「トリマーはやめとけ」と言われる理由
収入が低い
トリマーはやめておいたほうがいいと言われる理由の1つに、収入が低く、あまり稼げないということが挙げられます。
「求人ボックス 給料ナビ」によると、トリマー(正社員)の平均年収は約334万円、月給換算で28万円です。さらに、国税庁の「令和4年分 民間給与実態統計調査」によると、日本の平均給与は458万円のため、トリマーの収入はやや低い傾向です。
一方で、近年ではペット業界のニーズが増えています。以前は都市部にペットショップやトリミングサロンが集中していましたが、地方都市にも広がっているため、就職の機会も増えていると言えます。また、トリマーの就業形態は、正社員の他にもパートタイマー、自営業、フリーランスなど幅広い働き方があるため、働く選択肢は広がっています。
体力的につらい
トリマーの仕事は体力が必要な面があります。シャンプーやドライヤー、身体の手入れやトリミングなど、一連の仕事は立ったまま行われます。時には、自分よりも体重が重い大型犬のトリミングを行うことや気性の激しい犬の対応をすることもあるかもしれません。そのため、トリマーの仕事は体力的につらいと考えられ、やめておいたほうがいいと言われることがあります。
働く際には、犬の問題行動への対処方法やコントロール方法を学んだり、複数人でトリミングを行ったりと、安全にトリミングを行う工夫を身につけることが大切になります。また、職業柄、体力が必要な面があるため、自分の身体をいたわることも重要です。
常にスキルアップが必要
トリマーには常にスキルアップが必要です。例えば犬のカットには流行があります。基本となるカット方法を身につけておけばよい、というわけではなく、現在どのようなカットが流行っているのか、新しい情報をキャッチできる力が必要です。トレンドについていけないと、トリミングを依頼しにきた飼い主に、よりよいスタイルを提案できないかもしれません。
また、ペットの個性によって、トリミングの仕方は変わってきます。大人しい犬やテンションが高くて動いてしまう犬など対応の仕方は多種多様です。さらに毛質や骨格などによっても似合うスタイルは変わるため、さまざまなタイプのトリミング経験を積むことが大切です。そのため、トリマーには常にスキルアップが必要です。
クレーム対応や接客が大変
トリマーは動物と関わる仕事というイメージがありますが、ペットだけでなく飼い主と関わる仕事でもあります。そのため、接客をする機会が多く、時にはクレーム対応をすることもあります。
カットスタイルが飼い主のイメージと違っていた、ペットにケガをさせてしまったなど、トリマーの対応がクレームにつながってしまうことがあるため、トリミングを行う際は飼い主からしっかりとヒアリングをしたり、ケガをさせないよう安全に気を配る必要があります。
動物とだけ関わる仕事ではないため、ビジネスマナーや接客方法、一般常識などもあらかじめ勉強しておくことは、冷静な対応につながります。
トリマーの実情は?
仕事内容
「トリマー」とは、ペットの毛をカットする「トリミング」からきた言葉で、毛を洗ったりカットしたりして飼い犬・飼い猫などの手入れを行う仕事のことです。ペットの美容師というイメージがありますが、カットの他にもさまざまな手入れを行います。
トリミングの一連の流れの例を見てみましょう。
- カウンセリング
- トリミングに来たペットの健康チェックや飼い主からのリクエストをうかがいます。
- 全身の手入れ
- ペットの体調を確認しながら、ブラッシングや爪切り、耳そうじ、肛門しぼりなどの手入れを行います。
- シャンプー・ドライング
- ペットの皮膚の状態に合わせてシャンプーをします。乾き残しがないよう、タオルやドライヤーを使って乾かします。
- カット
- 飼い主のリクエストに合わせてカットを施します。
- 飼い主への報告
- トリミング中の様子や気がついたことを飼い主と共有します。
活躍の場
トリマーのスキルはさまざまな場所で活かすことが可能です。
ペットサロン
ペットサロンとは、犬や猫の全身の手入れや毛のカットなどを行うペットの美容室で、トリマーの代表的な職場です。動物病院やペットショップなどと併設しているところもあります。
ペットホテル
ペットホテルとは、旅行や出張などで家を留守にする飼い主から、ペットを一時的に預かる施設で、飼い主に代わってペットの世話をします。トリミングサロンを併設しているところもあり、宿泊中のペットのトリミングや食事、トイレなどの世話をします。
老犬ホーム
飼い主やペットの高齢化から、近年では、介護が必要になったシニア犬を預かったり譲り受けたりして世話をする施設が増えつつあります。老犬ホームの中には、トリミングを行う施設もあり、犬の体調や健康を気遣いながら手入れを行います。
トリマーに必要なスキル・能力は?
