ドローン操縦士とはどんな仕事なのか?
ドローン操縦士とは、ドローンの正確な操縦技術と安全な運用に関する知識が必要とされる業務に携わっている人のことです。
ドローンの機体の大きさや飛行に関する法規制は使用目的により異なるため、ドローン操縦士には用途に応じた操縦技術と法知識が必要です。
本項ではドローン操縦士の仕事内容がより分かりやすくなるよう、ドローン操縦士の仕事の例と業務の流れを紹介します。また、ドローンの操縦のみを仕事にしている人が少ないことについても言及します。
ドローン操縦士の活躍の場
次に、ドローン操縦士の仕事の例を紹介します。
空撮
ドローンカメラマンは操縦技術と撮影技術が求められる仕事です。テレビ番組やYouTube動画、コマーシャルの撮影にドローンが使われることが近年多くなっています。
ただし、ドローンカメラマンになるためには、操縦だけでなく、撮影や動画編集、画像処理の技術が必要です。そのため、もともと撮影の仕事に携わっていた人が、ドローンの操縦技術を習得して空撮の仕事をしていることが多いです。
農業
農薬入りのタンクを搭載したドローンで農地へ農薬散布を行う仕事です。ドローンを使った農薬散布はヘリコプターや人の手で作業を行うことに比べてコストと時間がかかりません。
大規模な農場であるほど業務を効率化できることから、人手不足が問題になっている農業の分野ではドローン操縦士への需要が高まっています。
農薬散布は自動操縦で行うため、あらかじめ作業範囲と飛行ルートをドローンにプログラムすることが必要です。指定したルート通りにドローンを飛ばすためには高い技術が求められます。
そのため、農林水産省では農薬散布用のドローンの操縦士に対して、農林水産航空協会指定の施設で講習を受けた上で「産業用マルチローター技能認定」に合格することを必須としています。
参照 空中散布等における無人航空機利用技術指導指針 第6 オペレーター、機体等 1(1)
測量
ドローンに搭載したカメラやセンサーで土地の測量を行う仕事です。
ドローンを使用することで、測量できる範囲を広げられるだけでなく、記録したデータを元に3Dモデルの作成をすることができます。
尚、測量の求人を出す企業によっては、測量士や測量士補の資格がなくても応募は可能です。
建設
ドローンは橋やビルの高層階といった、人が立ち入ることが危険な、あるいは、不可能な場所での点検や撮影作業などに使用されています。
高性能のカメラを搭載したドローンを使えば、人や資材を使うことなく確認作業が行えます。
ドローンは作業時間の短縮だけでなく、コストや安全面のリスクを抑えることに貢献できるため、今後さらに建設業界での需要が増すでしょう。
ドローンスクールの講師
ドローン操縦士への需要の増加に伴い、多くのドローンスクールが新たに開校しています。
ドローン操縦の知識や技術、コミュニケーション能力が十分にあれば、講師として活躍する機会があるでしょう。
ドローンスクールの講師資格はDPA(一般社団法人ドローン操縦士協会)やJUIDA(一般社団法人日本UAS産業振興協議会)などで取得できます。
ドローン操縦士の仕事の流れ
ドローン操縦士の仕事は、まず顧客がドローンを使用する目的や飛行する空域、スケジュールなどの打ち合わせから始まります。
次に、ドローンを飛行させるのが他の航空機の航行に支障を及ぼしたり、地上の人の安全を脅かしたりする可能性のある空域かの確認を行います。もしリスクのある空域でドローンを使用する場合には事前に国土交通省へ飛行許可申請をすることが必要です。
また、ドローンの飛行は公園や河川などの飛行禁止空域を避け、電波法や個人情報保護法などの法律に抵触しないかたちで行わなければなりません。そのため、飛行ルートや法律の確認も行います。
一方、使用する機体の確認も欠かせません。飛行に最適な機体を選び、もし自動飛行を行う場合にはプログラムを設定します。尚、必要に応じて飛行場所の下見を行う場合もあります。
事前準備が完了したら、作業当日にドローンの機体とその他の機材を車両に積んで、飛行場所へ向かいます。
現地の周辺環境や天候を確認した上で、予定時間内に作業を完了させましょう。尚、安全確保のために補助者を同伴させることがあります。
顧客によっては、撮影完了後の写真や動画の画像処理、編集作業を依頼してくる場合があります。
全ての作業が完了したら使用した機体の点検とメンテナンスを行いましょう。
ドローンの操縦のみを仕事としている人は少ないです。ドローンの操縦は、空撮や測量、農薬散布、点検などの業務の一部として行われることがほとんどです。
ドローン操縦士の年収はどれくらい?
