行政書士として開業・独立するための手順
ステップ1:行政書士試験に合格をする
開業・独立するにはまず行政書士の資格を得ることが必要となります。
行政書士になる方法はいくつかありますが、スタンダードな方法は年一回、例年11月第2週の日曜日に行われる行政書士国家試験に合格することです。
行政書士試験は合格率10%前後と難関試験の一つですが、士業では珍しく受験資格に制限がないことが特徴です。
年齢や学歴、国籍等を問わず、どなたでも受験することができます。
行政書士試験の特徴
試験時間は3時間の筆記試験で、マークシート方式と記述式の問題があります。
試験の内容は憲法、行政法、民法、商法、基礎法学、および行政書士の業務に関連する一般常識で、中でもボリュームがあるのが民法と行政法です。
合格に向け、この民法と行政法の条文を正しく理解することが高得点のポイントになるでしょう。
合格基準は法令等の科目で50%以上、一般常識等の科目で40%以上、試験全体の得点が満点の60%以上にあたる180点以上獲得できていれば合格、という絶対評価になっています。
上位何名までという相対評価ではないため、過去問などで対策をとり、きちんと実力さえつければ十分に合格が狙える試験であるといえるでしょう。
ステップ2:行政書士登録をする
行政書士は試験合格だけでは行政書士を名乗り業務をおこなうことはできず、日本行政書士連合会の「行政書士名簿」に登録をしなければなりません。
登録書類は開業しようとしている事務所所在地の都道府県行政書士会宛に提出し、同時に都道府県の行政書士会に入会することになります。
提出書類の内容
- 行政書士登録申請書
- 履歴書
- 誓約書
- 都道府県行政書士会への入会届
- 事務所の写真
- 試験合格証
- 戸籍抄本
- 住民票記載事項証明書 など
都道府県行政書士会から連合会に書類を送られたのちは、審査を受け登録完了となりますが、審査期間は登録書類の提出から1か月〜2ヶ月程度かかることもあります。
行政書士試験の合格後 開業までの手順
事務所所在地事務所名を決める
→登録申請の書類を作成
→事務所ホームページや名刺、挨拶状などを用意
→都道府県行政書士会に書類を提出
→登録証授与式に参加
→税務署に開業届を出す
登録をすることで法改正等に関する情報が得られたり、会員向けの研修会や勉強会に参加し人脈を広げるきっかけにもなるといったメリットもあります。
ステップ3:経験を重ね、人脈を広げてから独立・開業する
行政書士は試験に合格し行政書士名簿への登録をすれば、実務経験等の制限もなく、いつでも仕事をすることができます。また他の士業と同様に初期投資もほとんど必要なく、開業・独立のハードルが低いのが特徴です。
一方で行政書士は「稼げない仕事」とも言われ。国家資格の中では廃業率も高いのも事実です。
行政書士として開業・独立するにあたって最も大切なのは、独立後にいかに案件を獲得するかだといえます。
開業後の事務所経営のことを考えると、いきなり開業・独立するのではなく、他の行政書士事務所で修行したり、会社に許可をもらいサラリーマンをやりながら副業として始めてみるのも方法の一つです。
全くの未経験から行政書士の業務、営業、経理などを一人で始めるよりも、副業として行政書士の業務を覚え、経営ノウハウもある程度掴んでいた方が開業・独立後にうまくいく可能性は高まります。
業務の性質上、一度顧客に信頼してもらうと次の仕事へと繋がっていくため、まずは開業・独立前にしっかりと経験と人脈を広げておくことが成功の秘訣といえるでしょう。
行政書士の開業・独立に必要なものとは?
事務所・パソコン・複合機・机といったものがあれば開業できる
行政書士の開業・独立に必要なものは、他のビジネスに比べ少ないのが特徴です。
まずは事務所を構えられるスペース、パソコン、複合機、机やイス、事務用品があれば開業・独立をすることができます。行政書士の職印は登録時に届け出ましょう。
事務所スペースは、賃貸物件のほか共同事務所、シェアオフィス、自宅開業という方法もあります。
自宅開業する場合は、登録に際し生活のする部屋と事務所とする部屋が明確に分かれ、玄関から生活スペースを通らずに事務所の部屋へ行けることが条件です。
行政書士の仕事にパソコンとプリンターは必須です。
プリンターは複合機でかまいませんが、A3対応の複合機を選ぶようにしましょう。
行政書士は顧客の個人情報に関する資料もコピーすることがあるため、A3まで対応できるものが望ましいです。
パソコンもセキュリティ対策は万全にするようにしましょう。
事務所備品では鍵付きキャビネットは必須です。
顧客の情報を流出してしまった場合は、多額の損害賠償の責任を負うことにもなりかねません。
実際に開業する前までには、事務所の固定電話の契約や事業用の預金通帳、名刺等も作成しておきましょう。
行政書士の開業・独立にはどれくらいの費用が必要?
