DX推進のためにはリスキリングが不可欠!関係性を詳しく解説!
DXとセットで語られることが多い「リスキリング」。DX推進には欠かせない存在とされています。一体どのような関係性があるのでしょうか?リスキリングのメリットと併せて、詳しく解説します!
公開:2022-06-07 15:00 (最終更新:2024-04-22 17:00)
企業のDX化とはどのようなものか?
企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進は、企業のDX化を目指すためにおこなわれています。
では、企業のDX化とは、どのようなものなのでしょうか?
企業のDX化は大別すると以下の3つの内容に分けられます。
デジタル技術の活用により業務の効率化を図る
まず第一に、業務システムやツールを導入・更新することが挙げられます。
最新のデジタル技術を用いた業務システムやツールが活用できると、業務の時間短縮やスピードアップが実現。効率的な仕事ができるようになります。
なお、業務効率化を目的としますので、社員全員にデジタル活用が求められるのが特徴的といえるでしょう。
デジタル技術とビッグデータを用いて事業戦略を立てる
2つめは、事業戦略立案のために、デジタル技術とビッグデータを用いることです。
デジタル時代とも呼ばれる現代。企業が優位性を保つためには、広域で膨大な量のデータを分析し、事業戦略を立てる必要があります。
ビッグデータをAIによって解析するには、AI開発ができるエンジニアおよびデータサイエンティストの獲得・育成が欠かせません。
また、企業のトップをはじめとする経営陣がDXに対する深い理解を持つことも重要です。
デジタル技術の活用を前提とした経営や組織のあり方を考えるうえで、必要不可欠な知識といえます。
商材やサービスをデジタル化する
3つめは、企業が取り扱う商材やサービスをデジタル化することです。
インターネットの活用が当たり前となっている現在、利便性を重視したネット上でのサービス展開はもはや外せません。
むしろ、企業の売上増加のために、積極的な展開が望まれるところです。
以上のことから、クラウドシステムなどを開発・運用できるIT人材が必要なことは明らかでしょう。
システム開発を外部に発注している場合でも、IT知識がなければ的確な指示を出すことはできません。
自社社員のITスキル習得がポイントです。
関連記事:
DXとは何か?なぜDX推進が企業に求められているのかをわかりやすく解説!
DX推進と併せて推奨されるリスキリングとは?
企業が意図的にDX人材を育成すること
DX推進と併せて推奨されているのが「リスキリング」です。
リスキリングとは、企業が経営方針や事業戦略にもとづいて、意図的にDX人材を育成することを意味します。
既存社員の大幅なスキルチェンジによって、DX推進をおこなうという狙いがあるリスキリング。
生産性の低い業務を担当する社員の能力再開発を実施し、生産性の高い業務への転換を目標とします。
リスキリングのはじまり
リスキリングは2008年、社員の学び直しの必要性に気づいた海外の企業からはじまりました。
リスキリングの先駆者であるAT&T(アメリカ)です。
デジタル技術の発展により、既存スキルのみでは10年後に仕事がなくなる社員が半数に及ぶことを察知したAT&T。
リスキリングプログラムを開発し、これまで10万人の社員に能力再開発を施しました。
このように、海外はすでにリスキリングの取り組みがはじまり、社員の再教育によるDX推進が浸透しています。
しかしながら、日本は2021年からリスキリングの重要性を打ち出した(※)ばかり。世界から大きく後れを取っているのが現状です。
※2021年、経済産業省がリスキリング政策に向け検討会をスタート
関連記事:
リスキリング国内導入事例22件を紹介!企業がリスキリングを導入する目的も解説
DX推進にリスキリングが欠かせないといわれる理由
「DX化=リスキリング」といっても、決して大げさではないほどに密接しているDXとリスキリング。
DX推進にリスキリングが欠かせないといわれる理由には、以下3つのことが関係します。
DX人材を新たに獲得する難度が高い
1つめは、採用市場にいるDX人材が少なく、新たに獲得する難度がとても高いことにあります。
2022年10月発表、同年9月分ハローワーク一般職業紹介状況によると、DX人材が含まれる「情報処理・通信技術者」の新規求人倍率※は、3.56倍(パート雇用を除く)という結果が出ています。
2022年4月分の新規求人倍率が2.51倍でしたので、DX人材の不足が急激に進んだ状況といえるでしょう。
