチングを行っています。
このようなマッチングサイトの登録カウンセラーとして働くことで、さまざまなクライアントと出会えます。また、オンラインカウンセリングでは、ビデオ通話や電話、テキストメッセージでのカウンセリングが可能なため、在宅で働くことが可能です。
自分で集客
独立開業する場合は、自身で集客してクライアントを見つける必要があります。SNSを使ったプロモーションは、手軽に始められる方法の1つです。ほかにも、ホームページやブログ開設、チラシの配布などさまざまな集客方法があるため、効果的な戦略を考えましょう。
フリーランスカウンセラーのメリット・デメリットは?
メリットは?
自分の裁量で働ける
企業に所属する場合、勤務場所や業務時間などが決まっているため、規則に沿って働くことになります。しかし、フリーランスの場合は、仕事内容や仕事量など自分の裁量で決められるためフレキシブルな働き方が可能になります。さらに、オンラインカウンセリングの普及に伴い、自宅にいながらクライアントとのやりとりができるようになりました。
育児や介護などで働ける時間が限られている、自宅で働きたいなどの事情にもフリーランスなら対応しやすいというメリットがあります。
自分が提供したいサービスを提供できる
スキル販売や開業をする場合は、自分でサービス内容を考えてクライアントに提供できます。組織の中で働くと、サービス内容の改善に時間がかかったり、やりたいことの実現が難しかったりと思うように動けないこともあります。
「時間をたっぷり使って話を聴きたい」「子どもの悩みに特化したカウンセリングを行いたい」など、自分のビジョンがある方はフリーランスだと実現しやすいというメリットがあります。
収入アップを目指せる
組織で仕事をすると、収入に上限があったり昇給までに時間がかかったりする場合があります。しかし、フリーランスは仕事量や料金設定を自分で決めることができるため、自分の工夫次第で収入アップを目指せます。
努力が収入アップにつながりやすいため、モチベーションの維持や達成感を感じやすいというメリットがあります。
デメリットは?
軌道に乗るまでは収入が不安定
固定給の職場で働く場合は、営業成績や仕事量に関わらず、一定の給与を受け取れます。しかし、フリーランスの場合は仕事量が直接収入に影響します。
フリーランスを始めても、最初はクライアントが見つからずに安定した収入が得られないことがあります。実績を積んでクライアントから信用を得たり、集客やプロモーション活動を工夫したりと試行錯誤が必要です。
そのため、いきなりフリーランスとして活動するのではなく、副業から始めることも一つの手です。
自分で運用しなければいけない
個人で働くため、さまざまな業務を自分一人で行わなければいけません。集客や新規案件の獲得、クライアントとのやりとり、経理業務、確定申告などカウンセリング以外の業務も発生します。集客や新規案件の獲得は収入に大きく影響するため、営業戦略をしっかり練ることが大切です。
また、事業規模が大きくなり、一人で手が回らない場合は、経理代行サービスや税理士への依頼など、業務を外注化することも考えましょう。
福利厚生や社会保障の面で不安
会社員の場合、厚生年金への加入や産休・育休制度の利用、企業による社会保険料の負担など、さまざまな福利厚生や社会保障を受けることができます。
一方フリーランスの場合、国民年金の加入や健康保険の手続き・納税などを自分で行わなければいけません。負担する金額や給付内容も会社員の頃と異なるため、不安に感じる方もいると思います。
働けなくなったときのことや将来のことを想定して、貯蓄や保険、ライフプランの見直しをして、もしものときに備えましょう。
フリーランスカウンセラーに資格は必要?
心理カウンセラーになるために必須となる資格はありません。フリーランスの場合も同様で、誰でも心理カウンセラーの肩書を名乗れます。
ただし、カウンセリングには、クライアンから話を聞き出す質問力や傾聴スキル、支援のための知識・技術が必要です。そのため、カウンセラーとして働く方には、「臨床心理士」や「公認心理師」などの資格を持っている方が多いです。資格を持っていると、自分のスキルを客観的に証明できるため、働く際に役立てることができます。
また、クライアントにとっては、カウンセラーを探す際に無資格者よりも資格保有者の方に依頼をしたいと考える心理が働きます。特にフリーランスの場合は、自分で集客するため、クライアントに信頼や安心感を持ってもらうことが大切です。
フリーランスカウンセラーとして活躍するには?
