心理カウンセラーはどんな仕事?
心理カウンセラーの1日の流れ
心理カウンセラーとは、心や対人関係などに悩んでいる人の話を聴いたり、アドバイスをしたりして、問題解決をサポートする仕事です。
病院で働く心理カウンセラーのある日のイメージを見てみましょう。
- 8:00
- 1日の仕事の予定を確認。
午前中のカウンセリングの準備をする。 - 8:10
- 病院に来た方のカウンセリングや心理検査を行う。
- 12:00
- お昼休み。皆とおしゃべりしながら昼食。
- 13:00
- 入院中の患者に心理教育を行う。
同じ病気に悩む人達に、症状や治療方法などを伝え、病気の対処法を教える。薬剤師や作業療法士など他の人達と協力しながらチームで取り組む。 - 15:30
- 入院中の患者のカウンセリングや心理検査を行う。
- 17:00
- 明日の仕事の予定を確認して、今日の仕事が終了!
カウンセリングって何をするの?
カウンセリングとは、心の悩みを抱えている人の話を聴いて、専門家の立場からアドバイスをする治療のことをいいます。アドバイスの内容は、具体的に「〇〇をしてみましょう」と指示することもあれば、話を整理するだけにとどめることもあります。
自分一人で悩んでいると、気持ちが落ち込んだり、どうしたらいいかわからなくなったりしませんか。そこで心理カウンセラーは、質問をしながら話を引き出して何が問題なのか整理したり、客観的な目で考え方のくせを気づかせたりします。
このようなことを通して、悩みを抱えている人が、自分の力で立ち直れるようにサポートをするのが、心理カウンセラーの役割です。
どんなところで働いているの?
心理カウンセラーはいろいろなところで働いています。どんなところで働いているのか見てみましょう。
病院
精神科医の先生の指示に従って、カウンセリングをします。患者の話を聴いたり心理テストをしたりして、患者自身の特徴や問題点を整理します。患者によっては、「精神分析」や「遊戯(ゆうぎ)療法」など専門的な方法で心のサポートをします。
学校
学校現場で、子ども達の相談にのり、心のサポートを行う人をスクールカウンセラーといいます。不登校やいじめ、勉強などの悩みを聴き、対応の仕方やものごとの考え方などをアドバイスします。実は、スクールカウンセラーは子ども達のカウンセリングだけでなく、保護者や先生方の相談・支援も行います。
企業
学校にスクールカウンセラーがいるように、企業にも産業カウンセラーがいます。企業で働く人に対して、個別のカウンセリングをしたり、ストレスの予防方法などの研修をしたりします。また、転職や今後の働き方などのキャリアについて相談にのるキャリアカウンセラーという仕事もあります。
その他施設
悩みを抱える人が相談できる場所は他にもあります。例えば、18歳未満の子どもについて相談できる児童相談所という施設があります。また、各都道府県に精神保健福祉センターが設置されています。ここでは地域の人達の相談を受けつけています。
独立
経験を積んだ心理カウンセラーの中には、個人で仕事を始める人もいます。カウンセリングスペースを用意して、自分でお客さんを集めたり、電話やオンラインで相談にのったりとさまざまなかたちで活躍しています。
心理カウンセラーになるには?
心理カウンセラーになるために、「この資格を持っていないといけない」という決まりはありません。しかし、現在活躍している心理カウンセラーの多くは「臨床心理士」や「公認心理師」という資格を持っている場合が多いです。
「臨床心理士」や「公認心理師」の資格を取るためには、大学や大学院などに通う必要があります。また、「臨床心理士」や「公認心理師」の資格の他に、民間のスクールや通信講座で取れる資格もあります。そのような資格を取得して、心理カウンセラーを目指す人もいます。
カウンセリングの仕事には、心理学の専門的な知識やスキルが必要なため、資格を取ったり学校に通ったりして、身につけます。
どんな資格があるの?
