行政書士試験は初心者や独学でも合格できるのか
国家資格というと、どうしても難しいイメージが湧いてしまうので、初心者でも行政書士試験に合格できるのかと不安になる方もいるでしょう。
確かに行政書士試験には憲法や行政法、民法など専門的な法律の知識が必要で、合格するにはそれなりの努力が必要です。ですが、実際に初心者や独学で行政書士に合格している人はいますし、受験資格は特に設けられていません。
長く続く国家試験ですから勉強するためのノウハウの蓄積はもちろん、教本も数多く出ていますし、しっかり勉強する必要はありますが、初心者だから試験に合格できないということはありませんのでご安心ください。
行政書士試験の難易度や合格率は?
行政書士試験に受験資格は設けられておらず、年齢や職業に関わらず誰でも受験することができます。
では実際のところ行政書士試験はどれほど難しいのでしょうか?合格率や難易度を見ていきましょう。
合格率は大体11%程度
行政書士試験の合格率は大体11%程度で推移しています。
下記が直近5年間の受験者数と合格者数、合格率です。昨年度は13.98%と比較的高かったようですが、十人受けたら九人が落ちるので難関といえるでしょう。
年度 | 受験申込者数 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|---|
令和5年度 | 59,460 | 46,991 | 6,571 | 13.98% |
令和4年度 | 60,479 | 47,850 | 5,802 | 12.13% |
令和3年度 | 61,869 | 47,870 | 5,353 | 11.18% |
令和2年度 | 54,847 | 41,681 | 4,470 | 10.72% |
令和元年度 | 52,386 | 39,821 | 4,571 | 11.48% |
(参考:一般財団法人行政書士試験研究センターホームページより)
他の国家資格との難易度比較
では他の国家試験と比較すると、行政書士の合格率はどの程度でしょうか。参考に他の士業の合格率を記載します。
試験名 | 合格率 |
---|---|
司法試験予備試験 | 3〜4% |
司法書士試験 | 4〜5% |
弁理士試験 | 6〜10% |
社会保険労務士試験 | 6〜7% |
行政書士試験 | 10〜12% |
宅地建物取引士資格試験 | 15〜17% |
他の士業と比べると大体中程度の合格率であることがわかります。合格率だけで見ると、行政書士がずば抜けて難しいということはないと言えるでしょう。
行政書士試験の概要
ここでは行政書士試験の概要を解説します。行政書士試験は難易度の高い試験ではありますが、合格基準が明確にされており絶対評価で合否が決まる試験でもあります。試験内容をしっかりと理解して、勉強する比重を決めるようにしましょう。
受験資格
行政書士試験は年齢、学歴、国籍等に関係なく、誰でも受験できるのが特徴です。
令和5年度の試験データでは受験者は9歳〜90歳までと幅広く、最年少の合格者は何と13歳でした。
(参考:一般財団法人行政書士試験研究センターホームページより)
試験日程
行政書士試験の試験日時は毎年11月頃です。令和6年の受験日時は11月10日(日)が予定されています。
試験の申込期間は7月末〜8月の大体一ヶ月となっているので、申し込みを忘れないようにしましょう。また合格発表は例年1月末となっています。
試験内容
試験内容は主に二つに分かれており、憲法や行政法、民法など法令からの主題と、行政書士の業務に関連する一般知識からの出題に分かれます。
試験科目は下記の通りです。
試験科目 | 内容等 |
---|---|
行政書士の業務に関し必要な法令等(出題数46題) | 憲法、行政法(行政法の一般的な法理論、行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法、国家賠償法及び地方自治法を中心とする。)、民法、商法及び基礎法学の中からそれぞれ出題し、法令については、令和5年4月1日現在施行されている法令に関して出題します。 |
行政書士の業務に関連する一般知識等(出題数14題) | 政治・経済・社会、情報通信・個人情報保護、文章理解 |
