通信制大学の卒業率が低い理由は?卒業率について説明します!
働きながらでも勉強が出来る通信制大学。時間、場所を問わずに勉強が出来るので老若男女問わず幅広い層の学生たちが入学しています。一般的な通学生大学と比べると学費も安い、費用面で学校を通うのを諦めていた人たちにとっても学びやすいでしょう。一方で、通信制大学の卒業率が低い傾向もあるようです。この記事では通信制大学の卒業率の低さに注目し、その理由について様々な具体例をもとに解説していきます。
公開:2019-12-20 13:00 (最終更新:2023-05-08 13:00)
通信制大学の卒業率が低いのはなぜ?
卒業率が低い理由1:社会人の場合、通学(スクーリング)の調整が難しい
多くの方が誤解していることかもしれませんが、通信制大学だからといってすべての学校で在宅授業のみで卒業できるとは限りません。
一般的にはスクーリングと呼ばれる教室参加型授業日を設けており、週末や夏季休暇などのまとまった期間に学生たちを集めて授業が行われているのです。
そんなスクーリングが、通信制大学の学生にとって最大の障壁だと言われています。
その理由として、日程調整が非常に困難なことがあげられます。通信制大学に通う学生は、社会人の方や何らかの事情で通学過程の大学に通えない方も多数を占めています。
年に数回のスクーリングでさえ出席が難しい人が多い現状もあるのです。
スクーリングでの授業は一日で終わらないため、遠方の学生は泊りがけで出席することになるでしょう。
休みの調整が難しい社会人学生は欠席することになり、スクーリングが必修とされる大学では卒業への道が閉ざされてしまうこともあり得ます。
しかし、スクーリングの期間・内容はさほど難度が高いわけではありません。むしろ、通信制大学のメインとなるテキスト学習よりも単位取得は容易だと言われるぐらいです。
スクーリング会場は、学校キャンパス以外に全国の複数都市で用意されているケースもあります。
通信制大学でのスクーリングについて不安を持たれている方は、スクーリングが必須ではない通信制大学を選ぶ、スクーリング日程をある程度自由に決められる学校を探すとよいでしょう。
スクーリング事情については、入学前にあらかじめ情報を調べるようにしましょう。
卒業率が低い理由2:モチベーションの低下
通信制大学の卒業率が低い理由には、モチベーションの維持が困難であることも考えられます。
最近では各大学が学生の卒業率向上を図るために様々な学習支援、私生活の相談サポートを実施するケースが増加しています。
しかし、それでもひとりで学習を進めることは容易ではないようです。
時間と場所を問わずに勉強を進めることが出来る、これは通信制大学の大きなメリットの一つですが、逆に学生の負担になる場合もあります。
自由に学習計画を立てられるということは、逆に自分で学習計画をたてなければいけません。周りに同級生や先生がいない中、毎日コツコツと勉強するのは非常に困難な面もあるのではないでしょうか。
実際に大学合格を目指す浪人生が予備校に通わず自宅で勉強を進めた場合、多くの人が学力を落としてしまうというデータがあります。
また、社会人学生の方に多く見られる傾向として、仕事の忙しさから学習課題を後回しにしてしまい期末の締め切り時点になって慌てて学習に取り組むケースもあるのではないでしょうか。
様々な娯楽や逃げ道がある中で、決められた時間に勉強モードへ切り替えることが出来るかどうかはイメージした方がよいでしょう。
モチベーションを維持し継続的に学習するためのポイントとしては、オンデマンド授業等を取り入れている大学を選ぶ事をおすすめします。
通信制大学の一般的な授業は大学から送付される教科書を参考に課題やレポートに取り組むと言った形式ですが、最近は映像型授業や双方向型コミュニケーションを取り入れている学校もあります。
同級生や教授と意見を交わしながら学習を進めることが出来るので、モチベーション維持の助けになるはずです。
通信制大学の卒業率はどのくらい?
