発達障がいとは
発達障がいとは、先天的に脳機能の一部に偏りがあり、コミュニケーションなどに困難を抱えてしまう障がいのことを指します。詳しい原因はまだわかっていませんが、生まれつきの脳機能の問題であり、本人の努力で解決できる問題ではありません。
発達障がいはコミュニケーションや対人関係に著しい困難を持つASD(自閉症スペクトラム症)、不注意・多動性・衝動性といった特性を持つADHD(注意欠如多動症)、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」などの能力のうち、1つないしは複数に困難を抱える特性を持つSLD(限局性学習症)の大きく3つの種類に分類されます。
知的障がいが伴うか伴わないかで幼少時の発見率は変わり、近年では発達障がいの認知が進んできたことにより、大人になってから発達障がいの診断が下りるケースも増えてきています。また発達障がいの診断は降りないものの、いくつかの特性には当てはまる「グレーゾーン」に当たる方達もいて、それぞれ社会の中で生きづらさを抱えて悩んでいます。
発達障がいのカウンセリングに効果はある?
発達障がいとは先天的な脳機能の特性であると前述しました。先天的な障がいであればカウンセリングに効果があるのか?と疑ってしまう人ももちろんいるでしょう。
結論からいうと、カウンセリングは発達障がいの大元の原因である脳機能に対して効果が出るものではありません。ですが、社会生活を送る上で生活水準の向上や自立のための効果は期待できます。
発達障がいの特性は、ADHDやASDなど同じ種類の発達障がいであっても本人の持つ特性によって、対応が大きく変わります。また発達障がいのグレーゾーンに当たる方やこれまで発達障がいと診断されてこなかった方にとっては、自身がどのような特性を持っているのかを把握するのが難しいこともあるでしょう。そんな方は、カウンセリングを受けることによって社会生活の中で不便を感じていた理由が明らかになり、自身に必要な支援の種類や対処法を正しく理解できるようになる効果が期待できます。
また発達障がいの特性を持つ人たちは日々の社会生活のストレスを抱えがちであり、ストレスの蓄積によって、精神疾患などの二次障がいを引き起こすケースも少なくありません。カウンセリングを受けることによって、そういった二次障がいの危険性を下げることも期待できます。
発達障がいのカウンセリングの具体的な効果
ではカウンセリングの効果を、もう少し具体的に紹介しましょう。
自己理解が深まる
まずカウンセリングを受けることで、自身の持つ特性や症状について自己理解を深めることができます。カウンセリングでは病院での診療と比べて、より時間をかけてじっくりと自分と向き合うことができます。じっくりと対話することによって、より理解は深まるでしょう。
自己の理解が進むことで、今まで漠然と問題だと思っていたことについても納得できる原因が見つかるかもしれません。自身の症状がわかると適切な支援が受けやすくなったり、対処法を具体的に考えたりすることもできるようになります。
また発達障がいのグレーゾーンにいる場合、診断がおりた人に比べて支援が受けられる場面は少なくなってしまいます。そんな時はカウンセリングによって自身の症状や特性についての理解を深めることが、より助けになるでしょう。
自分を肯定できるようになる
自己理解が進むと、自然と自分の状態を受け入れることができるようになってきます。今まで「どうして人と同じように出来ないのだろう」「自分の努力が足りないのだろうか」と悩んでいたことが、己の特性だと分かることで気持ちが軽くなります。
発達障がいを持つ人は、度重なるミスやコミュニケーションの難しさによって、叱責を受けたり他人と摩擦が起きたりしがちです。結果的に自己肯定感が低くなる方も多いようです。ですが自身の症状を理解し肯定することで、自分の努力が足りないわけでもおかしいわけでもないと言うことがわかり、少しずつ自分を肯定できるようになるのです。
ストレスの軽減
またカウンセリングではストレスとの付き合い方についても相談ができます。自分の心と向き合うことで、感情のコントロール方法などを知り、ストレスの軽減に繋げることもできるでしょう。
また、自身の症状を理解し、自分に合った対処法を見つけると、少しずつ生活にも効果が表れ社会生活に適応できるようになっていきます。そうするとこれまで起きていた他者との摩擦を感じる機会が減り、日々感じていたストレスの軽減にも繋がっていくでしょう。
具体的な問題解決のための行動を相談できる
また、カウンセリングでは具体的な問題解決のための行動を相談できるのも魅力的の一つです。
