ドローン検定とは?
ドローン検定とは、国土交通省から「無人航空機の操縦技能講習を行う民間講習団体」として認定を受けている「ドローン検定協会株式会社」が非営利で運営する資格です。ドローン検定の正式名称は「無人航空従事者試験」です。
ドローン検定は、今後さらなる普及が予想されるドローンの安全な運用についての適切な知識を社会に広める目的で創設されました。
ドローン検定の合格者には「無人航空機に関する飛行履歴・知識・能力を有することの証明書」がドローン検定協会より発行されます。
証明書は国土交通大臣の許可が必要な空域でドローンを使用するための申請手続きの一部を省略することに役立ちます。ドローン検定に合格することのメリットは次の項で詳しく紹介します。
ドローン検定に合格する5つのメリット
ドローン検定に合格する5つのメリットについて解説します。
・ ドローンについて正しい知識を持っていることをアピールできる
・ 国土交通省への飛行許可申請が承認されやすくなる
・ 自分のドローン飛行経験を証明できる
・ ドローン検定協会の提携団体が開催する講習に参加でき、座学が免除になる
・ ドローン検定のコミュニティサイトが使えるようになる
ドローンについて正しい知識を持っていることをアピールできる
ドローン検定に合格するためにはドローンの運用に関連する法律や、安全な飛行についての知識を身につけることが必要です。
ドローン検定に合格することによって自分がドローンを適切に扱えることをアピールできるようになれます。合格者はドローン検定のロゴを自社のホームページや自分の名刺に入れることができるので、ビジネスに役立つ資格だといえるでしょう。
また、ドローン検定の取得に向けた勉強を通してドローンや関連する法律についての最新情報を得ることができます。法律を知らなかったことによる違反や事故を防ぐことも可能です。
国土交通省への飛行許可申請が承認されやすくなる
ドローンの飛行は他の航空機と地上の人の安全を確保した上で行うことが必須です。そのため、航空法の定めにより、以下の空域でドローンを使用したい場合には事前に国土交通省に飛行許可の申請を行う必要があります。
・ 空港などの周辺
・ 150m以上の上空
・ 人口集中地区
尚、飛行許可の申請先はドローンの使用を希望する空域を管轄する地方航空局や空港事務所です。
参照 国土交通省 「無人航空機の飛行禁止空域と飛行の方法 (1)無人航空機の飛行の許可が必要となる空域」
国土交通省に上述の空域での飛行許可の申請を行う際に、ドローン検定の「無人航空機に関する飛行経歴・知識・能力を有することの証明書」を添付すると許可を得やすくなります。
ドローン検定の合格者であれば無資格の人よりも飛行申請が承認される可能性が高くなりますが、場合によっては却下されることもあります。
後の項で紹介するドローン検定協会公認の技能研修を受けておくとより飛行許可が下りやすくなるでしょう。
自分のドローン飛行経験を証明できる
国土交通省へ飛行許可の申請をする際には、申請者にドローンを飛行させた経験が10時間以上あることを証明することが必要です。
参照 国土交通省 無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領4-2 (1)
ドローン検定では合格者に対して自分の飛行時間を記録できるオンラインサービスを提供しています。ドローン検定のメンバーサイトで、国土交通省への申請時に使用できる自分の飛行履歴の証明書類をPDFで出力することが可能です。尚、飛行履歴のPDFはいつでも出力できます。
また飛行時間だけでなく、飛行時のバッテリー消費量やエラーといった機体の状態の変化を記録として残せるため、メンテナンスにも役立ちます。
ドローン検定協会の提携団体が開催する講習に参加でき、座学が免除になる
ドローン検定に合格すると、ドローン検定協会と提携関係にある以下の団体が行う講習の受講資格を得ることができ、カリキュラムによっては座学が免除になります。
また、提携団体が発行する資格の証明書にドローン検定の合格者であることを記載してもらうことが可能です。
