宅建士とはどのような資格?
国家資格である「宅地建物取引士」
宅建士とは、宅地建物取引業法に基づいた国家資格であり、正式名称を宅地建物取引士といいます。
宅地建物取引業者で必要な資格
宅建士は主に宅地建物取引業者で必要な資格です。
宅地建物取引業者とは一般的に不動産会社・不動産業者と呼ばれており、自ら売主として土地やマンションなどの建物を分譲したり、中古不動産の売買の仲介(媒介)や賃貸物件の仲介(媒介)などをおこないます。
公正な取引のために必要な情報を提供
マンション購入などの不動産取引は高額になることが多く、また、不動産取引に慣れている方はそう多くないため、専門知識や経験のない一般の方たちは宅建業者と比べると弱い立場になることがあります。
そのような情報格差を防ぎ、不動産取引を公正におこなうため、不動産業者は宅建士を通してお客様に必要な情報を提供する必要があります。
毎年20万人前後が受験する人気資格
宅建士になるための試験は、国土交通大臣が指定した試験機関(一般財団法人不動産適正取引推進機構)によって年一回実施されます。
年齢・性別・学歴・国籍を問わずどなたでも受験でき、毎年20万人前後が受験する人気の資格です。
合格率は毎年15~17%程度で、簡単な試験ではありません。
宅建士になるには登録が必要
試験に合格しただけでは宅地建物取引士になることはできません。
試験合格後、都道府県知事に対して申請し、資格登録を受ける必要があります。
その後、当該知事の発行する宅地建物取引士証の交付を受けることで宅地建物取引士として認められます。
資格がなければできない職務がある
では、難しい試験を受け、登録申請の手間をかけてまで宅建士になる人が多いのはなぜでしょうか。
実は、宅建士の資格がなければできない法定職務があります。
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宅建士の3つの法定職務
宅建士にしかできない法定職務を以下に紹介します。
- 重要事項の説明
- 重要事項説明書(35条書面)の記名・押印
- 契約書面(37条書面)への記名・押印
どれも不動産取引に欠かせない重要な業務であり、不動産会社は宅建士がいないと取引をまとめることができません。
それぞれの仕事について以下で詳しく説明します。
(1)重要事項の説明
宅建士にしかできない仕事の1つ目は重要事項の説明です。
不動産会社は買主や借主となる消費者に対して、売買契約や賃貸借契約を締結する前に、宅建士を通して重要事項説明書を交付し重要事項について説明する必要があります。
素人ではわからない重要事項を説明
日常生活でよく取引する商品であれば、消費者側も知識があるため注意深く観察することである程度の状態を把握できます。
しかし、土地や建物の場合、状態や権利関係など外から見ただけでは判断できないことが多くあります。
例えば、法的な所有者は誰なのか、実際の土地建物の状態、大きさ、設備、法的な制約や制限(例:建て替えができるのかどうか)、抵当権の設定など、購入や賃貸の決断するために必要となる重要事項が数多くあり、それらを説明するのは宅地建物取引士の仕事です。
契約後のトラブルを防ぐためにも、メリット・デメリットの両面を消費者に知ってもらう重要な職務です。
説明内容
重要事項説明書には以下の内容が細かく記載され、宅建士はそれらすべてを説明する義務を負います。
- 登記された権利の種類や内容
- 登記されている名義人
- 所有者の氏名
- 飲料水・ガス・電気の供給施設
- 排水施設の整備の状況
- 私道に関する負担等に関する事項
- 土地や建物に関する規制
- 災害警戒区域であるか否か
対象の物件がその時点で工事を完了していない場合は、工事完了時の形状や構造などもここで説明します。
また、この重要事項の説明には契約の解除に関する事項や、違約金、物件に隠れた欠陥があった場合の措置など、金銭面に関する説明も含まれます。
重要事項の説明ができるのは宅建士だけ
重要事項の説明ができるのは宅建士だけです。
宅建士が重要事項の説明をする際は、相手方から請求がなくても、宅地建物取引士証を提示しなければなりません。
宅建士が重要事項の説明で不正行為をおこなった場合、当該の宅建士が監督処分(指示処分や業務停止処分など)を受けるほか、使用者である不動産会社も業務停止処分などの対象となります。
(2)重要事項説明書(35条書面)の記名・押印
2つ目は、前述の重要事項の説明の際に用いる重要事項説明書(35条書面)への記名・押印です。
