トリマーになるには?
トリマーになるために、必須となる学歴や資格は特にありません。しかし、働く際は動物の生態や行動に関する知識、トリミングのカット技術など専門的なスキルが必要になります。
そのため、トリマー養成コースのある専門学校などを卒業してから就職する流れが一般的です。
専門学校などの養成機関では、トリマーに必要なスキルをしっかりと身につけられるというメリットがあります。
動物に関する基礎知識が身につけられる
犬の身体の構造や骨格、犬種ごとの特徴、動物の行動学を学びます。問題行動の対処法やトリミング時のコントロール方法など、動物に関する基礎知識は実際に動物に対応する際に役立ちます。
実践演習でスキルを身につけられる
実践演習がある養成機関では、実際にさまざまな犬でトリミングの練習ができます。生き物と関わる仕事であるため、本物の犬で練習することで実践力が身につきます。
社会人がトリマーを目指すには?
社会人でもトリマーになれる?
社会人でもトリマーになることは可能です。トリマーの養成機関に通うのが一般的とはいえ、社会人の方の中には、今から専門学校に通うのは難易度が高いと感じる方も多いと思います。
しかし、仕事をしながらでもトリマーの勉強をできる方法や専門学校に通わないでトリマーを目指す方法をご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
夜間の専門学校に通う
トリマーの養成機関には、夜間部を設立しているところがあります。仕事終わりに学校に通えるため、働きながらでもトリマーを目指せます。
夜間部の学校だからといって、学習内容が大きく変わることはなく、動物の基礎知識や実践演習など一般的な専門学校と同じように勉強できます。
また、昼間の部とは異なり、夕方から授業が始まり、短時間の集中的な指導が行われます。そのため、多くの学校では、昼間の部より夜間部の方が学費が安いというメリットがあります。
他にも、土日や祝日に開講している学校や、自分で登校日を選べるフリータイム制の学校もあります。今の仕事を辞めずに、働きながら通える学校もあるため興味のある方はぜひ検討してみてください。
通信講座で学習する
養成機関に通うほかに、通信講座でトリマーの学習をする方法もあります。テキストや映像教材を使って、犬の基礎知識や、爪切り・耳掃除などのグルーミングの方法、カット技術などを学習します。
また、実際にトリミング用の道具を使い、カット技法を練習できるよう、犬体モデルを使った学習を取り入れている講座もあります。
学習した内容は、添削課題を提出することでフィードバックをもらえるため、学んだことをしっかりと定着させられます。
さらに、通信講座によっては、トリミング技術を証明する資格取得を目指せるものもあるため、カリキュラムを修了したことを客観的に証明できます。
通信講座は、社会人が学習する上でたくさんのメリットがあります。
自分のペースで学習できる
スクーリングが不要なため、仕事をしながらでも自分のペースで学習を進められます。
仕事の時間が不規則な方、遅い時間まで勤務がある方、まとまった休みが取れない方など、スケジュール的に専門学校の夜間部へ通うのは難しいという方もいると思います。
通信講座なら、自宅や通勤の間など、すきま時間に勉強を進められるため、まとまった時間がとりにくい方にもおすすめです。
短期間で費用をおさえて学習できる
一般的に専門学校は2年制が多いですが、通信講座の標準学習期間は約5ヶ月から約7ヶ月と、短い期間で学習できます。仕事と勉強を長期間両立させるのは負担が大きいと感じる方は、通信講座で短期集中して学習してみるのはいかがでしょうか。
また、学校に通うより費用面をおさえられることもメリットです。
デメリットとしては、実践スキルを磨きにくいという点が挙げられます。
しかし、通信講座のスクールによっては、別途実技研修を開催しているところもあります。マンツーマン指導を行っている講座もあるため、集中してスキルを伸ばすことが可能です。
動物の扱いやカットスキルに不安がある方は、このような実技研修を活用してみてはいかがでしょうか。
未経験者も募集している職場で働く
トリマーの求人情報では、専門学校の卒業者や経験者を募集・優遇しているところが多いですが、経験不問・未経験者歓迎の求人を出している職場もあります。
そのような職場で働ける場合は、実際に業務にあたりながらスキルを磨くという方法も1つの手です。
トリマーの仕事とは?
