簿記初級(旧簿記4級)とは?
簿記初級は、簿記の中でも最も難易度の低い入門資格です。
受験資格はなく、どなたでも受験できます。
簿記初級は、2017年4月に簿記4級に代わってできた試験!
実はこの簿記初級、2017年4月に新設されたばかりの検定級位です。
それまでは初級に代わり4級が実施されていたのですが、いくつかの問題を抱えていました。
受験者数が少なかった4級
簿記検定は1級から4級までの級位が用意されており、合格率はそれぞれ1級では8%~13%、2級は9%~30%、3級が43%~67%、4級は34%から49%程度です。
しかし、なかでも4級だけが突出して受験者数が少ない状況が続いていました。
1級から3級においては受験者数が数万人から数十万人いたにもかかわらず、4級は年間で2,000人程度でした。
試験内容が3級の範囲と被りながらも、問題数が少ないため実用的ではないという評判でした。
そのため、簿記入門者は4級を飛ばして3級から挑戦する方が多く、4級の存在意義が疑われる状況に陥ったのです。
インターネット受験の導入により受験機会の増加
では、2017年より新設された初級ではどのような改善が図られたのでしょうか。
一番大きい変更点は「インターネット受験」の導入でしょう。
4級では年3回しか受験する機会がなかったため「どうせ勉強するなら3級を受けよう」という方が多く見られました。
より多くの人に受験してもらえるように、初級ではいつでも受験できるように変更されました。
受験場所については、商工会議所が指定した専門施設のみとされていますが、以前に比べて受験しやすくなったことは間違いありません。
その他、試験範囲については4級と大差なく、簿記の入門者向けの内容となっています。
簿記初級の試験概要
試験範囲、配点
簿記の基本原理や仕組み、複写簿記の記入ルールなど、簿記の初心者も学び始めやすい入門的な内容が試験範囲です。
簿記初級で学べる内容はビジネスにも活用でき、帳簿からお金の流れを読み取る能力が身につきます。
試験の配点は以下のようになっています。
大問 | 出題内容 | 配点 |
---|---|---|
第一問 | 簿記の基本原理(選択式) | 30点 |
第二問 | 仕訳問題 | 40点 |
第三問 | 試算表問題 | 30点 |
受験資格
受験資格はなく、どなたでも受験が可能です。
試験時間
40分
試験方式、試験会場
簿記初級はネット試験でおこなわれます。
受験者は全国のネット試験会場(ネット試験施行機関)から希望の会場を選んで受験予約し、会場のパソコンで回答を登録していく形式です。
合否も試験終了と同時に確認できます。
ネット試験の操作に関しては、簿記試験を実施する日本商工会議所のホームページで操作体験版を公開しています。
受験の予定がある方は確認しておくと良いでしょう。
合格ライン
100点満点中、70点以上を獲得できれば合格となります。
試験日
随時実施
※ネット試験会場によって受験可能な日は異なります。
受験料
2,200円
申し込み~受験の流れ
- 商工会議所のホームページでお近くのネット試験会場をチェック
- 会場ごとに異なる試験日、受験申し込み方法をチェック
- 受験したいネット試験会場に直接申し込む
- 試験当日に身分証明書を持参して会場へ向かい、受験する
必要な勉強時間
簿記を初めて学ぶ方が独学で合格を目指す場合、~70時間程度の勉強時間が必要になります。
1日2時間勉強した場合、約1ヶ月で合格を目指せる計算です。
比較的短い準備期間で取得を目指せる資格といえるでしょう。
簿記初級(旧簿記4級)と簿記3級との違い
出題範囲の違い
どちらも入門者向けの試験内容
簿記初級と簿記3級の出題範囲には大きな差はありません。
初級の場合、問題数が3級に比べて少なくなり、よりシンプルな試験になっているのが特徴。
どちらも簿記の基本知識が問われる内容となっていますので、入門者向けの試験といえるでしょう。
初級の出題範囲
それでは、初級の出題内容を見てみましょう。
初級で問われるのは大きく分けて3つの分野です。
1つ目は簿記の基本原理。
基礎概念、取引の種類や意義、勘定、帳簿、証票と伝票といった簿記を学ぶうえで必要不可欠な要素です。
簡単な計算を除き、用語の記憶が中心となります。
2つ目は期中取引の処理。
簿記のメインとなる仕訳をするための分野になり、現金預金、売掛金と買掛金、その他債権と債務、手形、商品、固定資産、純資産、収益と費用、税金に関する内容が問われます。
3つ目は月次の集計。
毎月の決算をおこない、数値を正確に読み取る内容です。
簿記を初めて学習する人が合格するために必要な勉強時間は~70時間程度といわれています。
3級の出題範囲
簿記3級の出題範囲は初級とほぼ同じではありますが、初級には含まれていない部分もいくつか出題されるので注意が必要です。
3級では株式会社会計という内容が出題されるほか、より詳細な商業簿記の知識を問われることになります。
簿記を初めて学習する人が人が合格に必要な勉強時間は~100時間程度です。
簿記初級より出題範囲が増えた分、学習の時間も長くなります。
関連記事 簿記3級の合格に必要な勉強時間
試験時間・方式・試験日
簿記初級と3級の試験概要の違いについて、詳しく見ていきましょう。
簿記初級・簿記3級の試験概要を比較!
