日本の労働市場が変わる!生き残る術は?
〜「新しい資本主義実現会議 」が示す「労働市場改革」の基本的考え方〜
公開:2023-06-07
労働市場改革とは?
「新しい資本主義実現会議 」から「労働市場改革」の基本的考え方が示された。
※新しい資本主義とは第101代内閣総理大臣である岸田文雄が掲げる経済政策である。
会議で決定した「三位一体の労働市場改革の指針」をまとめると下記のように要約できます。
労働市場改革の基本的考え方
【労働市場改革の基本的考え方】
働き方が大きく変化しており、個人が自らのキャリアを選択する時代になっている。
労働者が自己啓発とスキルのリ・スキリングを行い、職務を選択できる制度へ移行することが重要です。
これにより、内部労働市場と外部労働市場をシームレスにつなげ、社外からの経験者採用も促進し、労働者が自らの選択によって社内・社外の労働移動が可能となります。これは日本企業と日本経済の更なる成長のためにも急務です。
賃金水準の低迷と投資不足
【賃金水準の低迷と投資不足】
我が国の賃金水準は長期間にわたり低迷しており、他の先進国に比べて上昇していません。
企業は人への投資を十分に行っておらず、個人も自己啓発に十分な努力をしていませんでした。
新たな潮流とスキル獲得の必要性
【新たな潮流とスキル獲得の必要性】
GXやDXなどの新たな潮流により、求められるスキルや労働需要が大きく変化しています。
人生100年時代で就労期間が延び、産業の興衰サイクルが短くなる中、個人は生涯を通じて新たなスキルを獲得する必要があります。
しかし、現実には多くの労働者が現状に安住し、受け身の姿勢を取っています。
雇用システムの問題点と変革の必要性
【雇用システムの問題点と変革の必要性】
年功賃金制などの戦後の雇用システムには問題があります。
職務や求められるスキルの基準が不明瞭であり、評価や賃金が公平に行われていないため、エンゲージメントが低下し、転職が困難で報酬改善が難しい状況です。
また、スキルアップや学習の機会の公平性も不十分です。
労働市場改革の必要性
【労働市場改革の必要性】
労働供給の制約と人口減少の中で、雇用システムを変革し、個人が将来の労働市場や働き方を選択できるようにする必要があります。
性別や年齢、障害の有無に関わらず、個人が自身のキャリアを築き上げ、内部昇進や給与改善、他企業への転職などを自ら選択できる社会を実現する必要があります。
企業の変革と人への投資強化
【企業の変革と人への投資強化】
企業も変革が不可欠です。人への投資を十分に行わないまま、他国との賃金格差が拡大し、競争力が低下しています。
人材獲得競争を考慮し、ジョブ型の人事制度を導入する企業も増えていますが、変化への対応を急ぎ、人への投資を強化する必要があります。
働き手と企業の関係の変化
【働き手と企業の関係の変化】
働き手と企業の関係も「選び、選ばれる」関係へと変化していく必要があります。
一人ひとりが主役となり、個人が自らの意思でキャリアを築き上げる時代になるため、官民の連携の下、変革を進める必要があります。
三位一体の労働市場改革の具体的施策
【三位一体の労働市場改革の具体的施策】
能力向上支援によるリ・スキリング、企業ごとの職務給の導入、成長分野への労働移動の円滑化の三位一体の労働市場改革を進めることが重要です。
これにより、客観性、透明性、公平性が確保された雇用システムを実現し、構造的に賃金が上昇する仕組みを構築します。
中小企業の対応と価格転嫁対策
【中小企業の対応と価格転嫁対策】
地方や中小・小規模企業の対応も重要です。
労務費の適正な転嫁を通じた取引の適正化を図り、中小企業の賃上げを実現する必要があります。
また、価格転嫁対策を徹底し、成長と賃金上昇の好循環を実現します。
地域の人手不足対策と最低賃金の引上げ
【地域の人手不足対策と最低賃金の引上げ】
生産性向上支援とともに、地域の人手不足対策や最低賃金の引上げも実現します。
これらの改革に官民が大胆に取り組むことで、国際的に競争力のある労働市場を築いていく必要があります。
新たな労働市場で活躍するために重要なスキルとは?