ドローン検定に合格することで、ドローンの知識や操縦技術をさらに向上させるための機会を得ることができます。
ドローン検定を取得することでさらなるスキルアップ、キャリアアップを目指すことができるでしょう。
ドローン検定のコミュニティサイトが使えるようになる
ドローン検定の公式サイト内には合格者のみが利用できる「ドローン知恵袋(Q&Aコミュニティ)」があります。一般の方は閲覧のみ可能です。
コミュニティ内で他のメンバーに質問をしたり、ドローンに関連する法律や資格についての情報を共有したりすることができます。
ドローン検定試験の基本情報
ドローン検定は筆記試験のみで、実技試験はありません。
試験の出題範囲は大きく分けて基礎知識、物理学、工学、気象、専門知識の5科目で、各科目に関連したさまざまな分野から出題されます。
ドローン検定には1級〜4級まであり、上の級になるほど出題範囲が広がり、難易度が高くなります。
ドローン検定試験の基本情報は下記表の通りです。
ドローン検定の試験概要・受講料・受験資格
- 出題方式
- 4肢択一
- 解答形式
- マークシート方式
- 問題数
- 全50問
- 配点
- 1問2点
- 合格点
- 80点以上
- 受験料
- 1級 18,800円
2級 12,900円
3級 6,600円
4級 3,200円 - 受験資格
- 1級 ドローン検定2級に合格
2級 ドローン検定3級に合格
3級 なし
4級 なし - 試験会場
- 日本各地から自分の希望するエリアを選択する
※試験会場の詳細は受験申し込み後に郵送される受験票で確認可能 - 合否の確認方法
- 合否の結果は試験日から約10日後に郵送される。また、合格証は試験日から約1ヶ月後に送付される
※オンラインで合否と採点結果を確認できるが、別途1,500円の追加費用が発生する - 資格の更新
- 不要
ドローン検定の試験日程
ドローン検定試験は奇数月に毎年開催されます。
・ 2〜4級は1月、3月、5月、7月、9月、11月の年6回
・ 1級は1月、5月、9月の年3回
受験申し込みの締切日はドローン検定試験が開催される月の前月末日(休日の場合は翌営業日)までです。
2023年、2024年の試験スケジュールは以下の通りです。
【無人航空従事者試験の実施日】
実施年 | 日時 |
---|---|
2023年 | 1月22日(日)15:00〜 3月21日(火・祝)15:00〜 5月21日(日)15:00〜 7月23日(日)15:00〜 9月24日(日)15:00〜 11月23日(日)15:00〜 |
2024年 | 1月21日(日)15:00〜 3月24日(日)15:00〜 5月26日(日)15:00〜 7月21日(日)15:00〜 9月22日(日)15:00〜 11月24日(日)15:00〜 |
ドローン検定試験の合格率と難易度
ドローン検定の合格率は一般的な資格試験よりも高いです。
ドローン検定の第36回 (令和3年7月)から第45回 (令和5年1月)までの平均合格率は76%程になっています。尚、各級ごとの合格率は公表されていません。また、ドローン検定の合格者は3級が最も多いです。
各級の難易度については後の項で解説します。
ドローン検定の合格者数(第36回〜第45回)
申込者数 | 合格者数 | 合格率 | |
---|---|---|---|
第36回 (令和3年7月) | 1754 | 1354 | 77% |
第37回 (令和3年9月) | 1404 | 1129 | 80% |
第38回 (令和3年11月) | 1473 | 1121 | 76% |
第39回 (令和4年1月) | 1634 | 1309 | 80% |
第40回 (令和4年3月) | 1304 | 1061 | 81% |
第41回 (令和4年5月) | 1349 | 1049 | 77% |
第42回 (令和4年7月) | 1348 | 965 | 71% |
第43回 (令和4年9月) | 1114 | 754 | 67% |