卒業率の事例1:A大学 卒業率:約75%
実在する大手企業グループに属する通信制大学(A大学)の卒業率を見ていきましょう。
通信制大学としては異例の数字で、4年次在籍者卒業率が約75%を突破しています。大手IT企業グループの技術を活かした先進的な授業、学生サポートが実施されていることが理由の一つかもしれません。
※算出方法:4年次在籍者卒業率
さらにA大学が公表しているデータで年代を見てみると、20代が半数近くを占めていて30代、40代、50代と続いています。
職業別でみると社会人が過半数以上となっています。ITに特化している大学ということもあり、入学の動機を見ても学士号の取得や就職といったものより専門知識や技術の取得を考えている人が大多数のようです。
A大学では単位別に学費が加算される仕組みになっていることも、良い相乗効果を生み出しているのかもしれません。学生たちの授業満足度・サポート満足度は、ともに80%近くの数字のようです。
学生生活のほとんどをオンライン上で進められる仕組みが整備されており、サポートについても迅速な対応が期待できるのでしょう。
毎年100人以上を超える卒業者を出しており、卒業率が他の学校より高いのも納得できますね。
尚、卒業後の進路としては就職や転職が1割程度、現職の継続としている人が9割近くのようです。仕事と学業の両立を支援しているからこそ、A大学の高い卒業率が実現できているのではないでしょうか。
卒業率の事例2:B大学 通信制 卒業率:約70%
次は心理学をメインに学習するB大学。この大学も様々な工夫を凝らし、学生の負担を減らしていることでも有名です。
卒業率は例年約70%を超えており、3年次編入・留年を含まない場合は80%以上の方が卒業しています。
※算出方法:3年次編入・留年を含まない。
まず最大の取り組みとしてB大学が掲げているのは、学生負担の軽減です。
通常、講義会場に通う必要があるスクーリングをインターネットからも受講できるように変更し、自宅や外出先から「いつでも」「どこでも」利用できるように整備しています。
講義の中にはどうしても実験や実習が外せないものもあるようですが、そのような科目は必修から外し選択科目へと変更もしているようです。必ず通学しなければいけないという状況を作り出さないように心がけているようです。
通学の必要性があるスクーリング科目においても、週末や連休を利用して2~3日で履修できるよう調整もされています。
大学側として費用と時間の短縮の改善を実施していることで、結果としてB大学の高い卒業率につながっているといえるでしょう。
講義の終わりに実施される試験も、インターネット受験が可能となっています。急用が入り試験日に合わせられないというケースを避けるために、10日間ほどの試験期間を設定しているのも学生から好評のようです。
通信制大学講座・スクール比較卒業率の事例3:C大学 通信教育課程 卒業率:4年次在籍者卒業率が約75%
経済学や商学を中心としたC大学では、約75%の卒業率を誇っています。また、併設されている短期大学では約60%となっています。
※算出方法:標準学習期間(2年間)
C大学の取り組みとしては、3年次編入学生の場合はスクーリングが一切不要で卒業できるシステムです。また、一部スクーリング科目をインターネット上から受講できるように整備し、学生たちに負担なく多様な学問を選択できる環境を提供しています。
大学から配布される教材・資料にも力を入れており、挫折することなく卒業を迎えられると評判のようです。
学生のサポート体制も充実。教職員や同級生とオンライン上でコミュニケーションを取ることが可能で、モチベーション維持にも繋がりやすくなっています。
通信制大学講座・スクール比較卒業率の事例4:D大学 人間科学部 通信教育課程(eスクール) 卒業率:約60%
首都に本部を置くD大学。スポーツ選手や芸能人も多数通うこの大学では卒業率が約60%と、平均を上回る数字になっています。
また、単位取得率に至っては90%を超えており、学生たちの学習がスムーズに進んでいることが見て取れるでしょう。
※算出方法:3年次編入・在学年数2年
D大学が行っている取り組みとしては、スクーリング授業を除いた全ての科目をeラーニングで学習できるようになっています。
インターネット上で配信される映像型授業を中心に分かりやすい教材で学習をサポートしてくれるので、単位取得の支えになると学生たちから好評のようです。
卒業を目指す際にスクーリングを一切取り入れないことも可能となっています。履修方法の工夫によって在宅授業のみで卒業出来ることも、D大学の高い卒業率に良い影響を与えているのかもしれません。
D大学ではオンライン上に掲示板を設置し、教授や学生間の意見交換を促進しています。疑問に思ったことや悩みを即座に掲示板で話し合えるので、学習スピードの向上に役立つはずです。
通信制大学講座・スクール比較卒業率の事例5:E大学 通信教育課程 卒業率:約60%
幼稚園教諭や保育士を担う人材育成を掲げているE大学。
実習やスクーリング科目が欠かせない分野ということもあり、一般的には卒業率が落ち込みやすい傾向があります。
しかし、E大学では独自の学習プログラムを確立し平均を上回る卒業率約60%を実現しています。単位取得率に至っては90%近い数字を残しています。
E大学では前期・後期と学習期間が長期間になる大学講義で途中に挫折しないよう、複数科目をかけもちする従来のやり方ではなく、1科目に集中して終わらせていくセメスター方式を採用しています。
1週間から2週間を1科目に費やす形になりますので、飽きやすい欠点はあるものの知識の定着で高い効果があるようです。
卒業率の事例6:F大学 通信教育課程 卒業率:約45%
福祉関連の講義を学ぶF大学。実習や研修、スクーリング授業が比較的多いことから卒業率も平均程度に収まっているようです。
1年次入学生の卒業率は約50%、3年次編入学生の卒業率は約45%程度となっています。
※算出方法:3年次編入・在学年数2年
F大学の特徴としては、授業形態は教科書を独自で読み込むテキスト履修と面接型授業のスクーリングが中心。良くも悪くも一般的な通信大学と言えるでしょう。
特徴としては、試験形態に工夫を凝らしています。テキスト履修科目は最終段階で試験もしくはレポートが課されるのが一般的ですが、F大学では全てレポートのみとなっています。1科目3,000字程度の文量なので、比較的負担が少ないはずです。
また、専任の学修アドバイザーがサポート役として、オンライン上かキャンパス問わずに学生からの相談対応を行っています。
様々な国家資格試験にも対応する科目を開講していることから、非常に実務性の高い学校といえるでしょう。
卒業率の事例7:G大学 通信教育部 卒業率:約50%
福祉関連の学問を専門にしている関東のG大学。卒業率は、全国通信教育の平均を上回る約50%となっています。
※算出方法:3年次編入・在学年数2年
このG大学の特筆すべき点は高い卒業率だけでなく、学生の資格取得率です。
社会福祉士国家試験、精神保健福祉士国家試験の合格者数が全国にある通信制大学でもトップクラスの数字を叩き出しており、現場で活躍するOBを多数輩出しているのが特徴です。必修科目はわずかに2科目だけにとどめ、学生たちの自主性を尊重している中でも圧倒的な試験合格率を残しています。
学習環境はeラーニング、オンラインテスト等ITを駆使し、極力学生の負担が減るよう工夫されています。
課題レポートも少ないため、自身の興味ある分野の勉強に集中できるのが魅力といえるでしょう。
通信制大学の卒業率はあくまでも参考程度に!
