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知的障がいと発達障がいの違いとは?それぞれの特徴や症状をわかりやすく解説

知的障がいと発達障がいは、「勉強の遅れがある」「同時に2つのことができない」「意思疎通に難がある」などの特徴として表出する症状が似ており、どちらに当たるか判断がつかないことがあります。

この記事では知的障がいと発達障がいの違いや特徴・症状について分かりやすく解説していきます。

更新日:2024-11-07(公開日:2024-10-30)

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ACCEL JAPAN アンバサダー 岡田結実
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知的障がいと発達障がいの違いとは?

知的障がいとは、おおむね18歳までに、同年齢の子どもと比べて「認知や言語などに関わる知的機能」の発達に全体的に遅れが認められることを指します。対して、発達障がいは「コミュニケーション」や「状況判断」に関わる一部の脳の働きに偏りがある状態を指します。

知的障がいと発達障がいは表出する症状が似通っていることがありますが、原因となっている要因が異なるため、対応もそれぞれ異なります。

たとえば「勉強の遅れがある」という症状一つを取っても、対処方法は異なってきます。知的障がいである場合は全体的な知能が何歳か遅れている状態にあるので、意思疎通や行動などについても発達の遅れが見受けられるでしょう。

これが発達障がいの、たとえば「LD(学習障害)」に当たる場合「文字の形を認識することに問題がある」のであり、その他の知能活動には支障がありません。また「ADHD」や「ASD」の特性で授業に集中することが難しく勉強が遅れているということもあるので、対処はそれぞれ異なるのです。※それぞれの種類については後述します。

また、国際的な診断マニュアルであるアメリカ精神医学会の『DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)』では、知的障がいと発達障がいは同じ「神経発達症群/神経発達障害群」の中に位置付けられており、知的障がいは大きな括りでは発達障がいの中に含まれるとも言われています。

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知的障がいと発達障がいの種類

では簡単に知的障がいと発達障がいの種類を説明します。

知的障がいは知的機能の障がいの「程度」において分類されますが、発達障がいは脳機能の偏りから現れる「特性」によって分類されます。

順番にみていきましょう。

知的障がい

厚生労働省では知的障害は以下のように定義しています。

知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)にあらわれ、日常生活に支障が生じているため、何らかの特別の援助を必要とする状態にあるもの

判断基準は以下の通りです。

(a)「知的機能の障害」について
 標準化された知能検査(ウェクスラーによるもの、ビネーによるものなど)によって測定された結果、知能指数がおおむね70までのもの。

(b)「日常生活能力」について
 日常生活能力(自立機能、運動機能、意思交換、探索操作、移動、生活文化、職業等)の到達水準が総合的に同年齢の日常生活能力水準(別記1)の a, b, c, d のいずれかに該当するもの。(※別記1省略)

引用元:厚生労働省『知的障害児(者)基礎調査:調査の結果』より

知的障がいは「知能指数」と「日常生活能力」の段階に応じて、「軽度」「中等度」「重度」「最重度」の4種類に分けられています。日常生活能力はaからdにかけて、自立の度合いが高まります。

軽度(IQ51~70)

基本的なコミュニケーションや社会生活には支障がない程度に自立している状態。学齢期において、計算・読み書き・時間などを身につけるのが難し場合がある。

中等度(IQ36~50)

言語を使ったコミュニケーションに難があり、集団活動に周囲からの理解や支援が必要な状態。日常生活や仕事は、支援を受けることである程度行うことができます。

重度(IQ21~35)

言語のコミュニケーションが難しく、身振り手振りを交えながら、単純な会話によるコミュニケーションはできる状態。日常生活や食事・身支度・入浴などの健康管理に支援が必要。

最重度(IQ1~20)

文字や言葉でのコミュニケーションがほぼできない状態。感情や欲求は非言語によるコミュニケーションで意思疎通する。日常生活や健康管理は補助が必要。

また、知的障害の程度決定については、知能指数より日常生活能力が優先されます。そのため、IQが1〜20の場合でも日常生活能力が「d」の場合程度は一段軽くなり「重度」とされます。同様にIQ51~70の場合でも日常生活能力が「a」と判断された場合は一段重くなり「中等度」となります。

※IQ1〜20且つ日常生活能力「a」の場合は「最重度」、IQ51~70且つ日常生活能力「d」の場合は「軽度」です。

発達障がい

発達障がいは、先天的な脳機能の障がいであり、生まれつき脳機能の一部に偏りがあることによって引き起こされる特性だと考えられています。

発達障がいは主に3つの種類に分類されています。

ASD(自閉症スペクトラム症)

