簿記のネット試験の概要
2020年12月より簿記検定試験の2級と3級に「CBT方式」と呼ばれるネット試験が導入されました。
ネット試験が行われるようになった背景には新型コロナウィルスの感染対策があります。従来の統一試験のように大人数の受験者を一ヶ所に集めることは感染リスクがあるため、試験日と試験会場を分散できるネット試験が行われるようになりました。
ネット試験の会場は商工会議所の試験センターです。
ネット試験とペーパー形式の統一試験では何が違うのか?
ネット試験と統一試験の違い
ネット試験 | 統一試験 | |
---|---|---|
試験会場 | 全国各地のテストセンター | 商工会議所指定の会場 |
試験日 | 全国各地の試験センターで随時開催 | 2月、6月、11月 |
試験時間 | 簿記2級:90分 簿記3級:60分 |
|
出題範囲 | 日本商工会議所が作成する「簿記検定出題区分表」に従う | |
解答方法 | パソコンに入力 | 解答用紙に記入 |
合否確認 | 受験日当日に分かる | 2~3週間後に確認できる |
受験料 | 簿記2級:5,500円(税込) 簿記3級:3,300円(税込) |
|
申し込み方法 | ・ネット申し込み ・各テストセンターにより指定 |
・ネット申し込み ・コンビニ決済 ・団体で受験する場合は受験希望地の商工会議所へ申し込む |
資格としての価値 | 同等 |
試験会場と試験開催日
ネット試験は日本全国のテストセンターで随時受験可能です。ただし、会場によって受験できる級や試験日が異なるため確認をしましょう。
統一試験は2月、6月、11月に商工会議所の指定会場で実施されます。
試験時間と出題範囲
簿記2級・簿記3級共にネット試験と統一試験で試験時間と出題範囲は同じです。
出題範囲は商工会議所発行の簿記2級向け、簿記3級向けの簿記検定出題区分表の内容に基づいて出題されます。
尚、統一試験では、試験の説明や試験問題用紙・答案用紙・計算用紙を配布するための時間が別途30分ほど設けられています。
解答方式
ネット方式の勘定科目や理論の問題は複数ある選択肢の中から正解を選ぶプルダウン方式です。また、金額や漢字はキーボードで入力します。試験中の計算には会場で配られる用紙を使いましょう。
合否確認
ネット試験は受験後すぐに自動採点がされるので当日に合否を確認できます。一方、統一試験は合否が分かるまでに2〜3週間ほどかかります。
受験料
ネット試験と統一試験の受験料は同じです。ネット試験だと事務手数料550円がかかります。事務手数料の金額は会場によって違う可能性があるので確認をしておきましょう。
申し込み方法
ネット試験の受験申し込みは(株)CBT-Solutionsの受験者専用サイトより行います。初めて利用する場合はアカウントの作成が必要です。また、(株)CBT-Solutionsのサイトより試験会場や空席の確認を行うこともできます。
また、自分が受験を希望するテストセンターに電話をして、試験日の確認と予約を行う「会場問い合わせ方式」と呼ばれる方法もあります。会場により事務手数料がかかる場合もあれば、かからない場合もあります。
資格としての価値
ネット試験と統一試験のどちらで合格しても、資格としての価値が変わることはありません。簿記2級、簿記3級とも履歴書に記載できます。
ネット試験と統一試験で合格率は変わるか?
