経済産業省が公表する「DXレポート」とは?企業必読のレポートについてわかりやすく解説します
経済産業省は2018年以降、DX推進の課題や対策について、その時々に合わせた検証内容をレポート化しています。企業が必読すべき「DXレポート」は、どのようなことが記されているのでしょうか?わかりやすく解説します!
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公開:2022-06-27 10:00 (最終更新:2024-04-22 17:00)
DXレポートとは?
経済産業省が公表する「DX化の構想と対策」についてのレポートのこと
DXレポートは、経済産業省が公表している「DX化の構想と対策」についてのレポートのことをいいます。
経済産業省監督のもと、
- デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会
- デジタル産業の創出に向けた研究会
- デジタル産業への変革に向けた研究会
- コロナ禍を踏まえたデジタル・ガバナンス検討会
以上の研究会や検討会にて、日本企業がDX化を進める課題について討論。
レポートでは主に、日本がDX推進を急がなければならない理由とDX推進にあたっての方法や対策をまとめています。
これまでに公表されたDXレポート
記事執筆現在、公表されているDXレポートは以下の4つです。
・DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~
老朽化したシステムを使い続けるリスクとDX化の課題についてまとめたレポート
・DXレポート2 中間とりまとめ
DX推進を加速させるための短期・中長期の取り組みについてまとめたレポート
・DXレポート2.1(DXレポート2追補版)
企業とデジタル産業構造を変革するにあたっての課題と推進方法についてまとめたレポート
・DXレポート2.2
日本企業のDX推進の現状と、デジタル産業宣言についてまとめたレポート
DXレポートを公表するに至った理由
経済産業省がDXレポートを公表するに至った理由として、
- 経営層のDXへの理解不足
- 老朽化した既存システム(レガシーシステム)の継続使用
- 新しいデジタル技術を導入しても、活用が限定的
以上のように、「企業のDX化が進まず、ビジネス変革につながっていない」ことが挙げられます。
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DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~(2018年9月公表)
「2025年の崖」とは
経済産業省は、日本でDX化が進まなかった場合、”2025年以降、最大12兆円/年(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性”があると発表しました。
これを「2025年の崖」と名付け、レガシーシステム放置による弊害について警鐘を鳴らしています。
レガシーシステムを使い続けると、以下のようなリスクがあります。
- デジタル社会に対応できない
- 維持管理のコストが高騰
- サイバー攻撃、事故、災害によるデータ流出や滅失の高リスク
これは、企業成長ができないことはおろか、企業の信用問題にもつながりかねません。
既存システムの見直しは必須といえるでしょう。
DX実現シナリオを提示
2025年までに一定のDX化が進んだ場合には、2030年、実質GDPを130兆円超まで押し上げることができると試算。
2018年のDXレポートでは、DX実現に向けてのシナリオとして、以下のスケジュールと実行内容を掲げています。
①2018~2020年:既存システムの状態を見える化し、システム刷新についての計画を立案
②2021~2025年:経営戦略に基づいた計画的なシステム刷新を段階的に実行
2022年現在、①の段階にすら至っていない企業が多くあるのは大きな問題といえるでしょう。
DXの推進に向けた対応策を提示
1990年代より、世界中の企業でIT化が進んできました。
その頃から30年が経過しようとしている今、レガシーシステムと呼ばれる、老朽化および長年の増改修により煩雑化した既存システムの問題が浮上しはじめています。
2018年のDXレポートでは、以下のDX推進対応策を提示しています。
- システム状況の見える化
- システム刷新や、新たなデジタル技術を導入するにあたっての計画立案
- 既存システムの取捨選択と情報を共有できるプラットフォームの構築
- システムを発注するユーザ企業と受注するベンダー企業の新たな関係性の構築
- DX人材の育成と確保
特に、「DX人材の育成と確保」は最も重要なポイントです。
DXを理解し、最新のデジタル技術に適応できる人材を用意できるかどうかが、DX化成功の鍵を握るといえます。