「コミュニケーション・対人関係の困難」や「同一性の保持(環境の変化への極度な嫌悪)」「感覚過敏」が主な特性として表れる。

ADHD(注意欠如多動症)

「不注意」「多動性」「衝動性」が主な特性として表れる

SLD(限局性学習症)

全般的な知能は正常な範囲にあり、視力や聴力には異常が認められないが、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」などの能力のうち、1つないしは複数に困難を抱える特性を持つ

またこれ以外にも『吃音』や『チック症』などの発達障がいがあります。

詳細については、『発達障がいの特徴とは?種類や症状、気になる行動への対応について』の記事をご覧ください。

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知的障がいと発達障がいの原因

ここでは、知的障がいや発達障がいの原因について解説します。

知的障がい

知的障がいの原因の具体的な要因はまだ特定されていませんが、いくつか原因として考えられているものをご紹介します。

まず、遺伝子の変異や染色体異常、先天的な代謝異常など、出生前の先天的な要因が挙げられます。親から子供への遺伝も要因の一つとして考えられますが、必ずしも遺伝するものではなく、親が知的障がいを持っていたからといって子どもが知的障がいになるとは限りません。

妊娠中や出産時の異常も知的障がいの原因となることがあります。たとえば妊娠中の母親の栄養不足やアルコール摂取、感染症や妊娠中毒症、出生児の合併症などです。他にも早産や未熟児での出産などが原因になることが分かっています。出産時の低酸素症や新生児仮死についても、新生児の脳にダメージを与え知的障がいを引き起こす原因になるようです。

また、知的障がいは出生後18歳になるまでに表れたものを呼びあらわし、幼少期の栄養不足や感染症、頭部への外傷、環境的なストレスなども影響を及ぼす要因になる可能性があります。

ただし知的障がいを引き起こす決定的な要因を特定できることは少なく、複数の要因が絡み合っている可能性もあります。

発達障がい

発達障がいの要因も知的障がい同様、未だに詳しいことは分かっていません。

遺伝的な要因もいくつか考えられていますが、特定の遺伝子によるものではなく環境要因も含めて様々な要素が絡み合っていると考えられています。ただ知的障がいとは異なり、発達障がいは先天的な脳の機能障がいであり、出生後の養育環境やしつけなどの生育条件によって発生するものではないと言われています。

詳しくは『発達障がいは遺伝する?親や兄弟に発達障がいがある場合は?』の記事をご覧ください。

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知的障がいの特徴

知的障がいの日常生活への適応機能は「概念的領域」「社会的領域」「実用的領域」の3つの領域において分類されています。

ここではそれぞれの領域内の特徴について解説します。

参考・引用元:厚生労働省『e-ヘルスネット 知的障害(精神遅滞)』より

概念的領域

概念的領域とは「記憶、言語、読字、書字、数学的思考、実用的な知識の習得、問題解決、および新規場面における判断においての能力についての領域」を指します。

主に幼児期の言語の発達・数の理解、児童期における勉学に関わるところで発見される特徴です。いくつか具体的な特徴を記載します。

  • 幼児期において、同年代に比べて発語が遅い
  • 読み書きが苦手である
  • 計算ができない
  • 児童期において、勉学の遅れがみられる
  • 抽象的な概念の理解が苦手
  • 口頭説明の意味が理解しづらい

社会的領域

社会的領域とは「特に他者の思考・感情・および体験を認識すること、共感、対人的コミュニケーション技能、友情関係を築く能力、および社会的な判断についての領域」を指します。

主に他者とのコミュニケーションに関しての特徴です。こちらもいくつか具体的な特徴を記載します。

  • 相手の気持ちを考えた発言ができない
  • 周りの空気を読まずに発言・行動する
  • 言葉が少なく、身振り手振りで伝えようとする
  • 言われた内容が理解できない
  • 複数の指示を理解できない
  • 人とのコミュニケーションが苦手
  • 会話のキャッチボールができない

実用的領域

実用的領域とは「特にセルフケア、仕事の責任、金銭管理、娯楽、行動の自己管理、および学校と仕事の課題の調整といった実生活での学習および自己管理についての領域」を指します。

