動画編集の仕事とは?
動画制作の流れ
そもそも一般的に動画はどのように作られるのでしょうか。クライアントから依頼を受けた際の動画制作の一例をご紹介します。
ヒアリング
クライアントから動画制作の目的やターゲット、予算、納期、動画の内容などをヒアリングします。
企画の提案・契約
ヒアリングの内容を踏まえて、企画書を作成します。クライアントに企画内容を確認してもらい、契約を結びます。
シナリオ作成
企画書をもとにシナリオを作成します。動画の内容をラフや絵コンテにしてクライアントに提出します。フィードバックをもらいながら内容を煮詰め、台本を仕上げます。
撮影
事前に撮影場所の下見や出演者・撮影者の手配、小道具の準備などを行います。そして、台本をもとに必要なシーンを撮影します。
編集
必要なシーンを繋ぎあわせて1つの動画に仕上げます。事前に打ち合わせた情報を踏まえて、デザイン性や分かりやすさを意識して編集します。
納品
クライアントに試写を依頼し、最終確認が済んだら納品します。
動画編集の内容
先ほどご紹介した動画制作の流れのうち、動画編集で行う作業内容をご紹介します。動画編集では複数のシーンを切り貼りしますが、ただ順番に繋ぐだけではありません。モンタージュ理論やイマジナリーラインを超えないなどの制作上の基本を踏まえて作業が行われます。
また、動画に合わせてテキストやBGM、ナレーションを挿入します。テキストのデザインや音声を入れるタイミングによって、動画のイメージが変わるため、クライアントが伝えたいメッセージを理解して適切な編集を施す必要があります。
ほかにも視聴者の印象に残るような動画にするため、エフェクトと呼ばれる特殊効果を施します。例えば、映像をカラー補正してモノクロ映画のようにしたり、再生速度を遅くしてスローモーションのようにしたりすることです。
エフェクトにはさまざまな種類があり、表現したいイメージに合わせて活用すると動画のクオリティが上がります。しかし、エフェクトには流行があり、物によっては古臭い印象を与えてしまうことやイメージに合わないエフェクトを使いすぎると自分よがりな作品になる恐れがあります。使いこなすには、流行をチェックしたり知識を増やしたりする必要があります。
動画編集講座・スクール比較動画編集の将来性は?
動画配信市場の今後
世界の動画配信市場は今後も規模が拡大し、2025年には1,340億ドルの市場規模になると予想されています。
日本国内の動画配信市場も伸長しており、2021年には4,600億円を超える市場規模に成長しました。背景には、新型コロナウイルスの流行によるホームエンタテイメントへの関心の高まりが考えられています。
国内動画広告市場
サイバーエージェントとデジタルインファクトの共同調査によると日本国内の2022年動画広告市場は5,601億円となりました。前年比133.2%の増加となり大きく市場を伸ばしています。
市場規模をデバイス別に見ると、2022年のスマートフォン向け広告動画は動画広告全体の約83%を占めており需要の高さを伺えます。そして近年では、コネクテッドテレビ(インターネット接続されたデバイス)向け動画広告の需要が高まっています。
動画広告の内容として、動画配信の広まりに伴いインストリーム動画広告の需要が増加しています。インストリーム動画広告とは、例えばYouTubeの動画を視聴する前後や途中に再生される広告のことです。
このように動画広告は、商品・サービスの認知や購買を促進する役割を担い、ソーシャルメディアにおいて幅広く活用されています。
平均収入は?