出典 経済産業省/DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~
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DXレポート2 中間とりまとめ(2020年12月28日公表)
DX加速シナリオを再提示
2018年のDXレポート発表後、DX推進はレガシーシステムの刷新のことであるように誤解を生むなど、一部レポートの意図と異なる解釈がなされてしまう結果となりました。
また、2020年のDXレポート2発表時点では、DX推進未実施企業およびDX推進が散発的にとどまる企業が全体の9割に上ることが明らかになります。
さらに、新型コロナウイルスの発生により、テレワークやデジタルサービスの必要性が一気に伸長。
DX推進は緊急性を帯びるものへと変化しました。
そこでDXレポート2では、「DXの加速に向けた企業のアクションと政策について」において、推進プランを提示しています。
DXの加速に向けた企業のアクションと政策
DXレポート2では、DX推進対応策について、短期・中長期的な内容として練り直したものを公開。
企業が取るべきアクションと、政策として支援すべきことが記載されています。
超短期
対応策 | 企業 | 政策 |
---|---|---|
DX化にかかわるサービスの活用 |
・既成のデジタル製品やサービスを導入 ・業務効率化という成功体験を起点とした、企業変革転換 |
・中小企業のデジタル化推進施策の展開 ・デジタルツール導入の支援 |
DXの認知と理解 | ・DXレポートなどを参考とした、DXについての深い認知 |
・DX化成功事例の提供 ・DXの知見を集められる場の提供 |
短期
対応策 | 企業 | 政策 |
---|---|---|
DX推進体制の整備 |
・DXのかじ取りを担う関係者の共通理解とガバナンスの確立 ・イノベーション創出に向け、多様な人材とコラボレートするための環境を整備(リモート環境など) |
・DX推進をはじめる企業の体制整備の支援 |
DX戦略の策定 | ・顧客視点で業務やサービスをデジタル化するために見直しを実施 |
・DX成功事例の提供により、企業のDX戦略立案を支援 ・DX認定制度の普及 |
DX推進状況の把握 | ・DX推進指標などを活用し、推進状況を定期的に把握 |
・DX推進指標の普及 ・企業内システムの状況把握のための評価指標とシステム変革の手引書を策定 |
中長期
対応策 | 企業 | 政策 |
---|---|---|
産業変革のさらなる加速 |
・社会の変化を把握し、迅速に製品やサービスに反映させるためのシステム、ソフトウェア開発の内製化を実施 ・対等な立場でDX支援をしてくれるベンダー企業とのパートナーシップを構築 |
・税制支援を中心としたDX推進支援の実施 ・情報システム、モデル取引、契約書の活用推進 ・ユーザー企業とベンダー企業の共創の推進 |
デジタルプラットフォームの形成 |
・他社と競合しない協調領域を、共通プラットフォームを形成することで業界全体でシェア ・協調領域にかけていた投資額を減らし、本業(競争領域)に配分する投資余力循環を確立 |
・企業間での協調領域プラットフォーム化支援(利害調整やノウハウの構築、システム設計など)の実施 |
DX人材の確保 |
・ジョブ型雇用を見据えた人事制度の構築を検討し、多様な人材が参画できる環境を形成 ・DX人材を確保、育成するための評価制度やリスキリング(社員の再教育)の仕組みづくり |
・人材の流動性確保(企業間相互融通や社外機関を通じてのスキル向上など) ・人材スキルの見える化やマッチングができる仕組みづくり ・人材が常にスキルをアップデートできる環境を整備 |
※経済産業省 DXレポート2(サマリー)より一部抜粋
出典 経済産業省/デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会の中間報告書『DXレポート2(中間取りまとめ)』を取りまとめました
参考
経済産業省/「情報処理の促進に関する法律」に基づくDX認定制度のWeb申請受付を開始します
デジタル経営改革のための評価指標(「DX推進指標」)を取りまとめました
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DXレポート2.1(2021年8月31日公表)
ユーザー企業とベンダー企業の現状と変革に向けたジレンマについて
2021年発表のDXレポート2.1は、DXレポート2で不足していた内容を補足したものです。
DXレポート2.1では、ITシステムを外部に委託する企業(ユーザー企業)と受託するベンダー企業と相互依存の関係を問題視。
このままの関係性が続くと、ユーザー企業はいつまでも自走ができず、IT対応力が低下し、DX推進が停滞。
ベンダー企業は、下請けという薄利多売の影響によって生産性が低下し、新技術への投資ができないおそれがあります。