ネット試験の方が統一試験よりも合格率が高いです。ただし、日本商工会議所ではネット試験と統一試験の難易度や出題範囲、合格基準は同じと明記しています。
簿記2級の合格率の比較
簿記2級の合格率は、統一試験では直近4回で18.8%、ネット試験では36.8%となっています。
簿記2級(統一試験)の合格率
回 | 実受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
166回(2024.2.25) | 8,728名 | 1,356名 | 15.5% |
165回(2023.11.19) | 9,511名 | 1,133名 | 11.9% |
164回(2023.6.11) | 8,454名 | 1,788名 | 21.1% |
163回(2023.2.26) | 12,033名 | 2,983名 | 24.8% |
簿記2級(ネット試験)の合格率
期間 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2023年4月~2024年3月 | 119,036名 | 41,912名 | 35.2% |
2022年4月~2023年3月 | 105,289名 | 39,076名 | 37.1% |
2021年4月~2022年3月 | 106,833名 | 40,713名 | 38.1% |
簿記3級の合格率の比較
簿記3級の統一試験の直近4回での平均合格率は約35.2%です。一方、ネット試験の直近2年半の平均合格率は約39.6%になっていて、ネット試験の合格率が統一試験を上回る結果となりました。
簿記3級(統一試験)の合格率
回 | 実受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
166回(2024.2.25) | 23,977名 | 8,706名 | 36.3% |
165回(2023.11.19) | 25,727名 | 8,653名 | 33.6% |
164回(2023.6.11) | 26,757名 | 9,107名 | 34.0% |
163回(2023.2.26) | 31,556名 | 11,516名 | 36.5% |
簿記3級(ネット試験)の合格率
期間 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2023年4月~2024年3月 | 238,155名 | 88,264名 | 37.1% |
2022年4月~2023年3月 | 207,423名 | 85,378名 | 41.2% |
2021年4月~2022年3月 | 206,149名 | 84,504名 | 41.0% |
簿記検定のネット試験を受験することのメリットとデメリット
ネット試験には以下のメリットとデメリットがあります。
ネット試験のメリット
メリット① 受験できる機会が多い
簿記2級と簿記3級の統一試験は年に3度のみ開催されます。そのため、受験日に合わせて勉強スケジュールを設定することが必要です。また、万が一不合格になった場合は、次の試験日に向けて再度準備をしなおさなければいけません。
一方、ネット試験は全国各地のテストセンターで随時行われるため受験できる機会が多くあります。自分の勉強スケジュールに合わせて受験日を選ぶことができます。また、もし不合格になった場合でも最短3日後に次の試験の受験予約ができるので一度に集中して勉強をしたい方におすすめです。
メリット② すぐに合否が分かる
ネット試験はすぐに結果が判明するので合否の確認と合格証の入手が当日にできます。急ぎ資格の取得が必要な方はネット試験を受験しましょう。
ネット試験のデメリット
デメリット① パソコンの操作に慣れていることが必要
ネット試験では解答の入力と選択をキーボードやマウスを使って行います。また、パソコン画面にメモができないため、計算用紙に写して解答することが必要です。記入ミスに注意しないと不正解の原因になります。
デメリット② 自分がどの問題を間違えたかを確認できない
ネット試験では問題用紙は配布されません。また、試験時に使用したメモの持ち帰りもできません。
また、試験終了後にスコアシートで自分の点数を確認することはできますが、どの設問が不正解だったかを確認する方法はありません。そのため、自分が間違えた設問を復習することが難しくなっています。
ネット試験と統一試験のどちらを受験すべきか?
ネット試験と統一試験の試験範囲と難易度は同じで、資格としての価値も変わりません。自分に合う試験を受験しましょう。
しかし、会場によってはネット試験以外は受けられないことがあります。自分の希望する形式の試験を受けられる試験会場かどうかを確認しておきましょう。
ネット試験の受験申し込みから合否確認までの流れ
ネット試験の申込から合格証書の受け取りまでの流れは以下の通りです。
1日本商工会議所のホームページからネット試験会場と試験日を選ぶ
試験会場は以下のリンクから選択できます。
商工会議所ネット試験施行機関
2 受験用のIDとパスワードを作成する
ネット試験の受験申込時にIDとパスワードの設定を行います。新規登録ページでメールアドレスを登録し、IDとパスワードを取得しましょう。受験者専用ページへのアクセスが可能になり、受験の申し込みや試験日変更、キャンセルなどができるようになります。
3 受験を申し込む
受験者専用ページの「CBT申込」から申し込みができます。試験や会場、試験の日時、支払方法を選択すれば予約完了です。
予約完了の連絡が登録したメールアドレスに届くので、申し込み内容や会場へのアクセス、支払方法などについて確認をしましょう。
4 試験を受ける