項目 | 簿記初級 | 簿記3級 |
---|---|---|
試験時間 | 40分 | 60分 (2021年度実施の試験より、120分から60分に変更) |
試験方式 | ネット受験 実施から採点・合否判定まですべてネットで施行されます。 |
指定会場でのペーパーテスト もしくはネット試験 |
試験日 | 随時開催 商工会議所が指定するネット試験施行機関にて確認してください。 |
ペーパーテスト:年3回開催 ネット試験:随時実施 |
受験資格 | 特に制限はなく、簿記の入門者向けの内容です。 | 初級同様に制限されておらず併願受験も可能。 |
合格基準 | 70% (100点満点で70点以上) |
70% (100点満点で70点以上) |
合格発表 | 受験後すぐに合否が分かる | ペーパーテスト:期日、方法は商工会議所ごとに異なります。 インターネット試験:受験後すぐに合否が分かる |
受験料 | 2,200円(税込) | 2,850円(税込) |
簿記初級は、ネット試験で随時受験が可能です。そのため、統一で決められた試験日はありません。
試験範囲が簿記3級と比べて狭いため試験時間も短く、受験料もやや安いことが特徴です。
尚、簿記3級・簿記2級でも簿記初級と同様に、2020年12月より統一試験方式に加え、ネット試験方式が導入されました。
のため、これら2つの等級も随時受験可能となっています。
また、ネット試験の実施に伴って2021年度実施の試験からは、簿記3級の試験時間が60分へ変更になりました。
試験範囲なども変更になる場合があるので、前もって公式ホームページで詳細を確認しておくことが大事です。
簿記3級と簿記2級・簿記1級との違い
ここまで簿記初級と簿記3級の違いを解説してきましたが、簿記3級と簿記2級・簿記1級との違いも簡単に紹介します。
等級 | 簿記3級 | 簿記2級 | 簿記1級 |
---|---|---|---|
出題範囲 | 商業簿記 | 商業簿記、工業簿記 | 商業簿記・会計学 工業簿記・原価計算 |
試験時間 | 60分 | 90分 | 180分 |
試験方式 | 指定会場でのペーパーテスト もしくはネット試験 |
指定会場でのペーパーテスト もしくはネット試験 |
指定会場でのペーパーテスト |
合格率(平均) | 50%前後 | 20%前後 | 10%前後 |
試験のレベル | 会計、経理業務の基礎知識。初学者にも学びやすい | 企業の経理として実務に活かせるスキル・知識。就職や転職で求められやすい | 高度な会計知識が求められ、税理士や公認会計士へのステップアップも視野に入る |
等級が上がるにつれて出題範囲が広がり、求められる会計スキル・知識も高度なものとなっていきます。
簿記2級まで取得すれば就職・転職で活かしやすくなり、簿記1級まで取得すれば税理士や公認会計士といった国家資格の取得も視野に入ってきます。
将来的に経理や会計にかかわる仕事に就きたいと考えている方は、まず入門レベルの簿記初級や簿記3級から取得を目指し、2級・1級とステップアップしていくのも一つの方法でしょう。
関連記事 簿記の難易度、合格率、必要な勉強時間
簿記初級(旧簿記4級)の合格率・難易度は?
