動物介護士とアニマルセラピーの違い
動物介護士とは
動物介護士とは、高齢や病気により介護が必要なペットのケアを提供する職業です。
人間の世界で言う「ヘルパー」で、年を重ねていく中で活動量や食欲の低下、認知機能の衰えなどの症状に対応します。
動物介護士は、ペットの命を預かる重要な役割を担っています。
時には動物だけでなく、飼い主さんの精神的なサポートも大切な役割です。
動物医療の進化や良質なペットフードの流通により、ペットの寿命もますます伸びてきました。
そのような状況から、介護が必要なペットに対して、動物介護士の需要も伸びています。
アニマルセラピーとは
アニマルセラピーは、動物の力を借りて人のメンタルヘルスを向上させる職業です。
また、セラピーは動物との触れ合いを通して、ストレスを軽減し精神的に安定させる効果もあります。
アニマルセラピーでは、訓練された犬が一般的ですが、猫やうさぎなど、さまざまな動物でセラピーがされることもあります。
体験する方には動物との触れ合いを通して、生活の質の向上や感情の安定を目指して行います。
動物介護士とアニマルセラピーの仕事内容の違い
仕事内容の違いとは?
動物介護士
動物介護士は、高齢化したペットの生活を支えるために、さまざまなケアを行います。
- 排せつのサポート
- 食事管理
- 歩行のサポート
- グルーミング
- しつけ
- 認知症ケア
- 体位変換(寝たきりの場合)
ペットが高齢になってくると、今まで当たり前にできていた動作が難しくなってきます。
飼い主だけでは十分なケアが難しいため、動物介護士がサポートします。
また飼い主さんには、正しいペットへのケア方法について、アドバイスを行ったりもします。
ペット介護士は、ペットと家族を支えるために大切な存在と言えるでしょう。
アニマルセラピー
アニマルセラピーとしての仕事は以下の3つに分類されます。
- 動物介在活動:人の生活の質を向上させるための活動
- 動物介在療法:動物との触れ合いを通じてうつ病や認知症などの治療をサポートする
- 動物介在教育:動物との交流を通じて道徳や精神の成長を促す目的の教育
アニマルセラピーの業務の中心は、動物介在活動です。
動物の持つ癒しの活動を通して、病院や福祉施設で人の心身の健康をサポートするために行います。
また仕事を円滑に行うため動物のケアやトレーニングも、欠かせない業務です。
活躍の場の違いとは?
動物介護士
動物介護士が活躍している勤務先は、下記のとおりです。
- 動物病院
- ペットショップ
- 動物介護施設
- ペットホテル
- ペットサロン
これらの場所では高齢のペットケアを求められることが多く、専門の知識やスキルが必要です。
またドッグカフェのような店舗でも、動物介護士としての需要があります。開業するのであれば、自宅でペットシッター業を経営する場合もあります。
ペットシッターの場合は、高齢の犬や猫のお世話をするのが仕事です。
専門職として資格を持っていると、飼い主さんからの信頼も得やすく、仕事の機会もさらに増えていくでしょう。
アニマルセラピー
アニマルセラピーを実施しているのは、医療や介護の施設が主流になっています。
- 高齢者施設
- 介護施設
- 動物カフェ
また、動物園や水族館など特定の動物に対しての仕事もあります。
アニマルセラピーの普及によって、求人も増加傾向がみられます。
希望する業界によっては介護やリハビリテーション、福祉関係の資格取得をおすすめします。
動物介護士とアニマルテラピーのどっちを選ぶ?