主に社会生活や日常生活に関わるところです。特徴をいくつか記載します。

  • 着替えや入浴、身支度などが自分でできない
  • 日常生活での安全確認が自力でできない(段差など)
  • 自身の健康管理が難しい
  • 金銭管理をすることができない
  • 自分で予定を立てることができない
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発達障がいの特徴

発達障がいはその特性によって、特徴が様々に異なります。

同じ発達障がいの種類の中でも、どの特性が強く出るかによって特徴は変わるため一概には言えませんが、一例として種類ごとの特徴を記載します。

ASD(自閉症スペクトラム症)

ASDは「コミュニケーションの困難」や「同一性の保持(環境の変化への極度な嫌悪)」や「感覚過敏」が特徴として表れる発達障がいの一種です。特徴としては以下のような例が挙げられます。

  • 相手の言葉や意図を想像することができない
  • 場の空気を読み取ることが苦手
  • 予定や約束を守れない
  • 強いこだわりがある
  • 毎日同じ服でないと気が済まない
  • 匂いや音などに過敏
  • 人に触られることを極度に嫌がる
  • 興味のあることへの集中力が非常に高い

ADHD(注意欠如多動症)

ADHDは「不注意」「多動性」「衝動性」が主な特性として表れ、どの特性が強く出るかによって症状や特徴は異なります。以下にいくつか例をあげます。

  • 忘れ物が多く、物をよく失くす
  • 約束をすぐに忘れてしまう
  • うっかりミスが多い
  • 単純作業が苦手
  • 人の話を遮って喋ってしまう
  • 落ち着きがなく、いつもウロウロ
  • 順番を待つのが苦痛

SLD(限局性学習症)

SLDは一部の学習機能に障がいが見られる発達障がいの一つです。一見知的障がいの「概念的領域」と同様に見える特徴が表れますが、知的障がいとは異なり、障がいが起きている一部の学習機能以外は遅れが見られません。

  • 読み書きや計算のいずれかが極端に苦手
  • マス目に文字をおさめて書くことができない
  • 聞きながらメモをとる、などの行動ができない
  • 似た漢字を識別することが難しい

また詳細については、「発達障がいの特徴とは?種類や症状、気になる行動への対応について」の記事をご覧ください。

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知的障がいと発達障がいは併存している場合もある

発達障がいと知的障がいはそれぞれ診断基準が別に設けられていますが、2つを併存している場合もあります。特にASDは他の障がいと併存している場合が多く、中でも一番多いのが知的障がいだと言われています。

知的障がいを伴う発達障がいは幼少期に発見されやすい傾向にあります。逆に、知的障がいがない発達障がいは幼児期に発見されないまま大人になることもあり、社会生活の中で生きづらさを感じる要因になっています。

また知的機能が「知的発達症」と「正常知能」の境界域にある状態「境界知能」や、発達障がいに必要な診断項目の内一部の特性が見られる「発達障がいのグレーゾーン」など、診断は下りないものの日常生活や社会生活に難を感じる人たちもいます。

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知的障がいや発達障がいかもしれないと思ったら

では、子どもや身近な家族、自身に知的障がいや発達障がいの疑いを持った時はどうすればいいでしょうか。

誰かに相談する

まずは、一度誰かに相談することが大切です。

不安や疑問を感じながら日々を過ごしていると、知らず知らず生活の中で精神的な苦痛が降り積もり、別の精神疾患や不具合を引き起こしてしまう可能性もあります。自治体には発達障がいなどの相談窓口が設置されており、症状によっては適切な専門機関に繋いでくれます。また、地域のクリニックなどでも相談は受け付けてくれるでしょう。

一人で抱え込まないことが重要です。

合理的配慮を求める

障がいによって、日常生活や社会生活に制限を受けていると判断された場合、学校や職場、お店などの事業者にとって合理的配慮を求めることができます。

合理的配慮とは障がいのある方が、障がいのない方と同様に教育や就業・社会生活への平等な参画ができるよう、特性に合わせて行われる配慮のことであり、障がいのある人から申し出があった場合は「障害者差別解消法」によって事業者が行うように決められています。

事業者側にも今いる人材や施設・設備などの制限があるため、負担となりすぎない範囲での配慮をお願いすることができます。合理的配慮を求める場合は、自身の症状などを説明・相談することがとても大切です。

必要な支援を受ける

知的障がい、もしくは発達障がいと診断が下りた場合は、必要な支援を受けることができます。障害者手帳なども支援の一つで、様々な優遇施策を受けることができます。お願いする側に自身の症状などを相談することがとても大切です。

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