合格率は平均60%前後!難易度は高くない
受験する際に最も気になるのが合格率ではないでしょうか。
簿記初級の合格率は平均60%前後と比較的高い水準となっています。そのため、難易度も高くない試験といえるでしょう。
簿記3級の合格率と比較してもやはり初級の合格率の方が高い傾向が見られます。
公式サイトで合格率が公表されていますので、簿記初級と簿記3級の合格率を比較して見てみましょう。
まずは、簿記初級試験の合格率です。
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2022年度(2022年4月1日~2023年3月31日) | 3,353人 | 2,062人 | 61.5% |
2021年度(2021年4月1日~2022年3月31日) | 3,644人 | 2,341人 | 64.2% |
2020年度(2020年4月1日~2021年3月31日) | 3,988人 | 2,516人 | 63.1% |
2019年度(2019年4月1日~2020年3月31日) | 4,284人 | 2,545人 | 59.4% |
2018年度(2018年4月1日~2019年3月31日) | 4,182人 | 2,421人 | 57.9% |
半数以上が見事合格している状況なので、比較的簡単な試験といえるでしょう。
簿記3級との比較
簿記初級のレベルをより理解するために、簿記3級試験と合格率を比較してみましょう。
簿記初級はネット試験のため、年度ごとに合格率が発表されていますが、簿記3級の合格率は統一試験(ペーパーテスト方式)は試験ごとに公表されています。
回 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
第163回(2023年2月26日) | 31,556人 | 11,516人 | 36.5% |
第162回(2022年11月20日) | 32,422人 | 9,786人 | 30.2% |
第161回(2022年6月12日) | 36,654人 | 16,770人 | 45.8% |
第160回(2022年2月27日) | 44,218人 | 22,512人 | 50.9% |
第159回(2021年11月21日) | 49,095人 | 13,296人 | 27.1% |
第158回(2021年6月13日) | 49,313人 | 14,252人 | 28.9% |
第157回(2021年2月28日) | 59,747人 | 40,129人 | 67.2% |
第156回(2020年11月15日) | 64,655人 | 30,654人 | 47.4% |
第154回(2020年2月23日) | 76,896人 | 37,744人 | 49.1% |
※2020年6月14日開催予定の第155回試験は中止となりました。
大学入試の際などに役立つこともあり、3級から受験者数が爆発的に増加しています。
簿記初級は3級と比較して出題範囲が限られているため、比べると難易度が低く、合格しやすくなっています。
初めて簿記を学ぶ方は、まずは問題に慣れる意味も込めて初級から挑戦してもみてもいいかもしれません。
簿記初級を取っても意味ない?
簿記初級は、しばしば「取っても意味がない」と言われることがあります。しかし、会計知識の入門として取得に意味がないということはありません。
ここでは、意味がないと言われる理由を解説します。
簿記初級を取っても意味がないと言われる理由
知名度が低く、就職や転職で評価されづらい
経理職などへの就職・転職で評価の対象となるのは、簿記2級からといわれています。
また、資格としては抜群の知名度を誇る簿記ですが、初級が存在することを知らない人も多いようです。
そのため、簿記初級を取得しても意味がないという声が多く聞かれます。
実際に経理職の求人を確認すると、簿記2級以上の保有を応募の条件としている求人が多い傾向にあります。
簿記は社会人なら知っておきたい会社間のお金の流れの知識を証明する資格のため、経理以外への就職・転職でも評価されます。そういった場合も、少なくとも簿記3級は取得してしておきたいところです。
そのため、簿記初級の取得で就職活動を有利に進めたいと考えている方には意味のない資格といえるかもしれません。
未経験者歓迎の求人などに応募する際に、会計知識を身につけ始めたことをアピールしたい場合などは、熱意を評価される可能性もあるでしょう。
そのため、まったく役に立たないとはいえません。
ですが、就職・転職に活かすことを目的に簿記初級の取得を考えている方は、簿記3級からの受験を考えてみても良いかもしれません。
簿記初級を取得するメリット
上位の級を取得するための基礎が学べる
簿記初級は比較的難易度が低く、初心者が習熟度をチェックするためにはうってつけの資格といえます。
取得することで、上位の級を目指していく基礎を身につけることができるというのは簿記初級のメリットといえるでしょう。
簿記は会計の専門知識が必要な資格です。そのため、まったくの未経験から取得を目指すことに高いハードルがあると感じる方も少なくありません。
学習の途中で挫折しないためにも、最も近いゴールとして簿記初級を取得を目指すというのも有効な手段になります。
ゆくゆくは簿記1級や、税理士、公認会計士などを目指していきたいと考えている方が、足がかりとして学び始めることに大変適しています。
簿記初級は独学で取得を目指せる?