発達障がいは個人の持つ特性によって症状は様々で、全員が共通した対処方法というのはありません。また本人の置かれた状況によっても、問題は様々でしょう。たとえば仕事のこんな場面で困ることが多い、日常生活のこんな場面で不便がある、そういった具体的な問題に対して自分に合う方法を具体的に相談できるというのは大きなメリットです。
カウンセリングで相談できる内容
発達障がいのカウンセリングは医療機関の「精神科」や「心療内科」、民間のクリニックや企業、オンラインサービスなどで受けることができます。
難しいことを考える必要はありませんが、何を相談していいかわからないという人もいるかもしれませんね。ここではカウンセリングで相談できる内容について、具体的に紹介していきます。
日常生活で困っていること、つらいと感じること
まずは気軽に日常生活で困っていることや辛いと感じることを正直に相談してみましょう。その場ではいきなり思いつかないという方は、理解を深めるためにも日頃から困ったことをメモに書き留めて持っていくのも効果的です。また子どもの時の症状などを親に聞いてメモしていくのも良いかもしれません。
どんなことで困っているか、何を辛いと感じるかということから、あなたがどんな特性を持っていて、どんな症状があるのかが明らかになっていきます。
難しいことを話す必要はなく、日常の些細な困りごとで全く問題ありません。
大人の発達障がいと診断されたがどうすればいいかわからない
また、大人の発達障がいと診断されたけれどどうすればいいか分からない、という場合もそのままを素直に伝えると良いでしょう。
これまで普通に生活してきて仕事もしている場合、診断されたからといって生活がガラリと変わるわけではありません。ただ発達障がいと診断された場合、受けることができる公共の支援もたくさんありますので、そういった支援を知るだけで何かあった時の支えとして安心できるかもしれません。
また、職場での現在の困りごとと一緒に伝えることで、職場での適応方法についても相談することができます。
発達障がいではないかと不安がある
カウンセリングは必ずしも発達障がいの診断がおりていなくとも受けられます。
要は普段の生活の中で不安や不便を感じるか、ストレスになっているかなど、日常生活や社会生活に支障を感じているかどうかが問題です。
仕事でミスが多く迷惑をかけてしまう、コミュニケーションでトラブルが起こりがちなど、気になることがある場合は診断がおりていなくとも相談すると良いでしょう。
身近な発達障がいを持つ人への接し方
また、発達障がいを持つ本人ではなくとも、カウンセリングを受けることはできます。身近にいる家族が発達障がいの場合、密接に関わる人が心身に支障をきたすことは珍しくありません。周囲の発達障がいの人との関わりによって心身に不調をきたすことを指して、「カサンドラ症候群」という特定の言葉もあるくらいです。また本人がカウンセリングを拒否して受けられない場合もあるでしょう。
発達障がいの人が社会に適応し、日常生活を送るためには周囲の人の理解や支援が不可欠です。関わり方や接し方についてカウンセリングを受けることで心が楽になったり、どのように対応すべきかが分かり、気持ちが落ち着くかもしれません。
発達障がいのカウンセリングに保険は適用される?
医師が「カウンセリングによる治療が必要だ」と判断した場合、治療の一環としてカウンセリングを受けるので保険が適用されます。ですが、医療機関でおこなわれるカウンセリング全てに保険が適用されるわけではないので、注意が必要です。
また、発達障がいの診断がおりなかった、医師によって治療が必要と判断されなかった場合でも、カウンセリングを受けることはできます。自分は発達障がいなのではないか悩んでいる、診断されたけどカウンセリングの治療については何も言われなかった、といった場合は一度相談してみるのも良いでしょう。この場合は自費診療となります。
また一般的に医療機関外のカウンセラーから受けるカウンセリングは保険適用外となります。値段はカウンセリング機関により大きく異なりますので、事前の確認が必要です。
発達障がいのカウンセリングを無料で受けるには
保険適用外のカウンセリング料金は以外と高いものです。負担が大きいと感じる方は、無料の窓口を利用するのも手段の一つです。
地方自治体には発達障がいに関する相談窓口が設けられています。自身の住んでいる市区町村のホームページなどで確認し、一度相談してみると良いでしょう。
また、地域の保健所や保健センター、精神保健福祉センターの「こころの相談の窓口」でも無料で相談することができます。電話での相談もできるので是非一度ご確認ください。