なぜ簿記3級は取っても意味ないと言われているのか?
「簿記3級は取っても意味ない」と言われる理由は以下の3つです。
理由1:簿記3級は取得者が多い資格だから
理由2:履歴書に書いてアピールになるのは簿記2級以上だから
理由3:資格の有無で実務に差が出にくいから
それぞれの理由について解説します。
理由1:簿記3級は取得者が多い資格だから
簿記3級の合格者は毎年約10万人を超えています。
以下は2020年12月~2023年6月の簿記3級の合格者数です。2022年4月〜2023年3月の1年間だけでも約12万人以上の受験者が簿記3級を取得しています。
▼ネット試験
期間 | 受験者数 | 合格者数 | 2023年4月~2023年6月 | 47,903名 | 20,275名 |
---|---|---|
2022年4月~2023年3月 | 207,423名 | 85,378名 |
2021年4月~2022年3月 | 206,149名 | 84,504名 |
2021年4月~2022年3月 | 58,700名 | 24,043名 |
▼統一試験
回数 | 実受験者数 | 合格者数 |
---|---|---|
164(2023.6.11) | 31,556名 | 20,275名 |
163(2023.2.26) | 207,423名 | 11,516名 |
162(2022.11.20) | 32,422名 | 9,786名 |
161(2022.6.12) | 36,654名 | 16,770名 |
160(2022.2.27) | 44,218名 | 22,512名 |
159(2021.11.21) | 49,095名 | 13,296名 |
158(2021.6.13) | 49,313名 | 14,252名 |
157(2021.2.28) | 59,747名 | 40,129名 |
156(2020.11.15) | 64,655名 | 30,654名 |
簿記3級は商業簿記の基礎知識に関する試験のため、合格するのはそれほど難しいことではありません。比較的取りやすい資格であることが簿記3級の評価の低さにつながっています。
理由2:履歴書に書いてアピールになるのは簿記2級以上だから
一般的に経理業務を行う上で求められる簿記の知識は、簿記2級以上といわれています。
簿記2級では簿記3級よりもハイレベルな商業簿記の知識に関する設問だけでなく「工業簿記」と呼ばれる製造業における簿記の問題も出題されます。尚、簿記3級の出題範囲には工業簿記は含まれていません。
簿記2級の知識は仕訳や決算書の作成、経営分析、経営管理など幅広い分野の仕事に役立てることができます。さらに、簿記2級は経理だけでなく財務の仕事にも活かすことができるため、就職・転職活動の際に大きなアピールとなる資格です。
一方、簿記3級の知識は経理の仕事の経験がある人であれば知っている内容であるため、多くの企業において「持っていた方が良いが大きなアピールにはならない資格」と見なされています。
理由3:資格の有無で実務に差が出にくいから
簿記3級は商業簿記の基礎知識を身につけるのに役立つ資格です。
しかし、簿記3級で学べるのはあくまで実務を行うための前提となる知識です。社員の賞与計算や連結会計といった実際の経理業務を行う上で必要になる知識は簿記3級の出題範囲には含まれていません。
従って、簿記3級に合格したからといって企業から即戦力として評価されることはなく、他の人と差別化するのが難しいという現実があります。
簿記3級を持っている経理の実務未経験者と、持っていない経験者では、後者の方が採用される可能性が高いです。
就職・転職を成功させるためには簿記2級を取得するか、簿記3級以外のアピールポイントを持つことが重要です。
「意味ない」と言われても取得するメリット
「簿記3級は取っても意味ない」という評価はありますが、実際には簿記3級は取得するメリットの多い資格だといえます。
簿記3級を取ることには以下のメリットがあります。
・経理以外の業務にも活かせる
・就職・転職に活かせる