スキルを身につける
まずは、カウンセラーとしてのスキルを身につけることが重要です。未経験者やカウンセリング実績がない場合、いきなりクライアントを集めることは難しいでしょう。そのため、資格の取得や企業などに所属して心理カウンセラーとして働くなどの経験を積むことが大切です。
心理学関連の資格はさまざまな種類があります。心理カウンセラーとして代表的な資格である「臨床心理士」や「公認心理師」は大学や大学院での履修が必須なため、現在社会人の方にとっては取得のハードルが高いかもしれません。
しかし、通信講座や民間スクールでの取得を目指せる資格もあります。これから資格取得を目指す方は、まずは、どのような資格があるのか調べてみましょう。
得意分野を見つける
得意分野を持っていると、クライアントへのアピールポイントになります。クライアントに、多くのカウンセラーの中から「この人にお願いしたい」と思ってもらうためには、何が得意か、どのような専門性を持っているのか明確に伝えることが大切です。
そして、得意分野で仕事を獲得できるようになると、より専門的な知識・スキルが身に付くため、クライアントからの信頼につながります。
カウンセリングで寄せられる相談は、職場や学校での悩み、夫婦や家庭での問題などさまざまです。企業などの求人内容からどのような相談内容の分野があるのか探してみたり、これまでの自分の経歴や経験を振り返ったりして、得意分野を開拓してみてはいかがでしょうか。
人脈を広げる
フリーランスで働く場合、基本的には個人で動くことが多いため、人脈づくりを意識することも大切です。異業種交流会やフリーランス同士の交流会、セミナー参加、コミュニティへの所属など、多くの人と出会うことは仕事にもよい影響があります。
例えば、フリーランスの仲間を見つけることで情報交換や相談ができます。自分で調べるには限界があることも、仲間から業界の最新情報や仕事に活用できる知識などを教えてもらえるかもしれません。
また、積極的に自分を売り込むことで、クライアントを見つけたり新規案件を紹介してもらえたりと、仕事につながるきっかけがあるかもしれません。インターネットやSNSで交流会などの情報は数多く公開されているため、ぜひチェックしてみてください。
カウンセラーに役立つ資格
心理学に関する資格にはさまざまな種類があります。国家資格の「公認心理師」や民間資格の「臨床心理士」、特定の分野に特化した資格など数多く存在するため、ここではカウンセラーに役立つ資格を7つご紹介します。
メンタル心理カウンセラー®
資格概要
日本能力開発推進協会(JADP)が認定する資格で、カウンセリング業務に従事する者の知識とスキルを証明します。
受験資格
認定教育機関などが行う教育訓練で、カリキュラム修了した後、資格試験に合格することで取得できます。試験は随時在宅で受ける形式で、得点率70パーセント以上で合格です。
学習内容
カウンセラーに必要な知識・スキルを学習します。
- カウンセリングに関する基礎知識
- クライエントに関する基礎知識
- 心理学に関する基礎知識
- 精神医学の基礎知識
産業カウンセラー
資格概要
日本産業カウンセラー協会が認定する資格で、カウンセリングの基本スキルである傾聴について学べます。産業カウンセラーとは、働く人や組織が自ら問題解決できるよう心理的な手法でサポートするカウンセラーのことです。ハラスメントやメンタル不調、職場環境などに関する課題解決に向けて、産業カウンセラーの活躍が期待されています。
受験資格
次の①から③のいずれかの条件を満たした上で、試験(学科試験と実技試験)に合格すると取得できます。
①協会が行う産業カウンセラー養成講座を修了した者。
②(1)大学院で心理学など指定の課程を修了し、必要な科目単位を取得した者。
(2)社会人として週3日以上の実務経験が通算3年以上あり、大学院で指定の課程を修了し、必要な科目単位を取得した者。
③4年制大学を卒業し、指定の単位を取得した者。
学習内容
カウンセリングの基本となる傾聴スキルや支援に必要な知識について学習します。
- 傾聴の意義と技法
- 産業組織心理学
- 労働関係法
- 職場のメンタルヘルス対策への支援 など
ペットロス・ハートケアカウンセラーTM
資格概要
メンタルケア学術学会が認定する資格で、ペットロスへの基本的な理解と支援に関するスキルを証明します。ペットを失った際に心の行き場をなくしてしまい、心身に症状が起こることがあります。ペットの家族化が進む現代において、ペットロスに関する支援を必要とする方も少なくありません。
受験資格
2級・3級があり、いずれも指定教育機関で講座を修了した後、筆記試験に合格することで取得できます。
学習内容
カウンセリングに必要な知識のほかに、ペットに関する知識も学習します。
- カウンセリングの基礎知識
- 心理療法基礎
- ペットの生活について
- ペットの歴史
- ペットロスとは など
キャリアコンサルタント
資格概要
国家資格の1つです。この資格は、労働者の職業選択や職業設計などに関する相談・指導を行うキャリアコンサルタントの仕事をする上で必須となります。キャリア形成の専門家として、企業や大学、人材紹介業界などで活躍できます。