「求人ボックス 給与ナビ」によると、動画編集の仕事の平均年収は正社員で402万円です。国税庁の「令和3年分 民間給与実態統計調査」によると日本の平均給与は443万円のため、平均と比べてやや低い傾向です。
ただし、動画編集全体の給与幅は307万円から829万円と幅広く、経験やスキル、就職先によって大きく変わります。地域別で見ると、関東地方で平均給与が高くなります。特に東京都の水準が高く、平均462万円となっています。
動画編集講座・スクール比較動画編集を活かして働く
動画編集を活かす働き方を3パターンご紹介します。
企業で働く
就職先の例として動画制作会社が挙げられます。クライアントから仕事を請け負う受注制作のため、仕事として扱う動画もさまざまです。
動画制作会社によってクライアントは異なりますが、例えば、広告動画(WEB・TV)、イベント映像、企業向け動画(PR・リクルート)、アニメ、ドラマ、映画など多種多様です。
動画制作会社の他にも、自社で開発している商品やコンテンツをPRするために映像制作担当者を募集する企業もあります。
動画編集業務の他に、職場によっては映像制作に関する一連の業務に参加できたり、全体を取りまとめるディレクション業務を担ったりすることもあります。
個人で働く
動画編集はパソコンと編集ソフトがあればどこでも作業ができるため、企業ではなく個人で活躍する方もいます。
・企業と業務委託契約を結ぶ…企業に直接営業したり、求人サイトから業務委託案件を探したりします。
・フリーランス向けエージェントサービスを活用する…希望条件をヒアリングした上で仲介業者から案件の紹介を受けられます。サービスによっては、企業との条件交渉を代行してくれるサポートもあります。
・クラウドソーシングを活用する…オンライン上で依頼者とマッチングするサービスです。
これらの方法を活用して、フリーランスとして独立する方や副業を始める方もいます。
受注した動画を編集する以外に、自ら動画配信を行う人もいます。動画配信サイトでオリジナルの動画作品を配信して、その動画についた広告収入や企業とのタイアップなどで収入を得ます。趣味や副業として配信活動をする人が多いですが、中には動画配信で生計を立てている人もいます。
今の仕事に活かす
就職先の例として動画制作会社が挙げられます。クライアントから仕事を請け負う受注制作のため、仕事として扱う動画もさまざまです。
DXとは、企業がデータとデジタル技術を活用して、製品やサービス、業務、組織などを変革し、競争上の優位性を確立することを指します。このような動きから今後もビジネスにおけるデジタル技術の活用は重要といえます。
経営課題の1つであるDX推進において、動画を活用する企業も少なくありません。活用方法の例をご紹介します。
・業務説明…業務のマニュアルを分かりやすく伝えます。
・営業資料…営業活動に利用して、顧客の理解を深めます。
・採用活動…会社説明やインタビュー形式の動画を配信して企業のPRを行います。
・動画コマース…顧客が動画から商品情報を知ることができ、そのまま動画から購入できるシステムです。
動画を活用することは、業務の効率化や売上・認知度アップに繋げることが期待できます。このように動画編集を現在の仕事に役立てることも可能です。
動画編集講座・スクール比較動画編集者になるには?
必要な資格はある?
動画編集を仕事にする上で必要な資格や学歴はありません。編集作業の技術があれば活躍できます。
しかし求人情報によっては、動画編集の実務経験が求められるものもあります。また、動画の編集経験や主要な動画編集ツールのスキルを必須条件にしている職場もあります。そのため動画編集に関する知識や技術がしっかりと身についていると、活躍の場が広がります。
必要アイテム
動画編集にはパソコンと動画編集ソフトが必要です。尚、ソフトのことを考えてパソコンのスペックを選ぶ必要があります。高画質や長い尺の動画はデータ容量が大きくなるため、スムーズに編集作業を行えるようにCPUやメモリの性能、ディスプレイサイズなどを検討した上で制作環境を整えましょう。
求められる基礎スキルは?