これでは、デジタル変革に対応するどころか、共倒れになりかねません。
レポートでは、双方がデジタル競争の敗者となってしまう懸念があることを指摘しています。
デジタル産業の姿と企業変革の方向性について
DXレポート2.1では、デジタル産業についても取り上げています。
インターネットを主体としたデジタル社会は変化が激しく、常にデータと最新のデジタル技術を駆使して価値を創出する必要があります。
その価値を生み出すために必要な機能を社会に提供するのが、デジタル産業です。
これからのデジタル産業は、以下の役割を果たすことが求められます。
- 世界規模かつリアルタイムでの価値提供
- クラウドで価値を提供し、環境変化に合わせて常に新しいサービスをアップデートする
- 仲介型プラットフォーム(マルチサイドプラットフォーム)など、新しいビジネスモデルを提供する
つまり、デジタル産業に含まれる企業は、DX化を進めている企業全般といえるでしょう。
業界を問わず、インターネットやデジタルを活用したサービスを展開する企業が、今後のデジタル産業を支えていくとされています。
※経済産業省 DXレポート2.1(概要)より抜粋
変革に向けた施策の方向性について
デジタル産業に分類される企業がDX化するには、それぞれが目指すべき姿を明確にする必要があります。
DXレポート2.1では、以下3つの施策を提案しています。
①デジタル産業指標(仮)の策定
デジタル産業に分類される企業の指標を策定する
②DX成功パターンの策定
DX推進の成功を、事例を基にパターン化して再現性を高める
③変革の加速に向けたその他の取り組み
経済産業省は2021年6月、「半導体・デジタル産業戦略」を統括。
同戦略の推進は、DXレポート2.1の内容の実現を大きく加速させる見通しです。
出典 デジタル産業の創出に向けた研究会の報告書『DXレポート2.1(DXレポート2追補版)』を取りまとめました
参考
経済産業省/「半導体・デジタル産業戦略」を取りまとめました
デジタル産業指標
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DXレポート2.2(2021年7月13日公表)
DXレポート2.2は、2022年7月13日に開催された「第2回 コロナ禍を踏まえたデジタル・ガバナンス検討会」の報告資料として公表されました。
今回のレポートは、日本企業のDX推進状況と、デジタル産業宣言の策定についてを取り上げています。
経営者が具体的な方向性やアクションを提示する必要性が記されたレポートの要点を、以下にまとめました。
DX推進目的の理解不足を指摘
DXレポート2.2では、DX推進指標に基づく自己診断実施企業が増加傾向にあり、DX推進に取り組む意識は高まりつつあるという報告がなされています。
しかし、DX推進の中身として、既存ビジネスの業務効率化を目的した内容が多数という結果も出ています。
これは、DX推進=デジタル導入による省力化・効率化という認識にとどまっているという表れです。
「新規ビジネスを創出し、収益向上を目指すための取り組み」という、根本的理解が不足しているといえるでしょう。
※経済産業省 DXレポート2.2(概要)より抜粋
DX推進に成功している企業は、企業のトップが行動指針を具体的に提示していることが特徴です。
経営者がDXを理解し、経営戦略のみならず、社員が取るべき具体的な方向性を落とし込み、エンゲージメントを高めているのです。
またレポートでは、1企業単体では正しいDX推進の認識や行動が広まりづらいという点も指摘しています。
行動指針を産業全体へ広げ、同志の企業が切磋琢磨しながらDX推進を図ることが望ましい状況にあるでしょう。
デジタル産業宣言の策定
上述の行動指針の浸透に向け、経済産業省は「デジタル産業宣言」の策定を進めています。
企業の経営者が、DX推進によって新規ビジネスを創出していくという決意表明を「宣言」という形で外部に発信。産業全体へのアプローチにつなげていくというものです。
なお、宣言には、以下5つの項目の内容が集約されています。
- ビジョン駆動…過去にとらわれず、新しいビジョンに向けて動く
- 価値重視…コストではなく、新しく創出される価値を重視する
- オープンマインド…自社内で完結せず、外部ともつながることでより大きな価値を得る
- 継続的な挑戦…失敗を許容し、試行錯誤を繰り返しながら動き続ける
- 経営者中心…DX達成に向け経営者が牽引し、全員が貢献する
この宣言は、経営者自らの考えや信念の追記も可能としています。
経営者がDXについて理解し、率先して推進することを狙いとした宣言といえるでしょう。
※経済産業省 DXレポート2.2(概要)より抜粋
経済産業省は今後も、施策の検討状況や進捗についてまとめた内容を、DXレポートとして公表する可能性があります。
企業はレポートを随時チェックし、DX推進の指針として取り入れるとよいでしょう。