第44回 (令和4年11月) | 734 | 585 | 79% |
第45回 (令和5年1月) | 859 | 651 | 75% |
級ごとの延べ認定数
認定数 | |
---|---|
1級 | 4,279人 |
2級 | 8,049人 |
3級 | 35,085人 |
4級 | 1,717人 |
※令和4年12月1日時点、講習受講による認定者を含める
参照 ドローン検定公式サイト
ドローン検定試験1級〜4級の違いについて
ドローン検定には1級〜4級まであり、上の級になるほど出題範囲が広くなり、より内容が専門的になります。
自分がドローンの運用についてどこまでの知識を必要としているかを考えた上で受験する級を決めましょう。
級 | 合格するために必要な知識のレベル |
---|---|
1級 | ドローンの操縦、管理、設計 |
2級 | ドローンの操縦と管理に関わる技術、機体の特性、法令やリスク管理、気象学 |
3級 | ドローンの操縦についての基礎知識、法令や機体の特性、無線 |
4級 | ドローンの安全な運用に必要な基礎知識 |
各級の特徴を詳しく紹介します。
ドローン検定4級試験の特徴
- 出題範囲
- 基礎知識:用語、動作、単位
工学:航空工学
気象:気象学基礎
専門知識:機体構造、姿勢制御、動力/バッテリー、送信機、責任/保険、飛行計画/記録
法令:無人航空機関係、電波関連 - 受験資格
- 誰でも受験できる
- 受験費用
- 3,200円
3級と4級の出題範囲はほぼ共通で、双方共に特別な受験資格を必要としないため、可能であれば3級から受験することをおすすめします。3級では4級の出題範囲に専門知識分野の「TEM」と、物理学分野の「力学」の2つが加わります。
3級と4級の試験対策は、ドローン検定協会が出版している「ドローン検定協会 公式BOOK ドローンの教科書 標準テキスト 無人航空従事者試験 3級4級対応」を勉強すれば十分です。
尚、一般的に4級合格に必要な勉強時間は8時間といわれています。
ドローン検定3級試験の特徴
- 出題範囲
- 基礎知識:用語、動作、単位
物理学:力学
工学:航空工学
気象:気象学基礎
専門知識:機体構造、姿勢制御、動力/バッテリー、送信機、責任/保険、飛行計画/記録、TEM
法令:無人航空機関係、電波関連
※黄色マーカーは3級から出題範囲に含まれる科目 - 受験資格
- 誰でも受験できる
- 受験費用
- 6,600円
3級から出題範囲に含まれる物理学の問題の中には計算をしないと解答できないものがあります。しかし、ドローン検定協会の標準テキストに出てくる公式を押さえておけば問題なく正答できるでしょう。
また、工学や気象学などの一見難解な分野についても公式の標準テキストですべて解説をしています。
関連サイト ドローン検定 公式テキスト
ドローン検定3級に合格するために必要な勉強時間の目安は初学者なら20時間ほど、ドローンの操縦経験がある方であれば10時間ほどといわれています。
ドローン検定2級試験の特徴
- 出題範囲
- 基礎知識:用語、動作、単位、組織/制度/国際情勢
物理学:力学
工学:航空工学、電気電子工学
気象:気象学基礎、航空気象学
専門知識:機体構造、姿勢制御、責任/保険、飛行計画/記録、動力/バッテリー、送信機、TEM/SRM/CRM、GNSS、リスク/メディカル、
法令:無人航空機関係、電波関連
※黄色マーカーは2級から出題範囲に含まれる科目 - 受験資格
- ドローン検定3級合格
- 受験費用
- 12,900円
2級は3級と比べて専門性が高く、実用的な内容に踏み込んだ問題が出題されます。
しかし、3級の内容をしっかりと復習した上で、ドローン検定協会が出版する「ドローン検定協会 公式BOOK ドローンの教科書 上級テキスト 無人航空従事者試験 2級対応」を学習しておけば合格できる難易度です。
2級対応の公式テキストの練習問題を繰り返し解いて本番に臨みましょう。
ドローン検定2級に合格するために必要な勉強時間の目安は20時間ほどといわれています。
ドローン検定1級試験の特徴
- 出題範囲