重要事項説明書は、消費者にとって契約するか否かの意思決定に関わる重要事項を記したものです。
宅建士の説明が重要事項説明書の内容と一致していることを証明するために記名・押印が必要とされています。
交付先
重要事項説明書の交付先は下記のとおりです。
- 売買契約の場合:買主
- 賃貸契約の場合:賃借人
- 交換契約の場合:両当事者
物件の売主や貸主については、持ち主として当該物件のことをあらかじめ知っているので重要事項の説明をする必要がないとされています。
(3)契約書面(37条書面)への記名・押印
3つ目は、契約書面(37条書面)への記名・押印です。
宅建士はあらかじめ契約書に目を通し、内容に間違いがないか確認して、記名・押印します。
不動産会社は37条書面を、売買契約、賃貸契約、交換契約などの契約締結後に遅滞なく契約の当事者に交付する必要があります。
交付先
37条書面の交付先は下記のとおりです。
- 売買契約の場合:売主と買主
- 賃貸契約の場合:賃貸人と貸借人
- 交換契約の場合:両当事者
宅建業者が自ら当事者となる場合は相手方に交付します。
不動産会社は契約書面(37条書面)を作成した際、宅建士に記名押印させなければなりません。
ちなみに37条書面は、35条書面とは違い宅建士を通して説明する義務はなく、宅建士の記名・押印があれば問題ありません。
宅建士の主な仕事内容
宅建士の多くは不動産会社(宅地建物取引業者)で活躍しています。
不動産会社の主な仕事は下記のとおりです。
- 不動産の売買・交換
- 不動産の売買・交換の代理・媒介
- 不動産の貸借の代理・媒介
不動産会社は従業者の一定数を宅建士として配置しなければならず、宅建士はなくてはならない存在です。
営業職として契約の場に
多くの宅建士は不動産会社で営業職に従事し、売買契約・賃貸契約・交換契約にたずさわります。
代理、仲介のほか、販売用の不動産の仕入れに関わる場合もあります。
これまでお話ししてきたとおり、契約に際して重要事項の説明をおこなったり、重要事項説明書(35条書面)や契約書面(37条書面)を取扱うのは宅建士の大事な仕事です。
宅建資格が活かせる業界とは?
宅建士は不動産会社のほか、建築業界、金融業界などでも高いニーズがあります。
建築業界
特に成長中の建築会社やハウスメーカーは依頼された建物を建築して依頼主に引き渡すだけでなく、自社で建築した建物を自ら販売することがあります。
物件を販売するためには宅建業の免許が必要になり、売買契約を結ぶにあたっては重要事項の説明や契約書への記名押印が欠かせません。
そのため宅建士の資格取得者が必要になります。
金融関係
銀行、信用金庫、農協などの金融関係でも、宅建士の需要があります。
融資業務においては、不動産を担保に融資の判断をすることになるため、不動産に対する適切な知識や鑑定力が必要になります。
また、直接金融機関に勤務しなくても、今や地方銀行の多くがグループ会社に不動産販売会社を持っており、不動産の知識なくしては銀行業務が成立しないほどの体制ができています。
宅建士の資格を持っていれば、グループ会社でも活躍できることになります。
不動産管理会社
マンションなどの管理業務を担当するのは管理業者の免許を持つ会社になりますが、最近では管理業務の前に不動産を仕入れ、分譲の仲介をし、その後管理を実施するトータルサービスを提供する会社が増えてきています。
不動産の仕入れや売買が業務に含まれる場合は、宅建業の免許と宅建士が必要になります。
一般企業の財務
運用のための物件など、自社で不動産を所有している一般企業でも、不動産の知識を持つ宅建士は必要とされます。
不動産の運用は経営に大きく影響するため、経営計画室など、財務関連の職務から経営に参画できる可能性もあります。
宅建士としてスキルアップを目指すなら
ダブルライセンスがおすすめ
宅建士の資格取得後、さらにスキルアップを目指すならダブルライセンスに挑戦してみるのがおすすめです。
宅建士の資格は単独でも不動産業界、建築業界、金融機関などで有利に働く資格ですが、併せて取得することでスキルアップにつながる相性のよい資格がいくつかありますので下記にご紹介します。
管理業務主任者・マンション管理士
管理業務主任者、マンション管理士はマンションの販売や管理のための資格です。
宅建士、管理業務主任者、マンション管理士の順で資格を取得していくことで、マンションの専門家を目指すことができます。
簿記検定・FP(ファイナンシャル・プランナー)