適性で選ぶなら
動物介護士
動物介護士に適した人の特徴は、以下のとおりです。
- 動物を思いやれる人
- 洞察力に優れた人
- コミュニケーション能力の優れている人
- 学習意欲のある人
動物の個性を受け止め、それぞれに合わせたケアが必要です。
愛している動物に、思いやりを持って接することができる人が、向いていると言えます。
また動物が何を求めているかを理解し適切なケアをするためにも、優れた洞察力が必要です。
さらに、動物介護士は動物だけでなく飼い主さんとの対話も必要になるので、コミュニケーション能力に優れている人が向いていると言えます。
そして、体調を崩しているペットに対して、臨機応変に対応する場面もあるでしょう。
場面に応じて対応するためにも、日ごろから知識とスキルを学び続ける努力を惜しまない人が求められます。
アニマルセラピー
アニマルセラピーの適性がある人として、以下が挙げられます。
- 動物好きで社会貢献に関心がある人
- おおらかで落ち着きのある人
アニマルセラピーは、人と動物とを取り持つ役目があります。
動物好きであることは、最大の資質と言えるでしょう。
また社会貢献に関心がある人は、向いていると言えます。
ボランティアが一般的なので、動物を介した社会貢献に興味があるなら、まずは参加してみましょう。
次に、おおらかな人にも向いていると言えます。
動物は予測不可能な行動が多く、アニマルセラピーとしては冷静な判断に基づいた行動が求められます。
動物は敏感に相手の感情を読み取るので、おおらかであることが信頼関係にもつながり、ケアを受ける人も安心感を得られるでしょう。
将来性で選ぶなら
動物介護士
動物介護士への関心が、ますます高まっています。
ペットも高齢化が進んでおり、健康を維持するためにも介護が必要になってきているのです。
一般社団法人ペットフード協会の2022年(令和4年)全国犬猫飼育実態調査結果によると、犬の平均寿命は14.76歳で、2010年から0.89歳伸びています。
また猫は15.62歳と2010年から1.26歳増加を示しています。
ペットの高齢化はさらに進むと予想され、ペットの介護によるニーズも高まるでしょう。
介護が必要になるペットが増えるという予測から、動物介護士の将来性も期待されています。
アニマルセラピー
アニマルセラピーは、社会の変化とともに需要も伸びると言われています。
日本ではペットだけでなく人間も高齢化が加速しています。
内閣府が発表している「令和5年高齢社会白書」によると、令和52年(2070年)の推計人口が、1億人から8,700万人に減少するとの予測でした。
令和4年10月のデータによると65歳以上が29.0%ですが、令和52年では38.7%と国民の2.6人に1人と見込まれています。
ますます高齢化が進むと考えられることから、在宅医療や訪問介護などの需要も高まってくるでしょう。
そのような状況で、アニマルセラピーの活躍の場がますます広がると考えられています。
動物介護士の資格にはどんなものがある?
動物介護士になるためには法的に必要な資格はありませんが、専門的な知識やスキルを持っている証明として資格取得をしたほうが良いと言われています。
ここでは、就職する際に有利な民間資格を4つ紹介します。
老犬介護士
日本キャリア技能検定協会が認定する老犬介護士資格は、年を重ねた犬のケアに特化した介護士の資格です。
この資格は通信教育のマスターライセンスと、実技を習得するインストラクターライセンス(A級・B級・C級)に分かれています。
マスターライセンスでは、老犬の健康管理や日常ケアに関する基本的な知識を学びます。
またインストラクターライセンスでは、老犬介護について実技スクーリングを行います。
ここでは、老犬介護士の入り口になるマスターライセンスについて表にしました。
詳細 | |
---|---|
発行団体 | 日本キャリア技能検定協会 |
受験資格 | 既定のカリキュラムを受講した者 |
勉強方法 | ・テキスト ・DVD |
サポート期間 | 12ヶ月 |
サポート体制 | 電話、メール、FAX 等で質問可能 |
学習内容 | 包帯と投薬 トレーニング バイタルサイン 触診 応急処置 心肺蘇生 老犬介護について |
ペット介護士
ペットの健康をサポートするためのスキルを動物病院院長の監修のもと、テキストとDVDで学べる講座です。
犬や猫の体、行動の特徴を理解し日常のケアや緊急時の対応、しつけ方など実践的な知識を身につけることが可能です。
ペットのサポートの専門家である獣医師やしつけインストラクター、トリマーの個別指導により、在宅で効果的に知識が身につけられます。
講座終了後は「世界の名犬牧場」と「がくぶん」が、ペット介護士の資格を認定します。
詳細 | |
---|---|
発行団体 | 「世界の名犬牧場」と「がくぶん」が連盟 |
受験資格 | 既定のカリキュラムを受講した者 |