- 基礎知識:用語、動作、組織/制度/国際情勢、単位、基礎数学
物理学:力学、熱力学、流体力学、電磁気学
工学:航空工学、電気電子工学、材料工学、流体工学、無線工学
気象:気象学基礎、航空気象学
専門知識:機体構造、姿勢制御、動力/バッテリー、送信機、GNSS、リスク/メディカル、TEM/SRM/CRM、責任/保険、飛行計画/記録、航法
法令:無人航空機関係、電波関連、航空法全般、その他ルール
※黄色マーカーは1級から出題範囲に含まれる科目 - 受験資格
- ドローン検定2級合格
- 受験費用
- 18,800円
1級試験は全科目が出題範囲に含まれます。1級合格には2級までの内容を復習し、受験申し込み後にドローン検定協会からPDFでメール送付される「1級試験参考テキスト」でしっかり対策することが必要です。
1級合格のために必要な勉強時間は一般的に14時間ほどといわれています。
尚、1級は年3回のみ、奇数月に開催されるので、ドローン検定の公式サイトでスケジュールを確認しておきましょう。
参照 ドローン検定の試験日程
ドローン検定の受験申し込みをしてから合格証を受け取るまでの流れ
ドローン検定の受験申し込みから合格証を受け取るまでの流れは以下の通りです。
1.受験申し込み
ドローン検定の公式サイトからインターネットで申し込みを行います。
公式サイト内に各都道府県の試験会場と、各会場で受験することができる級が表示されています。自分が希望する級を受験できる最寄りの会場を選びましょう。
試験会場には定員があるため、早めに申し込むことが重要です。
尚、受験料を支払った後でのキャンセル、試験会場や日程の変更は受け付けていないので注意しましょう。
2.受験料の支払い
受験の申し込みが済んだら受験料の支払いをします。
受験料の入金確認後に試験会場が記載された受験票が郵送され、1週間ほどで届きます。
尚、受験票の再発行は行なっていないため、紛失などしないようにしましょう。
3.試験当日
試験当日に必要なものは受験票と筆記用具(えんぴつ、消しゴム)です。
試験が中止にならない限りは、欠席による返金や受験資格の持ち越しに対応をしていないので、万全な準備をして臨みましょう。
4.合否確認
受験日から約10日後にドローン検定協会から合否確認用の通知が郵送されてきます。通知書の情報をもとに公式サイトから合否の確認をしましょう。
5.合格証発行
受験日の約1ヶ月後に合格者に対して合格証が郵送されます。
ドローン検定合格後にドローン基礎技能講習を受けるのがおすすめ
ドローン検定協会では、ドローンの基礎的な操縦技術を学べる「ドローン基礎技能講習」を行なっています。
講習の修了者にはドローン検定協会より「ドローン操縦士」のライセンスが発行されます。
ドローン基礎技能講習のカリキュラムの構成は座学5時間、実技10時間です。
尚、ドローン検定4級以上に合格していれば座学が1時間に短縮され、座学1時間、実技10時間の講習でライセンスを取得することが可能です。
従って、ドローン基礎技能講習の受講はドローン検定に合格した後がおすすめです。
ドローン基礎技能講習では、ドローンの基本的な操縦技術が身につくだけでなく、国土交通省への飛行許可申請の際に必要な10時間の飛行経験も積むことができます。
ドローン基礎技能講習は全国各地のドローン検定協会公認の教習所が実施しています。詳しくは公式サイトをご覧ください。
関連サイト ドローン教習所
まとめ
ドローン検定を取得することで自分がドローンの安全な運用に必要な知識を持っていることが証明できます。
ドローン検定に合格すると、国土交通省への飛行許可申請が通りやすくなったり、他のドローン資格を取得しやすくなったりします。ドローン検定はスキルアップとキャリアアップに役立つ資格です。
ドローン検定には1級〜4級まであるので、自分のドローンの使用目的に合う級を受験しましょう。どの級の試験も公式テキストを使ってしっかり勉強しておけば合格できる難易度です。
また、ドローン検定は筆記試験のため、飛行技術を身につける必要がある方にはドローン基礎技能講習を受講することもおすすめします。