動画編集者にはソフトを使いこなすスキルが求められます。ソフトによって使い方や機能も異なるため、ここでは動画編集者が使う主要ソフトをご紹介します。尚、ソフトによって対応するOSが異なるため、利用する際はパソコンがWindowsかMacか確認してソフトを選びましょう。
Windows・Mac向けソフト
Adobe Premiere Pro
アドビ社が提供する動画編集ツールで、プロの動画編集者が使用する代表的なソフトです。編集作業に必要なあらゆる機能が搭載されており、撮影した動画のカットや色補正、アレンジする際に使われます。SNSに投稿するような短い動画から長編映画まで作成可能です。
アドビ社が提供するPhotoshopやAfter Effectsと連携することができ、効率的に作業できます。また、動画作成に必要なビデオ素材を用意したAdobe Stockがあり、Adobe Premiere Proから直接素材を探したりライセンス取得・ダウンロードができたりします。ドローンを使った空撮ビデオなど自分では撮影が難しい素材もあり、動画編集の表現の幅が広がります。
Adobe Premiere Proの個人版は年間プランだと2,728 円/月で利用できます。ただし、買い切り型はないため、月契約か年契約での利用となります。
AfterEffects
アドビ社が提供する動画加工ツールです。文字やイラストに音や動きをつけるモーショングラフィックスやビジュアルエフェクト(視覚効果)を加える際に使われます。
例えば、文字やイラストを回転させたり跳ねさせたりするほかに、戦闘シーンで爆発を起こすことも可能です。AfterEffectsは年間プランだと2,728 円/月で利用できます。
Mac向けソフト
FinalCut Pro
Apple社が提供するプロ仕様の動画編集ソフトです。動画編集や動画配信に必要なツールが搭載されています。Windowsには対応していませんが、Appleシリコン搭載のMacコンピュータに最適化されており効率よく作業できます。
FinalCut Proは48,800円で購入できます。買い切り型であるため、長期間使う方にはサブスクリプション型のソフトよりも費用を抑えることができます。
関連ソフト
動画編集ソフト以外にも、作業に使われる関連ソフトをご紹介します。
・Photoshop…アドビ社が提供する画像編集ソフトです。画像の色調整や合成などの加工をする際に使われます。
・Illustrator…アドビ社が提供するグラフィックデザインソフトです。ロゴやイラスト作成をする際に使われます。
これらは動画を作成する際の素材の作成・加工、サムネイル作りに活用されます。このように動画編集ソフト以外にも画像編集ソフトのスキルも重要です。
ご紹介したもの以外にもさまざまな動画編集ソフトや関連ソフトがあります。気になる方はぜひ調べてみてください。
ワンランク上の実践スキル
動画編集ソフトの使い方だけでなく、動画制作に関する知識を身につけると、動画編集のクオリティが上がります。実践スキルの例をご紹介します。
映像制作に関わるスキル
Webリテラシー
Webに関する仕事をする人にとって、Webリテラシーの習得は大切です。正しい知識を学ぶことで、仕事上で得た情報の漏えいや他人の著作権侵害などのトラブルを未然に回避できます。また、Web業界の基本的な用語を理解することで、動画制作に携わるメンバーと円滑にコミュニケーションを取ることができます。
デザインの知識
デザインの知識を活用すると、動画に挿入するテキストや画像、サムネイルなどを効果的な内容に仕上げることができます。色や形が与える印象を理解すると視聴者に伝えたいメッセージをより具体的に動画に落とし込むことができ、動画のクオリティが上がります。動画の演出技術を向上したい方におすすめです。
撮影技術
動画制作に携わる方や自ら動画配信を行いたい方にとって、イメージ通りの動画を作るために撮影技術は大切です。手持ちのスマートフォンでも綺麗な映像を撮影できますが、機材の使い方や構図、アングルなどの撮影のテクニックを学ぶことで動画のクオリティがさらに増します。
動画配信に関わるスキル
チャンネル運営
個人で動画配信者になる場合、企画や演出を一から考えなければなりません。視聴者の目を引くサムネイルの作り方や再生されやすい企画の考え方などを学ぶことで、チャンネル運営の方向性を定めることができます。
ネット動画のトレンド
多くの人に動画を視聴してもらうためにはトレンドをおさえることも大切です。トレンドとは、話題の商品や場所など動画で扱う内容だけにとどまりません。
例えば、最近ではスマートフォンで動画を視聴する人に合わせて、縦型の動画が増えています。実際にTikTokやYouTube、Instagramなどの大手プラットフォームでは、縦型の動画が投稿されています。
動画の手法自体にもトレンドの影響が反映されます。たえまなく流行は変化するため、常にアンテナを張って情報収集することが大切です。
未経験から動画編集者になるには?