実は、トリマーになるために必須となる資格は特にありません。しかし、働く上でさまざまなスキルや能力が必要になります。
トリミングスキル
犬や猫の骨格や毛の種類、習性などの基礎知識を理解した上で、適切な手入れの方法を身につける必要があります。
コミュニケーションスキル
トリマーの仕事は飼い主とも密接に関わる仕事であり、リクエストをうかがったりペットに関する相談を受けたりします。そのため、飼い主の要望を理解する力や説明する力、提案する力など、基本的なコミュニケーションスキルを身につける必要があります。
スキルのアップデート
トリマーには、カットや手入れの技術、ペットの健康チェックなど、さまざまなスキルが求められます。また、カットスタイルは犬種や犬の個性ごとに似合うスタイルが異なったり、流行があったりするため、飼い主のリクエストに応じるためにはさまざまなカット方法を身につける必要があります。
トリマーに向いている人は?
細かい作業が好きな人
ペットの身体を傷つけないよう慎重にトリミングを行う必要があるため、集中力があって細かい作業が得意な人は向いていると言えます。
トリマーの仕事は、毛のカットやペットの身体の手入れなど細かい作業が発生し、作業内容やペットの種類ごとに道具を使い分けて行います。
そして、飼い主のリクエストに応じてカットを施すためには、オーダーを具体的にイメージしながら細かなところも妥協せずにカットをすることが大切です。
体力に自信がある人
立ったまま仕事をすることが多いため、トリマーには体力が必要です。小型犬だけでなく、体重や身体が大きい大型犬をトリミングすることもあり、トリミングテーブルやシャンプー台への移動の際は工夫が必要です。また、ペットが動いたり暴れたりして傷つかないよう、保定のスキルも大切です。体力に自信がある人はトリマーに向いていると言えます。
コミュニケーションが得意な人
来店時やペットの迎えに来たときなど、飼い主を接客する機会は多いため、コミュニケーションが得意な人はトリマーに向いていると言えます。
オーダー通りのカットを行うためには、飼い主のニーズをしっかりとくみ取ることが大切です。「短くカットしてほしい」というオーダーも、毛の長さはどれくらい残したいのか、全体・部分的に短くしたいのか、どんな形か…とカットスタイルを明確に想像することが大切です。そのため、飼い主からのイメージを聞いたり質問したりするコミュニケーションスキルが求められます。
スキルアップの努力ができる人
「新しいカットスタイルを練習しよう!」「ペットの健康管理についてもっと勉強してみよう」など、向上心を持って努力できる人は、トリマーに向いていると言えます。
ペットの種類や個性によって、似合うスタイルやできるスタイルが異なります。そのため、ペットの特徴を理解した上で、カットを施すスキルが求められます。また、トリミングや手入れには、ペットの健康状態をチェックする役割もあります。
このようなスキルは一朝一夕で身につけられるものではないため、日々のアップデートが必要です。
トリマーの将来性は?
ペットを家族同様の存在と考える人が増加している現代において、引き続きペット向けサービスのニーズは重要視されると考えられます。
コロナ禍では、感染拡大による行動制限からペットブームが訪れ、コロナ禍で新たにペットを飼う人が増えたと言われています。厚生労働省の「都道府県別の犬の登録頭数と予防注射頭数等」によると、2022年度末の全国の犬の登録頭数は600万頭を超えています。
また、犬も猫も平均寿命は15歳近く、長期にわたり世話が必要です。トリマーは美容面だけでなく、ペットの健康チェックや病気の早期発見といった役割もあるため、ペットや飼い主にとって重要な存在です。近年では、高齢化したペットの介護を担う老犬ホームなども登場しているため、トリマーの活躍の場が広がる可能性があります。
トリマーとして働くには?
