コミュニケーション力が鍵！利用者との信頼関係を築くまでの道のり

介護職に就いて数週間、利用者との距離を感じた日々

介護職に就いて最初の数週間、私はある利用者様とのコミュニケーションがどうもうまくいかず、焦りを感じていました。ある日、定期的に訪問する利用者のTさん（70代女性）が、いつも無言で私を避けるような態度を取ったり、「うるさい！あっちいけ！」と大声で言われたりすることがありました。
明るく声をかけても何度も大声で言われることがありました。先輩職員に関しては、このような態度をしていないのに、「どうして私の時だけこんなに距離を感じるんだろう」と悩み、自分の仕事への自信を失いかけました。

焦らず待った結果、Tさんからもらった折り鶴

そんな中、先輩職員からのアドバイスがありました。「まずは焦らず、Tさんが話かけてくれるタイミングが来るから、慌てず待ってみな」と。私はTさんがどのような日々を過ごしているのか、何を考えているのかを知ろうと努めることにしました。ですが、結局わからないまま、初めて夜勤業務を担当する日が来てしまいます。
Tさんは、こだわりが強くベットの位置やタンスの位置が少しでもずれていると、激怒する性格の方です。Tさんの就寝介助をさせていただくと、「ちょっと待って」とTさんに言われ、「また怒られるのかな...」と落ち込んでいた私にTさんは、折り紙で作った鶴を「これ、あげる」とプレゼントしてくれました。
あまりの嬉しさに自分は、涙がでそうになったのです。

小さな贈り物に込められた信頼

介護歴9年の私でも、最初の数年は試行錯誤の連続でした。Tさんから折り鶴を手渡された日のことは、今でも鮮明に覚えています。介護の現場で信頼を得るというのは、言葉や行動だけでは計り知れない深い部分があることを、この時初めて実感しました。
Tさんにとって折り鶴を作ることは、大切な時間や心のこもった行為だったはずです。その鶴を「あなたに」と渡してくれたことが、どれだけ大きな意味を持つかを理解できたのは、経験を積んだからこそだと思います。信頼関係が築かれる瞬間というのは、派手な演出ではなく、こうした静かで温かい形で訪れるのです。

焦らず待つことの大切さ

介護職として働く中で、一番難しいと感じるのは「自分のペースを抑え、相手のペースに寄り添う」ことです。特に新人時代は、「もっと関係を良くしなければ」と焦ってしまうことが多々ありました。しかし、Tさんからの折り鶴を受け取った時、「慌てて無理に関係を築こうとしなくてもいいんだ」と気づきました。
信頼は相手の心が開くタイミングでしか築けません。そして、そのタイミングを見逃さず、そっと寄り添う姿勢が何より大切です。この経験は、利用者一人ひとりに向き合う介護の基本姿勢を再確認させてくれました。

新人もしくは介護職になりたいと思っている皆さんへ

介護の現場では、利用者さんそれぞれが異なる背景や想いを抱えています。最初は戸惑い、失敗もあるかもしれません。それでも、「寄り添う」という気持ちを持ち続けてください。焦らず、諦めず、利用者さんのペースを尊重し続けることで、必ず心が通じる瞬間が訪れます。
Tさんからの折り鶴は、私にとってその象徴でした。あの小さな贈り物が、私を介護職として成長させ、利用者さんとの信頼関係の重みを教えてくれたのです。これから介護を目指す方には、ぜひその喜びを知ってもらいたいと思います。
介護の仕事は簡単ではありませんが、得られる感動はそれ以上の価値があります。どうか、自分のペースで一歩ずつ進んでいってください。