仕事内容
人間が美容室に通うように、ペットも手入れのためにトリミングサロンを活用します。トリミングサロンでは、来店した飼い主からカット方法などの希望を聞いて、作業を行います。毛をシャンプー・リンスしたり、グルーミング(耳や爪、肛門などの手入れ)をしたりします。
毛をカットする「トリミング」という意味から、日本ではペットの手入れを行う人を「トリマー」と呼んでいます。自宅でペットの毛を洗ったりカットしたりすることはなかなか難しいため、トリミングのプロであるトリマーが必要とされるようになりました。
このように犬の身体を清潔に手入れすることは、健康状態のチェックや病気の予防につながります。
そして、毛が伸びた犬にはカットを行います。毛の手入れは美容面だけでなく、健康面でも大切なことです。毛をカットして、毛量を調整することは、ノミ・ダニの寄生予防や熱中症対策などに効果的です。
また、トリマーは手入れの際に、体重の増減や皮膚のできもの、病気のサインがないかチェックを行います。プロの視点からペットの病気の早期発見につなげます。
活躍の場所
トリマーのスキルは、さまざまな場所で活かすことができます。
ペットサロン
トリマーの代表的な職場です。トリミングやグルーミングを行う施設で、ペットの全身の手入れを行います。
動物病院と異なり治療はできませんが、手入れの際に病気のサインがないか健康チェックを行います。
ドッグカフェやペットホテルなどほかの施設と併設しているところもあります。
ペットホテル
ペットホテルは、ペットを一時的に預かって、飼い主の代わりにお世話をする施設です。
数時間の預かりから数ヶ月単位の宿泊まで、対応期間はさまざまです。預かっているペットの食事やトイレの世話、散歩の代行などを行います。
また、トリミングサロンを併設しているペットホテルでは、宿泊中のペットのグルーミングやトリミングを依頼されることもあります。
トリマーの将来性は?
ペット産業の現状
近年、ペットビジネスの市場は増大傾向です。2020年にペット・ペット用品の販売額が増大しました。
また、総務省の「家計調査」では、家計におけるペット向けの支出が2015年から2020年まで増加しています。
※参考:経済産業省「ペット産業の動向」
2020年というと新型コロナウイルスの感染が拡大した年でもあります。コロナ禍で在宅時間が増えたことから、ペットを迎える人が増えたり、ペットと過ごす時間が増えたりして、ペット・ペット用品の需要が高まったとうかがえます。
ペットビジネスは今後も堅調に推移することが予想され、犬や猫が家族同様の存在になる傾向がより強くなると想像されます。このような背景から、ペットサロンやペットホテルなど、ペットに関するサービスの需要は今後も重要視されるとうかがえます。
ペットの高齢化
ペットを飼育する人が増える一方で、ペットの高齢化という課題がみられます。
一般社団法人ペットフード協会の「令和3年全国犬猫飼育実態調査」によると、2010年から2022年にかけて犬と猫の平均寿命は伸びています。2022年の犬の平均寿命は14.76歳、猫の平均寿命は15.62歳で、飼い主は長期的なペットの世話が必要です。
しかし、飼い主側も高齢になりペットの世話が難しくなってしまうケースや、自宅で犬・猫の介護が難しいケースなどがあり、近年では動物介護ホームという、シニア期を迎えたペットを預かり、介護を行う施設が登場しています。
シニア期のペットたちも健康に生活するために、爪切りや耳掃除、ブラッシングといった手入れはかかせません。そのため、今後は動物介護ホームのような施設でもトリマーが必要とされるようになるかもしれません。
トリマーになるにはどんなスキルが必要?