心理学に関する資格はたくさんあります。ここでは、代表的な資格を5つ紹介します。
臨床心理士
臨床心理士とは、臨床心理学の専門知識や技術を身につけて、こころの問題をサポートする専門家のことです。心理テストを使って患者の悩みを明らかにしたり、専門的な方法(精神分析や認知療法など)で患者の心を支援します。心理カウンセラーが持っている代表的な資格です。
臨床心理士の資格を取る主な方法は、大学院で必要な科目を勉強して、資格試験に合格することです。試験は筆記試験と口述面接試験が行われます。
公認心理師
公認心理師の仕事は、心のサポートが必要な人に対して、相談や指導、心理状態の分析などを行います。主に医療現場や福祉、教育などの分野で活躍しています。
公認心理師の資格は国家資格といって、国の法律にもとづいた資格であるため、社会からの信頼が高いです。そのため、公認心理師の資格を持っている人だけが、「公認心理師」や「心理師」の文字を使った名前を名乗ることができます。
公認心理師の資格を取る主な方法は、大学や大学院で必要な科目を勉強して、資格試験に合格することです。
認定心理士
認定心理士の資格は、大学で心理学の基礎知識・技術を身につけたことを認定します。資格試験はなく、大学で心理学を学んだ人に対して、心理学の専門家として働くのに必要なスキルを証明します。
認定心理士の資格を取る主な方法は、4年制大学で必要な科目を勉強して卒業することです。
精神保健福祉士
精神保健福祉士は、精神の障がいを持っている方の日常生活や社会復帰をサポートする仕事です。相談やアドバイスをして、日常生活を安心して過ごせるように訓練や援助をします。
精神保健福祉士は国家資格であり、資格を持っている人だけが「精神保健福祉士」を名乗ることができます。
精神保健福祉士の資格を取る主な方法は、大学や短期大学で必要な科目を勉強して、資格試験に合格することです。
社会福祉士
社会福祉士は、身体や精神の障がい、環境などの理由で日常生活に困難がある方をサポートする仕事です。福祉に関する相談にのり、アドバイスや指導などをします。
社会福祉士は国家資格であり、資格を持っている人だけが「社会福祉士」を名乗ることができます。
社会福祉士の資格を取る主な方法は、大学や短期大学で必要な科目を勉強し、資格試験に合格することです。
進路別!資格の取り方
中学校を卒業したら、どんな進路があるの?
心理カウンセラーになるために、中学校を卒業したらどんな進路を進めばいいか考えてみましょう。
中学卒業後は、高校進学をイメージする人も多いと思います。高校には「福祉科」などの専門科目を学べるクラスがありますが、心理学関連の資格では「〇〇学科」に通わないといけない決まりは特にありません。
ただし、「臨床心理士」などいくつかの資格は、大学や大学院で勉強する必要があるため、取りたい資格によって高校卒業後の進路が決まります。
どんな資格が取れるのか、学校ごとに見てみましょう。
通信制大学
大学というと、キャンパスに通って講義を受けるイメージですが、通信制大学は自宅学習を中心に授業を受けられる学校です。
インターネット配信などで授業を受けられるため、好きな時間に勉強できます。また、完全に自宅学習ではなく、多くの通信制大学では、実際の教室で授業を受けるスクーリングも行っています。通信制大学は、4年制大学より学費が安いところが多いのが特徴です。4年制大学や短期大学の中に通信制のコースがある学校もあります。
例えば、通信制大学では次のような資格を目指せます。
- 認定心理師…心理学を学んだ人が、心理学の専門家として働くのに必要なスキルがあることを証明します。
- 社会福祉士…身体や精神の障がい、環境などの理由で日常生活に困難がある方へのサポートについて学びます。
- 准学校心理士…学校生活でのさまざまな問題に対する心理教育的サポートを学びます。
- 精神保健福祉士…精神の障がいを持っている方の日常生活や社会復帰のサポートについて学びます。
条件はありますが、次のような資格も目指せます。
●公認心理師…心のサポートが必要な人に対する相談や指導、心理状態の分析などを学びます。通信制大学で公認心理師の資格を目指せますが、通信制大学を卒業後、さらに大学院に進学するか、特定の仕事を2年以上経験するといった条件があります。
通信制大学によって、目指せる資格は違います。そのため、学校選びをする際は、必ず自分が取りたい資格について勉強できるか確認しましょう。
専門学校
専門学校は、職業に必要な知識やスキルを学べる学校で、実践的な力を身につけられます。2年制の学校が多いですが、教育内容によっては1年制から4年制までさまざまです。専門学校を卒業した人の就職先は、その専門分野の仕事であることが多く、職業のプロフェッショナルを育てる体制が整っています。
例えば、専門学校では次のような資格を目指せます。
公認心理師
学校は限られていますが、専門学校でも公認心理師の勉強ができます。資格取得には、専門学校を卒業した後、さらに大学院に進学するか、特定の仕事を2年以上経験するといった流れになります。
精神保健福祉士
精神の障がいを持っている方が日常生活を安心して送れるようなサポートについて勉強します。
社会福祉士