以上の結果から、求人市場は今後もより一層売り手市場化することが考えられます。
DX人材獲得の動きは、競合企業よりも高給を提示できるかどうかが焦点となるでしょう。
さらに、新たにDX人材を採用する場合は、膨大な採用経費がかかります。
求職者の登録を多数抱える有名な有料求人媒体への掲載費用は1ヶ月あたり数十万円。
人材紹介(転職エージェント)経由の採用は、紹介料が被雇用者の年収の30~40%程度の相場といわれています。
つまり、1名を採用するための費用が、100万円を超える可能性もあるのです。
人件費や広告費に潤沢な予算を割けない企業は、苦戦を強いられることが予想されます。
費用を抑えるためにも、リスキリングによる社員のDX人材育成を重要視すべきといえるでしょう。
※新規求人倍率…その月にハローワークに申し込んだ求職者数と、同月にハローワークで受け付けた求人数から算出された倍率。
出典
厚生労働省/一般職業紹介状況(令和4年4月分)について
一般職業紹介状況(令和4年9月分)について
業務のデジタル化により失われる仕事がある
2つめは、DX化により業務の効率化が進むと、失われる仕事があるためです。
とある建設会社では、以前、書類のデータ入力を30名体制でおこなっていました。
DX推進の一環で、書類を自動で読み込み、データ化するデジタル技術を導入。
データ入力業務を削減した結果、現在はチェック人員1名体制で対応することができています。
このように、DX化は業務時間削減および人員削減によるコストパフォーマンスの向上をもたらします。
しかしその反面、削減された業務に従事していた社員は、仕事がなくなるおそれが出てくるでしょう。
余剰になった社員を活かすためにも、リスキリングでDX推進を担う人材へとスキルチェンジすることが推奨されているのです。
参考 AI inside
進化するデジタル技術に適応できるスキルが必要
3つめは、デジタル技術の進化スピードがめまぐるしく、常に最新のデジタル技術に適応できるスキルが求められることが挙げられます。
今は新しいシステムも、いつしかレガシーシステムと呼ばれる老朽化したシステムへと移行します。
レガシーシステムを使い続けることは、企業の動きをストップさせる大きな障害になる場合もあるでしょう。
企業成長を止めないためには、新しいデジタル技術を活用したシステムへの刷新が不可欠です。
そして、デジタル技術が刷新されるということは、並行して新しいデジタル技術の知識やスキルも必要になるということです。
社員が常時、最新のスキルを習得するために、リスキリングは継続して実施されるべき教育といえるでしょう。
参考 経済産業省/DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~(サマリー)
関連記事:
リスキリングとは
リスキリングを有効活用するメリットとポイント
リスキリングの最大のメリットは「生産性向上」
既存社員のリスキリングによりDX人材が輩出できると、企業のDX化が大きく前進します。
DX化が進めば、業務効率化によるコスト削減はもちろんのこと、新規事業創出のチャンスも出てくるでしょう。
さらなる売上増加、企業規模拡大につながる可能性が高まります。
リスキリングの随一のメリットは、今ある戦力による、生産性の向上および生産性の最大化にあるといえるでしょう。
DX推進に乗り遅れたことで事業が失速した有名企業の倒産・破産も複数発生しています。
企業の成長を停滞させないために、早急なリスキリングとDX推進の着手が求められているのです。
参考 総務省/デジタル・トランスフォーメーションによる経済へのインパクトに関する調査研究の請負(株式会社 情報通信総合研究所)
社員のモチベーション維持がポイント
リスキリングは、社員による自主的な学びではなく、企業からの指示による学び直しです。
モチベーションが上がりづらい環境下の学習ということが、懸念点として挙げられます。
社員の積極的な学びを促すには、業務と学習の両立の難しさなど、ネックになる部分の解消が重要でしょう。
以上の課題解決策として、以下の導入が推奨されます。
キャリアビジョンの明確化
スキル習得後のポジションやキャリアの積み方を明確にする
学習スケジュールや学習進捗の見える化と伴走
管理ツールの導入など、スキル習得に向け、完走できるように寄り添う
社員の相互コミュニケーション
社内SNSなどを開設し、学び直しをおこなう社員同士の交流を図る
インセンティブをつける
資格手当など、スキル習得への対価を付与する
モチベーションを維持できる学習環境の整備が、リスキリングを成功させるポイントになるでしょう。