・上位資格を取得するための基礎知識が身につく
・お金の知識が得られる
経理以外の業務にも活かせる
簿記3級に合格することで習得できる経営状況やコストパフォーマンスを把握する力は、経理職以外にも営業職やマーケティング職で役立ちます。
営業職
営業職であれば、取引先に対して自社の商品・サービスにどれくらいの費用対効果があるかを数字として顧客に提示できるようになれるでしょう。
マーケティング職
一方、マーケティング職であれば、簿記3級の知識を活かして広告費と営業利益のバランスの取れた効果的なマーケティング戦略の立案と推進を行うことが可能になります。
また、職種に関わらず、自社や取引先、競合他社の経営状態を数字から把握できる能力がある人材は重宝されるでしょう。
就職・転職に活かせる
簿記3級を必須、または、歓迎条件にしている求人は多く存在します。
求人サイトの「Indeed」で検索したところ、簿記3級を募集要項に含む求人が全国で7万件以上ありました。(2023年8月時点)
求人の内容を見ると経理や税理士補助、会計、一般事務などの仕事が多数あります。
簿記3級は自分に最低限の会計の知識や仕事への熱意、適正があることをアピールするのに有効な資格です。
簿記3級は履歴書に記載でき、就職・転職に役立つ資格だといえます。
上位資格を取得するための基礎知識が身につく
簿記3級を取ることで学べる基礎知識は上位資格に挑戦するための土台になります。
簿記3級を取得しておくと、簿記2級に合格するために必要な勉強時間と学習期間を短縮することが可能です。
簿記3級レベルの知識がある人
簿記3級レベルの知識がある人が独学で簿記2級に合格するために必要な勉強時間は250〜350時間程度、学習期間は4〜6ヶ月程度といわれています。
簿記3級を持っていない人
一方、簿記3級を持っていない人が独学で簿記2級を取る場合の一般的な勉強時間は350〜500時間程度、学習期間は6〜8ヶ月程度です。
簿記2級を受験する前に簿記3級を取得しておくことをおすすめします。
簿記3級を取っておくと、簿記2級以上や税理士、公認会計士といった上位資格の取得を目指しやすくなるでしょう。
お金の知識が得られる
簿記3級を取ると企業の経営状態を把握するために必要な財務諸表(貸借対照表、損益計算書など)についての知識を得ることができます。
企業の財務状態が分かると、より良い就職・転職先を選ぶことができるようになります。また、株式投資をする際の投資先選びにも役立つことでしょう。
また、簿記3級では決算書や株式会社の運営に関する問題も出題されます。簿記3級レベルの知識があることで経済ニュースの内容をより理解できるようになり、経済の動向が見えるようになります。
簿記3級は個人事業主の人が自分の経営状態の把握と改善をするためにも役立つ資格です。
一方、会社員の人も、簿記3級を取得することで数字に強くなり、会社の中のお金の動きが分かるようになります。
簿記3級の知識が役立つ仕事
簿記3級は幅広い仕事で活かすことができる資格です。以下は簿記3級の知識が役に立つ仕事の例です。
・税理士事務所での補助業務
・一般企業の経理
・営業職
・個人事業主(フリーランス)や副業
税理士事務所での補助業務
税理士事務所の主な業務には税金についての相談への対応や税務に関する手続きの代行があります。
簿記3級レベルの知識があることで、税務会計や決算書類の作成、記帳の代行といった税理士を補助する業務に携われるようになります。
税理士事務所によっては経営コンサルティングを行っている場合もあります。簿記の勉強を通して培った会社の財務状況を分析する能力を役立てられる機会もあるでしょう。
また、税理士事務所での補助業務は、簿記3級からスタートして税理士を目指す人に特におすすめの仕事です。
税理士になるための条件の一つに「租税に関する事務又は会計に関する事務で政令で定めるものに従事した期間が通算して二年以上あること」(税理士法第三条より抜粋)があります。
簿記3級を取得して、税理士事務所で実務経験を積みながら、税理士になるために必要な上位資格の取得を目指すことが可能です。
