産業カウンセラーとキャリアコンサルタントの違いは?
何となくイメージとしては両者の違いが分かるけれど、はっきりと言葉にして説明するのは難しい。そのような産業カウンセラーとキャリアコンサルタントですが、明確な違いは職業の目的にあります。
メンタルヘルスとキャリアップなど、具体的な違いを見ていきましょう。
産業カウンセラーとは?
産業カウンセラーとは、心理学や傾聴力といった専門知識を用いて対象者の悩みを受け止めサポートする事が最大の目的です。
悩みを持つ人を前にすると、解決策を提示することに力を入れてしまいがちですが、産業カウンセラーで何より重視するのは話しを聞くこと。
対象がどのような状況にあり、何を悩んでいるのか。会社でハラスメント被害に遭っている、将来が不安、病気を発症した等、傾聴することが優先されます。
話しを確認したうえで、寄り添い解決策への糸口を一緒に探るのです。
答えを出すよりも、対象者自らが改善の道を歩むためのプロセスを重視していると言えるでしょう。
キャリアコンサルタントとは?
一方でキャリアコンサルタントとは、自らの経験や知識を活用し対象者の抱える問題の解決を目的にしています。
産業カウンセラーはあくまでサポートに徹するのに対し、キャリアコンサルタントは主導で話し合いを進めて行くことになるでしょう。
抱えている問題、悩み、目標を聞き出すという点は両者共通していますが、コンサルタントは明確な答えを提示なければいけません。
宿題に悩んでいる児童の例で紹介します。
産業カウンセラーは児童の悩みを聞き、宿題の解き方を教えるまでが仕事。
解決策を押し付けることはなく、宿題を行うのは児童です。
キャリアコンサルタントは宿題の答えを提示するのが仕事。
状況を分析し、コンサルタントが考える最善策を提供します。
産業カウンセラーによる悩みの解決方法とは?
心理学の知識を活かした解決方法!
産業カウンセラーが用いるのは、心理学や人間科学の専門的な知識です。
特に心理療法と呼ばれる技法を使い、相談者と対話することで改善の道を探る事になります。
心理療法にはいくつかの種類があり、適時使い分ける必要があるでしょう。
基本となるのはカウンセリング。名前の通りと思われるかもしれませんが、これも立派な心理療法の一つです。
産業カウンセラーにとって一番重要ともいわれる傾聴することに力を入れて、相手を受け止める。
解決を急がず、こちらが先導することも避けて、相談者と歩調を合わせます。
単純に言葉だけで判断せず、表情や雰囲気なども加味した上で寄り添うことが求められるでしょう。
他には認知行動療法や家族療法もあります。
認知行動療法はうつ病治療にも用いられており、精神的問題を抱える人に効果的な手法です。
同じ状況、物事に直面しても感じ方は十人十色。ポジティブな人はどこまで楽観的に、ネガティブな人はひたすら悪い方に捉えてしまいます。
相談者の歪んだ認知を検証し、別の見方もあるのではと提示することが産業カウンセラーの仕事です。
家族療法では相談者の身内にも参加してもらい、人とのコミュニケーションの中で改善を図ります。似た手法に対人関係療法というものがありますが、やはりカウンセリングに人間関係は外せません。
ただ、実際の所多くの人は解決策よりも、抱えている悩みを聞いてくれる人を探しています。
意外に思われるかもしれませんが、悩みを聞き出した段階で解決に至るケースも多々あるのです。
それだけ傾聴は重要かつ、高度な技術でもあります。間合い、雰囲気、正確な状況把握。相談者主体で仕事が進んでいくのが産業カウンセラーの特徴です。
キャリアコンサルタントによる悩みの解決方法とは?
自らの体験・経験や知見を活かした解決方法!
キャリアコンサルタントが武器にするのは、自らの体験によって得た知識や経験といえるでしょう。
もちろん書籍や研修で身に付けた技術を用いることもありますが、仕事を請けるという段階では経歴が必要不可欠です。カウンセラーや他の援助職は資格を習得すれば即現場に出ることも不可能でありません。
コンサルタントにおいては、業界に長いこと携わってきた実力者が独立するケースがほとんどです。キャリアプランに悩む社会人に対して、納得のいく解決策を提示するには経験は欠かせないでしょう。
実際の業務では現状分析、観察眼が重視されます。
相談者からの話を聞くだけでなく、現在の状況を客観的に捉えるための資料、データなどを確認し考察。決して直感や経験則だけに頼ることなく、分析結果を加味しながら解決策を探らなければいけません。
もちろん、情報収集の段階では相談者からより正確に話してもらうためのコミュニケーション能力も必要です。
産業カウンセラー同様に、傾聴を重視することから始まります。
情報収集後はコンサルタントが主導となって解決策を導き出す必要があるので、最初が肝心です。
問題の本質を見極め、相談者に最適な道はどれなのか、業界情勢を考慮の上で、人間観兼や適性なども忘れてはいけません。
相談者の人生を左右する大切な仕事ですので、必要な能力は多岐に渡ります。
相談者に寄り添うだけでもなく、データを読み取るだけでもなく、答えを出すだけでもありません。
総合的な能力、要素を駆使して悩みを解決し、相談者を納得させるのがキャリアコンサルタントに求められます。
産業カウンセラーとキャリアコンサルタントの違いを知った上でどちらを選ぶべき?
