寿司職人資格ガイド
最近の傾向
【寿司職人は海外での需要が高まっている】
海外では健康志向の強い「和食」の人気がますます高まっており、その中でも「寿司」はヘルシーでおいしいという評判から大人気のメニューとなっています。
また、海外でも魚の調達ルートの確立や米栽培が定着し、日本と変わらない環境で寿司が楽しめるようになったというのも人気を博している一因でしょう。
そのため寿司職人の需要は年々高まっており、日本においても海外の求人が出回っているほどです。
【アメリカで働く日本人の寿司職人は年収が2倍以上に】
アメリカで働く日本人の寿司職人の年収は800万円以上といわれています。
国税庁の民間給与実態調査(令和3年)によると、日本人の平均年収は443万円ですので、およそ2倍の収入が得られるということになります。
アメリカで寿司店を独立開業した寿司職人のなかには、年収が8,000万円に到達したという方も。経験を積むとさらに高収入が目指せる環境があります。
【外国人観光客に寿司店が大人気】
新型コロナウイルス感染症の分類が5類に変更となり、2023年のゴールデンウイークから日本に来る外国人観光客の人数が一気に回復してきました。
海外でも寿司が食べられるようになったものの、海鮮の種類や味は日本にはかないません。寿司店は訪日観光客に大人気のスポットです。
そのため、国内でも寿司職人の需要は高く、有効求人倍率(※)はおよそ2倍の数字をたどっています。
(※)有効求人倍率:ハローワークの求人数をハローワークに登録している求職者数で割った値。倍率が高い=求職者数より求人数のほうが多いことを示し、求職者が仕事を選べる状況にあることがわかる。
【女性の寿司職人も増加してきている】
古くから職人=男性の仕事というイメージが続いてきた日本ですが、近年は女性も積極的に採用する寿司店が増えてきました。
また、海外で活躍したり、創作寿司を得意としたりするのは、女性の寿司職人の割合も多く、男女の格差が少しずつ減ってきているといえるでしょう。
女性ならではの目線を活かせるというのも、寿司業界の特徴の1つかもしれません。
データ出典元:
国税庁「令和3年分 民間給与実態統計調査」
厚生労働省 職業情報提供サイトjobtag「すし職人」
どんな仕事?
【寿司を握るだけの仕事ではない】
寿司職人は寿司を握るだけが仕事ではありません。寿司を握るまでにさまざまな業務をこなす必要があります。
主な仕事内容を以下に紹介しましょう。
・魚介類の仕入れ
・材料の仕込み(魚をさばく等)
・米飯を炊き、酢飯(シャリ)を作る
・寿司を握り、お客様に提供する
なお、仕入れや仕込みは、寿司店の営業時間外におこなうため、勤務時間は早朝のシフトや店舗の閉店時間までの夜間のシフトなどがあります。小さな店舗では、休憩を挟みながら時間を通して勤務することもあるでしょう。幅広い時間帯に対応して働くのが寿司職人の特徴です。
また、寿司店の店長やマネージャーになった場合は、従業員の教育といったマネジメント業務や売上管理など、事務的な業務も担当します。
【包丁のメンテナンスも欠かせない仕事】
寿司職人の片腕ともいえる包丁。魚をおろす出刃包丁や刺身の薄造りに多用する柳刃包丁など、複数の包丁を使い分けます。
包丁は切れ味が料理の味を左右するといわれるほど重要な役割があり、メンテナンスは欠かせません。
寿司職人によっては、毎日包丁を研ぐ方もいるそうです。包丁研ぎも寿司職人の重要な仕事の1つといえるでしょう。
活躍の場
【飲食店が中心だが、就業先の幅は広い】
寿司店以外にも寿司を提供する飲食店の種類は幅広く、以下のような職場で寿司職人は活躍しています。
・寿司店(カウンタータイプの寿司屋、回転寿司、寿司デリバリー専門店)
・居酒屋
・和食レストラン
・ホテルのレストラン
・バイキングレストラン
【活躍の場は国内だけでなく海外にも広がる】
また、活躍の場は日本国内にとどまりません。世界各地に寿司店や和食店・日本料理店が出店されています。
日本ブームや和食ブームも継続した盛り上がりを見せており、今後もさらなる海外展開が見込まれます。寿司職人のニーズも高まる一方でしょう。
こんな人が向いています
【料理をするのが好き】
寿司職人は和食料理人(シェフ)の代表格といってもよいでしょう。
基本的に料理をするのが好きでなければ、継続が難しい仕事かもしれません。
【おいしい!の言葉に喜びを感じられる人】
寿司職人だけにとどまらず、料理が好きなあらゆる方は、料理を食べた人の「おいしい!」の言葉に喜びを感じ、料理に対するモチベーションを上げているのではないでしょうか?