一般企業の経理
簿記3級の知識は一般企業の入出金管理や経費精算、帳簿や決算書類の作成、給与計算、確定申告などの経理業務に活かすことができます。
また、簿記3級の知識は会社のお金の流れを体系的に把握するためにも有効です。
経理の仕事への就職・転職を希望する人にとって簿記3級は取っておいた方が良い資格といえます。
ただし、製造業の会社で経理として働くためには、簿記2級から出題範囲に入る工業簿記の知識が必要です。
製造業界で経理として働きたい場合は簿記2級の取得を推奨します。
営業職
簿記3級は営業職として成果を上げ、社内での評価を高めるのに役立つ資格です。
財務諸表の分析ができることで、取引先の有益性や信頼性だけでなく、競合他社の経営状態が分かるようになります。効率の良い戦略的な営業活動を行うために簿記の知識は有効です。
一方、簿記の知識に基づいた営業見込みや数値を経理担当者に報告することで、会社の経営管理に貢献できるだけでなく、経理担当者と円滑な関係を築くことができます。
さらに、決算書の内容が理解できることでより効果的な営業戦略を立てられるようになるでしょう。
また、簿記3級レベルの知識があれば営業の仕事でよく使われる「投資利益率」や「3C分析」などの用語を理解しやすくなります。簿記3級は初めて営業職に挑戦する人にとってもおすすめの資格です。
個人事業主(フリーランス)や副業
個人事業主(フリーランス)や副業をしている人が簿記3級を取得すると、自分・自社の経営状態の分析や効率の良いお金と時間の管理ができるようになります。
また、簿記の知識は、確定申告の際に、10万〜65万円の控除を受けられる「青色申告」を行う際にも役立ちます。青色申告をする際には1年間の収入と経費を記載した帳簿を提出することが必要です。
簿記3級を取ることで得られる収入と経費の仕分けや帳簿の作成方法の知識があれば、帳簿の作成がスムーズにできるようになります。帳簿の作成に使用する会計ソフトも抵抗感なく使いこなせるようになるでしょう。
個人事業主(フリーランス)や副業をしている人にとって、簿記3級は利益を出し、税金を節約する上で取る意味のある資格といえます。
簿記3級の合格に必要な勉強時間とおすすめの勉強方法
簿記3級では経理処理や、財務諸表と総勘定元帳の作成などの商業簿記の基本に関する問題が出題されます。
一見難しい印象はありますが、基礎さえしっかり学べば正答できるレベルで、学生の合格者も多くいます。
尚、「理由1:簿記3級は取得者が多い資格だから」でご紹介したように、簿記3級の合格率は約40%前後です。
簿記3級に合格するために必要な勉強時間は、初学者が独学で学習する場合は少なくとも100時間程度といわれています。1日1〜2時間の勉強を3ヶ月間程継続すれば無理のないスケジュールで合格を目指せるでしょう。
すでに経理の実務経験があったり、商業簿記を学んだことがあったりする人の場合はより短い勉強時間で合格できる場合もあります。
簿記3級に合格するためには、初めにテキストを使った学習を1ヶ月間集中的に行うことで基礎知識を身につけ、残りの2ヶ月間で実践問題や過去問を使った勉強に集中的に取り組むのがおすすめです。
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まとめ
簿記3級は取得者が多く、簿記2級と比べると実践的な内容でないことから「取っても意味ない資格」と言われることがあります。
しかし、簿記3級を取ることで身につく商業簿記の知識は、経理職だけでなく、営業職やマーケティング職など幅広い職種に役立ちます。
簿記3級を応募条件としている求人も多いことから、簿記3級は就職・転職に役立つ資格といえます。
また、個人事業主やフリーランス、副業をしている人が利益の出る経営を行う上でも、簿記3級は有効な資格<です。
簿記3級は決して「取得しても意味ない資格」ではありません。
尚、簿記3級は独学で合格することも可能な資格ですが、確実に取得するためにはスクール、または、通信講座を受講することをおすすめします。