ここまでご紹介したように、動画編集には複数のスキルが必要です。動画編集を仕事にする上で特別な資格や学歴は不要であるため、独学でスキルを身につけることも可能です。
しかし、Web業界のスキルやトレンドは日進月歩で進化しています。動画編集ソフトも定期的にアップデートされ、最新の機能が追加されたり画面が変更されたりします。
独学に不安な方は専門スクールでの学習はいかがでしょうか。専門の講師によるカリキュラムで短期間で効率的に動画編集のスキルが身につきます。最新ソフトや最新トレンドをおさえた授業を行うスクールもあり、最先端のスキルを学べます。
また、スクールによっては、就職活動のサポートや仕事の案件を取るコツを教えてくれるところもあります。求人情報では経験重視の職場もあるため、スクールのサポートを活用すると就職活動を優位に進められます。
専門スクールごとに、費用や講座内容、サポート体制、受講形態(オンライン・通学)などが異なるため、ご自身に合ったスクールを探してみてください。
動画編集に役立つスキルの証明
資格の内容・試験情報
動画編集の仕事に必須資格はなく、働く際は資格の有無よりも技術や実績が重視される傾向です。しかし、ご自身の動画編集スキルを客観的に証明してくれる資格もあります。
また、動画編集はさまざまな知識と紐づき、トレンドや技術も変化するため、常にスキルをアップデートすることが大切です。資格の勉強を自己研鑽の目標にしたり、「次は何のスキルを身につけよう」といったスキルアップの指針にすることも可能です。
動画編集の仕事に関する資格をご紹介しますので、興味のある方は学習に取り組んでみてはいかがでしょうか。
アドビ認定プロフェッショナル
アドビが提供するアプリ・サービスの活用スキルを証明するアドビ公認の国際認定資格です。対象となるアプリケーションは、Premiere Pro、Photoshop、Illustratorの3つです。Premiere Proは動画編集の主要ツールの1つであるため、仕事に必要なスキルを身につけることができます。Photoshop、Illustratorは、動画に使用する素材作成や加工に活用できるため、使いこなせると業務の作業効率アップや表現の幅を広げることに繋がります。
映像音響処理技術者資格認定試験
映像音響業界に関わる人々に必要とされる、映像音響処理技術の基礎知識を認定します。動画編集の知識だけでなく、撮影技術や音響、テレビ放送・インターネット技術の基礎、著作権など動画作品の一連の工程を理解しているかが求められます。自身の専門分野を超えて、動画編集の前後の工程を理解していると、効率よく作品作りが行えます。
CGクリエイター検定
映像制作の基本からCG制作の手法など、CG表現に関する知識を測る検定です。近年アニメやCM、映画などさまざまな映像作品でCGが使われることが増えました。CGを活用した動画作成に携わりたい方は学んでみるのはいかがでしょうか。平面の2次元CGと立体の3次元CGの両方が出題範囲となっており、表現の幅を広げることができます。
まとめ
動画編集スキルは今後も需要が高いと予想されます。しかし技術力が求められる仕事であるため、日々スキルを磨くことが大切です。これから動画編集を身につけたい方にとっては、学ぶことが多いと心配になるかもしれません。1人で学習することに不安な方は、専門スクールで学習するのはいかがでしょうか。
未経験や初心者でも、専門スクールを活用して動画編集者として活躍する方は大勢います。ぜひこの機会に検討してみてください。