ドローン操縦士は比較的新しい職業のため正確な平均年収を算出することは難しいです。そのため、本記事ではドローン操縦士の正社員採用での平均年収の目安を紹介します。
厚生労働省の「職業情報提供サイト jobtag」によると、ドローン操縦士の平均年収は454万円ほど、月収は22万円ほどです。
ドローン業界は発展途上のため、ドローン操縦士の平均年収は今後変化していく可能性があります。
ドローン操縦士の仕事に将来性はあるの?
ドローンビジネス市場の急速な拡大に伴い、ドローン操縦士への需要は2024年以降さらに増すことが予想されています。
インプレス総合研究所のドローンビジネス調査報告書2023によると、2022年度の日本国内におけるドローンビジネスの市場規模は推定で3086億円です。前年度の2308億円に比べて778億円の増加となっています。
さらに、同調査報告書ではドローン市場の今後について、2023年度には前年度比24.0%増の3828億円、2028年度には9340億円規模にまで拡大することを予想しています。
参照 インプレス総合研究所
また、2022年12月に航空法が改定されたことにより「レベル4飛行」と呼ばれる有人地帯での目視外飛行が解禁されました。
ドローンの飛行が可能な空域が広がったことによって、ドローン操縦士を必要とする新たなビジネスが生まれることが期待されています。
一方、日本の少子高齢化や地方の過疎化が進むことが見込まれることから、ドローン操縦士の活躍の場が今後さらに増える可能性があります。
しかし「ドローンの自動操縦技術が進歩することでドローン操縦士は必要なくなるのでは......?」と不安に思われる方も中にはいらっしゃるでしょう。
現時点の技術と法体制ではドローンの運用を完全に自動化することは難しいです。
加えて、ドローンの自動操縦にはいまだ安全上の懸念があることから、ドローン操縦士への需要は今後も続くと考えられています。
ドローン操縦士になるには
ドローン操縦士になるには、どのような使用環境や機体にも対応できる操縦技術だけでなく、ドローンの運用に関連する法律の知識を身につけることが必要です。
また、機体のメンテナンスができること、クライアントと円滑なコミュニケーションが取れることも重要になります。ドローンの自動飛行を行うためのプログラミングができればさらに活躍の場を広げられるでしょう。
まずはドローンの専門学校で知識と技術を学んでから、企業に就職してドローン操縦士としての経験を積むことがおすすめです。
フリーランスとして働く選択肢もありますが、実績豊富な競合が多くいるため、ドローン操縦士になりたての人がすぐに稼げるようになるのは難しいでしょう。
ドローン操縦士には資格が必要?