サポート期間 | 12ヶ月 |
サポート体制 | メール・FAX・質問用紙での質問可能 |
勉強方法 | テキスト |
学習内容 | 健康管理(犬、猫) グルーミング 食事、病気 応急処置 など |
通信・通学 | 通信 |
動物介護士
日本ペット技能検定協会が指定の教育機関では、ペットの健康管理に必要な知識を幅広く学べるカリキュラムになっています。
動物の老化に関するポイント、食事や排せつのサポート、飼い主さんとのコミュニケーション方法まで実践的なスキルを身につけることが可能です。
動物をサポートするための基盤を形成し、将来的にはペットビジネスを始められるよう知識を身につけられます。
講座を修了すると「動物介護士」「動物健康管理士」「ドッグシッター」「セラピードッグトレーナー」「ペットロスケアアドバイザー」の5つの資格取得が可能です。
資格を得られると、専門性の証明にもなり、信頼もより得やすくなるでしょう。
詳細 | |
---|---|
発行団体 | 日本ペット技能検定協会 |
受験資格 | 4回の課題が合格基準を満たせば修了で、資格取得できる |
サポート期間 | 700日間 |
サポート体制 | メール・電話での質問可能 |
勉強方法 | テキスト DVD |
学習内容 | ペット社会学 トレーニング学 犬種標準学 |
通信・通学 | 通信 |
動物介護士
日本能力開発推進協会が認定する動物介護士は、高齢ペットのケアに必要な知識と技術を証明する資格です。
この資格はシニア期を迎えたペットの基礎知識から日常のケア、疾患についての専門知識を習得した証明です。
日本能力開発推進協会が指定している教育機関の「動物介護士」と「動物介護ホーム施設責任者」の資格の受験ができます。
詳細 | |
---|---|
発行団体 | 日本能力開発推進協会 |
受験資格 | 既定のカリキュラムを受講した者 |
サポート期間 | 12ヶ月 |
サポート体制 | 問い合せフォームより質問可能 |
勉強方法 | テキスト DVDかインターネット |
学習内容 | シニア期の基礎知識 シニア期の介護に関する基礎知識 シニア期の病気の基礎知識 |
通信・通学 | 通信 |
アニマルセラピーの資格にはどんなものがある?
アニマルセラピーには法的に必須の資格はありませんが、知識やスキルの証明とともに信頼性を高めることにもなります。
ここでは信頼を高める民間資格を2つ紹介します。
セラピードッグトレーナー(JPLA 日本ペット技能検定協会)
日本ペット技能検定協会に認定されている教育機関では、英国流の犬のしつけ方から始まり、アニマルセラピーによる効果を理解したうえでトレーニング方法を学習します。
ペットロスに関する理解を深め、実際に相談を受けた場合の応対のスキルも身につけます。
添削課題に合格し日本ペット技能検定協会へ申請すると「セラピードッグトレーナー」「家庭犬トレーナー 1級/2級」「ペットロスケアアドバイザー」「ペット防災管理士」の資格を得られます。
詳細 | |
---|---|
発行団体 | 日本ペット技能検定協会 |
受験資格 | 既定のカリキュラムを受講し修了後に資格取得 |
サポート期間 | 24ヶ月 |
サポート体制 | 問い合せフォーム・FAX・郵送での質問可能 |
勉強方法 | テキスト DVDかインターネット |
学習内容 | トレーニング学 犬種標準学 ペット社会学(アニマルセラピー、ペットロス含む) |
通信・通学 | 通信 |
アニマルセラピスト資格(NPO法人日本アニマルセラピー協会)
日本アニマルセラピー協会は、アニマルセラピストの資格を認定している団体です。
受講は、興味のある人ならどなたでも受けられます。
犬の行動パターンや習性、人との社会性など、アニマルセラピーの「動物介在活動」「動物介在教育」「動物介在療法」の分野について学びます。
カリキュラムを修了すると、資格試験を受けることが可能です。
詳細 | |
---|---|
発行団体 | NPO法人日本アニマルセラピー協会 |
受験資格 | 既定のカリキュラムを受講した者 |
サポート期間 | 24ヶ月 |
サポート体制 | 通信:1年間 オンライン:3ヶ月間の授業終了後6ヶ月以内に試験で合格する必要がある |
勉強方法 | ・テキスト |
学習内容 | 動物介在活動 動物介在教育 動物介在療法 |
通信・通学 | 通信・オンライン |
まとめ
今回は、動物介護士とアニマルセラピーの違いについて解説しました。
動物介護士は動物のケアに重点を置き、アニマルセラピーは動物を介してケアすることに焦点を当てているところに違いがあります。
どちらも人と動物との深いかかわりによるもので、それぞれに必要な知識やスキルがあります。
どちらを選ぶかは興味によって分かれるところですが、まずは資料を取り寄せて、見比べてみてはいかがでしょうか。