お客様の笑顔にやりがいを感じられる方は寿司職人に向いているでしょう。
【人と話すのが好きな人】
店舗の形態にもよりますが、寿司職人はカウンターでお客様と対面しながら寿司を提供するケースが多くあります。
その場合、寿司職人と会話しながら食事を楽しみたいというお客様もいらっしゃるでしょう。
人と話したり、コミュニケーションを取ったりするのが好きな方は寿司職人に向いているといえます。
【味覚と嗅覚が鋭い人】
生ものを多く扱う寿司職人は、味覚と嗅覚が鋭い人が適しています。
寿司は繊細な料理ですので、微妙な味の違いがわかったり、においで食材の状態がわかったりすることが大事です。
【英語などの外国語を活かした仕事がしたい人】
実は、英語などの外国語を活かしたい方も寿司職人に向いています。
寿司職人の養成校は、異業種で働く方や未経験の方も寿司職人のプロになれるカリキュラムが組まれているため、やる気があれば誰でも寿司職人を目指せます。
外国語ができる寿司職人は、海外での就職が有利になります。寿司職人の仕事は海外就労の選択肢の1つになり得るでしょう。
資格をとるには?
【寿司職人養成校のカリキュラムを履修する】
寿司職人は学歴も資格も不要の職業ですが、スキルを証明する手段として資格取得が有効的です。
寿司職人の資格は、寿司職人養成校が発行する修了証(ディプロマ)が該当し、寿司職人養成校に入学、カリキュラムを修了すると取得できます。
なお、寿司職人養成校では、2~3ヶ月で修了証が取得できる短期のコースが人気を集めています。
【寿司職人の修了証は海外で就職する時に役立つ】
海外で働くには、就労許可のおりるビザ(入国を承認する証明書)が必要になります。
渡航する国にもよりますが、寿司職人としての能力が認められると、高度スキルのある人材としてビザが発行されやすくなるのです。
海外での就職を視野に入れている方は、寿司職人養成校に入り、スキルの証明ができる修了証を取得しておくとよいでしょう。
この仕事に就くには?
【寿司店に弟子入り(就職)する】
従来、寿司職人になるルートは、寿司店に弟子入りして修行する方法が一般的でした。
昔は寿司店を知る人の紹介で就職するケースがほとんどでしたが、現在は見習い寿司職人としてハローワークなどに求人が出されていることが多いようです。
就職後、すぐに寿司を握れるということはなく、皿洗いや清掃、オーダー受注などのホール業務から徐々に寿司職人としての仕事を学んでいきます。
業務の流れや仕事内容を1つずつじっくり覚えることができますが、寿司を握る一人前の職人になるにはかなりの年数がかかるのがこのルートの特徴でしょう。
【回転寿司などの飲食店に就職する】
寿司職人の養成校を卒業した方は、回転寿司や和食チェーンなどの飲食店に就職するケースが多いようです。
飲食店の採用サイトや求人サイトで募集をしていることが多いため、比較的就職しやすいことが特徴です。また、養成校が就職先を紹介してくれることもあります。
就職後は研修中のスタッフとしてその店舗の業務内容や仕事内容を一通り覚え、その後寿司職人として仕事をスタートします。
【独立開業する】
独立し、寿司店などを開業するのも寿司職人の働き方の1つです。
寿司店を開業する場合は、店舗経営のノウハウや開業資金も必要になるため、一度寿司店などの飲食店に就職し、経験を積んだり、資金を蓄えてから独立を目指す方が多い傾向です。
しかし、寿司職人養成校の卒業生のなかには卒業後すぐに店を持つ方もいらっしゃいます。
理由として、養成校のカリキュラムには、寿司に関する知識や技術のほか店舗運営についての科目もあるため、網羅的にスキルが習得できるメリットが挙げられます。
資金を確保できるのであれば、早い時期に独立開業を目指すことも可能でしょう。