簿記初級は、簿記資格の中でも合格率が高く、独学でも目指しやすい資格です。
しかし、会計の知識は必須のため、何も勉強せずに合格できるほど簡単ではありません。
テキスト、問題集でしっかりと知識を身につけてから挑む必要があります。
また、簿記初級の試験範囲は簿記3級と重複している部分も多くありますので、簿記3級の解説動画やアプリなども活用できるでしょう。
簿記3級も簿記初級と同様に独学で取得する方も多い資格ですので、独学に適した教材も多く見つかるでしょう。
独学で簿記初級へ合格できれば、簿記3級を取得できるレベルに近しい実力を身につけられているはずです。
そのまま簿記3級への合格を目指してみても良いでしょう。
さらに詳しく 簿記初級(旧簿記4級)の学習におすすめのテキスト
簿記初級(旧簿記4級)の勉強方法
テキストで概要を理解し、問題集を解くことで知識を定着させる
簿記初級の難易度は高くはありませんが、会計に関する専門知識が必要になります。会計について初めて学ぶ方はテキストを通読し、簿記の仕組みや流れをしっかりと理解しましょう。
また、簿記初級試験でも簿記3級以降の試験で必要になる仕訳、試算表などの実践問題が出題されます。
計算力は問われませんが、解法を理解していないと得点することは難しいでしょう。
そのため、まずテキストで流れを理解した上で、問題集を繰り返し解いて問題に慣れておくことをおすすめします。
さらに詳しく 簿記初級(旧簿記4級)の学習におすすめのテキスト
簿記試験を主催する商工会議所では、簿記初級のサンプル問題を公開しています。
まずはこちらからどんな内容が出題されるか確認してみてはいかがでしょうか。
毎日続けて学習することが大切
簿記初級の検定日は試験会場となる施行機関が定めます。
定められた日であれば一年中受験が可能なため、自分でスケジュールを立てて学習を進められます。
ただし、簿記の勉強は流れを理解し、回答に必要な作業を身につけるためにも継続しておこなう必要があります。
休日にまとめて勉強するのではなく、短時間であっても毎日こつこつと続けることが大切です。
試験を受ける目標日を設定する
簿記初級の試験はネット試験で実施されているため、いつでも受験できることがメリットです。
しかし、いつでも受けられるからこそ、受験を後ろ倒しにすることも容易です。
そのため、いつまでも勉強が進まずに受験の準備が整わないこともあるでしょう。
簿記初級に合格するために、勉強を始める前にいつ試験を受けるかの予定日を決めておき、そこから逆算して学習計画を立てることをおすすめします。
スケジュールが明確になり、どれくらいのペースで勉強すればいいのかがわかるため、学習に対するモチベーションも下がりづらくなるでしょう。
パソコンの操作も事前に確認する
簿記初級の試験はパソコンを使っておこなわれるので、パソコン操作が苦手な方は事前に慣れておく必要があります。
公式サイトには、試験問題のサンプルが掲載されているほか、インターネット試験の操作体験もできるようになっているので、一度確認しておくとよいでしょう。
簿記初級(旧簿記4級)の学習におすすめのテキスト
また、公式サイトでは、簿記初級を学ぶための2冊のテキストが取り上げられています。
こちらでご紹介しますので、テキストを選ぶ際の参考にしてください。
土日で合格(うか)る日商簿記初級:中央経済社
日本商工会議所公認のテキストで、資格参考書で有名な中央経済社が出版しています。
1,400円程度で購入できる比較的安価なテキストで、オリジナル模試が付属しているのが特徴です。
薄すぎず厚すぎないボリュームで初学者でも最後までやり通せるとされています。
簿記検定の合格実績でトップクラスの「資格の大原」の講師陣が長年の経験を踏まえてやさしく解説しており、初学者の方でもわかりやすいでしょう。
スッキリわかる日商簿記初級:TAC出版
大手予備校である「資格の学校TAC」が出版している簿記初級用のテキストです。
ネコのキャラクターが登場するわかりやすさと読みやすさで大人気のシリーズだそうです。
1,000円程度で購入できるこのテキストには、イラストや図表が多く用いられており、本文にもストーリーがあるためイメージしやすい造りになっているそうです。
また、テキストと問題集が一体型になっているので、知識をインプットしたあとすぐに問題を解くことができます。
簿記を目指せるおすすめスクール
大栄のオンライン講座(通信)
挫折させない通信講座!通学のような手厚いサポート!
スクールホームページ:
>>大栄のオンライン講座
ヒューマンアカデミー/通信講座(通信)
試験の頻出ポイントをバランスよく学び、無理なく合格を目指す
スクールホームページ:
>>ヒューマンアカデミー/通信講座
産業能率大学 通信教育課程(通信)
通信制トップクラスの卒業率72.8%!
スクールホームページ:
>>産業能率大学 通信教育課程
資格スクール大栄(通学/全国)
試験合格に絶対の自信!資格スクール大栄でキャリアを切り拓く!
スクールホームページ:
>>資格スクール大栄
監修者プロフィール
公認会計士
有限責任あずさ監査法人のパートナー(2018年退任)
さくま会計事務所の所長(現任)
監査法人MMPGエーマック代表社員(現任)
フェリス女学院の監事(現任)
神奈川大学の非常勤講師(現任)
さくま式簿記講座の講師(現任)