土地・建物など一生に一度あるかないかの大きな買い物をする際、多くの人は銀行などから借り入れをしたり、ローンを組んだりすることになります。
「この物件を買って、これからの人生は資金的に大丈夫なのか」と不安を覚える方も多くいるでしょう。
簿記やFPを学んでおけば、個々のライフプランニングをもとに今後の財産の動きを予測したキャッシュフローを作成してお客様に安心感を与えたり、購入の決断を促したりするのに役立ちます。
物件を購入した場合の費用効果や利回りについて説明する際にも簿記やFPの資格が有用です。
賃貸不動産経営管理士
賃貸不動産経営管理士とは、賃貸アパートやマンションなど賃貸住宅の管理に関する資格です。
主に下記のような不動産管理業務を担当します。
- 賃料などの受領義務
- 更新業務
- 原状回復などの終了義務
- 賃貸住宅管理に関する重要事項説明、および重要事項説明書の記名・押印
- 賃貸住宅の管理受託契約書の記名・押印
また、管理業者が投資家と管理委託契約やマスターリース契約をする際には、賃貸不動産経営管理士の資格取得者に重要事項説明をさせる必要があります。
重要事項説明を担うことで投資家との人脈が作れるのもメリットの一つです。
将来的には、宅建業と同様に賃貸管理業も免許業となることが予想されており、年々受験者が増えている資格です。
不動産鑑定士
不動産鑑定士は不動産関係の資格のなかでも特に難易度の高い資格で、弁護士・公認会計士と並ぶ三大国家資格の一つといわれています。
全国にわずか8,000人ほどしかいない稀少価値の資格です。
不動産鑑定士は公正・中立の立場から不動産の価値を判断する鑑定評価をおこない、不動産鑑定評価書にまとめます。
不動産鑑定評価書の作成は不動産鑑定士だけに認められた独占業務です。
地価公示などの国の仕事から民間の投資会社までその仕事は多岐にわたります。
宅建士のお仕事【Q&A】
Q1. 宅建士の資格を持つと就活に有利?
A1. 宅建士の資格は就職・転職に有利です。
一番の理由は、不動産業界には宅地建物取引士の設置義務があるからです。
宅建業法では「宅地建物取引業者は、その事務所その他一定の場所(事務所等)ごとに、法定数の成年者である専任の宅地建物取引士を設置しなければならない」と規定しています。
宅建業法上の事務所の場合は従業員数の5分の1以上の宅建士が必要です。
例えば、従業者5名の事務所の場合は最低でも宅建士1名、従業員6名の場合は宅建士2名が必要になります。
もし退職や不慮の事由などで宅建士の最低設置人数を満たせなくなった場合は、2週間以内に必要な措置を講じなければなりません。
また、これまでお話ししてきたとおり、不動産取引において重要事項の説明や重要事項説明書の記名・押印、契約書面への記名・押印ができるのは宅建士だけです。
不動産業界は宅建士の確保が必須であり、宅建士の資格取得者には高いニーズがあります。
また、宅建士の資格は不動産業界だけでなく建築業界や金融業界でも人気があり、就活の際に有利になります。
Q2. 宅建資格取得により年収はアップする?
A2. 実際に年収アップを狙える可能性は高いです。
不動産会社(宅建業者)に就職した場合、宅建士の資格を持っていると毎月5,000円~30,000円程度の資格手当がつくことが多く、年収にして6~30万円ほどの収入アップにつながります。
また、不動産会社では宅建士の資格をキャリアアップの要件としているところが多いようです。
昇進したり役職に就いたりすることで給与面の待遇が向上します。
宅建士の資格は不動産会社に限らず、建築業界や金融業界でも役立ちます。
資格を活かして活躍すれば収入アップが期待できるでしょう。
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監修者プロフィール
1986(昭和61)年、日本大学法学部卒業。
1987(昭和62)年に宅建試験に合格。
1989(平成元)年に大手資格専門学校にて宅建士講座を担当。
講師歴は30年を超える。
主催する『宅建ダイナマイト合格スクール』で、「おーさわ校長の宅建受験講座★バブルの香り」を運営。
宅建試験の問題集などをはじめとした著書も多数。
【宅建ダイナマイト合格スクール】
大澤 茂雄氏を中心に運営されている宅建受験講座団体。
2004年(平成16年)に結成。
宅建ダイナマイト受験倶楽部から、2012年(平成24年)に「宅建ダイナマイト合格スクール」に名称変更し、現在に至る。
わかりやすい講義で人気を博している。