行政書士の登録は必須か?
行政書士の業務を行う為には、日本行政書士会連合会の行政書士名簿への登録が必要であると、行政書士法第6条で定められています。
第六条 行政書士となる資格を有する者が、行政書士となるには、行政書士名簿に、住所、氏名、生年月日、事務所の名称及び所在地その他日本行政書士会連合会の会則で定める事項の登録を受けなければならない。
2.行政書士名簿は、日本行政書士会連合会に備える。
3.行政書士名簿の登録は、日本行政書士会連合会が行う。
(引用:e-Gov法令検索『行政書士法』第6条より)
そのため、すぐに行政書士の業務を行いたい場合は登録は必須です。
行政書士試験に合格しただけでは、まだ資格者であるというだけで行政書士は名乗れないので注意してください。
行政書士に登録しないとどうなる?
ではすぐに行政書士の業務を行うつもりがない場合、登録は必要でしょうか?
結論から言うと、行政書士の業務を行わない場合、急いで登録する必要はありません。行政書士の登録には現在では期限が設けられておらず、業務を開始したいタイミングで登録の申請をすれば問題ありません。
というのも、詳しくは後述しますが、行政書士への登録費用はおよそ30万という決して安くはない金額がかかります。
実際、令和4年度の試験合格者数は5,802人いますが、その内令和4年度中に登録申請を行ったのは2,017人です。この人数には過去試験に合格した人数も含まれる為、実際には当年度中に登録を行っている人はもっと少ないでしょう。
参考:
試験合格者数:『一般財団法人行政書士試験研究センターホームページ』より
登録人数:総務省『【表1】行政書士の登録状況(令和4年度)』より
行政書士会に登録するメリット
では行政書士会に登録するメリットとしては、どのようなものが挙げられるでしょうか?登録する主なメリットは、下記の二つです。
順番に見ていきましょう。
行政書士として業務ができる
まず、行政書士は行政書士会の登録を受けて初めて、行政書士の業務を行うことができます。せっかく試験に合格しても、登録が終わっていなければ行政書士と名乗ることも、独立開業することもできません。登録は行政書士の業務を行う上での義務であると覚えておきましょう。
また、行政書士として勤める訳ではなく一般企業の法務部に採用されたい、資格を転職で有利に使いたい、という目的であれば登録を行う必要はありません。名乗ることはなくても、試験に合格していることで一定の知識を担保している証拠になるでしょう。
行政書士の研修を受けることができる
行政書士会に登録していることで、行政書士は研修を受けることができます。
法律はその時の情勢に合わせて変化していくものであり、行政書士にも最新の法改正情報などを自分で入手して知識にアップデートをかけていく必要があります。
各都道府県の行政書士会では現役の行政書士にとって有益なさまざまな研修を行っていますが、行政書士会に登録していない場合、これらの研修を受けることはできません。もちろん自身で法改正の情報などを入手して、知識を得ていく方法もありますが、日々の仕事で忙しい中であれば、行政書士会の研修が受けられたり、情報を手に入れやすくなるのはメリットと言えるでしょう。
行政書士の登録費用
では、日本行政書士会連合会への登録費用について具体的な金額と内訳を見ていきましょう。
前提として、日本行政書士会連合会への名簿登録には各都道府県の行政書士会を通す必要があり、都道府県によって費用は異なります。ここに書いてあるのは参考のため、実際の登録の際には自身が登録する都道府県の行政書士会のホームページなどで金額を確認するようにしましょう。前後はしますが、おおよその目安は30万円ほどです。
初期登録費用
行政書士会の登録には登録手数料、入会金、登録免許税(収入印紙)が必要です。また登録時に何ヶ月か分の会費(行政書士会会費、政治連盟会費の二種類)を納入するのが一般的です。
たとえば、東京都行政書士会を例にすると、内訳は以下の通りです。
(例)東京都行政書士会の場合
内容 | 金額 |
---|---|
登録手数料 | 25,000円 |
入会金 | 200,000円 |
東京都行政書士会会費3ヶ月分 | 18,000円 |
東京行政書士政治連盟会費3ヶ月分 | 3,000円 |
登録免許税(収入印紙) | 30,000円 |
合計 | 276,000円 |
この他に行政書士バッジの購入代金として3000円かかります。
毎月の会費
また初回時に払い込んだ月会費分が経過すれば、毎月の会費も必要となります。
たとえば東京行政書士会の場合は月7000円の会費が必要となります。内訳は東京都行政書士会会費が6000円、東京行政書士政治連盟会費が1000円です。
各都道府県によって金額が異なりますので、詳しくは登録を希望する行政書士会のホームページをご覧ください。
また、毎月の会費を支払わなかった場合、納付するよう通知が行われます。それでも納付を拒んだ場合は、会員資格の停止や廃業勧告をされることになります。行政書士として仕事が続けられなくなるばかりか、せっかく積み上げた信頼も失いかねませんので、行政書士として真っ当に仕事をしたい場合は必ず納付するようにしましょう。
登録申請と手順
最後に、行政書士登録をするための具体的な登録申請と手順について説明します。そこまで複雑な内容ではありませんが、実際に登録する際は各都道府県のホームページを参照し、提供された申請フォーマットを使うようにしてください。
行政書士登録申請の具体的な流れは以下の通りです。
順番に見ていきましょう。
申請書の提出
まず申請を希望する都道府県に、申請書を提出します。申請に必要な書類は以下の通りです。
- 行政書士登録申請書
- 履歴書
- 誓約書
- 本籍地の記載された住民票の写し(提出の日前3月以内に交付を受けたもの)
- 身分証明書(提出の日前3月以内に交付を受けたもの)
- 顔写真
申請書、履歴書、誓約書については、日本行政書士会連合会のホームページから様式と見本をダウンロードできます。
またこれに加えて、届け出る都道府県や内容によって下記の書類が必要になります。
- 各都道府県の行政書士会への入会書
- 連盟への加入届
- 事務所の間取りや外観・内観の写真
- 雇用契約書の写し(行政書士又は行政書士法人の使用人として登録する場合)
- 共同・合同事務所届出(共同で事務所を持つ場合)
これらは各都道府県の行政書士会のホームページに詳しく書かれていますので、自身が所属する行政書士会の規約に沿って登録申請を行うようにしましょう。
現地調査
独立開業する場合、都道府県の行政書士会によって現地調査が行われるケースがあります。
事前に事務所の写真を提出することで省略されることもあるので、所属する行政書士会の申請ページをご確認ください。
どちらにせよ、登録の段階で事務所は必須です。要件を満たした事務所を登録時点で準備しておく必要があります。
尚、行政書士またはその使用人として行政書士事務所や法人などに就職する場合、現地調査は不要であり事務所の準備も必要ありません。この場合は雇用契約書の写しの提出が必要になります。
審査・登録
以上の情報を元に、日本行政書士会連合会による審査が行われます。審査に問題がなければ登録が無事行われ、正式に行政書士と名乗ることができるようになります。
登録の審査には約1~2カ月を要します。試験に合格してもすぐに業務を行える訳ではありませんので、仕事を受ける際には気をつけましょう。