身体や精神の障がい、環境などの理由から日常生活に困難がある方へのサポートについて勉強します。
専門学校によって、目指せる資格は違います。そのため、学校選びをする際は、自分が取りたい資格を勉強できるかどうか事前に確認しましょう。
大学/大学院/短期大学
大学は、広く知識を学んだり、専門分野を研究したりするところです。4年制の大学と2・3年制の短期大学があります。また、大学院は大学卒業後の進学先です。大学で学んだことをさらに専門的に研究します。
例えば、次のような資格を目指せます。
臨床心理士
臨床心理学の専門知識や技術を学びます。この資格を取得するためには、大学卒業後、大学院で勉強する必要があります。
公認心理師
心のサポートが必要な人に対する相談や指導などを学びます。資格取得には、大学卒業後に大学院に進学するか、特定の仕事を2年以上経験する流れになります。
行きたい大学を選ぶときは、自分が学びたい学科(心理学部や心理学科など)がある学校かどうか調べましょう。
一般のスクール/通信講座
大学や専門学校に通わなくても取れる資格はたくさんあります。民間のスクールに通って授業を受けたり、通信講座で自分で勉強して取れる資格を5つ紹介します。
産業カウンセラー
産業カウンセラーは、働く人をサポートする仕事です。キャリアやメンタルヘルスの悩みを抱える人が自分で問題を解決できるように支援します。
産業カウンセラーの資格を取る主な方法の1つは、養成講座を受けて、資格試験に合格することです。
養成講座では、カウンセリングの基本である「傾聴(相手の話を聴くコミュニケーションスキル)」を学びます。カウンセラー役・相談者役・観察者を体験しながら実践的なスキルを身につけます。
チャイルドカウンセラー
チャイルドカウンセラーは児童心理のスペシャリストを証明する資格です。不登校や学校内での問題行動などに対応するスキルを学びます。
チャイルドカウンセラーの資格を取る主な方法は、認定講座で全てのカリキュラムを勉強して、在宅試験に合格することです。
認定講座では、子どもが抱える問題やカウンセリングの方法、心理療法(対話や訓練をして、心の問題解決を図る方法)などを勉強します。
ペットロス・ハートケアカウンセラー™
ペットロス・ハートケアカウンセラー™は、大切なペットが死んでしまって悲しんでいる飼い主への理解やサポートする力を証明します。ペットロスとは「ペットを失うこと」という意味です。ペットが死んでしまった悲しみから、心や身体に症状が現れてしまう飼い主は少なくありません。
ペットロス・ハートケアカウンセラー™の資格を取る主な方法は、認定講座で勉強して、在宅試験に合格することです。
講座では、カウンセリングの基礎知識やペットとの生活、ペットロスについて勉強します。
SNSカウンセラー
SNSカウンセラーとは、SNSを使ったカウンセリングスキルがあるか保証する資格です。カウンセリングは、実際に会って話をする以外にも、チャットやテレビ通話などを使ってオンラインで相談する方法もあります。SNSを使ってカウンセリングを受けたいと考える人が増えてきたことから、SNSカウンセラーの資格が生まれました。
SNSカウンセラーの認定を受ける方法は、「臨床心理士」や「公認心理師」などの特定の資格を持っている人が養成講座を受けることで取得できます。
家族相談士
家族相談士とは、家族を心理的にサポートするのに必要な知識やスキルを証明する資格です。教育、子育て、医療、仕事などさまざまな悩みがありますが、その背景には家族の影響があったり、家族をふくめた支援が求められたりします。そのため家族支援のスキルはいろいろなところで活用できます。
家族相談士の資格を取る主な方法の1つは、養成講座を受けて、資格試験に合格することです。
養成講座では、家族カウンセリングの方法や夫婦・親子・きょうだいの関係、家族が抱える問題などを勉強します。
自分の目的にあった進路を選ぼう!
資格や学校の種類が多いため、どうしたらいいのか迷う人もいるかもしれません。しかし、あせらなくても大丈夫です。
まずは自分がどんな心理カウンセラーになりたいのか考えてみましょう。「病院で働いて、たくさんの人の悩みをサポートしたい」、「学校で悩んでいる子ども達を笑顔にしたい」、「仕事で悩んでいる人の役に立ちたい」など、興味があることややりたいことを考えてみましょう。そうすることで、どんな資格が必要になるか、だんだん分かってくると思います。
代表的な資格として紹介した「臨床心理士」や「公認心理師」などを取りたい場合、大学・大学院や専門学校に進学する必要があります。
大学・大学院や専門学校は、高校を卒業した人、または高校卒業程度の学力があると証明できる人(高卒認定)が進学できます。そのため、現在中学生のみなさんは、まずは高校進学が最初のステップになります。
資格を取りたいけれど、大学進学は金銭的に難しいという方もいるかもしれません。その場合は、大学よりも学費を抑えられる通信制大学に進学したり、奨学金制度(学費を借りられる仕組み)を利用したりと方法はたくさんあります。
進学について、不安や悩みがある方は、おうちの方や学校・塾の先生、スクールカウンセラーなどに相談してみましょう。きっと解決の糸口が見つかると思います。
どんな高校に行ったらいいの?