悩みを解決する際に、キャリアと心理どちらを優先するかによる!
産業カウンセラーは心理学を用いて解決を目指し、キャリアコンサルタントは業界経験やデータから最善策を提示します。産業カウンセラーとキャリアコンサルタントは似た職業に見えて、業務内容は大きく異なるのです。あなたがどちらの分野に興味あるのかによって選択は変わるでしょう。心理療法を用いて、相談者に寄り添いサポートすることを目指すのか、情報収集から解決策の提案までキャリアスキルを活用することを目指すのか、興味関心の強い方を選ぶべきだと思います。
転職に有利なのは「キャリアコンサルタント」
転職する際に潰しが効くのはどちらかという点でいえば、キャリアコンサルタントかもしれません。業界知識が豊富であると見られ、現場での活躍が期待できるからです。産業カウンセラーは同系統以外を転職先に選ぶと、数は限られます。
一般的にそれぞれの職務に適性があるかについても見ていきたいと思います。
人間性を高め、信頼関係を大切にしたいなら「産業カウンセラー」
まず産業カウンセラー。こちらは専門知識以上に、人間性が問われます。
相談者に親身になって対応し、信頼関係を築き上げなければいけないからです。
どれだけ高い能力を有していても、高慢で投げやりな人物ではカウンセリングは成り立ちません。相手を受け入れる包容力、決して口外せず誠実に対応してくれる人間が向いているといえるでしょう。
産業カウンセラーはあくまで補助。正解は相談者が持っていることを忘れてはいけません。
そして気持ちの切り替えが重要。多くの相談者の悩みに触れることになりますので、その都度大きく共感しすぎると業務に耐えられない恐れもあります。
優しさを持ちつつ、客観的に物事を捉えることが出来る冷静さを兼ね備えた人物が理想的です。
信頼関係も大事だけど営業力も必要な「キャリアコンサルタント」
逆に、キャリアコンサルタントには明快で人とのコミュニケーションが得意な人物が適しているといえます。
解決策の提示には知識や経験が欠かせませんが、最終的に相談者に納得してもらわなければ仕事は終わりません。
また、悩みを抱えている相談者を不安にさせてしまうと仕事は途端に困難なものになってしまうでしょう。
コンサルタントの仕事においては、寄り添うこと以上に力強く先導することが必要。
その上で、業界の最新情報について常に興味関心を持つことが求められます。
▼「キャリアコンサルタント」の資格の詳細などについては、下記リンクよりご確認いただけます。
【キャリアコンサルタント】の資格の詳細や試験データについてはこちらから
産業カウンセラーとキャリアコンサルタントの合格率の違いとは?
産業カウンセラーの合格率
一般社団法人日本産業カウンセラー協会が年1回実施する産業カウンセラー試験の合格率は、通常60~70%です。
2019年の筆記試験合格率は69.4%、実技試験合格率は66.5%でした。また、全体の合格率は62.3%でした。
独学で資格を取得することはできないので、養成講座で学びつつ資格を取得してください。
キャリアコンサルタントの合格率
キャリアコンサルタント国家試験の合格率は、50~60%が一般的です。
キャリアコンサルタント国家試験の難易度は他の国家資格に比べて低い数値です。
キャリアコンサルティング協議会(CCC)の直近の合格率は43.9%です。
CCCの合格基準は、筆記試験で150点満点中90点以上、面接で態度・発達・自己評価の評価項目40%以上が必要です。
産業カウンセラーを目指す方法!養成講座の選び方
産業カウンセラー試験を受けて合格を目指しましょう!
産業カウンセラーを目指すのであれば、産業カウンセラー試験を受けて合格目指しましょう。尚、受験資格が決められていますので、該当するかは事前に確認が必要です。
これから産業カウンセラーを目指そうと考えている方には、養成講座の受講をおすすめします。産業カウンセラー 養成講座については、以下ページでも触れていますので、参考にしてみてください。
>> 産業カウンセラー 養成講座・通信講座のカリキュラムと費用は?