航空法により飛行が規制されていない空域であれば、ドローンを飛行させるために特別な資格は必要ありません。
しかし、国土交通省の飛行許可が必要な空域でドローンを使用するためには、飛行形態に合わせた資格の取得が推奨、または、要求されます。
従って、自分がドローンを使用する目的に合う資格を取得をすることが必要です。
本項では「国土交通省の飛行許可が必要な空域と飛行形態」と「飛行レベルごとに取得が推奨、または、要求される資格」について解説します。尚、おすすめの資格については後の項で紹介します。
国土交通省の飛行許可が必要な空域と飛行形態
ドローンの飛行に国土交通省の許可が必要な空域は以下の通りです。
1. 地上又は水面から高さ150m以上の空域
2. 人口集中地区の上空
3. 空港周辺の空域
参照 国土交通省 「無人航空機の飛行禁止空域と飛行の方法 (1)無人航空機の飛行の許可が必要となる空域」
さらに、1〜3の空域でとれる飛行形態は「レベル1〜4」の4段階に分かれています。
【各レベルの特徴】
レベル | 特徴 |
---|---|
レベル1 | 操縦者の肉眼で見える範囲内でドローンを手動操作する 例)空撮、点検作業など |
レベル2 | 操縦者の肉眼で目視可能な範囲内でドローンの自動運転を行う 例)農薬の散布、土地の測量など |
レベル3 | 無人地帯で、操縦者の肉眼で見えない範囲にまでドローンを自動飛行させる。安全確認のための補助者は配置しない 例)河川の測量、インフラ設備の点検 |
レベル4 ※2022年12月より解禁 |
「第三者上空」と呼ばれる有人地帯で、操縦者の肉眼で視認できる範囲外にまでドローンを自動飛行させる。安全確保のための補助者の配置は行わない 例)都市部での物資の輸送、災害救助 |
飛行レベルごとに取得が推奨、または、要求される資格
国土交通省の飛行許可が必要な空域でドローンを使用する際に、飛行レベルごとに取得が推奨、または、要求される資格は以下の通りです。
- レベル3までであれば、民間資格、または、国家資格である「無人航空機操縦士技能証明の二等資格」の取得を推奨
※無人航空機操縦士技能証明の二等資格を持っていると国土交通省への飛行許可申請の一部を省略できる - レベル4の飛行を行うためには国家資格「無人航空機操縦士技能証明の一等資格」の取得が必須
関連記事 ドローン操縦の国家資格とは?取得方法や費用を解説!
飛行レベルごとの資格 | ||||
---|---|---|---|---|
資格 | レベル1飛行 | レベル2飛行 | レベル3飛行 | レベル4飛行 |
民間資格 | 可能 ※注1 | 不可 | ||
無人航空機操縦士技能証明の二等資格 | 可能 ※注2 | 不可 | ||
無人航空機操縦士技能証明の一等資格 | 可能 ※注3 |
ドローン操縦士を目指す人におすすめの資格
本項では自分がドローンに関する基本的な知識や操縦技術を持つことの証明に有効な民間資格を紹介します。以下の民間資格を取得することで国土交通省からの飛行許可の承認を得やすくなります。
ドローン検定
ドローン検定は国土交通省が「無人航空機の操縦技能講習を行う民間講習団体」として認定するドローン検定協会株式会社が運営する資格です。
ドローン検定は筆記試験です。級位は1〜4級まであり、上の級になるほど難易度が高くなります。
ドローン検定の合格者には「無人航空機に関する飛行履歴・知識・能力を有することの証明書」が発行されます。
基本的な操縦技術を身につけたい方には、同協会が実施する「ドローン基礎技能講習」の受講がおすすめです。基礎技能講習のカリキュラムは座学5時間、実技10時間、修了試験で構成されています。
ドローン基礎技能講習の修了者には「操縦技能証明証」が発行されます。
関連記事 ドローン検定とは? 試験内容とメリット、難易度、各級の違いを解説
一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA) 無人航空機操縦技能
無人航空機操縦技能は、国土交通省の認定団体である一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)が運営する日本初のドローン操縦士の民間資格です。
無人航空機操縦技能は認知度の高い資格で、2022年度には2万人以上の合格者を輩出しています。
無人航空機操縦技能の講座では操縦技術や法律、無線、電波、気象などドローンの安全な運用に必要なスキルと知識が学べます。尚、受講可能な年齢は16歳以上です。
全講座の受講後に最終試験が行われ、合格者には無人航空機操縦技能証明書が発行されます。
まとめ
ドローンの普及が進むのに伴い、ドローン操縦士の仕事も今後増えることが予想されます。
しかし、ドローンを使用できる空域や飛行形態は法律により規制されているため、ドローン操縦士として活躍をするためには飛行目的に合わせた資格を取得することが必要です。
ドローンの専門学校で知識と操縦技術を身につけ、ドローン操縦士としてのキャリア形成に役立つ資格試験の合格を目指しましょう。