(参考:一般財団法人行政書士試験研究センターホームページより)
合格基準
また行政書士試験は、下記の通り明確に合格基準が定められているのが特徴です。
(1)行政書士の業務に関し必要な法令等科目の得点が、122点以上である者
(2)行政書士の業務に関連する一般知識等科目の得点が、24点以上である者
(3)試験全体の得点が、180点以上である者
法令科目、一般知識共に一定基準の点数を取ることが求められますので、どちらかの科目を捨てて片方に集中するということはできません。満遍なく勉強する必要があります。
行政書士試験合格に必要な勉強時間
行政書士試験合格に必要な勉強時間は大体500時間程度と言われています。ただし法律に関する予備知識がない方、つまり初心者が試験に合格したい場合は1,000時間程度の勉強時間が必要だと言われています。
あなたが法律に関して初心者だとすると、毎日3時間勉強したとしても1年近く、5時間勉強したとしても半年以上の期間が必要です。仕事をしているか否かで平日・休日でとれる勉強時間も変わってくるので、スケジュールを立てて計画的に勉強する必要があります。
行政書士試験は一年に一度の試験なので、一発で合格したいと思う方がほとんどだと思います。また初めてで何から始めればいいかわからない!という方にはスクールや通信講座を受講するのもおすすめです。
行政書士試験の勉強法
行政書士試験の勉強法には大きく分けて3つの方法があります。スクールに通う、通信講座を受講する、独学で勉強するの3つです。
スクールに通う
初心者の方におすすめなのは、通学制のスクールに通う方法です。
通信講座とも独学とも異なり、足を運ぶ事で確実にその時間を勉強時間に当てることができます。何から勉強していいかわからない、どうしても理解できない部分がある、という時も、プロの講師に直接質問ができるのは大きなメリットです。講師は毎年試験を見ているので、重要なポイントを教えてくれたり、最近の試験傾向なども教えてくれます。
また行政書士試験の勉強は半年から1年と長期にわたります。長い勉強期間を1人で乗り越えるには、高いモチベーションと自制力が必要です。通学制のスクールであれば、周囲も自分と同様行政書士試験を受けようとしている仲間ばかりです。周囲の頑張りを目にすることで、自分のモチベーションを引き上げることもできるでしょう。
- 初心者で何から始めていいか分からない
- 計画的に勉強するのが苦手
- 一人だとついついサボってしまう
そんな方は、手厚いサポート体制が整っているスクールがおすすめです。
通信講座を受講する
行政書士には通信講座もあります。通学制のスクールが通信講座をおこなっていたり、科目を履修できる通信制大学もあります。
通信講座のメリットは通学制のスクールよりも安価に受講できるところが多いのがメリットです。また一人で勉強することを前提としているため、テキストも初心者向けにわかりやすく工夫されており、講座によって動画教材などもあり、通勤中に勉強することも可能です。
- スクールに通う時間がない
- 空き時間に自由に学習を進めたい
- 勉強方法のガイドラインは引いて欲しい
そんな方には通信講座がおすすめです。プロの講師への質問など、質疑が自由に行える通信講座もありますので、自分の欲しいサービスのある通信講座を選びましょう。
独学で勉強する
独学で勉強するメリットは何といってもコストが大幅に抑えられることでしょう。独学での勉強時間の目安は約1,000時間と言われており、自分で計画的にコツコツ学習に取り組める方なら独学でも行政書士に合格することが可能です。
サポートを受けられる環境ではないため、分からないところがあれば自分で調べる必要があったり、法改正などの最新情報を試験までに得ることができないデメリットはありますが、自身でスケジュールを引いてテキストに取り組める方なら問題ないでしょう。
スクールや通信講座で学習するメリット・デメリット
スクールや通信講座はお金がかかりますが、そこで学習するメリットはもちろんあります。
現在の行政書士試験は平成18年から開始されており、15年以上の試験実績があるので、スクールや通信講座には様々なノウハウが蓄積されています。
他にも
- 試験に特化した教材が準備されている
- 法改正などの最新情報が入ってくる