トリマーになるためには基礎となる知識や実践スキルを身につける必要があります。トリマーが行うトリミングや手入れの作業をご紹介します。
ブラッシング
ブラッシング専用のブラシやコームを使い、抜け毛やほこりなどを取りのぞきます。特に長毛やダブルコート(被毛が2重になっている)の犬種は、念入りにブラッシングします。
シャンプー
匂いや汚れ、被毛の油を取り除くためシャンプーをします。シャンプー剤は皮膚の状態に合わせて選び、必要に応じてコンディショナーで被毛をサラサラに仕上げます。
肛門腺絞りや耳掃除、爪切り
肛門腺絞りとは、肛門腺に溜まった分泌物を出す作業です。手入れをすることで炎症を防ぎます。また、犬の状態を見ながら、耳を掃除したり爪を切ったりします。
カット
飼い主からオーダーを聞いて、カットをします。犬の毛は人間と異なるため、トリミング専用の道具を使い、犬の大きさや毛質ごとにカットの道具を使い分けます。カットのためのハサミのほかに、ペットの毛を切り落とすクリッパー(トリミング用のバリカン)や、毛を抜くためのプラッキングナイフなどがあります。
カットの方法は数多く、プードルのカットだけでも300種類もの方法があります。さらに、カットスタイルには流行があるため、今はどのようなカットが流行っているのか、最新の情報をチェックすることが大切です。
トリマーのスキルの活用
トリマーのスキルは、トリミングサロンで働く以外にも役立てることができます。
プライベートでの動物との関わり
トリミングスキルがあれば、いつでもご自身のペットの手入れが可能です。
トリミングサロンで、きれいにカットしてもらった後、気がついたら毛が伸びっぱなしになってしまうことはありませんか。トリミングのスキルがあれば、好きなタイミングでカットができます。
いつでもペットの手入れができるということは、美容だけでなく健康の面でもメリットがあります。毛が伸びた状態が続くと、雑菌が繁殖する原因になるため、カットを行うことで病気の予防になります。
また、足の裏にある肉球は、滑り止めや汗をかくための役割がありますが、肉球の間にも毛が生えるためそれらの役割が半減することがあります。ペットの負担を減らし、予期せぬケガの防止にもつながります。
ボランティア活動
非営利目的で保護猫や保護犬のトリミングを行う、ボランティアトリマーという活動をご存じでしょうか。動物愛護センターなどで保護されている犬や猫の健康面を守る役割を担い、トリミングを施します。
ボランティアであるため報酬はありませんが、保護猫・保護犬の活動に興味がある方や困っている動物たちを助けたいと考えている方は、トリミングスキルを活かして活動に参加してみてはいかがでしょうか。
トリマーに向いている人は?
細かい作業が好きな人
毛をカットする際には、専用の道具を使い分けて作業するなど、トリミングには細かい作業が発生します。
また、飼い主の希望やこだわりに応えるためには、完成スタイルを具体的にイメージしてカットをしていきますが、その際、毛の長さやボリューム、シルエットなど細かいところまでイメージして作業を進めることが大切です。
さらに、爪切りや耳掃除などのグルーミングも行うため、手先が器用であることが求められます。トリミング中は、突然動いてしまう犬や、興奮してしまう犬など、予想外の動きをしてしまうこともあるでしょう。細かい作業の上、ペットの身体を傷つけないよう細心の注意が必要です。
集中力があって細かい作業が好きな人は、トリマーの仕事に向いています。
向上心がある人
新しい情報をチェックしたり、新しいスキルを身につけたりと向上心を持つことが大切です。
トリマーの仕事は新しい情報やスキルをアップデートすることも求められます。カットには流行があるため、いつも同じカットしかできないと飼い主の希望に応えられなくなってしまいます。
就職前に学習した内容で満足するのではなく、技術を向上させようという意欲を持っている人はトリマーに向いています。
また、日々の仕事も妥協したり手を抜いてしまうと、良い仕上がりになりません。トリミングの作業は、限られた時間で行わなければならず、時間がないと妥協してしまうこともあるかもしれません。
しかし、飼い主はプロのトリマーとして代金を支払って依頼しているため、プロ意識を持って最後まで仕事をやりぬくことが大切です。
体力に自信がある人
トリマーの仕事には体力が必要です。シャンプーやドライヤー、カットという一連の仕事は立ったまま行うため、仕事中は立ちっぱなしになります。
また、大型犬のように身体が大きく体重もある動物を扱うこともあります。超大型犬のセント・バーナードは、体重が約54キログラムから91キログラムもあり、自分よりも身体が大きい犬の手入れをすることもあるかもしれません。
シャンプー台へ移動するために犬の身体を持ち上げたり、動き回る犬が台から降りないように押さえたりと、体力を使う仕事でもあります。
まとめ
トリミングスキルを学ぶ方法として、「夜間の専門学校に通う」「通信講座で学習する」「未経験者も募集している職場で働く」ことをご紹介しました。
社会人の方でも、働きながらトリマーを目指すことは可能です。トリマーになりたいという夢や目標が達成できるよう、ぜひ自分に合った方法で挑戦してみてください。