【寿司職人養成校の講師やセミナー講師】
寿司職人は、お客様に寿司を提供する以外の仕事もあります。
寿司職人養成校の講師やセミナー講師といった、寿司についての技術を教える仕事が挙げられるでしょう。
ただし、講師を目指すには、人に教えられるだけの技術や知識が必要となります。実際に寿司職人として経験を積んだ後のキャリアパスと考えるのがよいでしょう。
【海外就職を目指す場合は、先に国内で経験を積むのが推奨される】
海外は即戦力となる経験のある寿司職人を募集する傾向にあります。そのため、海外での就職を目指す方は、先に国内で実務経験を積むことが推奨されるでしょう。
その間に外国語スキルも習得しておくと、より有利な海外就職につながります。
必要な知識とスキル
寿司職人に学歴や資格は必要ありませんが、知識と技術スキルの習得が必須です。
寿司職人に必要な知識とスキルを以下に紹介します。
【魚・米・酢などの知識とさばきの技術】
魚の知識とさばきの技術がなければ、寿司職人は務まりません。
「魚の目利き」と呼ばれるように、魚の種類や状態のよい魚の見分け方などの知識は仕入れに必須です。
また、米と酢の種類によっても寿司の味が変わり、お客様が寿司につける醤油との相性も考えなくてはなりません。米や酢、醤油といった調味料などの知識も重要でしょう。
なお、これらの知識はお客様に説明する際にも必要となるため、幅広い知識の習得が推奨されます。
さらに、寿司のネタをつくるためには、魚をさばけなくてはなりません。魚の種類によってさばき方も異なるため、覚える内容は広範囲に渡ります。
【炊飯・握りの技術】
寿司職人の技術が最大に問われるのが、米の炊き加減と握りの技術でしょう。
寿司に使う米飯は、炊き加減により食感に大きく影響します。
握りについても、魚の種類によって握り方が異なり、味と食感を損なうことなく握らなくてはなりません。
また、握りずし以外にも軍艦巻きや棒寿司・押し寿司といった種類の技術が必要です。
【調理の技術】
寿司のネタは生魚だけでなく、たまごなど調理を必要とするネタもあります。
また、寿司以外に和食を提供する店舗で働く場合は、切る・煮る・焼く・揚げるなど、一通りの調理技術を習得する必要があるでしょう。
【調理師免許の取得が推奨される】
調理師免許は、正しい調理技術を習得していることを証明でき、飲食店の開業・運営に必須の食品衛生責任者資格の講習受講が免除になる(申請のみで資格取得できる)というメリットがあります。
調理師免許があると、転職や独立開業の際にも役立つため、寿司職人が取得しておいたほうがよい資格といえるでしょう。
【経営スキル】
独立開業を目指す寿司職人は、経営スキルの習得も重要です。
就職した寿司店などの実店舗で、店舗運営についても学んでいくのが一般的ですが、そのようなルートを介さずに経営者となる場合は、経営に関する研修や講座・セミナーを受講すべきでしょう。
注目ポイント
【寿司職人の国内平均年収は450万円程度と高めの水準】
アメリカで働く日本人寿司職人の年収は800万円以上ということを前述しましたが、日本国内における年収はどの程度なのでしょうか?
国内大手の求人検索サイトである求人ボックスが集計したデータ(2023年5月8日時点)では、寿司職人の平均年収は452万円、平均月給は38万円という結果が出ています。
日本の平均年収が443万円(令和3年民間給与実態調査)ですから、寿司職人は平均以上の収入を得ているということがわかります。
国内外で高い水準の給料が得られ、やりがいも大きい寿司職人の仕事は、今後も注目を浴びていく職業の1つといえるでしょう。
データ出典元:求人ボックス給料ナビ「寿司職人の仕事の年収・時給・給料」