こうした現代の労働市場の変化を踏まえると、個人がこれから社会で活躍するためには、以下のスキルが重要とされています。
1.リ・スキリングとアップスキリング
技術や業務に関連するスキルを継続的に学び、自己啓発を行うことが求められます。特に、新興技術やデジタルツールの習得は重要です。
2.ソフトスキル
コミュニケーション能力、協働性、リーダーシップ、問題解決能力などのソフトスキルは、組織内での効果的なコラボレーションやビジネス成果の向上に不可欠です。
3.デジタルリテラシー
デジタル技術の普及により、デジタルリテラシーがますます重要となっています。
デジタルツールやプラットフォームの使用方法やデータの解析能力など、デジタル領域での基本的なスキルを身につける必要があります。
4.問題解決能力
迅速かつ効果的な問題解決能力は、変化の激しい環境での競争力を高めるために必要です。
複雑な課題に対して論理的思考や創造性を活用し、解決策を見つける能力が求められます。
5.グローバルマインドセット
国際的なビジネス環境では、異文化間のコミュニケーションやグローバルな視点を持つ能力が重要です。
異なる文化や価値観に対する理解や柔軟性を持ち、多様なチームでの協働能力を高めることが求められます。
6.プロジェクト管理能力
プロジェクトの計画、実行、監視、制御、評価などのプロジェクト管理能力は、効率的な業務遂行や成果の達成に必要なスキルです。
プロジェクトのスケジュール管理、リソースの最適化、チームのリーダーシップなどが含まれます。
7.分析能力とデータドリブンな思考
ビッグデータの時代において、データを収集し分析する能力は重要です。
データから意味を読み取り、ビジネス上の洞察を得ることで、戦略的な意思決定や業績向上につなげることができます。
これらのスキルは一般的な指針ですが、各個人の専門性やキャリア目標に応じて、さらに特定のスキルを磨く必要があります。
自身の興味や市場の需要を考慮し、将来のキャリアに役立つスキルを選択することが重要です。
人材の育成・教育にあたって取り組むべき課題とは?
現在の日本の教育システムにおいては、一部の学校や教育機関において、一部のスキルや知識を習得することが可能です。
例えば、基礎的な学問や技術的なスキル、一部のソフトスキルなどは教育の中で学ぶことができます。
しかし、上記で述べたような変化の激しい労働市場に対応するためには、現在の教育システムにおいてもさらなる改革や補完が必要です。
以下にいくつかの課題を挙げます:
1.柔軟性と創造性の育成
現在の教育システムは、一部の学校や教育機関においては固定的なカリキュラムや評価基準に縛られがちです。
創造性や柔軟な思考を促す教育方法や環境を整備する必要があります。
2.デジタルリテラシーの強化
迅速に進化するデジタル技術に対応するため、デジタルリテラシーを教育の中で重点的に強化する必要があります。
プログラミングやデータ解析など、デジタル領域でのスキルを磨く機会を提供することが重要です。
3.実践的な経験の提供
労働市場で求められるスキルは実践を通じて習得されることが多いため、
現実的な職場体験やインターンシップなど、実際の業務に携わる機会を提供することが重要です。
4.外国語教育の充実
グローバル化が進む現代社会では、外国語の重要性が高まっています。
より実践的な外国語教育や留学制度の充実によって、国際的なコミュニケーション能力を育成する必要があります。
5.継続的な学びの文化の醸成
変化の速い社会では、卒業後も学び続けることが求められます。
生涯学習の意識を醸成し、社会人や個人が自主的にスキルアップやリ・スキリングを行える環境を整備する必要があります。
以上のような課題を解決し、現代の労働市場に適したスキルを習得できる教育システムの構築が求められています。
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