- 分からないことがあればすぐに質問ができる
- モチベーションを保ちやすい
などのメリットがあります。
デメリットはやはり独学に比べてコストがかかることでしょう。スクールは時間的拘束も発生するので、自分のやりやすい勉強スタイルに合わせて選ぶことが大切です。
行政書士試験を独学で学習するメリット・デメリット
独学で行政書士試験を学習するメリットは何といっても費用が安く収まるということです。テキストや問題集、模試などを合わせると3万〜4万程の出費で済むでしょう(受験料は除く)
またデメリットは
- 教材を自力で選ばなければいけない
- 分からないことを質問できる環境がない
- モチベーションの維持が大変
などがあります。
独学に向いているのは、試験勉強のスケジュール管理が行えて、計画的にコツコツ学習を進められる人です。またモチベーション管理が得意な人も向いているといえます。
独学で合格するためのおすすめテキスト
独学で合格するためのおすすめテキストを二冊ご紹介します。
1:うかる!行政書士入門ゼミ2024年度版
初学者必読、と銘打たれた通り初心者に分かりやすい行政書士の入門テキストです。試験の全体像がフルカラーで分かりやすく解説されています。
特徴は以下の通り
- 行政書士試験の全体構造から理解できるように、をわかりやすく解説されている
- 憲法、民法、商法、行政法、基礎法学、一般知識と行政試験の必要範囲が網羅されており、初心者向けにイメージしやすい身近な事例から法律の初歩が解説されている。
- 行政書士試験当日までの学習モデルプランが記載されており、自分のスケジュールに落とし込める。
- 実際に行政書士になった後のスケジュールなどが具体的に紹介されている。
使用者の声も「分かりやすい」「読みやすい」と評判で、初学の「最初の一冊」にぴったりのテキストです。
Amazon:うかる!行政書士入門ゼミ2024年度版
2:2024年版出る順行政書士ウォーク問過去問題集
独学で勉強するなら過去問の学習は必須です。こちらの問題集は過去10年分の本試験問題が、各科目の項目別に分類され掲載されています。
また各問題の正答率も記載されており、最新の法改正にも対応されているので安心して学習に取り組むことができます。
3分冊セパレート形式で、サイズもコンパクトなB6サイズ。持ち運びにも便利なのも特徴です。
Amazon:Amazon:2024年版出る順行政書士ウォーク問過去問題集
行政書士をめざせるおすすめのスクール・通信講座
最後に、行政書士を目指すためのおすすめのスクールや通信講座を紹介します。
資格スクール大栄(全国)
資格スクール大栄は「挫折させない」「続けられる」にこだわった資格スクールです。
自分の都合に合わせた日時に予約し、通学受講する「オンデマンド講座」と決まった曜日・時間帯に定期的に通学する「ライブ講座」があります。
苦手な問題を分析しオーダーメイドで問題を作成してくれる「ForYou答練」や、モチベーションタイプ診断によるカスタマイズされたスケジューリングを提案してくれるのも大きな特徴です。
もちろん講師には自由に質問が可能なので、合格までしっかりとサポートしてくれます。
スクールホームページ:資格スクール大栄
ヒューマンアカデミー/通信講座(通信)
ヒューマンアカデミーはこれまで173万名以上の修了者を出してきた大手の通信講座です。行政書士講座の通信講座も提供しています。
標準学習期間は12ヶ月に置かれており、効率的に合格必要得点範囲に的を絞ったカリキュラムが組まれているのが特徴です。講義動画はインターネットのある環境であれば24時間いつでも視聴可能で、自分のペースで学習に取り組みたい方に向いています。
質問サポートは回数無制限で、何度でも分からないところは質問できるので安心できます。
スクールホームページ:ヒューマンアカデミー/通信講座
日本不動産学院大阪(大阪)
日本不動産学院大阪は、大阪・梅田駅直結の法律・不動産資格の専門校です。
講義と宿題による学習スタイルで、木曜と土曜に開講しています。講義ごとに理解度チェックの試験が実施され、宿題用には解説付きの問題を渡してくれたりと合格までしっかりサポートしてくれます。
入校時期により受講料が変わるので、問い合わせる必要があります。
スクールホームページ:日本不動産学院大阪