学びたい内容や特徴などから学校選びをすることが大切!
通信制大学の卒業率は、各大学によって算出方法に違いがあります。また、データ対象の学生にも違いがあるので、あくまでも参考程度として見るようにしましょう。
通信制大学を卒業し学位を取得することは大切ですが、卒業率は卒業しやすさを表すものではないと認識しておくと良いかもしれません。
卒業率以外にも、学費や学習内容、学習環境など、見るべきポイントはたくさんあります。
大学での学習内容は自身の学びたい内容と合致するか、将来のキャリアプランに繋がるかを確認しておくことで入学後のギャップを最小限に減らすことができるでしょう。
自分のライフスタイルを見つめ直し、相対的な視点で比較して学校選びをすることが大切です。
通信制大学の入学者数・学生数・卒業者数一覧(公益財団法人 私立大学通信教育協会加盟校)
※参考 公益財団法人 私立大学通信教育協会「2019 大学・短大編 大学通信教育ガイド」
通信制大学名 | 卒業者数年度入学者数 正規課程 ()内は編入学者数 |
学生数 | 卒業者数 |
---|---|---|---|
産業能率大学 | 1,799(1,536) | 3,623 | 1,203 |
東京未来大学 | 415(314) | 1,027 | 217 |
聖徳大学 | 855(653) | 2,442 | 157 |
佛教大学 | 1,384(1,171) | 5,213 | 216 |
大手前大学 | 797(596) | 2,078 | 401 |
東京福祉大学 | 1,228(1,014) | 2,184 | 773 |
近畿大学 | 451(134) | 1,249 | 135 |
北海道情報大学 | 717(180) | 2,437 | 357 |
日本福祉大学 | 2,459(1,839) | 6,765 | 1,747 |
玉川大学 | 610(410) | 2,203 | 46 |
明星大学 | 1,602(1,425) | 4,071 | 84 |
姫路大学 | 175(104) | 495 | 177 |
法政大学 | 1,263(649) | 5,399 | 253 |
慶応義塾大学 | 1,345(754) | 8,522 | 206 |
中央大学 | 798(430) | 3,246 | 158 |
日本女子大学 | 271(202) | 1,449 | 88 |
日本大学 | 1,925(948) | 7,289 | 501 |
創価大学 | 699(285) | 6,655 | 524 |
愛知産業大学 | 360(310) | 1,199 | 150 |
京都造形芸術大学 | 2,001(1,268) | 7,554 | 631 |
帝京平成大学 | 66(42) | 181 | 19 |
大阪芸術大学 | 276(156) | 928 | 45 |
武蔵野美術大学 | 564(424) | 2,387 | 155 |
東北福祉大学 | 524(372) | 2,387 | 317 |
中部学院大学 | 190(138) | 528 | 110 |
奈良大学 | 300(230) | 1,279 | 68 |
星槎大学 | 868(405) | 3,850 | 78 |
神戸親和女子大学 | 98(81) | 402 | 57 |
帝京大学 | 119(33) | 509 | 20 |
九州保健福祉大学 | 137(37) | 455 | 157 |
環太平洋大学 | 432(364) | 1,139 | 79 |
早稲田大学 | 172(88) | 741 | 87 |
京都橘大学 | 338(186) | 1,123 | 154 |
短期大学名 | 入学者数 正規課程 ()内は編入学者数 |
学生数 | 卒業者数 |
---|---|---|---|
自由が丘産能短期大学 | 1,901(44) | 3,282 | 1,565 |
大阪芸術大学短期大学部 | 434(9) | 1,057 | 279 |
近畿大学短期大学部 | 619(0) | 1,687 | 260 |
聖徳大学短期大学部 | 70(0) | 361 | 24 |
近畿大学九州短期大学 | 1,281(0) | 2,941 | 1,269 |
愛知産業大学短期大学 | 405(11) | 845 | 318 |
東京福祉大学短期大学部 | 162(41) | 415 | 258 |
帝京短期大学 | 19(0) | 105 | 27 |