専門スキルを身につける
トリマーの仕事は、クレーム対応や体力面での不安がある方もいると思います。トリマーとして働く上で大変な部分ではありますが、解決策や改善策を事前に身につけることは可能です。
例えば、事前に丁寧なヒアリングを行う、ペットの毛質や骨格によってできないカットや似合うカットが異なることを説明するなど、飼い主とのコミュニケーションを密にすることで、飼い主が「思っていたカットと違う…」と思わないよう対策をとることは可能です。
また、ペットの行動を理解して保定方法や問題行動への対応を身につけることで、ペットのケガを防いだり、トリマーの身体の負担を極力減らしたりと対策の余地があります。
接客スキルを身につける
「接客が苦手…」という方は、トリミングスキルだけでなく、接客スキルの習得にも力を入れてみましょう。接客と言っても、全てのお客さまと雑談で盛り上がる必要はなく、明るいあいさつや丁寧な説明、ヒアリング、トリミング中に気がついたことの報告などが求められます。
トリマーを養成する専門学校や、職場の研修などで接客・ビジネスマナーを勉強して、苦手克服を目指しましょう。
収入アップの方法を探す
「トリマーの仕事は収入が低い…」と不安な方は収入アップの方法を探してみてはいかがでしょうか。歩合制の職場で指名を増やしたり、経験を積んで開業をしたりと、収入アップの方法はあります。確かな専門スキルや接客スキルが基盤となるため、1つ1つスキルの習得を目指しましょう。
トリマーのスキルを学ぶには?
トリマーになるために必須となる資格はないものの、知識やスキルを身につけていると、トリマーとしての仕事の幅が広がります。ご自身に合った方法で、勉強を始めてみてはいかがでしょうか。
スクールに通う
トリマーとして働く方は、専門学校などに通うことが一般的です。トリマー養成コースのある学校では、座学だけでなく、実際にモデル犬を用いてトリミング技術を学べるところが多いです。本物の犬でトリミング練習を行えるため、カット・手入れの方法から犬の扱い方まで、実践的なスキルがを学習できます。
学校によっては、夜間部やフリータイム制のコースを設けているところもあるため、日中や平日に仕事などがある方も、学校に通うことは可能です。
通信講座で学習する
専門学校以外にも、通信講座でトリマーについて学習することは可能です。テキストやDVD教材、犬体モデルなどを使って自分のペースで学習を進められるため、仕事や育児などでまとまった学習時間を取りにくい方も勉強を始めやすいです。
添削課題を設けている講座では、アドバイスやフィードバックをもらえるため、学習内容の定着に役立ちます。さらに、通信講座によっては、別途実技演習を開催しているところもあります。マンツーマン指導や接客指導などを行う講座もあるため、実践的なスキルを伸ばしたい方は活用してみてはいかがでしょうか。
トリマーの魅力は?
大好きな動物と関わる仕事というのも大きな魅力の1つです。トリマーの仕事には大変なところもありますが、ペットの美容と健康をサポートする大切な役割を担う仕事です。ペットと飼い主が喜ぶ姿を身近に感じることができるのは、トリマーとしてやりがいを感じる部分でしょう。また、トリマーに興味がある方は、動物好きな方が多いと思われます。
トリマーは専門的なスキルが必要な技術職のため、経験を重ねて身につけたスキルは長く役立ちます。興味のある方はぜひ挑戦してみてください。
まとめ
「トリマーはやめとけ」と言われる理由をご紹介してきましたが、不安や苦手に思う部分は、スキル・知識を身につけることで対策することは可能です。「トリマーになる夢をかなえたい!」という方は、まずは基本をしっかりと身につけることから始めてみませんか?
専門学校や通信講座など、学習する手段はたくさんあります。ご自身に合った方法を検討してみてください。