受験資格
次の①から③のいずれかの条件を満たした上で、試験に合格すると取得できます。
①厚生労働大臣が認定する講習を修了した者。
②労働者の職業の選択、職業生活設計または職業能力開発及び向上のいずれかに関する相談に関する経験を3年以上積んだ者。
③技能検定キャリアコンサルティング職種の学科試験または実技試験に合格した者。
学習内容
キャリアコンサルタントの実践的な知識・スキルについて学習します。
- キャリアに関する理論
- メンタルヘルスの知識
- 相談過程に必要なスキル など
チャイルドカウンセラー
資格概要
日本能力開発推進協会が認定する資格で、学校でのさまざまな問題に対応できる知識・スキルを証明します。現代では、不登校やいじめ、引きこもりなど、子どもを取り巻く問題が複雑化しています。そのような中で、子どもたちの悩みを解決に導く存在としてチャイルドカウンセラーの活躍が期待されています。
受験資格
認定教育機関などが行う教育訓練でカリキュラムを修了した後、試験に合格することで取得できます。試験は在宅で受験でき、得点率70パーセント以上で合格です。
学習内容
子ども達が抱える問題の解決をサポートできるよう、知識やカウンセリングスキルを学習します。
- チャイルドカウンセリングの役割と理念
- 現代社会における子どもの問題行動
- 子ども理解のあり方
- 家族問題との関わり
- 来談者との関わり
- 問題行動 など
臨床心理士
資格概要
日本臨床心理士資格認定協会が実施する資格で、心理専門職の証明となります。臨床倫理学の知識・技術を用いて心の問題にアプローチする臨床心理士に必須の資格です。
受験資格
受験資格を満たした上で、試験に合格することで取得できます。基本的には、大学院を修了していることが必須となります。
主な受験資格
- 指定の大学院(第1種)を修了して、所定の条件を満たした者。
- 臨床心理士養成に関する大学院を修了した者。
- 外国で指定大学院と同等以上の教育歴があり、日本で2年以上の心理臨床経験を持つ者。
- 医師免許の取得者で、取得後2年以上の心理臨床経験を持つ者。
試験概要
一次試験と二次試験があります。
一次試験:マークシート形式と論述形式の2種類
二次試験:口述面接
公認心理師
資格概要
国家資格の1つで、心の支援をする公認心理師に必須となる資格です。公認心理師は、保健医療や福祉、教育などの分野で活躍しています。
受験資格
受験資格を満たした上で、国家試験に合格することで取得できます。基本的には、大学や大学院で科目を履修することが必須になります。
主な受験資格
- 大学および大学院で必要な課程を修了した者。
- 大学で必要な科目を修め、卒業後2年以上の実務経験を積んでいる者。
試験概要
筆記試験:合格基準は、総得点の約60パーセント以上で、問題の難易度によって補正されます。
カウンセラーに必要なスキルは?
コミュニケーションスキル
クライアントと直接関わるカウンセラーには、コミュニケーションスキルが必要です。悩みを抱えたクライアントから話を引き出したり、相手の気持ちに寄り添ったりと質問や傾聴のスキルが求められます。
クライアントの中には、自分の気持ちをなかなか伝えられない方や緊張してしまう方も少なくありません。心を開いてもらうためには、対話を通して信頼関係を築くことが大切です。
そして、カウンセラーは話を聴くだけでなく、クライアントが問題を整理したり問題解決について考えられるよう支援する役割もあります。このようにカウンセリングでは、話を聴く力、伝える力の両方が求められます。
分析力
カウンセリングは、ただ悩みを聴くだけでは終わりません。悩みの原因を整理したり問題解決を促したりしてクライアントの心をサポートします。
クライアント自身も、問題の原因や解決策が分からないケースは多々あります。そこで、カウンセラーはクライアントの状況や会話の内容、心理検査の結果などから原因を分析したり今後の方針を立てたりします。このようにカウンセラーは、クライアントに関する情報を集めて分析する力が求められます。
個人情報の取り扱い
公認心理師や臨床心理士などのカウンセラーには守秘義務があり、仕事の際に知った秘密はほかに漏らしてはいけません。カウンセリングでは、クライアントの個人情報を扱う機会が多いため、特に意識をする必要があります。フリーランスとして働く場合、クライアントの記録や情報は自分で保管するため、保存・管理に細心の注意を払いましょう。
個人情報の漏えいは、クライアントの不利益になるだけでなく、自身の信用失墜にもつながります。クライアントに信頼されるカウンセラーになるためにも、個人情報の扱いへの意識をしっかり身につけましょう。
まとめ
ストレス社会と言われる現代において、心の悩みをサポートするカウンセラーのニーズは高く、重要な役割を担っています。
フリーランスとして活躍するには、さまざまなクライアントの悩みに対応できる知識やスキルを身につけることが大切です。スキルアップのために勉強を始めたり、資格取得を目指したりと、できることから一歩一歩挑戦してみてください。