約100万円の開業費用が必要
行政書士として開業するにあたって必要な費用は約100万円といわれています。
開業費用の内訳は、行政書士会への登録費用約30万円、机やイス、複合機などの事務所備品約20万円、必要に応じて事務所賃貸費用、人件費、電話回線、名刺、挨拶状、ブログ等作成費などです。
このほかにも意外と大きな金額になるのは、セミナーや書籍購入費などの行政書士の実務勉強費用です。
支部によって会費とは別に協力金などを設けている場合もありその金額、行政書士賠償責任保障制度に加入費用、開業後の勉強費用などを合わせると、事務所を自宅とした場合でも、結局のところトータルで50万円〜100万円ほど必要だと言われています。
また、開業して数か月は事務所経営が軌道にのらない場合が多く、数か月分の生活費は前もって工面しておくとよいでしょう。
生活費を確保した上で、仕事を獲得する広告費を捻出できるよう、十分な貯蓄をしてから開業・独立されることをおすすめします。
しっかりとしたビジネスプランを持っていれば、融資や補助金なども活用するようにしましょう。
行政書士開業・独立・フリーランスのメリット・デメリットとは?
開業・独立・フリーランスのメリット
- 自分のペースで仕事ができる
- 働く場所を選べる
- 定年退職がなく何歳まででも働ける
行政書士として開業・独立、フリーランスとして活躍するメリットの一つは、自分のペースで仕事ができることです。
開業・独立・フリーランスの場合は、サラリーマンのように定時の出社やサービス残業などはありません。事務所を自宅や自宅の近くに構えれば、通勤時間や満員電車に煩わされることもなく業務に打ち込むことができます。
行政書士という仕事上、案件を抱えている時には多忙になることもありますが、ある程度自分で仕事量を調整したり、カフェや自宅など好きな場所に移して仕事ができるのも開業・独立・フリーランスの魅力です。
開業・独立・フリーランスになると定年退職がないのも、これからの時代に沿った働き方ができるメリットの一つです。仕事量を調整しながら、働こうと思うなら何歳まででも働くことができます。
また行政書士の仕事の信頼と実績は、キャリアに応じて積み重なっていくため年齢を重ねるにつれて安定的な収入が望めるでしょう。
開業・独立・フリーランスのデメリット
開業・独立・フリーランスのデメリットは最初のうちはなかなか仕事を獲得することが難しいという点があります。
また行政書士に限らずフリーランスの働き方は、仕事がなければ収入を得ることができなくなってしまう不安がいつでもついて回ります。継続的に仕事を獲得し続けなければ、行政書士として食べていくことが難しくなってしまうでしょう。
このデメリットを解消するには、やはり営業活動を積極的に行うことや、開業・独立前に経験を積んだり、人脈を広げておくと良いかもしれません。
また行政書士は司法書士や税理士、社労士、他の行政書士などと連携し業務を行う場面が多く出てきます。
他の士業の方々との人脈も広く持っておくことも成功に繋がるポイントといえるでしょう。
もう1つのデメリットとして、開業・独立すると行政書士の業務だけではなく、事務所の経費や税金支払いなど、事務所経営もこなさなければなりません。
それらの業務が煩雑になると、メインである行政書士業務に支障をきたすことも考えられます。
しかしこちらも、経営が軌道に乗せることができれば、スタッフの方を雇ったり、税理士や経理サービスなどに外注する等の方法をとれば問題は解決し、行政書士業務に集中できるようになります。
まとめ
行政書士は、開業・独立によって高収入も期待できる資格であり、試験に合格し、登録を済ませた後に開業・独立するのは難しいことではありません。
しかし、事務所が軌道に乗るまではなかなか収入を得られないという場合もあります。
開業・独立を考えた時には、まずはその後のビジョンを明確にし、念入りに準備することが大切です。
紹介した通り、行政書士事務所で経験を積んだり、人脈を広げてから開業をされると、仕事も獲得しやすくなるかもしれません。
開業・独立にはメリットもデメリットもあり、ご自身にとってより良い方法を検討するのがおすすめです。
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