中学校を卒業したら高校に進学したいけれど、どんな学校に行ったらいいか迷っている人もいるかもしれません。
高校には主に3つの学科があります。一般教科の勉強が中心の「普通科」、専門的な知識や技術を学ぶ「専門学科」、普通科と専門学科が組み合わさった「総合学科」です。
専門学科には「看護科」や「福祉科」などがありますが、心理学関連の資格では、専門学科に通わないといけないという決まりは特にありません。
高校には、進学率や学校の雰囲気、部活動、英語に力を入れている…などそれぞれ特色があります。自分にとって大切だと思う特色や合う環境を考えて、高校選びをしてみてください。
心理カウンセラーに向いている人はどんな人?
人の話を聴くことが好き
カウンセリングでは、悩んでいる人の話を聴いて、質問したり、気持ちに寄り添ったりします。そのため、人の話を聴くことが好きな人は心理カウンセラーに向いていると言えます。友達とおしゃべりするときや相談されたときは、相手の話を聴くことを意識してみましょう。
心理学に興味があって勉強することが好き
心理カウンセラーの仕事は、心理学の専門的な知識が必要です。そのため、心理学に興味があると、勉強もはかどると考えられます。興味があることは勉強も楽しいと感じる人は多いのではないでしょうか。心理学に興味がある人は、ぜひ自分でも本を読んだり調べたりしてみてください。
チームで協力することが得意
カウンセリングは1対1で行うイメージですが、悩んでいる人をサポートするためには他の人と協力することもあります。部活動や委員会など、チームで協力する経験は将来きっと役に立ちます。
物事を客観的に分析できる
心理カウンセラーは、悩みをただ聴くだけではありません。相談内容や心理テストの結果から、どんな問題があるのか分析したり、これからどうしたらいいのか見立てたりします。そのため、物事を客観的に分析できる力は、心理カウンセラーとしてとても大切です。
物事に対して、「これは〇〇に決まっている!」と決めつけるのではなく、違う見方や考え方もないかどうか、普段から意識してみましょう。
「中学生の私にもできる!カウンセラーになるための準備」
これからの進路を考えよう
将来どんな心理カウンセラーになりたいか、そのためにはどんな資格があったら役立つか、しっかり考えてみましょう。目指したい資格が分かると、これからの進路も見えてきます。「精神保健福祉士の資格を取りたいから、高校を卒業したら専門学校か大学に行きたい!」、「臨床心理士の資格を取りたいから大学院まで進学して勉強したい」など、将来の見通しを立ててみましょう。
中学校の勉強をがんばろう
一見、学校の勉強は心理カウンセラーの仕事や心理学に関係ないように思えますが、実はそんなことはありません。
例えば、公認心理師のカリキュラムの中には、「心理学統計法」という科目があります。データを分析したり規則を見つけたりする統計学は、数学の知識が基本です。また、カウンセラーの仕事である、相手の話を理解したり、自分の話を分かりやすく伝えたりするためには国語の力が基礎となります。
このように、学校で習った内容は、これから学ぶことの基礎となります。中学校の勉強は将来、役に立つので、今からしっかりと身につけましょう。
もちろん高校入試や大学入試など進学する上でも学校の勉強は大切です。今から勉強をする習慣があると、入試や資格試験の勉強のときにも役立ちます。
いろいろな人とコミュニケーションをとろう
心理カウンセラーは、年齢や性別、立場などさまざまな人のカウンセリングを行います。そのためコミュニケーションスキルが大切な仕事です。クラスメイトや先生、習い事で会う友達や地域の人々など、積極的に交流する姿勢を意識してみましょう。
まとめ
心理学に関する資格を持っていると心理カウンセラーとして働くときに役立ちます。どんな資格を取りたいか考えると、これからの進路も見えてくるため、どんな資格が自分に必要か考えたり調べたりしてみてください。みなさんの将来の夢がかなうように応援しています。