難しかった子どものサポート
当時私は、小学校1年生のあるクラスにサポートスタッフとして配属されていました。
私の役割は、クラスの中で注意が必要な子どもを中心に、担任の先生の手の回らない部分をサポートすることでした。
主にサポートしていたのはAくんという子でした。
Aくんは、ASD※で通常は特別支援級にいましたが、通常学級で皆と一緒に授業を受ける練習をすることになりました。私はサポートとして、Aくんのそばについて他の子とも交流する形で春からそのクラスに入りました。
初めは、発語もなく視線も合わないAくんとコミュニケーションが取れず、特別支援級から通級に来る時のAくんは、じっと固まって、心細そうでした。
とにかくAくんにとっての通級での時間を楽しくしたい一心で、Aくんと交流を続けました。
※自閉症スペクトラム症のこと。発達障がいの一種で、人とのコミュニケーションや対人関係が苦手、特定のことに強いこだわりをもつといった特性を持つ。
子どもの成長を間近で感じられた瞬間
Aくんは当初から、視線は合わないけれど、私の手を握ったり、私の言葉にじっと耳を傾けてくれたりしていて、指示や周りの状況をしっかり感じ取っている子でした。
そこで、私はたくさん話しかけてみました。授業中は、「今ここをしてるよ」と一緒に教科書をなぞってみたり、授業以外では「給食は何が好き?」などAくんの興味のあることは何かなと考えながら話しかけたりしていました。
うつ伏せになってしまったり、反応が返ってこなかったりということもたくさんありましたが、話しかけることをやめないように努めました。
そんなある時、たまたま算数の授業に参加することになり、なんと、Aくんは顔をあげ「分かるよ!」と話してくれたのです。
算数が得意なことが分かり、コミュニケーションの糸口が見えました。
普段の会話の中に、なるべく数字に関係するような「今何時かな?」や「これ何個ある?」などの話題を混ぜこみ話す回数を増やしていきました。
すると、迎えに行った時にAくんから手を繋いでくれ、自分から通級に向かってくれるようになり、休み時間も私と一緒に行動してくれるようになりました。
少しずつAくん自身も、新しい環境や私に慣れて、前に進もうとしている姿を見て嬉しくなりました。
子ども同士で起こる成長の連鎖
当時のAくんはまだ、通級の他の子と交流することはありませんでしたが、あるできごとをきっかけにそんな状況も変わっていきました
休み時間に差し掛かった時に、クラスの子たちが私を鬼ごっこに誘ってくれたのです。体を動かすことならAくんも少しずつクラスの子と交流できるかもと思い、「Aくんも一緒にいいかな?」と提案してみました。
するとクラスの子たちから、Aくんに話しかけて、「一緒に遊ぼうよ!」と手を取って誘ってくれました。
Aくんは最初は戸惑っていましたが、うなずいてくれたので、私と手を繋いで参加することにしました。
体を動かす遊びは良い効果があったようで、Aくんが笑顔でクラスの子にタッチしにいったり、逃げ回ったりいつもと違う姿を見ることが出来ました。
それからというものの、休み時間になると、Aくんは私も交えてお友達と交流できるようになったんです。最後には私の仲介がなくても楽しそうに子どもだちだけで一緒に遊べるようになりました。
春先はあんなに不安そうだったAくんはいつの間にか、通級でも不安な顔をする事が少なくなりました。
子どもの成長を通して貰えるエネルギー
私は、そばで見守ってちょっとした手助けをしただけでしたが、子どもたち同士の交流で、化学反応のようにあっという間に成長する様子を目の当たりにすることができました。Aくんの世界が広がる瞬間を私も一緒になって体験でき、とても嬉しかったのを今でも覚えています。
自分が教える立場だと思っていたものが、いつの間にか子どもたちの成長から、色んなエネルギーを貰っていました。
このような瞬間を体験できるのは、子どもと触れ合える仕事ならではだと思っています。
まとめ
私の体験談についていかがでしたか?
このエピソードは私にとって、忘れられない特別な思い出となりました。
子どもたちから貰えた思い出は今でも、私の頑張るエネルギーになっています。