試験日当日は以下を持参してください。
- 筆記用具
- メモ用紙
- 身分証明書
- 電卓
5 合否を確認する
ネット試験は受験日当日に合否が分かります。合格した場合は試験官から成績と合否が記載された書類を受け取れます。書類にあるQRコードを読み取って合格証を取得しましょう。
尚、紙の合格証は発行されないため自分でダウンロードした合格証を印刷します。合格証をスマートフォンにダウンロードした後に印刷ボタンを押すことで合格証のPDFファイルを入手できます。紙の合格証が必要な場合はPDFファイルを印刷しましょう。
ネット試験を受験する際の注意点
ネット試験を受験する際には以下の3点に注意しましょう。
注意点① 受験票がない
ネット試験では受験票が発行されません。試験日程や試験会場は予約確認メールに記載されているため、印刷して試験当日に持参することをおすすめします。
注意点② 試験会場によって受験できる級や試験の日時が異なる
試験会場により受験できる級や試験の実施スケジュールが異なるため確認が必要です。
注意点③ 施行休止期間はネット試験が受けられない
統一試験の実施日の前後や年度初めには簿記2級と簿記3級を受験できない「施行休止期間」があります。
2023年度の施行休止期間は以下の通りです。
- 2023年4月1日(土)~2023年4月13日(木)
- 2023年6月5日(月)~2023年6月14日(水)
- 2023年11月13日(月)~2023年11月22日(水)
- 2024年2月19日(月)~2024年2月28日(水)
尚、施行休止期間中でも期間外に実施される試験への申し込みは可能です。
簿記3級に合格するために必要な勉強時間と有効な勉強法
簿記3級は自分に商業簿記についての基本的な知識と小規模企業での経理業務を適切に行うための能力があることの証明になります。
ネット試験と統一試験で簿記3級に合格するための勉強時間と勉強法は変わりません。
まず勉強時間ですが、初学者が独学で簿記3級に合格するためには100時間程度必要といわれています。しかし、経理の実務経験がある人や学校で会計学を学んだ人の場合は勉強時間
を短縮できる場合があります。
1日1〜2時間程度の無理のないスケジュールで勉強を進めるためには、3ヶ月ほどの学習期間を見込んでおきましょう。
次に勉強法ですが、最初の1ヶ月でテキストを集中して読み、勘定科目や仕訳などの簿記と会計の基礎知識を習得します。基礎知識が身についたら実践問題と過去問を繰り返し解きましょう。
パソコンを使った解答に慣れるために日商簿記検定の公式サイトのサンプル問題で練習をしておくとさらに良いでしょう。
また、簿記3級は大別して「仕訳問題」「勘定記入や語句の穴埋め問題」「決算(精算表、財務諸表)」の3問から構成されています。3つの大問を自分の好きな順番で解くことができるため、過去問の勉強をしながら効率の良い試験の進め方を考えておきましょう。合格率を上げるためには配点の高い仕訳問題を優先することがおすすめです。
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簿記3級は独学で合格できる?合格率や初心者におすすめのテキスト、経験者の勉強方法を紹介
簿記2級の合格に必要な勉強時間とおすすめの勉強法
簿記2級合格は自分が高度な商業簿記と工業簿記の知識を持つことと、財務諸表や企業の経営状況の分析ができることの証明になります。
簿記2級に合格するためには商業簿記だけでなく「工業簿記」と呼ばれる製造業における経理業務の知識を習得することが必要です。
簿記2級は出題される問題の難易度が高く、出題範囲も広いため、合格に必要な勉強時間は3級よりも長くなります。
簿記3級合格者が独学で勉強する場合の勉強時間は250〜350時間、勉強期間は4〜6ヶ月です。
一方、初学者が独学で合格を目指す場合の勉強時間は350〜500時間、勉強期間は6〜8ヶ月です。まずは簿記3級に合格してから簿記2級に挑戦することをおすすめします。
簿記2級に合格するためには最初に工業簿記、次に商業簿記をテキストや問題集を使って学習します。次に、試験日の2ヶ月前から過去問を繰り返し解き、試験前最後の2週間を復習と苦手分野の克服にあてると効率の良い勉強ができます。
参考までに、1日2時間勉強した場合の学習方法ごとでの学習期間の違いを以下の表にまとめました。
受験者 | 学習方法 | 学習期間 |
---|---|---|
初学者 | 独学 | 6ヶ月~ |
初学者 | 通学・通信講座 | 4ヶ月~ |
簿記3級取得者 | 独学 | 3ヶ月~ |
簿記3級取得者 | 通学・通信講座 | 2ヶ月半~ |
通学・通信講座を利用するとより効率よく勉強が進められ、合格率も上がるので受講を検討しても良いでしょう。
関連記事 簿記2級の合格に必要な勉強時間を徹底解説!社会人は1ヶ月で取れる?勉強方法も紹介
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まとめ
簿記2級と簿記3級は従来のペーパー形式の統一試験以外にもネット試験で受験することができます。
ネット試験は全国各地のテストセンターで随時実施され、合否も即日で判明するため、自分のペースで勉強を進めたい方やすぐに資格の取得が必要な人に特におすすめです。
また、ネット試験と統一試験で試験の難易度や資格としての価値が変わることはありません。ネット試験での合格でも問題なく履歴書に記載することができます。
一方、ネット試験にはパソコン操作への慣れが必要だったり、自分の不正解箇所の確認ができなかったりするデメリットがあります。
ネット試験が自分の希望に合う試験形式かを判断した上で受験するかを決めましょう。